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[GDC 2015]新世代ゲームエンジン「Unity 5」の実力が見えた。Unityのスペシャルイベント詳報
本稿では,4日に行われた「Unity Special Event」の詳報的に,Unity 5はどのように動作するのかを示したデモの内容を中心に,新ゲームエンジンの特徴を紹介していきたいと思う。
ちなみに,Unity 5のリリースノート(英語)は,50ページ以上にわたるとのこと。すべての機能をここで紹介することはできないので,改良点や新機能などについて詳しく知りたい人はリリースノートを参照してもらえれば幸いだ。
物理ベースレンダリング対応など強化されたグラフィックス機能をデモで確認
- 原動力となるグラフィックス機能
- クラウド活用による効率アップ
- 多機能かつ柔軟性の高いエディタ
- 業界一のマルチプラットフォームサポート
この中でもとくに注目すべきは,大幅に強化されたグラフィックス機能だろう。物理ベースのレンダリングを実現するシェーダシステムに一新されたため,リアルタイムレイトレーシングによる事前計算式のライトマップやイメージベースの大域照明モデル,リフレクションプローブなどを併用することで,ダイナミックライティングにかなり近い処理を実現できるようになったのだ。
事前計算式なので,光源が動きまくるようなシーンでは,ちょっと困ったことになるかもしれないが,ともあれ,あまり考えなくても,かなりリアルな映像表現を採用したゲームが作れるのは喜ばしい。「物理ベースだからリアルになる」というほど単純な話ではないが,少なくとも破綻したシェーダが実装される問題は解消される。また,現実に存在する物質の特性がライブラリ化されていれば,それに近い質感を手軽に再現できるようになるはずだ。
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さて,そんなBlacksmithでは,かなり複雑なオブジェクトを扱っているのだが,デモ中に光源などを動かしても陰影の生成は一瞬で行われており,タイムラグはほぼ感じられない。
Payton氏はステージで,そのUnity 5版となる「République Remastered」の画像を披露した。Unity 5版はすでに3話分が完成しているという。
そんなCapps氏が,スピーチの最後で紹介したのが,「P.A.M.E.L.A.」というゲームのトレイラーだ。これはゲームスタジオの制作物ではなく,カナダにあるNVYVEというCGスタジオのチームが数か月で作ったものとのことだったが,会場では大きな拍手を浴びていたので,下に紹介しておきたい。
クラウドサービス「Unity Cloud Build」は正式スタート
Unity Technologiesのオンラインサービス部門担当副社長であるTodd Hooper(トッド・フーパー)氏が解説したのは,クラウドサーバーを利用したサービス「Unity Cloud Build」についての話題である
Unity Cloud Buildとは,開発者のPC上ではなく,クラウドサーバー上でプログラムをコンパイルするというサービスである。プロジェクトの規模が大きなゲームになると,このようなサービスがありがたく思えるようになるようだ。
4か月間行われたβテストでは,計15万プロジェクト以上がリモートビルドされ,開発者の時間を総計で4500日分節約できたという。
また,動画広告配信サービス「Unity Ads」では,成功事例としてHIPSTER WHALEのゲーム「Crossy Road」(iOS / Android)が紹介された。Unity Adsの成功例としてよく出されるゲームなので,iOS版が45日間で100万ドルの広告売り上げを稼いだという話は有名だが,現在までの累計では300万ドルに達しているという。
サウンド機能やマルチプラットフォーム対応のデモも披露
Unity 5のサウンド機能については,ミキサー機能が追加されるということくらいしかこれまでは語られていなかった。一方,Goldstone氏が語ったのは,サウンドエフェクトについての話である。
講演で披露されたデモでは,キャラクターがあるエリア(部屋)に突入したときに,音響設定を切り替える様子が示された。部屋の広さなどに応じた音響の設計が簡単にできれば,ゲームの臨場感を手軽に増すことができそうだ。
現在のUnityは,21種類のプラットフォームに対応しており,ほとんどすべてのゲームプラットフォームをカバーするまでになっている。下に掲載したスライドは対応プラットフォームのアイコンを並べたものだが,アイコンを一目見ただけでは,それが何なのかよく分からないものまで交じっているほどだ。
Unityで制作したゲームをWebブラウザ上で動くように変換するには,2014年9月掲載の記事で説明した仕組みを利用するようになっている。ここでは,簡単におさらいしておこう。
まず,.NET Frameworkの互換環境である「Mono」の中間言語「IL」をC++のコードに変換する技術「IL2CPP」を使って,Unityで実行したゲームをC++コードに変換しておく。その変換されたコードを,今度はMozillaが提供している変換技術「emscripten」で,JavaScriptのサブセットであるasm.jsに変換する。こうすれば,WebブラウザのJavaScriptエンジンを使って,ブラウザゲームとして動作するゲームを制作できるというわけだ。
変換の核となるIL2CPPでは,JavaScript用に変換するだけではなく,そのままC++でコンパイルして,ネイティブアプリケーションを作るというテクニックが使える。
セッションでは「変換したアプリケーションの性能」に関するデモが行われたのだが,iPhone 6上で実行されたレイトレーシングプログラムの場合,基になったMonoベースのものに比べ,IL2CPPを利用して作ったものは,約7倍も高速な動作が可能になるという結果が得られたそうだ。
また,群集シミュレーション系の「Agents」というデモでは,1024体で比較したときに,IL2CPPを使うか使わないかで3倍のフレームレート差が生じるとのことだった。Unityでは今後,IL2CPPのサポートを据え置き型ゲーム機にも広げていく予定であるそうだ。
最後にはOculus VR CEOのパルマー・ラッキー氏も登壇
Space Ape GamesのCEOであるJohn Earner(ジョン・アーナー)氏は,Unity 5で制作したモバイル端末向けゲームの事例を説明している。同社は以前からUnityを使ってモバイル端末向けゲームを制作しており,6か月間でゲームを制作し,2か月間テストするといった短いサイクルでゲームをリリース。これまでに1200万インストールを達成しているのだそうだ。
そのSpace Ape Gamesが,Unity 5を使って作り上げたのが「Rival Kingdoms」というRTSである。Earner氏は,「Unity 5のおかげで美しい画面のゲームを制作できた」と,Unity Technologiesへの感謝の言葉を贈っていた。その出来映えは,下に掲載したムービーを参照してほしい。
ライバル・キングダム:予告編 from Rival Kingdoms on Vimeo.
Oculus VRのCEOである,Palmer Lackey(パルマー・ラッキー)氏も登壇し,Unity 5への祝辞と期待を述べた。氏によれば,Unity 5のPersonal版でもVRゲームの開発がすぐにできることや,同社の仮想現実対応HMD「Rift」でも,Unity 5で制作されたコンテンツが動作していることなどを語り,今後に期待しつつUnity 5の完成を祝していた。
さて,最後に登壇したのは,2014年10月にCEO職をRiccitiello氏に譲り,アーキテクトエンジニアとして現場に復帰したUnity創設者のDavid Helgason(デイビッド・ヘルガソン)氏だ。Helgason氏は詰めかけた来場者に向けて,大きな飛躍を実現したバージョンアップについて,やや興奮気味に語ったうえで,Unity 5で制作されているゲームタイトルのハイライトシーンをまとめたムービーを披露し,詰めかけたゲーム開発者にUnity 5の活用を呼びかけて講演を締めくくった。
Unity Technologies 日本語公式Webサイト
GDC公式Webサイト
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