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[GDC 2015]新世代ゲームエンジン「Unity 5」の実力が見えた。Unityのスペシャルイベント詳報
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印刷2015/03/05 16:50

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[GDC 2015]新世代ゲームエンジン「Unity 5」の実力が見えた。Unityのスペシャルイベント詳報

多くの来場者が詰めかけたUnity Special Eventの会場内
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 既報のとおり,北米時間2015年3月4日,Unity Technologiesはゲームエンジン「Unity 5」をリリースした。Game Developers Conference 2014で発表されて以来,リリースが待望されていた新世代のゲームエンジンだ。
 本稿では,4日に行われた「Unity Special Event」の詳報的に,Unity 5はどのように動作するのかを示したデモの内容を中心に,新ゲームエンジンの特徴を紹介していきたいと思う。
 ちなみに,Unity 5のリリースノート(英語)は,50ページ以上にわたるとのこと。すべての機能をここで紹介することはできないので,改良点や新機能などについて詳しく知りたい人はリリースノートを参照してもらえれば幸いだ。


物理ベースレンダリング対応など強化されたグラフィックス機能をデモで確認


John Riccitiello氏(CEO,Unity Technologies)
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 イベントの冒頭で,Unity TechnologiesのCEOであるJohn Riccitiello(ジョン・リカテロ)氏は,Unity 5の特徴は,以下の4点にあるとした。

  • 原動力となるグラフィックス機能
  • クラウド活用による効率アップ
  • 多機能かつ柔軟性の高いエディタ
  • 業界一のマルチプラットフォームサポート

Riccitiello氏が挙げたUnity 5の4大特徴
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 この中でもとくに注目すべきは,大幅に強化されたグラフィックス機能だろう。物理ベースのレンダリングを実現するシェーダシステムに一新されたため,リアルタイムレイトレーシングによる事前計算式のライトマップやイメージベースの大域照明モデル,リフレクションプローブなどを併用することで,ダイナミックライティングにかなり近い処理を実現できるようになったのだ。

 事前計算式なので,光源が動きまくるようなシーンでは,ちょっと困ったことになるかもしれないが,ともあれ,あまり考えなくても,かなりリアルな映像表現を採用したゲームが作れるのは喜ばしい。「物理ベースだからリアルになる」というほど単純な話ではないが,少なくとも破綻したシェーダが実装される問題は解消される。また,現実に存在する物質の特性がライブラリ化されていれば,それに近い質感を手軽に再現できるようになるはずだ。

Unity 5におけるグラフィックス機能の強化ポイント
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Joachim Ante氏(CTO,Unity Technologies)
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 グラフィックス機能の詳細については,Unity Technologies創業者の1人でCTOでもあるJoachim Ante(ヨアヒム・アンテ)氏が解説を担当した。
 Ante氏はまず,Unity 5のグラフィックス機能をフルに使った新作デモ「Blacksmith」のトレイラーを披露。そのうえで,そのシーンを実際にUnityエディタ上で操作したり,デモ中で使われている橋や岩場といったオブジェクトを使い,Unity 5でのシーンライティングがどのように行われるかを実演したりするという形で,説明を進めていった。

 さて,そんなBlacksmithでは,かなり複雑なオブジェクトを扱っているのだが,デモ中に光源などを動かしても陰影の生成は一瞬で行われており,タイムラグはほぼ感じられない。

上はBlacksmithのムービー,下はそのシーンと同じ場面を読み込んだエディタ画面である
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まっさらなシーンに橋と岩場を配置して,ムービーのシーンと同じようなものを作成しているところ。たくさんある岩は,1つの岩を用意して,大きさを変えたり向きを変えたりしながら使いまわしているとのこと
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平行光源の向きを変えている様子。リアルタイムで陰影が追従する
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橋の下にある面を赤くしたところ。橋の裏側などに照り返しの赤色が出ている
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Ryan Payton氏(Designer,Camouflaj)
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 続いて登壇したのは,新しいグラフィックス機能を活用したUnity 5タイトルを制作しているRyan Payton(ライアン・ペイトン)氏だ。名前に見覚えのある人もいるかもしれないが,インディーズデベロッパのCamouflajで「République」を制作したデザイナーである。
 Payton氏はステージで,そのUnity 5版となる「République Remastered」の画像を披露した。Unity 5版はすでに3話分が完成しているという。

Unity 5で制作されているRépublique Remastered
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 Unity 4で制作されたオリジナル版も,それなりに高画質の映像表現を行っていたタイトルではあったが,公開されたUnity 5版の画面からは,いかにもゲームグラフィックス然としていたオリジナル版と比べて,かなり写実性が増していることが分かる。

左がオリジナル版,右が講演で披露されたUnity 5版。
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Mike Capps氏
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 Unity 5のグラフィックス表現力については,かつてEpic Gamesの代表を務めていたことでも知られるゲーム業界の重鎮,Mike Capps(マイク・キャップス)氏も登壇。氏は,Unity 5によるレンダリング画像を,下に示したとおり,いくつも挙げながら,「物理ベースシェーダや大域照明などを簡単に使えるようになり,小規模なチームでも非常にリアルなグラフィックスを持つゲームを作ることが可能になった」と,大いに歓迎していた。

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Unity 5によるレンダリング結果。いずれも,Capps氏が解説のときに示したものだ
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 そんなCapps氏が,スピーチの最後で紹介したのが,「P.A.M.E.L.A.」というゲームのトレイラーだ。これはゲームスタジオの制作物ではなく,カナダにあるNVYVEというCGスタジオのチームが数か月で作ったものとのことだったが,会場では大きな拍手を浴びていたので,下に紹介しておきたい。



クラウドサービス「Unity Cloud Build」は正式スタート


Todd Hooper氏(Vice President of Online Service,Unity Technologies)
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 グラフィックスに続いては,Unityのネットワークサービスに関する話題が取り上げられた。
 Unity Technologiesのオンラインサービス部門担当副社長であるTodd Hooper(トッド・フーパー)氏が解説したのは,クラウドサーバーを利用したサービス「Unity Cloud Build」についての話題である

 Unity Cloud Buildとは,開発者のPC上ではなく,クラウドサーバー上でプログラムをコンパイルするというサービスである。プロジェクトの規模が大きなゲームになると,このようなサービスがありがたく思えるようになるようだ。
 4か月間行われたβテストでは,計15万プロジェクト以上がリモートビルドされ,開発者の時間を総計で4500日分節約できたという。

Unity Cloud Buildのイメージ(左)。βテストでは15万件以上のプロジェクトが同サービスを利用してビルドされたという(右)
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Unity Cloud Buildのサービスプランと価格。無料版も用意されている。「available now」なのもポイント
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 また,動画広告配信サービス「Unity Ads」では,成功事例としてHIPSTER WHALEのゲーム「Crossy Road」(iOS / Android)が紹介された。Unity Adsの成功例としてよく出されるゲームなので,iOS版が45日間で100万ドルの広告売り上げを稼いだという話は有名だが,現在までの累計では300万ドルに達しているという。

Unity Adsの成功事例としてCrossy Roadが引き合いに出された
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サウンド機能やマルチプラットフォーム対応のデモも披露


Will Goldstone氏(Content Manager,Unity Technologies)
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 続いては,Unity Technologiesでコンテンツマネージャーを務めるWill Goldstone(ウィル・ゴールドストーン)氏が登壇。氏は,Unity 5で導入された「その他のアップデート」をまとめて紹介した。とくに大きな話題としては,64bit対応となったエディタとサウンド関係が挙げられるが,ここではサウンドについて説明しよう。

 Unity 5のサウンド機能については,ミキサー機能が追加されるということくらいしかこれまでは語られていなかった。一方,Goldstone氏が語ったのは,サウンドエフェクトについての話である。
 講演で披露されたデモでは,キャラクターがあるエリア(部屋)に突入したときに,音響設定を切り替える様子が示された。部屋の広さなどに応じた音響の設計が簡単にできれば,ゲームの臨場感を手軽に増すことができそうだ。

エディタ関連のアップデート(左)では,64bit対応やPhysX 3.3対応などが挙げられている。サウンド関連の目玉がミキサー機能の導入だ(右)
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指定した空間の中に入ると,音響設定が切り替わるというデモ。ゲームでは役立つ場面が多そうだ
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Ralph Hauwert氏(Lead Developer,Unity Technologies)
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 Unity 5のマルチプラットフォーム展開については,Unity TechnologiesのLead DeveloperであるRalph Hauwert(ラルフ・ハウベルト)氏から説明された。
 現在のUnityは,21種類のプラットフォームに対応しており,ほとんどすべてのゲームプラットフォームをカバーするまでになっている。下に掲載したスライドは対応プラットフォームのアイコンを並べたものだが,アイコンを一目見ただけでは,それが何なのかよく分からないものまで交じっているほどだ。

Unityが対応してる21種類のプラットフォームをアイコンで並べたスライド。何を示すものか,すぐに思い出せないものも交じっているほど,Unityは多彩なプラットフォームに対応しているわけである
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 とくに最近Unityが対応した「WebGL」は非常に重要なプラットフォームといえる(関連記事)。
 Unityで制作したゲームをWebブラウザ上で動くように変換するには,2014年9月掲載の記事で説明した仕組みを利用するようになっている。ここでは,簡単におさらいしておこう。

 まず,.NET Frameworkの互換環境である「Mono」の中間言語「IL」をC++のコードに変換する技術「IL2CPP」を使って,Unityで実行したゲームをC++コードに変換しておく。その変換されたコードを,今度はMozillaが提供している変換技術「emscripten」で,JavaScriptのサブセットであるasm.jsに変換する。こうすれば,WebブラウザのJavaScriptエンジンを使って,ブラウザゲームとして動作するゲームを制作できるというわけだ。

 変換の核となるIL2CPPでは,JavaScript用に変換するだけではなく,そのままC++でコンパイルして,ネイティブアプリケーションを作るというテクニックが使える。
 セッションでは「変換したアプリケーションの性能」に関するデモが行われたのだが,iPhone 6上で実行されたレイトレーシングプログラムの場合,基になったMonoベースのものに比べ,IL2CPPを利用して作ったものは,約7倍も高速な動作が可能になるという結果が得られたそうだ。

左の画像をレイトレーシングでレンダリングするプログラムで比較した場合,中間言語で書かれたオリジナルよりも,IL2CPPで変換したプログラムのほうが圧倒的に速いという(右)
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 また,群集シミュレーション系の「Agents」というデモでは,1024体で比較したときに,IL2CPPを使うか使わないかで3倍のフレームレート差が生じるとのことだった。Unityでは今後,IL2CPPのサポートを据え置き型ゲーム機にも広げていく予定であるそうだ。

群集シミュレーション系のAgentsというプログラムでは,変換前と変換後でフレームレートが3倍も違うという
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最後にはOculus VR CEOのパルマー・ラッキー氏も登壇


John Earner氏(CEO,Space Ape Games)
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 Unity 5で制作されているゲームも披露された。
 Space Ape GamesのCEOであるJohn Earner(ジョン・アーナー)氏は,Unity 5で制作したモバイル端末向けゲームの事例を説明している。同社は以前からUnityを使ってモバイル端末向けゲームを制作しており,6か月間でゲームを制作し,2か月間テストするといった短いサイクルでゲームをリリース。これまでに1200万インストールを達成しているのだそうだ。

 そのSpace Ape Gamesが,Unity 5を使って作り上げたのが「Rival Kingdoms」というRTSである。Earner氏は,「Unity 5のおかげで美しい画面のゲームを制作できた」と,Unity Technologiesへの感謝の言葉を贈っていた。その出来映えは,下に掲載したムービーを参照してほしい。



 Oculus VRのCEOである,Palmer Lackey(パルマー・ラッキー)氏も登壇し,Unity 5への祝辞と期待を述べた。氏によれば,Unity 5のPersonal版でもVRゲームの開発がすぐにできることや,同社の仮想現実対応HMD「Rift」でも,Unity 5で制作されたコンテンツが動作していることなどを語り,今後に期待しつつUnity 5の完成を祝していた。

 さて,最後に登壇したのは,2014年10月にCEO職をRiccitiello氏に譲り,アーキテクトエンジニアとして現場に復帰したUnity創設者のDavid Helgason(デイビッド・ヘルガソン)氏だ。Helgason氏は詰めかけた来場者に向けて,大きな飛躍を実現したバージョンアップについて,やや興奮気味に語ったうえで,Unity 5で制作されているゲームタイトルのハイライトシーンをまとめたムービーを披露し,詰めかけたゲーム開発者にUnity 5の活用を呼びかけて講演を締めくくった。

Palmer Lackey氏(CEO,Oculus VR,左)とDavid Helgason氏(Co-founder,Unity Technologies,右)
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Unity Technologies 日本語公式Webサイト

GDC公式Webサイト

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