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[CEDEC 2014]サイバーコネクトツーとドリコムの異業種協業体制における成功と失敗とは――「フルボッコヒーローズ」における事例を紹介
本セッションでは,サイバーコネクトツーから代表取締役社長の松山 洋氏と開発部 ディレクターの小野田一彦氏が,ドリコムから取締役 ソーシャルゲーム事業本部長の長谷川敬起氏とソーシャルゲーム事業本部 プロダクト部 プロデューサーのまんぞう氏が登壇。異業種協業のメリット/デメリットや,起こりうる問題とその対策などを,両社が協業でサービスを提供しているスマートフォンアプリ「フルボッコヒーローズ」(iOS / Android)の事例をベースに紹介した。
サイバーコネクトツー代表取締役社長 松山 洋氏(写真左)と,開発部 ディレクターの小野田一彦氏(写真右) |
ドリコム 取締役 ソーシャルゲーム事業本部長 長谷川敬起氏(写真左)と,ソーシャルゲーム事業本部 プロダクト部 プロデューサー まんぞう氏(写真右) |
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4Gamer.net「CEDEC 2014」記事一覧
「フルボッコヒーローズ」と言えば,2014年初頭に48万人以上の累計事前登録者数を記録して注目を集めたタイトルである。スマートフォンアプリの事前登録者数は3〜4万人に到達すれば成功と言われていた時期に,なぜ同タイトルは突出した記録を出すことができたのか。その理由は「フライングゲットガチャ」施策にある(関連記事)。
フライングゲットガチャは,ゲーム開始直後に回すガチャから優れたレアユニット(アイテムやモンスターなど)が出るまで,アプリのインストールとアンインストールを何度も繰り返す,いわゆる「リセットマラソン」(リセマラ)の手間を省略するための仕組みだ。プレイヤーは,好みのレアユニットが出なかった場合,SNSでメッセージを発信することにより,再びガチャを回せるようになる。
つまりこの施策は,少しでもいいスタートを切りたいというプレイヤーの負担を軽減すると同時に,バイラル(口コミ)効果をもたらすものとして企画されたわけである。結果は先述のとおり,大成功だった。
まんぞう氏は,この施策が成功した秘訣を,フライングゲットガチャの仕組みだけに頼るのではなく,「質の良いコンテンツ」と組み合わせたことや,期待する人を飽きさせないメディア展開によって,効果的にバイラルを起こしたことにあるとまとめた。
実際のコンテンツ開発の流れは,まずサイバーコネクトツーが仕様を作り,ドリコムが別の視点から述べた意見を踏まえて仕様を調整し,両社納得のうえで実装に至るというもの。会場では具体例として,ゲームのミドルサイクルコンテンツが変更になったケースと,ユニットのレアリティに関する価値観を決定したケースが紹介された。
そうした開発の過程では,両社の思想や,それぞれの現場で使っている言葉の意味が異なっていたため,うまくコミュニケーションが図れなかったことも多かったという。また,データベース設計に関する考え方のズレが大きく,両社間の整合性を取るために1か月半ものロスを開発後半の大事な時期に生んでしまったとのこと。
そこで両社は,完全に役割分担をすることは難しいと判断。サイバーコネクトツーの東京オフィスに,運営/開発スタッフが一つのチームとして一緒に働く環境を作り,さらに意思疎通を強化するべく,コミュニケーションツールとチーム全体のタスクを管理する手法を導入した。
そのうえで定例会を毎週実施し,各種データや問題点の共有を行うようにした。この定例会は“鉄の掟”で,今も続いているそうである。
また,プレイヤーが抱く運営に対するネガティブなイメージも根強いとのことで,松山氏は「初月のスタートがどんなに良くとも,やり方を間違えると6か月で売上を落としてしまう事例の一つ」と表現した。
小野田氏は,これまでのサービスを振り返り,「毎週のイベント運用やユニットの追加,といった,お客様を楽しませる要素はそれなりに盛り込んできた」と語る。その一方で,サービスの運用については,分かっていないなりにドリコム側の意見を汲みつつやってきたつもりだったが,数字には結びつかなかったと反省を述べた。
まんぞう氏はプレイヤーの期待を裏切ってしまった原因として,一つのバトルを提供するために時間と労力がかかりすぎる設計になっていたことを挙げる。この設計は,プレイヤーにバトルを楽しんでもらうというコンセプトに基づくものだが,一時期は毎週のイベントを提供するのも大変な状態となっていたそうだ。
しかし,まんぞう氏が挙げた問題点に関して,松山氏は「リリース前からわかっていたこと」とする。と言うのも「フルボッコヒーローズ」では,ユニット1体を追加するのに,3Dモデルや,見栄えのするアクションを新たに作らなければならないからだ。さらにはレベルデザインやバランスも考慮しなければならない。
この過程を,松山氏は「新たなユニットを追加するたび,コンシューマゲームのマスターアップをするようなもの」と表現していた。それでもこの形を選んだのは,「ゲームとしての面白さ」を提供したかったからだという。
松山氏は「ファミコン時代のような原始的な面白さ,触っただけで気持ちよく,また明日も遊びたくなるようなゲーム性を軸に据えようと考えた」と説明。続けて「確かに開発は大変だけど,面白ければお客様は継続して遊んでくださる。そして実際に,そこは実現できており,ほかのタイトルとは異なるものに仕上がっています」と述べた。
一方,長谷川氏は,運用コストだけでなく,「面白いバトルの体験を,プレイヤーに長く届け続けるためのコンセプトの練り上げが足りていなかった」ことを問題点として挙げる。長谷川氏によれば,長く遊んでもらうために,レアリティの高いユニットを手に入れれば勝てるという内容ではなく,多彩なキャラを使ってさまざまなプレイを楽しめるゲームを目指したはずだったが,残念ながらそれを実現できなかったというのだ。
さらに長谷川氏は,チーム内のコミュニケーションがまだまだ足りていないと指摘。「会社としてだけでなく,人として膝をつき合わせて,腹を割って話し合い,相手が何をモチベーションとして仕事をしているのかまで理解し合えるようなチーム作りができれば,もっといいゲームになったはず」と語った。
セッションの終盤,「次があるなら,もっとうまくやれる」とする長谷川氏の言葉を受け,松山氏は,まんぞう氏と小野田氏に「次もまた協業でやりたいか」と問い掛けた。
まんぞう氏は,「これまでのサービスで得られた知見を持って臨めるのであれば,もっとうまくできると思いますから,やってみたい」と返答し,小野田氏は「負けず嫌いなので,もう1回やりたい。同じことを繰り返すのではなく,今回の反省を生かし,お客様のことを考えたサービスを展開したい」と語った。
最後に松山氏は,「フルボッコヒーローズ」の運営開発体制を8月に大きく変えたことを報告。8月25日の「フルボッコヒーローズX」へのバージョンアップ以降,サイバーコネクトツーが運営開発を主導する形になったとのことだ。
松山氏は,半年後,App StoreやGoogle Playのランキングをぜひ確認してほしいと聴講者に呼びかけ,「CEDEC 2014ではあんなことを言っていたのに『何だかんだで復活したね』と言われるようなゲームにしてみせます」と力強く宣言し,セッションを締めくくった。
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