インタビュー
本日稼働「アンダーナイトインヴァース エクセレイト」。新キャラを迎え,大きく生まれ変わったプレイフィールについて,開発元・フランスパンに聞いてみた
本作のデベロッパ,フランスパンへのインタビューを行ったので,これをお届けしよう。同席いただいたのは,前作の稼働時にも話をうかがったフランスパン代表・なりたのぶや氏,そして本作のバトルプランナー・芹沢鴨音氏のお二人だ。
1年を経て行われるメジャーバージョンアップでは,どのような新要素が登場し,何を目指しているのか。また二次創作の同人格闘ゲームを出発点に,アーケードに殴り込みをかけ,格闘ゲームの独立系デベロッパの先駆けとして活躍するフランスパンが,今何を考えているのか。じっくりと話を聞いてみた。
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フランスパン代表・なりたのぶや氏 |
バトルプランナー・芹沢鴨音氏 |
「アンダーナイトインヴァース エクセレイト」公式サイト
稼働から1年を経て動き出す「エクセレイト」
4Gamer:
「アンダーナイト インヴァース 」初のメジャーアップデート「アンダーナイト インヴァース エクセレイト」(以下,エクセレイト)が2013年9月5日に稼働開始となります。まずサブタイトルの「エクセレイト」(Exe:Late)には,どういう意味が込められているのでしょうか。
なりたのぶや氏(以下,なりた氏):
実行ファイルの拡張子でお馴染みの“exe(execute)”と,遅いとか夜更けを意味する“Late”を組み合わせた言葉ですね。映画でのレイトショーの意味です。“さらなる深い夜が始まる”というようなニュアンスを表現したくて,僕が必死に考えました。
4Gamer:
なるほど。ではストーリー的にも後日譚的な位置づけなんですか?
基本的に前作と同じ時間軸での話なので,とくにストーリーが変わったり進んだりということではないです。ただ,新キャラクターが追加されているので,その部分では新しい要素がありますね。
4Gamer:
前作でもちらりと登場してたケイアスが,今回プレイアブルキャラクターになると聞いています。彼はいったいどんなキャラクターなんでしょうか。
なりた氏:
“アムネジア”と呼ばれる集団に所属しているキャラクターで,いわゆる悪役のキャラクターです。ゴルドーとともに行動しているのですが,その二人の掛け合いが好評ということもあって,今回晴れてプレイアブルキャラクターとなりました。
芹沢鴨音氏(以下,鴨音氏):
格闘ゲーム的には,本人と共に,僕(しもべ)である凶悪な獣――トカゲのアジ・ダハーカの2体を同時に操って戦うという,いわゆるスタンドタイプのキャラクターになっています。格闘ゲームでは珍しくないコンセプトですが,既存のものとは違う,新しい要素を盛り込んであります。
4Gamer:
新しい要素というと?
鴨音氏:
本体であるケイアスの攻撃をキャンセルして,アジ・ダハーカの攻撃へつなぐことで挟撃を仕掛ける,というのがこのタイプの定番ですが,ケイアスはアジ・ダハーカの攻撃をキャンセルして本体の攻撃につなぐこともできるんです。お互いの攻撃をキャンセルして技をつなげていくことで,今までにないスピーディーな連係やコンボが組み立てられます。
4Gamer:
おお,それは……本当に大丈夫なんですか?(笑)
鴨音氏:
もちろん,ちゃんとバランスは調整していますのでご安心を(笑)。弱点も用意されていて,アジ・ダハーカが行動中にダメージを受けると,アジ・ダハーカ自身が消失するうえ,本体にもダメージが入ってしまうんです。なので,その点は注意しながら操作する必要があります。
4Gamer:
かなりテクニカルなキャラクターになりそうですね。
鴨音氏:
テクニカルなキャラクターであることは間違いないですが,操作自体はそれほど難しくないはずです。このタイプは,やはり同時攻撃によるゲーム展開と,2体で相手を挟み込むことによる崩しが楽しい部分なので,その手触り感を残しつつ,手軽な操作を目指しました。
4Gamer:
“ボタンをホールドしたまま,コマンドを入力して……”みたいなことにはならないと?
鴨音氏:
そういう器用な操作をせずとも面白く動かせるので,ご安心ください(笑)。
「エクセレイト」で何が変わったのか。そのコンセプトに迫る
4Gamer:
では,新キャラクター以外の変更点についてもうかがっていきたいと思います。前作でのプレイヤーの意見を反映した部分が大きいと思うのですが,どういったコンセプトで調整が行われたのでしょうか。
基本コンセプトは「できることを増やす」ということなんですが……まず前作の反省点として,こちらの想定していた以上に,コンボがつながるゲームになってしまった,というのがあります。それだけプレイヤーの皆さんのにやり込んでいただいた,ということでもあるのですが,やはりここは見直しが必要だろうと。
4Gamer:
確かにコンボが長いゲームという印象でした。とくに,リンネの画面を往復するコンボとか。
鴨音氏:
高火力なコンボが開発されたおかげで,どのキャラクターにもチャンスが残されたゲームバランスにはなったのですが,そのぶんすぐに決着がついてしまい,読み合いや駆け引きの回数が減ってしまった。やはり,そこは問題だったと思っています。とくに初心者や中級者層には,厳しいゲームになってしまいました。今作では,その部分にメスを入れています。
4Gamer:
つまり,コンボが短くなって,全体的なダメージも下がったと?
鴨音氏:
ええ。今回はシステムを見直すことで,コンボ時間が全体的に短縮されています。ただ,単にコンボがつながらなくなるだけでは,「できることが減った」になりかねない。
4Gamer:
確かにそのとおりです。
鴨音氏:
なので,そこは少し工夫をしています。具体的いうと,以前はヒット数によって受け身不能時間が短縮される方式でしたが,今回はすべての攻撃に“リカバリー補正値”という新しいパラメータを付け加えました。これによって,弱攻撃始動と強攻撃始動のコンボに差別化を図り,コンボ構成にバリエーションが生まれるようになっています。
4Gamer:
始動技によって,コンボを変える必要があるわけですね。確かに前作では,どこからコンボをスタートしても,最終的には同じ構成になりがちでした。
はい。前作でできたことはある程度残しつつ,新しいことにチャレンジするとさらに強くなれる,という感覚です。コンセプトとして挙げた「できることを増やす」とはそういう意味合いで,その方針を元に,細かい部分にも手を加えているんです。
4Gamer:
なるほど。実は気になっている点があるんですが,以前にインタビューさせていただいたとき,「地上戦がメインのゲームにしたい」あるいは「いわゆる“コンボゲー“にはしたくない」という事をおっしゃられていましたよね。結果的にコンボゲーになってしまったことは,先ほど想定外とのことでしたが。
鴨音氏:
ええ,そうですね。
4Gamer:
では今作は,その当初の理想に近づいたプレイフィールになっていると考えていいのでしょうか。
鴨音氏:
前作は対空の手段が乏しく,また相手の連係を切り返す手段も少なかったことから,当初考えていたゲームバランスとは違ったものになっていたのは確かです。今作では,ジャンプ攻撃に対してのみ無敵になる技が多く追加されているので,飛び込みはかなり迎撃しやすくなっているハズです。
4Gamer:
対空技が強化されたと。
ただ……これは恐らくなんですが,「地上戦がメイン」「コンボゲーではない」といったときに,フランスパンさんが想定しているプレイフィールと,一般的に想像されるプレイフィールでは,ちょっと差異があるように思うんです。
鴨音氏:
それは……あるかもしれません。地上戦がメインといってしまうと,「ストリートファイター」シリーズのようなものを想像されてしまいますね。いわゆる「刺し合い」がメインになるような。
4Gamer:
技の空振りを誘って,そのスキに攻撃を差し込む,みたいな。でも本作が目指しているのは,恐らくそこではないですよね?
鴨音氏:
ええ。本作の場合はダッシュ攻撃が強力なので,そういう攻防にはならないと思います。むしろ強力すぎたので,今回は弱体化させたくらいで。地上戦がメインというのは,空中が主戦場だった「MELTY BLOOD」と比べて,ジャンプにリスクを負わせているという意味なんです。
4Gamer:
ああ,それはよく分かります。
鴨音氏:
格闘ゲームのプレイフィールを言葉にすると,だいたいが「刺し合いゲー」か「コンボゲー」になってしまうのが問題ですね(笑)。
4Gamer:
あえて名前を出すなら,本作のプレイフィールは「THE KING OF FIGHTERS」シリーズのそれに近いのかな,という気がします。鋭いダッシュとジャンプによるスピーディな攻勢に対して,けん制技,対空技をどのように使い分けて守るか,というような。
ヴォーパル状態を維持するメリットが増えたため,対戦においてはGRDゲージの管理がより重視される。GRDゲージは中・下段攻撃のガードやシールドなど,防御的な行動でも蓄積できるので,戦況をくつがえす手段にもなり得る |
コンボダメージが抑えられたため,ダメージを取るためにはEXSゲージを使用する技の活用が不可欠に。そのため,GRDゲージをEXSゲージに変換するチェインシフトの重要性も増している |
鴨音氏:
確かに近いです。とくに参考にしたわけではないのですが,「MELTY BLOOD」とは違う方向性を模索したところ,この形に落ち着いたというか。
4Gamer:
フランスパンさん,あるいは鴨音さんが理想とする格闘ゲームがこの形なんでしょうか。
鴨音氏:
ええ。自分としては,今回で一つの理想形を作れたのではないかと思っています。打撃と投げによるシンプルな二択に比重を置きつつ,ゲージや相手キャラの状況を見ることで,試合を有利に運べる,というような。そういったシビアな読み合いと,ボタンを押せば簡単にコンボがつながる爽快感を融合させたかったんです。
4Gamer:
なるほど。
鴨音氏:
とくにコンボについては,今の時代,ある程度つながりやすくしたほうが,上級者と中級者の差が縮まるだろうと考えているんです。立ち回りのみに駆け引きが集約されてしまうと,地力の差がはっきりと現れてきてしまう。極端な話ですが,運の要素がまったくないと,相性が悪い相手やキャラには,まぐれでも勝てなくなるじゃないですか。
4Gamer:
確かに中級者と上級者をはっきり分けるのは,立ち回りや防御の技術なのかなという気がします。一方でコンボ技術などのオフェンス面は,トレーニングモードが普及したためか,中級者と上級者の差はほとんどなくなってきている。
鴨音氏:
ええ。だからこそ,コンボやセットプレイの起き攻めのように,一人で練習できる要素をある程度備えていたほうが,広い層に遊んでもらえるんじゃないかと。ワンチャンスで勝敗をひっくり返せる「まぐれ」が,格闘ゲームには,やっぱり必要なんです。
なりた氏:
そういう意味では,前バージョンの攻め重視バランスも個人的には好きではあったんですよ。「攻めきって崩した」というのが見て分かる形でしたし,ワンコンボで流れが変わるからこその,緊迫した攻防が楽しかった。でも,それが上級者同士でしか成立しないものでもあったので,そこが問題だったんです。中級者以前に,初心者が折れてしまいかねないですからね。
あのアカツキがゲスト参戦!
4Gamer:
ゲームの外側の部分についても,少し聞かせてください。エクセレイトでは,新たにAimeカードへの対応が謳われていますが,具体的にはどんなことができるんでしょうか。
鴨音氏:
まず,キャラクターアイコンが設定できるようになりました。これは,対戦画面にキャラクターの顔のイラストなどが表示できるという機能になります。また,アイコンを貼るためのプレートも好きな物を選べるので,これで個性をアピールしていただければと。さらに,単語を組み合わせて称号を作る機能だとか,選択できるキャラクターカラーも,もちろん増えていますよ。
4Gamer:
それはゲームをプレイすることで設定できるようになるんですか?
鴨音氏:
はい。ゲームをプレイすることで溜まるインヴァースポイントで購入できます。あと,スフィアと呼ばれる,いわゆるギルドのような要素もあります。
4Gamer:
おお。それは嬉しいですね。前作ではタイムリリースキャラクターとして,エルトナムがプレイアブルになるというサプライズがありましたが,本作にももちろん……ありますよね?
鴨音氏:
ええとこれは……発表していいんでしたっけ?
僕がゲストキャラクター大好きなので,今回も用意してあります。これなんですが……(といってディスプレイにゲーム画面を表示する)。
4Gamer:
おお! このキャラクターは「アカツキ電光戦記」のアカツキじゃないですか。……これはちょっとびっくりです。もしかして,攻性防禦※もできたりとか?
※攻性防禦……アカツキ電光戦記の共通ゲームシステム。コマンドを入力するとキャラクターが構えをとり,相手の攻撃を受け止めた後,自動的に反撃を行う。いわゆる当て身やブロッキング,ジャストガードなどと共通する,受け流しのシステム。
鴨音氏:
できます。もちろんシールドもあるのですが,原作を完全に再現するために用意してあります。アカツキで可能だったコンボも,ある程度は使えるはずです。
4Gamer:
ということは,主人公キャラクターらしい,スタンダードなプレイフィールになりそうですね。
鴨音氏:
エクセレイトの新キャラであるケイアスがテクニカルなキャラクターなので,それに比べるとアカツキは扱いやすいと思います。というより,アカツキらしさを再現していくうちに,自然にそうなったといいますか(笑)。飛び道具,対空,突進技と,格闘ゲームの基本となる技をすべて備えていますから。
なりた氏:
よく考えてみると,「アンダーナイトインヴァース」には,ベーシックな徒手空拳の,いわゆる主人公ポジションのキャラが,これまでいなかったんです。なので,ゲストキャラクターにもかかわらず,主人公みたいな立ち位置になってしまいました(笑)。
4Gamer:
確かに。……でも,いったいどんな経緯でアカツキが登場することになったんですか?
なりた氏:
アカツキ電光戦記を制作されている「SUBTLE STYLE(サトルスタイル)」さんには,本作の開発当初からドット絵の制作でお世話になっていまして。同人からアーケード参入という,僕等と同じ流れで頑張っているメーカーですし,次のゲストはもう,これしかないと思っていたんです。
それに……僕等はアンダーナイト準拠の立ち絵デザインを1枚起こしただけで,ドット絵はすべて本家であるSUBTLE STYLEさんの制作です。クオリティは完璧ですし,指示も修正もいらないので,時間的にもすごく助かりました(笑)。
4Gamer:
ああ,どおりで。HDグラフィックスのアカツキは今回が初にも関わらず,再現度が高いと思っていたところです。アートスタイル的にも自然に馴染んでいますし。……ちょっと話はズレますが,本作のアートスタイルは,個人的にも好みなんです。派手すぎず,エフェクトもプレイの邪魔にならない程度にスタイリッシュで,とても見やすいですよね。
なりた氏:
ありがとうございます。アーケードゲームって,どうしても見た目の派手さが求められるのですが,「ウチはシンプルにいこう!」と考えた結果,こうなったという感じです。線は細く,塗りもあまり厚くせず,最近主流のフラットなデザインというか,最近のライトノベルの表紙みたいな……。
4Gamer:
白地に女の子のイラスト1枚,みたいな?
なりた氏:
そうそう(笑)。今となってはちょっとシンプルすぎたかな,と思わないでもなくもないですけど。でも,その後に「ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ」(AC / PS3 / Xbox 360)(以下,P4U)が登場して……あれは本当に凄いです。
4Gamer:
ああ。確かにP4Uも見やすいですね。
なりた氏:
しつこくない程度に派手で,しかもかっこいい。あれを見て,格闘ゲームのグラフィックスデザイナーは,みんな悔しがったと思いますよ。デザイナーさんのバランス感覚が本当に素晴らしくて。グラフィックス面でやりたかったことは,全部やられてしまった印象です。
4Gamer:
なるほど,そういう視点もあるんですね。ところで,これはお聞きしていいのか分からないのですが……この画面,どう見てもPlayStation 3のものですよね。PlayStaiton 3版って,発表されてましたっけ?
なりた氏:
さ,さあ? なんのことやら……。
4Gamer:
新キャラクターとして“風使いの女の子”が登場するという噂も耳にしたんですが。
なりた氏:
よくご存じですね(苦笑)。でも,まだ言えないんです。ぜひ,今後の情報にご期待ください。
4Gamer:
分かりました。新キャラクターや今後の展開,そしてさらなるコラボキャラにも,期待したいと思います(笑)。
なりた氏:
そうですね。コラボはやっぱり華やかなので,頑張りたいと思います。話してしまうと実は具体的な野望もありまして。次は「スカルガールズ」のキャラクターにご登場願いたいと思ってるんですよね。アーケード化記念に。
4Gamer:
おお! じゃあReverge Labsさんにドットを起こしてもらって……。
なりた氏:
いやいや,その場合は,ドット打ちは勿論こちらでやらせてほしいなって思ってます。こう,「萌えってのはこういうことだ!」というのを海外にね。
4Gamer:
本場日本の「萌え」を見せつけたいと? いやそれ,すごくいいじゃないですか。じゃあReverge Labsさんも,見ていたらぜひ,ご検討くださいということで(笑)。
独立系デベロッパからみたアーケードと格闘ゲームの現状
4Gamer:
スカルガールズの話題が出たので,関連して少しお聞きしてみたいのですが,スカルガールズを始めとして,海外では「カオスコード」や「DIVEKICK」,日本でも,先ほどのアカツキ電光戦記や「ヤタガラス Attack on Cataclysm」(PC / AC)など,独立系デベロッパによる格闘ゲームタイトルが増えてきました。フランスパンさんは,その中でも“はしり”に近いデベロッパだと思うのですが,現状をどうお考えですか。
僕等の時代とは,もう成り立ちから違うので,認識も違っているんじゃないかと思いますけど。クラウドファンディングが認知され,盛り上がってきていることもあって,格ゲータイトルが増えてきたのは,すごく喜ばしいことだと思います。ただ……現状のクラウドファンディングのシステムって,日本人の気質にはどうも合わないんじゃないかと思うんですよ。
4Gamer:
というと?
なりた氏:
日本人ってコツコツと作って,完成したもので初めて評価するというか,コツコツやること自体が美徳という文化じゃないですか。一方で,チャレンジする段階のものに対しては,すごく冷たい。海外はそこをお祭り感覚で楽しむような側面があって,だからこそクラウドファンディングが成り立っているような気がするんです。
4Gamer:
確かに,そうかもしれません。
なりた氏:
もちろん考えてみたことはあるんです。仮にウチが手を挙げたとして,どれだけの賛同が得られるだろうかって。……恐らくですが,思っているより伸びないと思います。アンダーナイトインヴァースについていえば,恐らくその金額では作れない。そこで「失敗した」という前例を残してしまうリスクを考えると……現状では厳しいかなと。
4Gamer:
格闘ゲームは言語に依存しないゲームジャンルということもありますし,海外向けに作るという選択肢はないのでしょうか。
なりた氏:
そうですね。これでも一応,海外は視野には入れてはいるんですよ(笑)。多言語対応などは前提に考えなければならない時代でもありますし。ただそうすると,キャラクターデザインまで海外向けに考えなくてはならないし,今の僕等にはハードルが高いです。
4Gamer:
それは確かに。中二病テイストでは,なかなか難しいのかも?
なりた氏:
ええ(笑)。スカルガールズがなぜ成功したかは,ちゃんと考えないといけないな,と。
4Gamer:
一方で,独立系デベロッパ,中でも海外のデベロッパの多くは,日本のアーケードでリリースしたいと考えているようです。格闘ゲームは,アーケード文化の中で育まれてきたジャンルという側面もあるので,ロマンを感じる部分は当然あるでしょうが,フランスパンさん自身は,アーケードにどんな魅力を感じているのでしょうか。
なりた氏:
僕らは「MELTY BLOOD」でアーケードデビューしたということもありますし,もちろん「ストリートファイターII」で育ってきた世代ですから,アーケードは大好きなんです。添い遂げるつもりで頑張りたいと思ってますよ。セガのALL.NET P-ras MULTIや,タイトーのNESiCAxLiveのようなレベニューシェアモデルが出てきたおかげもあって,ビジネス的にもまだ十分にチャンスがあると考えていますし。
4Gamer:
しかし,コンシューマゲーム機の対戦環境なども,ずいぶんと整備されてきました。最初からコンシューマゲーム用に,という選択肢はありえませんか?
なりた氏:
もちろん,今ならコンシューマ優先という手はあると思います。ただ,自分でも古い考え方だとは思いますが,それでも僕らはアーケードを優先すると思います。僕等はアーケードのノウハウをすでに持っているので,アーケードならある程度市場の動きを読む自信がある。新しい世代のデベロッパには,オススメしませんけど(笑)。
4Gamer:
それはなぜですか?
なりた氏:
アーケードは,やっぱりビジネスモデルというか,集金システムが古いんだと思います。ビジネスとして考えるなら,コンシューマや,今ならスマートフォンの方がずっと進んでいる。最近は大分緩くなりましたが,昔からの“しきたり”による制約も多くて,それを考えると,どうしてもオススメはし辛いですね。
反対にメリットはというと,Windowsベースなので開発が楽という1点に尽きます。だから,アーケード用に開発するというよりは,まずWindows用に開発して,それを移植する,という流れのほうが展開しやすいと思います。
4Gamer:
それこそ,フランスパンさんが切り拓いてきた道でもありますね。以前Steamでやりたいというお話もお聞きしましたが。
なりた氏:
僕等のあとを後発のデベロッパさん達が追いかけてきてくれるとしたら,それは凄くうれしいですね。Steam展開に関しては,もちろん今でもやりたいと考えています。コンシューマゲーム機での展開の後にはなってしまいますが。
4Gamer:
分かりました。では今後の展望などについて,最後に語っていただければと思うのですが……これは前回もお聞きしたと思いますが,「MELTY BLOOD」のHD版の話は,その後なにか進展があるのでしょうか。
なりた氏:
その話,絶対今日聞かれると思って,ちょうど昨日TYPE-MOONさんに遊びに行ったついでに,確認してきました(笑)。コメントとしては「前向きに検討しています」とだけ言って良いとのことなので,それでお願いします(笑)。とりあえず「月姫」のリメイクが出ないことには……。
4Gamer:
それがいつなのかが,まず一番の問題ですね(笑)。
なりた氏:
次を考えるのは当然ですが,まずはエクセレイトのアーケード版を,しっかり展開していきたいと思っています。今後も継続的にキャラの追加等も考えてはいますし,できればもう少しゲーム外の部分というか,スマートフォンなどと連動できる仕掛けを作れればと思っているので,今後のアップデートにもご期待いただければと思います。もちろん,このタイトルで得られたノウハウは,次の何かにつなげていきたいと思っていますので。
鴨音氏:
前作を1年近くプレイしていただいたプレイヤーの皆さんには,とても感謝しています。「エクセレイト」はかなり面白いゲームに仕上がったと思いますので,ぜひご期待ください。
4Gamer:
アーケード以外での動きも,水面下ではあるようですし。
なりた氏:
ええ。いろいろと沈黙せざるをえなかったものが,そろそろ陽の目を見られる時期になってきました。とくに2D格闘ゲームは,アークシステムワークスさんだけが頑張っているような状況で,それは僕としても悔しいですし(笑)。僕等も全力で頑張っていますので,続報をお待ちいただければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
同人から商業へ,タイアップからオリジナルと,新しい舞台へと挑戦しているフランスパン。今回のインタビューでは,冗談を交えながらも,なりた氏からは格闘ゲーム,そしてアーケードへの熱い想いを,そして芹沢鴨音氏からは,新作に込めた理想を聞くことができた。
最新作「アンダーナイト インヴァース エクセレイト」は,2013年9月5日より全国のゲームセンターにて稼働を開始する。本作のプレイヤーは今後の展開についての続報を待ちつつ,ひとまずはゲームセンターでの対戦に明け暮れよう。
――2013年8月7日収録
「アンダーナイトインヴァース エクセレイト」公式サイト
- 関連タイトル:
アンダーナイト インヴァース エクセレイト
- 関連タイトル:
アンダーナイト インヴァース
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