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ノートPC向け「GeForce GTX 10」発表。「M」の取れたモバイルPascalは,デスクトップPC向けGPUとほぼ同じ性能を発揮!?
今回4Gamerでは,アジア太平洋地域の報道関係者を対象とする事前説明会に参加することができたので,その内容をまとめてみたいと思う。
※これまで4Gamerでは「GeForce GTX 1000」と表記していたが,GeForce GTX 10が正式表記とNVIDIAから説明を受けたので,今後はそれに従う。
ついに「デスクトップ版GPUとほぼ同等」のレベルに達した新世代モバイルGPU。しかも今回は「Factory OC」サポート
Gaurav Agarwal氏 |
GeForce GTX 10シリーズなので,もちろんVR(Virtual Reality,仮想現実)対応。事前説明会の会場には4か所もの「Vive」体験コーナーが用意された |
その性能は,前世代(=第2世代Maxwell)比で75%高く,Agarwal氏いわく,史上最も大きな性能ジャンプとのこと。
「(ノートPC向けの)GTX 1080は,(ノートPC向けの)GTX 980によるSLIと同等の性能を1基で実現する。そして消費電力は(ノートPC向けの)GTX 980 1基分だ」(同氏)。
気になる主なスペックは以下のとおりとなる。
- GTX 1080:CUDA Core数2560基,ブーストクロック1733MHz,グラフィックスメモリ容量8GB,メモリクロック10GHz相当(GDDR5X)
- GTX 1070:CUDA Core数2048基,ブーストクロック1645MHz,グラフィックスメモリ容量8GB,メモリクロック8GHz相当(GDDR5)
- GTX 1060:CUDA Core数1280基,ブーストクロック1670MHz,グラフィックスメモリ容量6GB,メモリクロック8GHz相当(GDDR5)
GTX 1070は,デスクトップPC版よりもCUDA Core数が128基,演算ユニット「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)にして1基分多く,ブーストクロックは38MHz低いのが特徴である。
デスクトップPC版GTX 1070は,「GP104」コアをベースとしつつ,5基のSMとラスタライザによる“ミニGPU”的な「Graphics Processing Cluster」(以下,GPC)をフルスペック比で1基削った3基構成となっているのだが(関連記事),ノートPC版GTX 1070は,GTX 1080と同じく,4基のGPCを有効にしつつ,その中で4基のSMを無効化したデザインになっているのがポイントだ。NVIDIAはこの仕様変更について,「動作クロックを低く抑えつつも性能を保つために,SMを1基有効化した結果」と述べている。
なお,GTX 1060のGPU規模はデスクトップPC版と同じで,ブーストクロックはノートPC版GTX 1070と同じく,デスクトップPC版より38MHz低い。
NVIDIAはTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)を公開していないが,Agarwal氏は「デスクトップ版よりは低い」としていた。そのためかどうか,性能は(おそらくは電力制御法の違いにより)デスクトップ版と比べて最大10%程度低くなる見込みだ。
電源部には「精緻な技巧が宿る」とのこと |
クロックオフセットで+300MHzのオーバークロック動作を狙うことも不可能ではないというスライド |
また,今回NVIDIAは,GeForce GTX 10シリーズが,ノートPC用GPUとして初めて「Factory OC」(=ノートPCメーカーレベルで,工場出荷時点においてクロックアップを行うこと。当該クロックでの動作はメーカー保証の範囲)に対応することも明らかにしている。
そのため,自己責任でのオーバークロックに興味を持たないタイプのゲーマーであっても,ノートPCメーカーがクロックアップ設定を行えば,ノートPC向けGeForce GTX 10シリーズの持つ,高いクロック耐性の恩恵を受けられるとのことだ。
「(ノートPC向けGeForce GTX 10シリーズの)性能はデスクトップPC版より10%低いが,Factory OC次第で,デスクトップPC版並みの性能は確保できる」(Agarwal氏)。
GeForce 800Mシリーズで初めて採用されたBattery Boostは,バッテリー駆動時にプレイアブルなフレームレートを確保しつつ,そこにキャップを設けることでGPUリソースの浪費を防ぎ,消費電力の低減を図ろうとする機能だ。
Agarwal氏によると,残念ながら従来のBattery Boostでは,ターゲットとなるフレームレートに対して実際のフレームレート乱高下が大きく,それがフレームドロップ,ひいてはスタッター(Stutter,カク付き)の原因となっていた。しかし,新しいBattery Boostでは安定したフレームレートを実現できるようになり,結果,バッテリー駆動時の動作時間を従来比で30%延ばすことができるようにもなっているという。
ノートPC向けGeForce GTX 10搭載のノートPCは,主要なゲーマー向けノートPCメーカー及びOEM/ODMメーカー13社から登場する予定だ。
突貫で計測したテスト結果を,デスクトップPCと比較してみる
ちなみにCLEVOのPCは,G-TuneやGALLERIA,LEVEL∞などといった国内のゲーマー向けPCブランドがよく採用している。今回に用いた機種のカスタムモデルが国内で販売となる可能性が極めて高いマシンでテストできたという理解で問題ないだろう。
3DMarkの「Time Spy」を実行すると,光と影が縞模様になってしまった。省電力機能周りに問題が生じ,こういうことになっているのではないかと思われる |
Precision Xからクロックオフセットを試みたところ。+300MHzでは起動後即座に,+200MHzでは起動後数秒経って,アプリケーションが落ちた。Power TargetとTemp Targetは画面の状態のままで動かず |
また,オーバークロックは,EVGA製ツール「Precision X」(Version 6.0.1.3)を使って行ったのだが,このバージョンでは「Power Target」と「Temp Target」を変更できなかった。そのためか,「GPU Clock Offset」の+300MHz設定や+200MHz設定ではテスト開始後数秒でアプリケーションが落ちた一方で,+150MHzだと問題なかったので,この+150MHz設定でスコアを取得することにしている。+300MHzのクロックオフセットを狙うには,Power Targetの変更が必須ということなのだろう。
なお,比較対象としては,「GeForce GTX 1080 Founders Edition」と「Core i7-6700K」(4C8T,定格4GHz,最大4.4GHz,共有L3キャッシュ容量8MB),PC4-19000 DDR4 SDRAM 8GB
テストに用いたアプリケーションは「3DMark」(Version 2.1.2852)と, 「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ),そして,システムにインストールされていた「Rise of the Tomb Raider」の3本だ。
3DMarkとFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチのテスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0準拠。Rise of the Tomb Raiderでは,DirectX 12モード,そしてグラフィックス設定プリセット「Very High」を選択のうえで,ゲーム側の標準ベンチマークツールを2回連続実行し,平均値をスコアとして採用することにした。テストシークエンスには主人公のララが登場するものの,基本的にはFlyby(フライバイ)的なGPUテストという理解でいいだろう。
ゲームベンチマークのテスト解像度は1920
あともう1つ,今回P775DMのベンチマークテストは筆者が行ったが,得られたスコアは,事前説明会に参加したすべての国内メディアで共有している点も,あらかじめお断りしておきたい。限られた時間で,1台のPCを“日本チーム”でシェアした格好だ。
また,比較対象となるデスクトップPCのスコアは,帰国後,宮崎真一氏に計測を依頼して取得したものとなる。
ノートPC向けGPUなりのクセはあるものの,これは「ほぼデスクトップ版GTX 1080」だ
以下,グラフ内に限り,クロックオフセットでGPUクロックを引き上げた状態を「P775DM(+150MHz)」,比較対象のデスクトップPCはただ「デスクトップPC」と記載することを断りつつ,スコアを見ていきたい。
グラフ1は3DMarkのDirectX 11版テストにおける総合スコアを見たものだが,相対的にCPU性能がスコアを左右しやすい「Fire Strike」ではGTX 1080搭載のデスクトップPCがトップスコアを示す。一方,よりGPU性能勝負になる「Fire Strike Extreme」と「Fire Strike Ultra」では,クロックオフセットでオーバークロックしたP775DMがトップを取り,次いでデスクトップPC,そして定格動作のP775DMと,NVIDIAが主張するとおりな感じの結果に落ち着いている。
グラフ1における「Graphics score」と「Physics score」を抜き出したものがグラフ2,3だ。案の定というか何というか,比較対象のデスクトップPCでは,より高いクロックのCPUを採用しているため,その影響がPhysics scoreで露骨に出ている。
ただ,CPUの影響をできる限り排除したGraphics scoreだと,Fire StrikeでもFire Strike ExtremeおよびFire Strike Ultraのスコアを踏襲した結果になった。こちらのほうがGPUの実力に近そうだ。
グラフ4は3DMarkのDirectX 12版テスト「Time Spy」のスコアをまとめたものだが,おおむね,Fire Strikeのそれを踏襲していると述べていい。GPUスコアではトップがオーバークロックしたP775DMで,次いで比較対象のデスクトップPC,最後に定格動作のP775DMという順である。
面白い結果となったのが,グラフ5,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチで,ここでは比較対象のデスクトップPCがP775DMにざっくり2000前後のスコア差を付けた。
GPUのクロックおよび温度推移を追えていないので,想像するほかないのだが,FFXIV蒼天のイシュガルドの1920
最後にグラフ6はDirectX 12モードで実行したRise of the Tomb Raiderのスコアだが,ここでは,定格動作のP775DMが比較対象のデスクトップPCより高いスコアを示したことに注目したい。
テストを構成する3つのシークエンス「Mountain Peak」「Syria」「Geothermal Vallery」で最小スコア(※2回の試行を通じてより低いほう)を比較すると,P775DMが順に41.98fps,21.12fps,37.59fpsのところ,比較対象のデスクトップPCだと37.97fps,49.73fps,42.23fpsだった。むしろスコアの安定感という観点からはデスクトップPCのほうが有利な印象なので,正直,P775DMのほうが高いスコアを示す理由はよく分からないのだが……。
まあ,参考程度の比較で,数fpsの違いをとやかく言っても始まらないような気はする。
以上,ノートPC向けGTX 1080のベンチマーク結果をざっと見てみたが,ひとまず,「ノートPCならではの挙動があるため,完全に同じとまでは言えないものの,ノートPC向けGTX 1080の持つポテンシャルは,デスクトップ版GTX 1080に限りなく近い」ということは言えそうだ。
そもそもデスクトップPC向けGPUとスペックの異なるGTX 1070やGTX 1060でどういう結果になるのかはとても興味深いが,少なくとも今回のテスト結果からするに,NVIDIAが今回,GPUの名称に接尾語Mを付けなかったことの根拠は認められると評していいように思う。
それだけに,いよいよ「今世代のゲーマー向けノートPCはお高いんでしょう……?」という気もしてくるが,原稿執筆時点で,搭載PCの価格は明らかになっていない。ASUSTeK ComputerやAlienware,MSI,そして国内のシステムビルダー各社などから正式発表になるのを,期待半分不安半分(?)で待ちたいところだ。
事前説明会会場にあった,各社のゲームノートPCをチェック
というわけで,前段でも予告したとおり,会場にあったノートPCを,以下,写真メインで紹介してみたい。製品名は立て札から推測するしかなかったりするので,最終的な製品名と異なる可能性がある点はご注意を。
※2016年8月17日追記:MSIの新製品は正確な製品名および国内型番が明らかになっていますので,発表レポート記事をチェックしてください。
Acer Predator 15
ASUSTeK Computer G752
ASUSTeK Computer GL702
ASUSTeK Computer GL502
EVGA SC17
MSI GT73
MSI GT72
MSI GT62
MSI GS63
MSI GS43
NVIDIAのGeForce製品情報ページ
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