インタビュー
「ドラクエから主婦まで」大きな広がりを見せる「Unite Japan 2014」の見どころは
今回はそれらを含んだ話題が予想されるUnite Japan 2014の内容について,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのスタッフに話を聞いてきた。対応してくれたのは,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの日本担当部長 大前広樹氏,事業開発担当マネージャー 染谷 翔氏,コミュニティ エバンジェリスト 小林信行氏の3名だ。
すでにチケットは完売となっているのだが,ストリーミング中継されるセッションも多いので,当日会場に行けない人も,本記事を参考に講演中継を視聴していただければ幸いだ。
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン コミュニティエバンジェリスト 小林信行氏 |
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 日本担当部長 大前広樹氏 |
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 事業開発担当マネージャー 染谷 翔氏 |
「Unite Japan 2014」公式サイト
Ustream「Unite Japan 2014」中継チャンネル
Unite Japan 2014はどうなる? 基調講演にはOculus VR創設者も登壇
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。昨年のUnite Japanはなかなかの盛況でしたが,今年のUnite Japanの規模はどうなるのでしょうか。去年とは会場が変更になっているようですが。
大前氏:
染谷氏:
前回の1.5倍くらいですか。来場者も800名から1250名くらいまで増えます。
大前氏:
セッション数は同じか,ちょっと増えたくらいですね。チケットのほうは,昨日(3月26日)完売しました。
今回は早期割引のうちに購入された人が非常に多くて,「GDCが終わったからUniteの手配をするか」とのんびり構えていた人は買い逃したかもしれません。
4Gamer:
大人気ですね。来年はもっと広い会場になるのでしょうか。
大前氏:
これ以上広い会場となると,CEDECも使っているパシフィコ横浜くらいしかないんですよ。現状でも,単体製品に関してのカンファレンスとしては国内最大の規模になっています。
ここ数年の傾向では必ず売り切れますので,来年は早割のうちに購入されることをお勧めします。損はさせませんので。
4Gamer:
なるほど。大盛況なりに運営は大変そうですねえ。
では,講演内容についてお聞きします。まずは基調講演ですが,今回はUnity CEOのDavid Helgason氏のほかにOculus VRからも登壇されますね。
大前氏:
4Gamer:
Oculus自体が,まだ日本にはちゃんと上陸していない感じですし。
大前氏:
国内では「勝手に盛り上がってる感」が凄いですけど,日本法人はまだですね。
小林氏:
それが,買収の件で一気に有名になっちゃいましたねえ。
大前氏:
会場ではRiftのDK2(Development Kit 2)を持ち込んで実際に体験できるようにします。これは日本では初ではないでしょうか。また,日本の開発者が作ったRift用のコンテンツも展示します。BitSummitで賞を取った「MODERN ZOMBIE TAXI DRIVER」なども展示されますので,ぜひプレイしてみてください。
4Gamer:
UnityとRiftとの親和性はどうなんでしょうか。
大前氏:
すごく高いですね。SDKがあって,最初からUnity用のパッケージが用意されています。そのパッケージをインポートするとOculus用のカメラが使えるようになります。それをシーンにセットすれば,それだけで動きます。もう一瞬です。
4Gamer:
それは凄いですね。
大前氏:
問題点としては,無料版のUnityだとネイティブプラグインが使えないので動かないというのがありました。しかし,それを無料版でも使えるようにしたNoraさんという方が出てきまして(OVRAgent:http://stereoarts.jp/),現在では無料版でも使えるようになっています。
4Gamer:
え,それって回避できるんですか? 以前,CRIミドルウェアさんが無償版のADX2 LEを公開したときに(関連記事),ネイティブプラグインを使っているからUnity Proが必須になってしまったのをずいぶん残念がっていたのですが。
大前氏:
ネイティブプラグインは使えませんが,デスクトップPCの場合であれば,別途Riftに対応したコンパニオンアプリを作り,そことローカル通信を行うことで制御を可能にしています。
4Gamer:
なるほど。コンパニオンアプリはUnityとは関係ないものだから問題ないと。センサーデータの受け渡しくらいなら,その仕組みでも十分かもしれませんね。
小林氏:
そうですね。もともとは,Oculusの開発キットには90日間試用できるUnityのProバージョンが添付されていたんですよ。それが切れても遊んでみたいという人の願いがかなえられたわけです。こうしたコミュニティの対応ですべてが解決するとは思っていませんが,それでも一歩前進ということで嬉しいですね。
4Gamer:
話題性もあって,それだけ親和性の高いOculusの講演ですので,期待も高まりますね。
もう一方のHelgason氏のほうは,やはりUnity 5の話が中心でしょうか。
大前氏:
それも今回の目玉なのですが,イベントの趣旨としては最新情報の提供よりも,「みんなでゲームを作って幸せになろう」といった側面が重視されていますので,これから先のいろんな話をするんじゃないかと思います。それとApplifier関連の話もあるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
大前氏:
ゲームの実況が凄く簡単になります。開発者から見たときにいいのは,自分のプログラムに実況機能を一発で入れられるということですね。ゆくゆくはUnityと統合されますので,SDKなどを使わなくても「実況機能 ON」だけで実況ができるようになるわけですよ。そのうえ,動画広告機能も備えていますから,ゲーム実況に動画広告を付けるところまでワンオフでサクっとできるようになるんですよね。そして動画共有サービスのEveryplayをベースに,面白い動画を録る人がいたらクチコミでゲームを広めてくれるわけです。
4Gamer:
それだけ手軽だと,実況機能を付けない理由もなくなりますね。
大前氏:
ええ,それだけじゃなく,実況機能を前提にしたゲームを作る余地も生まれてきます。この機能を使う人が増えてくれば,Everyplayの広告媒体としての価値も上がっていきますし,よい流れができるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
海外産ですから,動画のつなぎ込みはTwitchなどが中心になると思うのですが,日本のニコニコ生放送などとの連携はありうるのでしょうか。
大前氏:
やっていきたいですね。まだ日本でどうするという話はこれからなのですが,僕らとしては人がいるところで投稿できるようにしてナンボですので。
染谷氏:
最近はゲーム実況に勢いがあり,再生数が伸びていますので,そういったところでApplifierのEveryplayと組み合わせたゲームを作っていくと,新しいビジネスが生まれてくるのではないかと期待しています。
小林氏:
4Gamer:
著作権的にはグレーゾーンですから,公式に実況機能が付くのはいいですね。
小林氏:
実際,ゲームというものは,プレイされて初めて完成するものです。カジュアルなゲームが増えていますが,その一方で熟練したプレイヤーが魅せる面白さというのもちゃんとあるわけです。凄い動画を見て「こうなりたいな」ということだってあるでしょう。そういう部分はこれまでアーケードゲームが担っていたのですが,それがだんだんモバイルなどまで取り込んでいくようになるわけです。実況機能を持ったゲームが新たな起爆剤として作用してくれれば業界も面白くなりますね。
4Gamer:
実況については,海外と日本では少しテイストが違いますよね。
大前氏:
そうですね。日本ではちょっと変わったゲームやプレイが好まれる傾向にありますし,実況主そのものの人気も高いですね。そういったものも含めて,僕らは文化的に理解していますし,僕ら自身も実況動画の大ファンですので,それがもっと盛り上がっていくような方向で進めたいと思います。すでにドワンゴさんとはいろいろなイベントで協力してきていますし,今回の件は渡りに舟といいますか,提案できることが増えてよかったなと思っています。
4Gamer:
対応ゲームが増えていくと盛り上がりそうですね。
大前氏:
ちょっと横道に逸れますが,僕らはUnity Games Japanというゲームのパブリッシングビジネスも始めています。扱っているものには実況向きのゲームも多いので,パブリッシャとして「実況してね」というメッセージを発信していく予定です。実況のためのガイドラインなども作っていますよ。これからはどんどんそうなっていくと思います。
4Gamer:
基調講演以外の一般セッションについてですが,今回のUnite Japanにはなにかテーマのようなものはあるのですか?
大前氏:
Unity 5.0のテクニカルな部分を掘り下げるのは今年の目玉ではあるのですが,イベントとしては「ドラクエから主婦まで」という広がりを見ていただきたいですね。
4Gamer:
主婦ですか?
大前氏:
エクシヴィの近藤さん(近藤義仁氏@GOROman)というOculus Riftのエヴァンジェリストのような人が,以前「MIKUMIKU Akushu」という,初音ミクと握手できるというバーチャルリアリティのシステムを作ったことがありました。そこに「主婦なんですけど,ミクちゃんと握手したい」という人が現れたんです。その人がそのうちに「自分でミクちゃんを踊らせたい」という具合にエスカレートしていき,それじゃあと近藤さんがTwitterでUnityを教えだしまして,最近では自分でモデリングまでするようになったようです。そういった過程が「主婦でもできるUnity」としてTwitter上で続いていたのですが,実録100日にわたる内容をまとめたセッションが行われる予定です。
小林氏:
言っておきますが,仕込みじゃないですよ(笑)。こういうのが自然発生するというのが面白いですね。
大前氏:
この近藤さんというのがいろんなことにUnityを使っている人で,ラピッドプロトタイピングだけではなく,引越しの部屋の見取り図や絵コンテなどにも活用して,彼の会社でも実績を上げています。こういうのも面白いと思いますね。
4Gamer:
確かにあれだけのものが無料で公開されているのですから,ゲーム以外にもいろいろ使いたいと思う人はいるでしょうね。
大前氏:
いまやUnityは,ゲームエンジンや制作環境というのを超えて,知識というか,いろんな業界でみんなの持っているものを集約するハブのような役割を果たすようになってきています。業界や産学を超えて,Unityというプラットフォームでさまざまなことが行われており,同じプラットフォームだから交流ができる,そんな知識の中心地になってきているという感じはありますね。同時に,Unityによって,いろんなことが凄いスピードでできるようになってきていて,あちらの人が持っているものとこちらの人が持っているものを掛け合わせるのも凄く速くできる,そのあたりのスピード感や広がりが,Unityコミュニティにいる人が感じているワクワク感の一つではないでしょうか。
これを2日間のセッションで感じていただければと思っています。それがまさに「ドラクエから主婦まで」という広がりを持つ今回のUniteのテーマとも言えます。
4Gamer:
ゲーム以外の分野が多くなったということでしょうか。
大前氏:
いえ,セッションは,やはりゲームが中心になっていて,コアなゲーム開発者のためのコンテンツもたくさんあるんですけど,それ以外にもいろいろなものがあるということです。
例えば,昨年末に行われたニコファーレの「小林幸子カウントダウンLIVE」というイベントでは,ニコファーレ自体を小林幸子さんの衣装に見立てて,その制御の一部をUnityでやっていました。そのあたりの話をする講演もあります。
また,クリプトンさんのセッションでは,ロックバンドのBUMP OF CHICKENと初音ミクのコラボレーションミュージッククリップに関する話が行われます。このときのミクの動きにUnityが使われていまして,プリレンダーではなく,ライブでリアルタイムに操作できるシステムが組まれていました。そのあたりの,どう演技させて,どんなことができるようになったということが語られます。
小林氏:
これについては,すでにメイキングビデオが公開されているのですが,説明が少ないんですよね。今回は詳しい説明が行われる予定です。また,現場ならではの苦労話がいろいろあったようですので,そのあたりについても語られるのではないでしょうか。
4Gamer:
いろいろなところで使われていますね。目玉となるゲーム関係のセッションでの見どころはどうでしょうか。
大前氏:
これはなんといっても,昨年末に出て話題になったスマートフォン版の「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」(iPhone / Android)開発のポストモーテムですね。これは結構突っ込んだ話が多くなりそうで,ちょっと重ためのセッションになると思うのですが,Ustreamでも中継されますので,興味のある方はぜひご覧ください。
また,SCE Worldwide Studios ジャパンスタジオによる開発で大変高い評価を得た「rain」というタイトルのポストモーテムを扱うセッションもあります。これはGDCでも語られていましたが(関連記事),今回はスライドまで全部日本語で解説が行われます。
こういった「ガチ」なコンシューマゲームの話も扱っています。
小林氏:
あとは,「Repubrique」もありますね。
大前氏:
Unite Japanに参加していた開発者である池和田さん(池和田有輔氏)がGame Jamで作ったゲームをたまたま見たRyanがいたく気に入りまして,すぐに連絡を取って,池和田さんがGUIデザイナーとしてRepubriqueの開発に参加することになりました。しばらく日本とシアトルでやっていたようなのですが,池和田さんがフリーだったこともあってシアトルのチームに呼ばれ,しばらくはRyanの家に寝泊りしてRepubriqueを作っていたそうです。アメリカのインディーズゲーム開発チームに参加するというのもなかなかない経験ですので,今年はそのあたりの経験を池和田さんが話してくれることになっています。
4Gamer:
それも貴重な講演になりそうですね。
大前氏:
こんな感じで,相当面白い,ここでしか聞けない話というのがたくさんありますよ。
染谷氏:
そのほか,今回もUnityの開発チームが来日しますので,会場のRoom1で10以上のテクニカルな講演を行います。そこで,先日発表されましたUnity 5.0に関する詳しい話も行われます。これはもちろん日本では初になります。
大前氏:
小林氏:
そのほかにUnity 2Dに関する講演もありますね。
大前氏:
Unity 2Dは発表以来,反響が大きく,Unityのアクティブユーザー数が大きく伸びました。みんな2Dのゲームを作りたかったんだなというのがよく分かります。今回は,Veli-Pekka KokkonenがUnity 2Dでよくある落とし穴とその解決法を教えてくれます。
4Gamer:
これはGDCの講演と同じものですかね。
大前氏:
そうですね。日本語通訳が入りますので,GDCに行ってない人も参考にしてください。
染谷氏:
大前氏:
昨年も来日したTim Cooperによる「Long-awaited vapor ware」候補であった新しいUnity GUIをようやく紹介できます。
彼は「BioShock」「BioShock 2」にも参加したプログラマで,Unityのエディタ周りを担当しているのですが,とにかく身体を鍛えるのが好きで,TimがUnity仮面のマスクをかぶると本物のプロレスラーに見えます(笑)。
食事でも,鶏肉や脂身のない豚肉を茹でたものとブロッコリーだけを,ソースもかけずにもりもり食べるという,ボディビルダーのような生活をしています。コペンハーゲンのUnityのカフェテリアで見て,やっぱりこういう食事をしてるのかと感心しましたね。
4Gamer:
Cooperさん自身も要注目みたいですね(笑)。
大前氏:
ちょっと変わったところでは,テスト駆動開発関係のセッションがあります。
ご存じのようにUnityは,非常に多くのプラットフォームに対応していて,さまざまな機能が入っています。こういうものを安定して配信していくには,毎日毎日いろいろなバージョンでビルドしてテストを繰り返す必要があるわけです。それもあって,テストを行う環境が非常に進化しているんですよ。その一部はUnity Test Toolsとして公開されています。
これを作ったTomek Paszekが,Unityを使ったテスト駆動開発(TDD)や,最近話題になることも多いContinuous Integration(CI:継続的インテグレーション)について話をしてくれます。Unity自体のテストツールを作っている人が自ら語る内容ですので,かなり注目度の高いセッションになるのではないでしょうか。
小林氏:
現在公開されているUnity Test Toolsにはすでに日本語ドキュメントも入っていますので,ぜひ活用してください。
大前氏:
弊社の安藤(安藤圭吾氏)がTDD大好き人間なので,公開された瞬間に「世界で最初にローカライズする!」と頑張りました。
あとは,TDDなどで重要になるアセットバンドルという機能が,Unity 5.0で大きく変わって使いやすくなります。そのあたりの仕組みやワークフローについて,その部分を開発したSteen Lundが話をします。かなりテクニカルな話になると思いますが,これも要注目ですね。
重要なのはUnityの使い方ではなく,Unityでゲームをどうデザインしていくか
大前氏:
カンファレンスとして,Unite Japanというのは「Unityの使い方を学ぶ場所」ではなくて,ゲーム開発を中心に「新しいことができるようになる場所」「ゲームデザインそのものについて学ぶ場所」にしたいと考えています。
幸い,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンには,ここにいる小林さんのほか,サイバーコネクトツーでゲームを作っていた簗瀬洋平さんのように,ゲーム業界でゲームデザインの仕事をしていた人もいますので,その二人がゲームデザインについてのセッションを行います。
4Gamer:
それはUnityに特化した内容のものになるのでしょうか。
大前氏:
いえ,ゲームデザイン自体の話ですので,あまり関係はありません。Unityを使ったデモなどはありますが,大事な部分は考え方です。例えば,簗瀬さんのセッションでは,ゲームのコンセプトとゲームデザインをどう合わせるかという講演が行われます。これは非常に重要な話で,どう考えるのか,そしてUnity上で実践するにはどうするかというところまで含めた内容のものになります。
小林さんのほうは少し変わっていて,Unityでテキストアドベンチャーを作るにはどうするかという内容になります。
4Gamer:
正直言って,テキストアドベンチャーなら,Unityを使わなくてもいくらでも専用ツールがあるじゃないかという気もするのですが……。
大前氏:
ツールはあるのですが,テキストアドベンチャーをどう作るべきかとか,テキストアドベンチャーのお作法という部分が重要で,今回はそういったものが中心になります。
小林氏:
テキストアドベンチャーというのは,日本独自の文化なんですよ。海外だと別のジャンルになってしまいますから。それをUnityで広げていくとどうなるのか,将来のビジョンを含めて話ができればと考えています。
大前氏:
時村さんは,Unityでテキストアドベンチャーを気軽に作れるようにするためのアセットを長く作っている人で,せっかくですので,誰でもアドベンチャーゲームを作れるようなノウハウを公開しようということで今回の講演が決まりました。理論だけではなく,すでに公開されているアドベンチャーゲーム用のパッケージなどの紹介も行います。
小林氏:
実際にアドベンチャーゲームを作ってみると,実はリソース地獄になるんですよ。それを避けるためにどういうデザインにするかなど,Unityで作るかどうかを問わずアドベンチャーゲーム作りの参考になるんじゃないでしょうか。
初代PlayStation,PS2,PS3,PSPとゲームを作ってきましたが,PS3で大量の高解像度のアセットを用意してゲームを作るというやり方は,実はモバイルでデータをダウンロードしながら進めていくというやり方と近しいところもあるんです。そういうところを注意しないと難しいよねといった話を時村さんと進めたいと思っています。それとマルチプラットフォームなどの話題がクロスオーバーするセッションになると思います。
大前氏:
実は,どのセッションも,Unityでなくても参考になる講演になるように心がけています。例えばrainのセッションでも,Unityでどうやったかだけではなく,プロダクションとしてはどういうチャレンジがあったのかといった部分を重視してほしいとお願いしています。そちらが主であって,それにUnityという共通のプラットフォームでの共感できる話題を備えたようなセッションが今回は多いと思いますよ。
ユニティちゃん |
コミケで販売されたオフィシャルアートログ |
あとは,大前さん自身による「ユニティちゃん」(Unity-Chan)のスターティングガイドもありますね。
大前氏:
Unite Japanでいよいよユニティちゃんが始動します。ユニティちゃんは,非常にオープンなライセンスになっていますので,どういうふうに使えばいいのか,どんなことができるのかについて一通り知ってもらおうということで,クリエイターのntnyさんと一緒に講演を行います。ユニティちゃんのデザインの変遷やこういった世界観なんだといった話題なども交えつつ,ライセンスなどの疑問を抱かれるであろう部分を一通り解説していく予定です。
小林氏:
当日は来場されるとちょっと楽しいことがあるかもしれません。
大前氏:
そうですね。非常に楽しいギミックがありますので楽しみにしてください。
ユニティちゃん公式サイト
新たなコミュニティ基盤,「Unity県人会議」とは
Unite Japan 2014と同時に,「Unity県人会議」も正式稼動します。
4Gamer:
それはなにを行うものなのですか。
大前氏:
これは各種勉強会であるとか,いろんな活動を後押しするためのサービスです。現在は,コミュニティカレンダーの形で,イベントを告知する場として,Unityユーザーみんなが見ている場所で人集めに協力するものとなっていますが,これを拡大して,日本各地のコミュニティ形成を促進するサービスに展開していきます。
4Gamer:
具体的に言うとどんなものになるのでしょうか。
大前氏:
各地で,企業や場所を持っている大学の方などに「支援P」に登録してもらって,別途,実際にイベントをやりたい人には「こんな講演ができます」「こんなイベントをやりたいのですが,場所を貸してもらえませんか」といった感じで登録してもらいます。支援Pのほうからそういった登録者に,利用できる会場とか人的リソースなどのオファーを出していただいて,イベント構築のお手伝いをする感じです。要するに,これまで我々のところでやっていたようなことを,各地でできるようなサービスとして提供するのですが,これが本格稼動します。
これまで10人くらいのイベントを黙々とやっているような人達でも,ローカルコミュニティに対しての貢献を可視化します。ゲーミフィケーション的な仕掛けも入っていて,各地でのコミュニティ作りを活性化するものになりますので,今後の展開に注目してもらえればと思います。
4Gamer:
それで,なんでチラシがタイ○ーマスク風なんですか?
大前氏:
これも伊達や酔狂ではなく,ちゃんと稼動しますので,サイトができたときには指をさして笑っていただければと思います(笑)。
今年はこの県人会議を中心にいろんなイベントを展開していく予定です。先ほどからお話ししているように,Unityがハブとして機能し始めていますので,いろんな人が交流できる場を広げていきたいと思っています。共通言語としてのUnityというものは設定するのですが,Unityを使っている人以外は関係ないというものではなく,なにかやってみたいという人には広く参加してほしいですね。
染谷氏:
もちろん,ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン自体も,Unite Japan以外のイベントを多く開催していく予定ですのでご期待ください。
インディーズゲームを多くのプラットフォーム,多くの言語で。Unity Games Japanの目指すものとは
Unite Japanとは関係ないのですが,先ほど少し触れたように,最近僕らはパブリッシング事業としてUnity Games Japanを立ち上げました(関連記事)。海外の面白いインディーズゲームを日本のゲーマーに紹介したり,日本のクールなゲームを海外にローカライズしたりといったことをやっていきます。
4Gamer:
それはどういう意図なのでしょうか。
大前氏:
昨年の東京ゲームショウで「インディーズゲームフェス2013」というイベントをやったのですが,そこで,一般のお客さんにインディーズゲームがコンテンツとしてちゃんと届けば「このゲーム面白そう」という反応があって,面白さはちゃんと伝わるんだということを確信しました。しかし,実際にそれをデリバリーする人がいないんです。これをどうしようかと考えていたのですが,もうウチでやっちゃおうと。
4Gamer:
インディーズゲームは手が届かないものなのでしょうか。
大前氏:
インディーズゲームの多くは,PCやSteamで供給されていますが,Steamでそれらをドルで入手するというのはかなりハードルが高いんですよ。4Gamerの読者だとそうは感じないかもしれませんが,多くの人には。
それをもっと手軽にアクセスできるコンシューマゲーム機のダウンロードタイトルとして提供していこうというわけです。日本でも同人ゲームではかなりクールなゲームが出ていたりしますが,そういうのが,Wii UやPS4でプレイできると最高じゃないですか。
4Gamer:
PCやモバイルだけではなく,コンシューマゲーム機にもインディーズゲームを出すということですか。それはSCEさんや任天堂さん的には大丈夫だったのでしょうか。
大前氏:
弊社は両社ともに密接な関係を持っていますが,大変協力的ですね。彼らも自分のプラットフォームに多くのタイトルを持ってきたいと思っていますし,いまはエクスクルーシブにやる時代ではありませんので,だからこそUnityと大きな関係を築いているというのもあります。両社とも良好に進めさせてもらっています。
4Gamer:
だいたい分かりました。
大前氏:
PSNの場合は個人でもOKですが,それ以外だとインディーズ歓迎とはいっても,開発機を販売する関係で法人でないといけないとか(注:日本では),パブリッシングのプロセスが結構複雑だったりするんですよね。QA(品質管理)のための手順など,僕らが実際にやってみて結構大変でした。
小林氏:
あれは小規模なデベロッパには難しいんじゃないかと思いますね。
大前氏:
ゲームを作るのは一人でもできるじゃないですか,そこでできたタイトルを普通には難しいプラットフォームでパブリッシングするお手伝いをするわけです。
4Gamer:
では,PC用に作ったインディーズゲームでも,御社で例えばWii U用に調整してリリースするという感じでしょうか。
大前氏:
そうですね。タイトルについては私達も選定しますが,そういったことや,世界の各地用にローカライズしてリリースするようなことをやっていきます。そのほか,我々のユニークな立場を利用して,いろいろなコラボができればと考えています。
4Gamer:
そうしてパブリッシングしたタイトルは,PSNやニンテンドーeショップに並ぶわけですか?
大前氏:
そのほか,ゲームを海外で展開したいといった場合には,Unity Games ChinaやUnity Games Koreaといったものもありますので,ローカライズしてそちらで展開することも可能です。
4Gamer:
なるほど。各国のUnity Gamesも日本と同じような活動をしているのでしょうか。
大前氏:
最初に作られたUnity Gamesでは,シアトルでパブリッシング事業を立ち上げて,いくつかのゲームをファンディングしてリリースしていました。各地のUnity Tecnologiesでもそれを販売する形でUnity Gamesが作られたのですが,日本ではパブリッシング事業はどうするかと聞かれたときに,Unity Gamesが作ったゲームを日本で出すだけでは,僕らの存在意義とはちょっと違うなと感じました。日本のゲームファンや開発者がハッピーになる活動をやりたいということで,現在の形のものになったわけです。
4Gamer:
北米とは違う路線になったわけですね。
大前氏:
ChinaやKoreaでも,各地のコミュニティに対してどうしたら一番いいかを考えて,個別に活動しているんですよ。実は,Unity GamesとUnity Games ChinaとUnity Games KoreaとUnity Games Japanでは,ビジネス構造がすべて異なります。
そもそもパブリッシングビジネスとはそういうものだと思っています。各地の事情がよく分かっている人が,各地に一番いいようにやると。別に連携してないわけでもなくて,それぞれの国で地に足をつけてやっているスタッフがいるので,日本のタイトルを他国展開する場合でも安心して任せられるわけです。
4Gamer:
かなり理解のある会社のようですねえ。
大前氏:
この辺はUnity Technologiesという会社の民主的なところのよさが表れていますね。
まあ,もともと最初の海外支社であった日本は好き勝手にやっていたのですが,ほかの地域も自分の判断で動くようになったといいますか,現地のスタッフに任せたほうがいろいろなことがうまくいくというのが成果として理解されるようになって,そういう文化ができてきました。
「雲丹亭」Tシャツなんかは,Unityのブランドイメージガイドラインから思い切り外れているんですが,Unityの中の人からはいつも「くれくれ」とうるさく言われます(笑)。
来場者,登壇者との交流を促す通訳と録画サービス
染谷氏:
今回のUnite Japanでは,Room3での講演はUstreamですべて中継されますが,そのほかの講演もすべて録画は行われます。開可能なものはWebに公順次公開していく予定です。
大前氏:
昨年も,チケットを購入された方には最速で全セッションの録画が見られるようにしていたのですが,一般向けにも少しずつ公開していきました。
Unite Japan 2013の公開録画一覧
4Gamer:
3トラックあると,どれに参加するか迷いますので,録画があると助かります。
大前氏:
セッションの内容は重要ですが,こういうイベントは,その場にいることの意味というか,講演者と直接会って話すことができる機会でもありますので,それを最優先に考えて出席するセッションを決めるのがよいと思います。それ以外のものは録画で追いかけていただければと思います。
小林氏:
去年と今年でいちばん違うのは,今回は非ゲーム業界の人も大勢参加されていることです。例えば,建築業界ではUnityを使ってウォークスルーのデモを作るなどの動きが広がりつつあります。せっかくの機会ですので,Unityのスキルをほかの分野で生かしたいという人は,名刺交換などで交流を進めたり,広がりを感じていただければと思います。
染谷氏:
4Gamer:
せっかく凄い人達がきているのですから,そういうのは嬉しいですね。昨年以上に盛り上がるイベントになることを期待しています。
大前氏:
それと,当日はお土産も用意してあります。
染谷氏:
4Gamer:
ちなみに何個くらいなのでしょうか。
染谷氏:
雲丹亭Tシャツは,各サイズ合わせて200枚,ユニティちゃんピンバッジは300個の限定販売となります。来場者数からすると少なめですので,手に入れたい方はなるべく早めにお越しください。
大前氏:
あと,当日はもう一つサプライジングな展示も行われる予定です。いま一生懸命用意していますのでお楽しみにしてください。
4Gamer:
なんでしょう? 等身大ユニティちゃんとか?
小林氏:
僕らは役に立つものしか作りません(笑)。
大前氏:
見ると,きっとほしくなる人が多いんじゃないでしょうか。
4Gamer:
当日を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
「Unite Japan 2014」公式サイト
Ustream「Unite Japan 2014」中継チャンネル
- 関連タイトル:
Unity
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