インタビュー
「グランツーリスモ6」の品質には絶対の自信あり。SCEEのCEO兼社長 Jim Ryan氏が語る「グランツーリスモ」15年間の歴史
その後,Sony Computer Entertainment Europe(SCEE)のCEO兼社長・Jim Ryan(ジム・ライアン)氏への合同インタビューが行われたので,本稿ではその模様をお届けしよう。
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――モータースポーツはお好きですか?
Jim Ryan氏:
グランツーリスモは好きですが,現実世界では安全運転主義者ですよ。みんなから「遅い」と言われがちです(笑)。
――15年前,初代グランツーリスモを見たときの印象を教えてください。
Jim Ryan氏:
15年前,東京に行ったときのことです。当時,ヨーロッパでも高い評価を受けていたPlayStation用のレーシングゲーム「モータートゥーン・グランプリ」を制作した山内一典氏の新作を見てくれ,と言われたんです。今だから言いますが……当時は正直,ガッカリしました(笑)。
なぜかというと,グランツーリスモは技術的にもすごいし,グラフィックスはリアルなんだけど,ゲームとしての楽しさが足りないと思ってしまったんです。だからそのときは,「まあまあじゃないかな」なんて答えましたよ。
そうです。あのときの私の感想は,100%間違いでした。あのとき,山内氏にモーター・トゥーングランプリの続編を作るよう説得しないで良かった。モータートゥーン・グランプリは良いゲームですが,シリーズすべてでヒットを記録できたかどうか……。
――15年間のグランツーリスモの歴史の中で,最も記憶に残っていることはなんですか?
Jim Ryan氏:
PlayStation 2の「グランツーリスモ3」(GT3)ですね。PS2は今でこそ,累計1億7000万台も販売されていますが,2000年当時のヨーロッパでは為替レートの影響もあって,PS2はとても高価なハードウェアとして登場しました。そのため,我々はPS2をどうやって売ればいいのか,相当頭を悩ませたものですよ。そこに登場したのがGT3です。
GT3の人気もあって,それ以降はPS2の売れ行きが軌道に乗りました。GT3はヨーロッパにとって,PS2の救世主と言ってもいいでしょう。
――グランツーリスモがゲーム機本体のセールスに対し,大きな影響力を持っているという認識を持っているのであれば,PlayStation 4のローンチタイトルとして開発すべきだったのではないでしょうか。
Jim Ryan氏:
PS4本体と同時に発売されるローンタイトルのラインナップは魅力的ですし,自信もあります。レーシングゲームに関しては,「Driveclub」のリリースを予定しています。
グランツーリスモシリーズは,同世代のプラットフォームに2作出ていることを思いだしてください。GT1とGT2がPS,GT3とGT4がPS2,そしてGT5はPS3向けに提供されています。GT6が,GT5から飛躍的な進化を遂げることは,過去の実績から見ても想像に難くないはずです。PS3にはまだまだ高いポテンシャルがありますし,全世界で7000万台を販売しています。PS4は今年,販売台数ゼロからのスタートですからね。
――PS4が発表されたときに「Driveclub」だけを発表し,GT6を発表しなかったのはどうしてですか?
Jim Ryan氏:
PS4には,先進的なソーシャルネットワーキングサービス(SNS)機能が提供されますが,それをアピールするために,「Driveclub」のほうが適していたからです。
――グランツーリスモシリーズは,日本のゲームスタジオが開発したタイトルです。これがヨーロッパ市場に受け入れられた理由について,どう分析されていますか?
Jim Ryan氏:
我々SCEEと日本の各開発スタジオは,密な関係性を築き上げています。例えばGT6に関しては,ヨーロッパ市場を重視して,ヨーロッパのサーキットコースを多く入れてほしいとリクエストし,これが受け入れられています。今回のイベント会場であるシルバーストーンサーキットは,その一例ですね。GT6にはこのほかにも,ヨーロッパの名門コースが多数登場します。
それと,ゲームの市場の特性そのものが,ヨーロッパと日本とで似ている部分があったというのも,グランツーリスモがヒットした要因ではないかと私は考えています。
北米ではアクションアドベンチャー,一人称シューティングなどのコアゲームが人気ですが,ヨーロッパでは家族みんなで楽しめるようなゲームが好まれる傾向があります。性別,年齢を問わず楽しめるゲームがヒットしやすいわけですね。グランツーリスモシリーズは,その点でうまく合致したと言えます。
――同ジャンルの競合ゲームと比較して,グランツーリスモシリーズがとくに優れているのはどんな要素でしょうか。
品質の高さでしょう。私個人の意見として捉えてほしいのですが,グラフィックスはもちろん,車両物理シミュレーションの品質においても,競合タイトルとは比較になりません。登場する車やサーキットの数においても,業界随一と言っていいと思います。
――高いブランド力のあるグランツーリスモシリーズですが,昔と比べて自動車メーカーやサーキットコースとの使用権(ライセンス)交渉は楽になりましたか?
Jim Ryan氏:
そうですね。最初は門前払いをくらうこともありましたが,今やグランツーリスモシリーズにはブランド力がありますから,交渉はしやすくなりました。
――グランツーリスモが15年間にわたって成功し続けてこられた一番の要因は,何だったとお考えですか?
Jim Ryan氏:
繰り返しになりますが,品質です。山内さんは,グランツーリスモを完璧なものにするために,取り憑かれたようにこだわり抜きます。その熱意があの品質を生み,成功をもたらしたと考えています。
――ありがとうございました。
SCE側としても,信頼と実績のブランドであるグランツーリスモシリーズの最新作を,PS4のローンチソフトにしたかったはずだ。しかし,販売本数実績こそがすべてであるゲーム開発スタジオ側にとっては,普及台数7000万台のPS3へ提供したいという思惑がある。
とはいえ,レーシングゲームが人気ジャンルなのは間違いなく,SCEとしては,同ジャンルの一つの目玉を用意する必要があった。そして大抜擢されたのが「Driveclub」だったというわけだ。
なお,「Driveclub」を開発しているイギリスのEvolution Studiosは,レーシングゲーム専門の開発スタジオで,立場的にはポリフォニー・デジタルと似ている。日本のゲーマーには,「MotorStorm」シリーズの開発スタジオと言えばイメージしやすいかもしれない。
日本でレーシングゲーム専門の開発スタジオというと,ポリフォニー・デジタルの印象だけが強いが,モータリゼーションの本場であるイギリスには,そうしたスタジオがたくさん存在する。大手だけを挙げても,Evolution Studiosのほかに,「GRID」「Colin McRae」シリーズのCodemasters,「Burnout」「Need for Speed」シリーズのCriterion Games,「Ferrari Challenge」「NASCAR」シリーズのEutechnyx,「Forza」シリーズのPlayground Games(Turn 10 Studiosと共同開発)などがある。
とある業界関係者によれば,こうしたイギリスのレーシングゲームスタジオは,各ゲームプラットフォームの「グランツーリスモ」的立ち位置の獲得を,虎視眈々と狙っており,グランツーリスモシリーズも油断できない状況にあると述べていた。今回,PS4発表会で電撃発表された「Driveclub」は,まさにそのチャンスを手に入れたスタジオである。
なお筆者は,今回のイベントに参加していたGTアカデミーのメンバーや関係者にも話を聞いてみたのだが,GT6がPS4の発売同時タイトルにならないことを悲観する声はほぼなく,むしろPS3向けに提供されることを歓迎する声のほうが多かったのが印象的だった。
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