レビュー
農業の喜びが感じられる,異色の操縦系シミュレータ
Farming Simulator
ラッセルが2013年9月5日にPlayStation 3/Xbox 360版の発売を予定している「Farming Simulator」は「農業」をテーマにしたユニークなシミュレーションゲームだ。プレイヤーは大型農業機械(農機)を操作して土を耕し,種をまき,実りを待って刈り入れる。これまで4Gamerには何度か登場しているタイトルなので,名前は知っているという人も多いはずだが,ドイツを中心に人気の高いこのタイトルが,ついにコンシューマ機向けの日本語版となって登場するわけだ。
そんなこと誰が想像しただろうか,という感じだが,ともあれここでは,そんなコンシューマ機版「Farming Simulator」の内容を簡単に紹介すると共に,デベロッパであるGIANTS SoftwareのCEO,Christian Ammann氏にメールインタビューした制作の裏側についてもお伝えしよう。
「Farming Simulator」公式サイト
Farming Simulatorは,スイスに本拠を置くゲームメーカー,GIANTS Softwareが2008年に第1作をリリースして以来続いてきたシリーズ作品だ。農牧や畜業をテーマにした作品というと,日本の「牧場物語」シリーズや,ZyngaがFacebookで展開する「FarmVille」などをイメージする人も多いと思うが,本作はアメリカ中西部の農業風景を忠実に再現し,とりわけ大型農業機械の操縦にこだわった一人称視点の操縦系シミュレータになっている点が大きな特徴だ。半面,マネジメント部分は甘めに作られており,プレイヤーはシビアな資金のやりくりを強いられることなく,畑いじりや酪農に精を出せる。もちろん,収穫に熱中していると円盤が飛んできたり,敵の軍団が攻め込んできたり……などということは絶対に起きない。
経営シムではなくシミュレータに徹したことが,一見すると一発ネタに思えるこのゲームがファンの支持を集め,第4作の2013年バージョンまで続く息の長いシリーズになった最大の理由かもしれない。
基本的な操作方法は,農機の運転と歩き回っているときでは微妙に異なるが,いずれもシンプルなのですぐに慣れるはずだ。トラクターやコンバインなど,用途の異なる農機の操縦については,可能なアクションが画面で確認できるので,操作に戸惑うことはない。クラクションを鳴らしたり,ライトや回転灯のオン/オフも可能と,当然ながら実車をベースにした農機シミュレータの部分も細かく作り込まれている。
筆者はこの記事のため,とあるPCオンラインゲームの戦車から農機にしばらく転向したのだが,大砲を撃てないのが残念なこと以外,初めて目にする農機でもスムーズに運転できた。というか,このゲームをプレイしてからというもの,戦車ゲームのほうの戦績が(とくに重戦車を使ったとき)良くなったような気さえするほどだ。戦車兵の人は,ぜひ話半分で試してほしい。
プレイするうえで気をつける点として,基本的に農機はゆっくり走らせなければいけないことを覚えておこう。スピードを出すと,連結している鋤などが外れ,刈り入れなどの作業がきちんと行われない可能性があるからだ。もちろん,速度超過に対する警告は出るが,この表示が出たからといって急に速度を落とせるわけではないので,常にスピードを気にかけておくに越したことはない。
マップは,アメリカ中西部の小都市をそれっぽく再現しているのだが,地形の高低差が激しく道に迷いやすくなっている。また,マップのどこに何があるかを把握するのに最初は少し時間がかかるだろう。家屋や木を破壊できないのは当然だが,そのため農機が障害物にひっかかって動けなくなってしまう(つまり,ハマる)ということもマレにだが起こりうる。以上の点に注意していれば,土に生きる牧歌的な暮らしを十分に楽しめるはずだ。
種まきから刈り入れまで。農業の喜びを知ろう
さて,このへんで実際にゲームの序盤をプレイしてみよう。さあ,収穫だ。
ゲームのメインとなるキャリアモードでは,スタート時にプレイヤーに与えられている畑の小麦は,刈り入れを待つばかりの状態だ。さっそく赤い色をした収穫用のコンバインを使って刈り取っていこう。ちなみに,農機の積載量にもキャパシティがあり,一杯になるとどこかに移さなければならないため,輸送用のトレーラーをあらかじめ畑の傍に待機させておくといいだろう。農機の操縦時には運転者視点と俯瞰視点の2種類の視点が選択できる。
運転者視点では,風になびく小麦の穂や刈り取りの際に巻き上がる籾殻(もみがら),そして操縦席の状態がより詳細に表示され,乗り物シミュレータとして楽しむのに適している。一方,刈り残した部分などの確認には俯瞰視点のほうが向いているので,適宜視点を切り替えながら収穫を行っていくといい。
トラックに移し終わった小麦は,農場に設置されているサイロに保管しておいてもいいが,資金が足りない序盤は街の向こうにあるファームセンターに持っていって,さっさと売ってしまってもかまわない。
小麦の刈り入れが終わったら,次にプレイヤー待ち受けているのは畑を再び耕すことだ。これは,トラクターの後部にプラウかカルティベーターを装備して行うわけだが,後者の方が一度に耕せる面積も広いので,慣れないうちはこちらをオススメしたい。また,これらの装備を取り付ける前にトラクター前部にカウンターウェイトを装備することも忘れないようにしよう。
種まきは,土地を耕したあとで行うことになる。トラクターの装備を播種機に切り替えて,農場に設置されている小麦の種を補充して畑に向かおう。ゲームスタート時に与えられている農機では一回あたりの播種面積も限られているが,ゲームが進んでより優れた装備にすることで,効率的に作業が行えるようになる。この作業が終われば,あとは小麦の生育を待つのみ。この間に肥料を与えて収穫量を増やすこともできるが,序盤では必ずしも必要な手順ではない。完全に成熟し終わるまでにはゲーム内時間で約1日かかるので,ゲームスピードを上げるなり,周囲を散策するなりして時間をつぶそう。
このように,刈り入れ→再耕→播種(及び肥料散布)→刈り入れのサイクルがこのゲームの基本だ。一つの畑で小麦を繰り返し収穫するだけでは資金はなかなか増えていかないので,随時発生するお使いミッションをこなして小銭を稼ぐことも忘れないように。ここでは詳しく述べなかったが,さらに牛や羊を飼育して牛乳やウールを生産したり,蜂小屋でハチミツを集めたり,温室で野菜を作ったりすることも可能になっており,心ゆくまで農家の暮らしを堪能できるというわけだ。ああ,今日もよく働いた。
というわけで,最後に,Christian Ammann氏へのインタビューを掲載して本稿を締めくくりたい。
温室では野菜の栽培が可能 |
ニワトリだって飼えちゃうのだ |
GIANTS SoftwareのCEOが語る
Farming Simulatorの魅力とは
4Gamer:
まず最初に,Farming Simulator開発の経緯についてお聞かせください。
Christian Ammann氏(以下,Ammann氏):
Farming Simulatorは2007年にPC向けに開発がスタートしました。2008年にリリースした第1作はドイツではよく売れて,いくつものゲーム賞を獲得したんです。それから私達は2009年,2011年,2013年と2年ごとに新作を出してきましたが,同時に,このゲームが対応するプラットフォームや言語も増えていきました。Farming Simulatorは現在,PC,Mac,iOS,Android,ニンテンドー3DS,PS Vita,Playstation 3,Xbox360など数多くのプラットフォームに対応しており,世界中にプレイヤーがいるんですよ。
4Gamer:
ところで,そもそもどうしてこのような,言ってみればニッチなゲームを作ろうと思ったんですか。
Ammann氏:
このゲームのアイデアは,GIANTS Softwareの共同設立者であるStefan Geigerの友人が持ってきたものです。最初は私達もこのアイデアに対して懐疑的だったんですが,最終的に彼は,Farming Simulatorの制作をすべきだと私達を納得させたんです。
4Gamer:
その判断の正しさは,このゲームがプレイヤーによく支持されていることからも分かりますね。
Ammann氏:
はい,Farming Simulatorのファンコミュニティは非常に活発で,いくつものMODが有志によって作られています。
4Gamer:
ところで,このゲームの魅力は,どこにあると思われますか。
Ammann氏:
Farming Simulatorにはオリジナリティがあり,非常にユニークな作品です。実はプレイヤーの多くは非常に若く,7歳から15歳が中心なんです。
4Gamer:
それは興味深いですね。確かに農業機械の運転やこのゲームの風景は日常的とはいえないかもしれませんが,ファンタジー世界ほど非日常的ではなく,若い人達,とくにヨーロッパの子供達にとっては親しみやすいのかもしれません。
Ammann氏:
もちろん普通のシミュレーションゲームファンも,Farming Simulatorを楽しんでいるんですけどね。
4Gamer:
本作の開発では,そうした教育的な面についても意識したんですか。
Ammann氏:
いえ。教育的な要素はこのゲームの面白い副次効果ではあるんですが,それを意識したり強調したりしようとは思いません。ゲームは楽しむためにあるものですから。
4Gamer:
そのほか,本作の開発にあたって工夫した点はありますか。
Ammann氏:
この手の操縦系シミュレーションゲームには見られない,いくつかのアイデアを盛り込んだことでしょうね。例えば,プレイヤーは乗り物を降りて,地域を歩いて回れるというオープンワールドのシステムを採用しています。また,操作もシンプルであるように気をつけています。これは,よりカジュアルなゲームを好むプレイヤーを意識してのことです。
4Gamer:
確かに,運転は直感でできる部分が大きいですね。同時に,うまく操ろうとすると結構難しい部分もあるように感じました。このあたりのバランスはどのようにして決められているんでしょうか。
Ammann氏:
先ほど,プレイヤーの年齢層の話をしましたが,私達は自分達のゲームが,なるべく幅広い世代の人々が,それぞれのスキルに応じた楽しみ方ができるものになるよう心がけています。どういうことかといえば,Farming Simulatorには,より深くのめり込みたい人のために,肥料や牧草などを使って効率的な農場経営ができるといった「隠された」仕組みがいくつもあるんですが,そういったコアゲーマー向けの要素なしでも十分楽しめるように作られているんです。
4Gamer:
なるほど。ところで,メーカーが実際に製造/販売している多種多彩な農機を運転できるのは本作の大きなポイントだと思うんですが,農業機械業界の反応はいかがですか。
Ammann氏:
非常に好意的です。メーカーからは,乗り物に関する3Dデータや駆動音の提供など,とてもたくさんのサポートを受けています。
4Gamer:
そういったサポートもまた,このゲームをリアルな農業シミュレータにしているんですね。最後になりますが,日本のプレイヤーに向けてコメントをお願いします。
Ammann氏:
日本の皆さんが,欧米のプレイヤーと同様にFarming Simulatorを楽しんでもらえるように願っています。これはPC版の話になってしまいますが,有志によって作られたMODを試してみることも忘れないでください。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。
「Farming Simulator」公式サイト
※掲載したスクリーンショットはPlayStation 3版です- 関連タイトル:
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(C)2013 GIANTS Software GmbH. Farming Simulator, Giants Software and its logos are trademarks or registered trademarks of Giants Software. Focus,Focus Home Interactive and its logos are trademarks or registered trademarks of Focus Home Interactive. All manufacturers, agricultural machinery, agriculturalequipment, names, brands and associated imagery featured in this game in some cases include trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners. All rights reserved. The agricultural machines and equipment in this game may be different from the actual machines in shapes, colours and performance.
(C)2013 GIANTS Software GmbH. Farming Simulator, Giants Software and its logos are trademarks or registered trademarks of Giants Software. Focus,Focus Home Interactive and its logos are trademarks or registered trademarks of Focus Home Interactive. All manufacturers, agricultural machinery, agriculturalequipment, names, brands and associated imagery featured in this game in some cases include trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners. All rights reserved. The agricultural machines and equipment in this game may be different from the actual machines in shapes, colours and performance.