レビュー
F1公式レースゲームのシリーズ最新作
F1 2013
ちなみにベッテルはこれで今季10勝め。今後は,2004年にミハエル・シューマッハが達成した年間最多優勝(13勝)の記録に期待がかかる。
冒頭から話が逸れまくって恐縮だが,コードマスターズから10月10日に発売された「F1 2013」(PS3/Xbox 360)は,そんな熱く盛り上がるモータースポーツの最高峰「FIA フォーミュラ1世界選手権」を再現したレースゲームのシリーズ最新作だ。F1ファンやレースファンを自称する読者ならば,すでにテール トゥ ノーズの高速バトルを楽しんでいることだろう。もし,まだ検討段階の域を出ていなければ,以前に掲載した「こちら」の記事を参考にしてほしい。
さて,本作の発売から約3週間が経過しており,「なぜ,このタイミングでレビューを掲載するのか」と疑問に思われる読者がいるかもしれない。
実は,前述の記事では原稿執筆が発売前だったため,プレイできなかったコンテンツがあるのだ。本稿では,前回お伝えできなかった2つのコンテンツ,世界中のプレイヤーとレースバトルが楽しめる「マルチプレイヤー」,さらに1990年代に活躍したドライバーとF1マシンを収録したダウンロードコンテンツ「90年代クラシックパック」に焦点を絞って紹介してみたい。
「F1 2013」公式サイト
最大16人でデッドヒートを繰り広げる
「マルチプレイヤー」
「マルチプレイヤー」には,世界中のプレイヤーと最大16人でのレースを楽しめる「オンライン」,上下分割画面で手軽に2人対戦ができる「画面分割」,インターネットではなくローカルネットワークで対戦可能な「LAN」というの3つのモードが用意されている。
もっとも多くの人がプレイしているのが「オンライン」だろう。自動的にセッションを探してくれる「クイックマッチ」では,プレイヤー人口が比較的多く,常時3〜6人程度でのレースを楽しむことができた。
ちなみにレースのタイプは,ドライの天候で3周のレースを戦う「スプリント」,天候が変化する状況下で実際の1/4の周回数(最低1回のピットストップ含む)で争う「耐久レース」,条件は耐久レースとほぼ同じだが15分間の予選と7周の決勝レースを戦う「グランプリ」の3種類がある。プレイ時間やプレイスタイルに合わせて,レースのタイプを選択しよう。
自分がホストになってコースや周回数,レース日程,F1マシンのレギュレーション,天候などを設定する「カスタムレース」にすると,クイックマッチよりもマッチングしやすい印象だ。カスタムレースでは,すでに立ち上がっているセッションに参加したり,自分でセッションを立ち上げたりすることが可能で,オンラインレースの対戦相手を探すのに苦労することはないだろう。
また,2人でチームを組んでシーズンを戦う「CO-OPチャンピオンシップ」では,チームメイトと競ったり,ときには協力したりといった,F1レースならではの“CO-OP”が体験できるのだ。
さて,そのオンラインレースだが,やはりF1マシンなので軽い接触でも挙動が乱れてコースアウトやスピンにつながる(場合によっては走行不能になることもある)ため,対人戦となるとかなり神経を使う。なかには,わざとぶつけてくるようなプレイヤーもいるが,このあたりはオンラインプレイには付き物なので,「運が悪かった」と思って早めに忘れることも必要だ。
とはいえ,サイド バイ サイドの高速バトルを望むプレイヤーが揃ったときは,シングルプレイでは決して味わえないアドレナリン全開のF1レースが楽しめる。アシスト機能が利用可能なレースも多く,初心者から熟練者まで入り乱れて戦えるのも嬉しいポイントだ。
ちなみにプレイ視点にもよるが,F1マシンは自分の周囲の状況が把握しにくい。シングルプレイと同様,画面上にはライバルの位置が把握できるように矢印が表示されるので,これを上手に活用することで無用な接触が減らせるだろう。また,周囲にライバルがいる状況でコーナーのインに飛び込む際には,ほんの一瞬でいいのでリアビューに切り換えると,ライバルとの接触を回避したり,ラインを塞いだりすることが可能だ。こうしたテクニックも駆使して,白熱のF1バトルを堪能してほしい。
往年のF1ファンなら見逃せない
「90年代クラシックパック」を紹介
本作には,1980年代に活躍したF1マシンや偉大なドライバーが登場する「F1 CLASSICS」モードが実装されているが,さらに2種類のダウンロードコンテンツが配信中だ(関連記事)。
今回は,そのうちの「90年代クラシックパック」について詳しく紹介しよう。
■「90年代クラシックパック」に収録されているF1マシン/ドライバー
F1マシン | オリジナルドライバー | チームレジェンド |
---|---|---|
ウィリアムズ FW14B(1992年) | ナイジェル・マンセル | デビッド・クルサード |
ウィリアムズ FW18(1996年) | デイモン・ヒル | ジャック・ビルヌーブ |
ウィリアムズ FW21(1999年) | ラルフ・シューマッハ | アラン・プロスト |
フェラーリ F92A(1992年) | ジャン・アレジ | イワン・カペリ |
フェラーリ F310(1996年) | ミハエル・シューマッハ | ゲルハルト・ベルガー |
フェラーリ F399(1999年) | エディ・アーバイン | ジョディ・シェクター |
「90年代クラシックパック」には,ウィリアムズとフェラーリのF1マシンとドライバーがそれぞれ3バージョン(1992年/1996年/1999年)収録されている。これらのほかにも「F1 CLASSICS」のサブモード「シナリオ」に,両チームの激闘を再現した新シナリオ3本が追加され,この2チームを軸にしたレースが楽しめる。
収録ドライバーは,当時のチームに所属していた「オリジナルドライバー」だけでなく,チームに縁のある「チームレジェンド」も登場。いずれもF1界で多大な功績を残したドライバーばかりだが,往年のF1ファンでも知らない人が多いのはジョディ・シェクターだろうか。
南アフリカ出身のジョディ・シェクターは,1979年にフェラーリへ移籍すると初のワールドチャンピオンを獲得。さらにチームメイトのジル・ビルヌーブ(ジャック・ビルヌーブの父)と共にフェラーリにコンストラクターズタイトルをもたらした名ドライバーなのだ。
フェラーリ F310(1996年) |
マシンについても触れよう。ウィリアムズ FW14B(1992年)と言えば,赤い文字のカーナンバー「5」がトレードマークで“レッドファイブ”と呼ばれたナイジェル・マンセルとの組み合わせが有名だ。
マシンの姿勢や車高を最適に維持するアクティブサスペンションにより,常に空力特性を最大限に発揮するように設計され,ナイジェル・マンセルとリカルド・パトレーゼのコンビが16戦10勝という大記録を打ち立てている。実際,本作でもFW14Bを操縦すると,同年代のほかのマシンと比べて扱いやすい印象があり,コーナーの立ち上がりにおける安定性などは現代のマシンと比べても遜色なく感じられるほどである。
ウィリアムズ FW14B(1992年) |
一方,フェラーリは同じ年にフェラーリ F92A(1992年)を投入し,ジャン・アレジとイワン・カペリの体制でシーズンを戦った。シーズン後半には改良型のF92ATが投入されているが,結局この年は1勝もできず(最高位は3位),リタイヤばかりとなってしまった。
シャシーを二重にしたダブルデッキを採用したF92Aは,サイドポンツーンのインテークを左右に張り出させ,ダブルデッキ内に空気を通過させてディフューザー効果(整流効果)を高めようと試みたマシンだ。しかし,ラジエーターなどの補器類の搭載位置が高くなり,重心が上がったため,狙いとは裏腹に挙動がナーバスで操縦しにくくなってしまった。
ゲームでは,このあたりが実際にどの程度まで再現されているのかを確かめるのも面白いだろう。また,独特な形状のサイドポンツーンも再現されているので,リプレイ映像でじっくり確認してほしい。
フェラーリ F92A(1992年) |
ナイジェル・マンセルとFW14Bのパッケージと同じように,“ウィリアムズ最強伝説”を築いたのがウィリアムズ FW18(1996年)だ。この年のドライバーはデイモン・ヒルと,前年にインディカーのチャンピオンに輝いたジャック・ビルヌーブだったが,FW18の完成度は素晴らしく16戦12勝(デイモン・ヒルが8勝,ジャック・ビルヌーブが4勝)という記録を打ち立てている。
チームメイト同士で争われた個人タイトルは,最終戦でデイモン・ヒルに軍配が上がったが,F1デビューイヤーにして2位に輝いたジャック・ビルヌーブの活躍が強烈な印象を残した。
このようにFW14Bに匹敵する完成度を誇るFW18も,操縦していて非常に楽しいマシンだ。F1マシンの進化の過程を追体験できるのも,本作の魅力といえるだろう。
ウィリアムズ FW18(1996年) |
最後は,フェラーリにとって波乱の年になった1999年シーズンに投入されたフェラーリ F399(1999年)を紹介したい。グッドイヤータイヤからブリヂストンタイヤに変更したことで,その対応に苦戦したものの,信頼性の高さを武器に競争力の高いマシンに仕上がっていた。
ドライバーはミハエル・シューマッハとエディ・アーバインの体制でスタートしたが,第8戦イギリスGPでミハエル・シューマッハが右足骨折により戦線離脱。その後はエディ・アーバインがエースとなり,代役としてミカ・サロが参戦することになった。
エディ・アーバインとミカ・ハッキネン(マクラーレン)によるチャンピオンシップ争いは終盤までもつれ,第15戦で復帰したミハエル・シューマッハの全面サポートを受けたものの,エディ・アーバインはわずかに及ばず2位でフィニッシュ。しかし,F399の“壊れない”という信頼性は,フェラーリにコンストラクターズタイトルをもたらしている。
ピタッとコーナーに貼り付くように走るウィリアムズとは,挙動がやや異なる印象のフェラーリのマシンだが,ピーキーさをコントロールしながら走る楽しさは独特のものがある。年代の異なる3バージョンのマシンを乗り比べて実感してほしい。
フェラーリ F399(1999年) |
また,コードマスターズが運営するオンラインコミュニティ「Codemasters RaceNet」に登録すると,追加マシンの「1976 Ferrari 312 T2」が入手できる。
非常に特徴的なデザインをしているこのマシンは1976年に投入され,ニキ・ラウダにワールドチャンピオンを1回(1977年),フェラーリにはコンストラクターズタイトルを2回(1976年,1977年)もたらしている。そんな伝説のF1マシンが登場するのも本作の大きな魅力だろう。
なお,PS3版では発売日以降,不具合により「Codemasters RaceNet」を利用できなかったが,現在は対策パッチがリリースされている。
1976 Ferrari 312 T2 |
F1ファンを自称する筆者としては,本作の魅力はなんと言っても,現代だけでなく,1980年代や1990年代のF1マシンまで登場することにある。現代のF1マシンについて「猿でも乗れる」と皮肉った往年のドライバーもいたが,それが本当なのかどうかを確認してみるのも面白いだろう。
実際,筆者はひたすら「F1 CLASSICS」ばかりプレイしている。ドライバーの力量がより問われる(らしい)昔のF1マシンは操縦しがいがあって楽しいので,当時を思い出しながらプレイしてみてほしい。
個人的には,今後もほかの年代のコンテンツ配信を楽しみにしており,さらなるコードマスターズの頑張りに期待したいところだ。
最後に,「90年代クラシックパック」で「シナリオ」モードをプレイしたムービーを掲載する。スクリーンショットだけではなく,実際に伝説のF1マシンが疾走する勇姿をぜひ確認してもらいたい。
「F1 2013」公式サイト
キーワード
(C)2013 The Codemasters Software Company Limited ("Codemasters"). All rights reserved. "Codemasters"(R), "Ego"(R) and the Codemasters logo are registered trademarks owned by Codemasters. "Codemasters Racing"(TM) and "RaceNet"(TM) are trademarks of Codemasters. An official product of the FIA FORMULA ONE WORLD CHAMPIONSHIP.
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