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「GeForce GTX 1070 Ti」レビュー。GTX 1080より100ドル安価な新型GPUは,2017年クリスマス商戦の主役となり得るか?
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印刷2017/11/02 22:00

レビュー

GTX 1080より100ドル安価な新型GPUは,2017年クリスマス商戦の主役となり得るか?

GeForce GTX 1070 Ti
(GeForce GTX 1070 Ti Founders Edition,ROG-STRIX-GTX1070TI-A8G-GAMING)


GTX 1070 Ti Founders Edition
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 2017年11月2日22:00,「GeForce GTX 1070 Ti」(以下,GTX 1070 Ti)搭載グラフィックスカードが発売になった。
 10月26日の記事でお伝えしているとおり,北米市場における搭載カードのメーカー想定売価は449ドル(税別)。これは「GeForce GTX 1080」(以下,GTX 1080)の同549ドルと比べると100ドル安く,一方で「GeForce GTX 1070」(以下,GTX 1070)の同349ドルと比べた場合には50ドル高いという位置づけになるわけだが,この新しいGPUは,2017年の年末商戦期で主役を張れるだろうか。

ROG-STRIX-GTX1070TI-A8G-GAMING
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店) info@tekwind.co.jp
価格:未定(※2017年11月2日現在)
画像集 No.003のサムネイル画像 / 「GeForce GTX 1070 Ti」レビュー。GTX 1080より100ドル安価な新型GPUは,2017年クリスマス商戦の主役となり得るか?
 4Gamerでは,国内発売予定がないとされる「Founders Edition」をNVIDIAから,そして独自デザイン採用の「ROG-STRIX-GTX1070TI-A8G-GAMING」(以下,ROG-STRIX-GTX1070TI)をASUSTeK Computer(以下,ASUS)からそれぞれ入手できたので,両製品を通じ,GTX 1070 TiというGPUの持つ特徴とポテンシャルを明らかにしてみたい。

※本稿では,GPUおよびカード紹介パートを米田 聡氏が,ベンチマークパートとまとめを宮崎真一氏が担当します。


“GTX 1080 LE”的なスペックのGTX 1070 Ti


GTX 1070 Ti GPU。ダイ上の刻印は「GP104-300」だった
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 テストに先立ってGPUのスペックを確認しておきたいと思うが,GTX 1070 Tiは,GTX 1080やGTX 1070と同じく,「GP104」コアを採用したプロセッサである。重要なポイントは,「Streaming Multiprocessor」と呼ばれる演算ユニットの数が19基と,GP104のフルスペック版を採用するGTX 1080より1基少ないだけというところだ。
 Pascalアーキテクチャにおいて,演算ユニットあたりのシェーダプロセッサ数は128基なので,シェーダプロセッサの総数は128×19で2432基となる。

参考までに,GTX 1070のブロック図
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 GP104コアでは,演算ユニット5基をひとまとめにして“ミニGPU”的に機能させる「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)を最大4基搭載するのだが,19基の演算ユニットを統合するGTX 1070 TiのGPC数はもちろん4基。GTX 1070の場合はGPCが1基無効化され,演算ユニット数も3基となっているので,GPUの規模は明らかにGTX 1080に近い。というか,GTX 1070 Tiというより,ほとんど“GTX 1080 LE”(もしくは“GTX 1080 XT”)である。

GTX 1070 Tiのブロック図。画像上では右下の演算ユニット1基を暗くしているが,実際には,合計20ある演算ユニットのどれかが無効になるイメージだ
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DeviceQueryDrv.exe実行結果
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 CUDAの開発キットに付属する,CUDAデバイスの能力を調べるためのツール「DeviceQueryDrv.exe」を実行してみた結果が右のスクリーンショットだが,ご覧のとおり,L2キャッシュ容量は2MBで,これはGTX 1080およびGTX 1070と変わらずだった。

 一方,メモリ周りのスペックはGTX 1070と完全に同じで。GTX 1080では10GHz相当(実クロック1.25GHz)のGDDR5Xグラフィックスメモリを組み合わせてあるのに対し,GTX 1070 Ti(とGTX 1070)は8GHz相当(実クロック2GHz)のGDDR5となる。メモリインタフェースは変わらず256bitなので,メモリクロック分だけ,GTX 1080のほうが優位だ。
 表1は,そんなGP104世代のGPUを比較したものとなる。

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従来モデルと同じデザインを採用するGTX 1070 Ti Founders Edition


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 以上を踏まえつつ,入手したカードをチェックしていこう。まずはGTX 1070 Ti Founders Editionからだが,その外観はGTX 1080やGTX 1070のFounders Editionとまったく同じと言っていいだろう。カード長が実測約267mm(※突起部除く)で,外部出力インタフェースがDisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b(Type A)×1,Dual-Link DVI-D×1,補助電源コネクタが8ピン×1という点は,すべてGTX 1080およびGTX 1070のFounders Editionと同じなので,クーラーに彫られた型番表記がなければ,見分けるのは困難だ。

カードを別の角度から。GPUクーラーの表面側と背面側にそれぞれ「GTX 1070 Ti」の彫り込みがあって,ここで一応の区別はできるようになっている
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外部出力インタフェースの仕様(左)と補助電源コネクタの仕様(右)はGTX 1080およびGTX 1070のFounders Editionと完全に同じ
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カードが隣り合った並びでSLI動作させるとき,ファンに向けたエアフローを確保すべく,カード背面側補強板の半分を簡単に取り外せるようになっているのも従来製品と同じ(左)。右はGTX 1080 Founders Editionと立てて並べてみた例だ
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クーラーと背面カバーを取り外したところ
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 採用する基板は,ぱっと見,GTX 1080 Founders Editionと共通。電源部のパーツ配置や,搭載するLSIにコンデンサ,コイル類にも違いが見られない。5+1フェーズの構成も同一だ。
 ただ,PCI Express x16スロット部の近くにあるシルク印刷を見ると,パーツナンバーは「180-1G411-DFAAA-A01」で,これはGTX 1070 Founders Editionと同じだ。「GTX 1070 Founders Editionと同じ基板に,GTX 1080 Founders Editionの電源部を載せた」デザインということになる。

基板のパーツナンバーは180-1G411-DFAAA-A01。GTX 1080 Founders Editionが採用する「180-1G413-DAAA-A00」とはよく似ているが異なるものだ。単なるリビジョン違いなのだろうか
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電源部は5+1フェーズ構成で使われているパーツもGTX 1080 Founders Editionと共通だった
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フェーズコントローラはuPI Semiconductor製でNVIDIAのOpenVRM規格に対応するフェーズコントローラ「uP9511」だ。基板裏に実装されている

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 GTX 1080 Founders Editionの基板との間にある,唯一と言っていい違いは,搭載するグラフィックスメモリチップだ。GTX 1070 Ti Founders EditionはMicron Technology製の8Gbit(=容量1GB)GDDR5メモリチップ「MT41J256M32-80」を8枚搭載している。
 Micron TechnologyのGDDR5メモリチップは,刻印だけだとグレードが分からない。ただ,MT41J256M32のラインナップは6Gbpsと7Gbps,8Gbpsの3種類なので,GTX 1070 Tiの仕様上,8Gbps対応の「-80」と見てまず間違いないだろう。


独自デザインを採用し,クロックアップ動作モードを持つROG-STRIX-GTX1070TI


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 続いてはROG-STRIX-GTX1070TIだ。

 そのカード長は実測約300mm,クーラーは2.5スロット仕様で,Founders Editionと比べるとかなり大きなグラフィックスカードになっている。
 2.5スロット仕様のGPUクーラーは,GPUの熱を6本のヒートパイプで2か所のヒートスプレッダ部へ送り,いずれも90mm角相当の3連ファンで冷却する仕様である。

GPUクーラーはカード全体をすっぽり覆い,かつ基板の後方へ16mmほどはみ出ている。また,カードをマザーボードへ差したときの垂直方向へ,Founders Editionと比べて実測約24mmはみ出ている点も押さえておきたい。小型のPCケースでは取り付けられない可能性もあるだろう
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2.5スロット仕様のカードを横から見たところ。ASUSによると,ヒートスプレッダの厚みを,2スロット仕様のクーラーと比べて40%広げることができるため,2.5スロットデザインを採用したとのことだ
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カード長はいわゆる300mm級。2.5スロット仕様で,厚さは実測約50mmということもあり,搭載できるPCケースは相応に選ぶ。この点は要注意だ

 外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4×2,HDMI 2.0 Type A×2,Dual-Link DVI-D×2。補助電源コネクタはFounders Editionと同じく8ピン×1だ。
 カード後方を覗き込むと,4ピン端子が2つ見えるが,これはファンを追加するための「FanConnect II」端子だ。PWMファンとDCファンの双方に対応しており,専用ソフトウェア「GPU Tweak II」を使うと,追加ファンの制御を行えるようになる。

外部出力インタフェースは,最近流行の「HDMI出力が2ポートある」タイプ(左)。右の写真で補助電源コネクタの右に見えるのがFanConnect II端子だ
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GPU Tweak II。上部に並んだボタンから3つの動作モードを選択できる。メーカー保証外になるのを覚悟すれば,ユーザーが自分でカスタマイズすることも可能だ
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 気になるGPUの動作クロックは,NVIDIAが定める「GTX 1070 Tiの動作クロックルール」どおり,ベース1607MHz,ブースト1683MHzである。
 ただし,最近のASUS製グラフィックスカードとして,ROG-STRIX-GTX1070TIも「OC」「Gaming」「Silent」という3つの動作モードを切り換えられるようになっており,専用ユーティリティソフト「GPU Tweak II」(Version 1.5.6.1)を導入すると,メーカー保証の範囲内でより高い動作クロックを指定することが可能だ。
 3モードの動作クロックは以下のとおりで,OCモードを選択したときのみ,ROG-STRIX-GTX1070TIは定格より高い動作クロックで動作するようになる。

  • OC:ベース1683MHz,ブースト1759MHz
  • Gaming:ベース1607MHz,ブースト1683MHz(※工場出荷時設定)
  • Silent:ベース未公開,ブースト1657MHz

 後述するテスト環境でクロックの推移を追ったところ,OCモードは1962MHzまで,Gamingモードは1886MHzまで,それぞれ上昇しているのを確認した。
 ちなみに,同様のテストをGTX 1070 Ti Founders Editionでも行ったところ,動作クロックは1911MHzまで上がるのを確認できている。Gamingモードと比較すると,Founders Editionのほうが最大クロックは高いわけだ。

ROG-STRIX-GTX1070TIのOCモードだとGPUの動作クロックは最大1962MHz(左),Gamingモードだと1886MHzに達した(中)。右はGTX 1070 Ti Founders Editionのスコアを追ったところで,こちらでは最大1911MHzとなっている
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 グラフィックスカードのクーラーを取り外すのはメーカー保証外の行為だが,今回はレビューのため特別に取り外してみよう。

クーラーを取り外しているところ。なお今回,基板とクーラーをつなぐケーブルのコネクタがどうしても取り外せず,「これ以上の力をかけると破損する恐れが高い」と判断したため,ケーブルはつないだままとなる。この点はご了承を
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クーラーはカバー部とそれ以外に分割できる
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MaxContactの概要
 ASUS製グラフィックスカードのクーラーと聞いて,ヒートパイプがGPUのダイと直接触れる「DirectCU」をイメージする読者も多いと思うが,ROG-STRIX-GTX1070TIはDirectCUを採用していない。その代わりとなるのが,プレートでGPUの熱を受ける「MaxContact Technology」(以下,MaxContact)だそうで,ASUSによると,プレートの表面加工精度を上げることにより,一般的なプレートと比べて2倍の接触面積を実現しているとのことである。

 一方,3連ファンのほうは,DirectCU時代と同じく,先端が折れ曲がった「Wing-Blade Design」を採用するものになっている。このブレード形状により,一般的なファンと比べて約105%高い(=2倍強)静圧を実現しつつ,リファレンスカードと比べて静音性は3倍に向上しているという。

高い加工精度のプレートをDirectCUの代わりに採用したというのが,ROG-STRIX-GTX1070TIのクーラーにおけるトピックだ(左)。右はWing-Blade Designのファン形状に寄ったカット(右)
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 というわけで基板だが,サイズが異なることから想像できていたように,そのデザインはFounders Editionとまったく異なる。とくに電源部が6+1フェーズになっている点は要注目で,1フェーズ増えている分だけ,効率のよい電源管理を行える設計になっていると言える。

電源部に特徴がある基板。6+1フェーズの電源部は,ASUS自慢の「Super Alloy Power II」仕様だ
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下がGPU用,上がメモリ(Vdd)用の電源フェーズで,GPU用にはSiC602が使われていた。メモリ用の1フェーズ部に並ぶ4つのICは,おそらくパワーFETモジュールだが,メーカーや仕様は分からない
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 GPUの電源部は,uP9511と,Vishay Siliconix製のパワーステージIC「SiC602」の組み合わせを中心としたものになっているが,ASUSはそこに「Super Alloy Power II」という呼び名を与えている。
 電源部の右側に並ぶ,「FP 78GC 271 16」という印刷入りのものは,ニチコンの子会社である日科能高電子(蘇州)の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ「FP Cap」(270μF/16V)と思われる。
 VRM部に並ぶ「5KX35」という印刷入りのものは,型番からしてFP Capではなさそうだが,同じく導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの一種だろう。容量は820μFのようで,470μFという仕様のものを載せていたFounders Editonよりも大容量になっている。「容量が大きいからいい」というものもないのだが,瞬間的な電流の増減には対応しやすいだろう。

ROG-STRIX-GTX1070TIの電源部。フェーズコントローラにはFounders Editionと同じuPI Semiconductor製の「uP9511」を採用するが,それ以外は大きく異なっている
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 一方,GPU周辺のデザインはFounders Editionを踏襲している。組み合わせてあるグラフィックスメモリチップがMicron Technology製のMT41J256M32-80なのも変わらずだ。

グラフィックスメモリチップの配置はFounders Editionと同じ。メモリ周りのレイアウトはメモリバスの引き回しで決まってしまうため,簡単には変えられない部分なので,当然と言えば当然である。ディスプレイ出力仕様が異なるため,そのあたりは若干異なるものの,電源部以外のデザインはFounders Editionと共通と言ってしまっていいだろう
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新たにShadow of Warのテストを追加しつつ,上位および下位モデルと比較


 前置きが長くなったが,テスト環境のセットアップに入ろう。
 今回は,GeForce GTX 10シリーズにおけるGTX 1070 Tiの立ち位置を明確化すべく,比較対象としてはGTX 1080およびGTX 1070のFounders Editionを用意した。
 また,主役の片方であるROG-STRIX-GTX1070TIでは,工場出荷時設定であるGamingモードと,メーカー保証の範囲内でより高いクロック設定を実現したOCモードでのテストを行う。これにより,GPUクーラーの違いがベンチマークスコアに与える影響と,高いクロック設定によってどれだけGTX 1080に迫れるかを確認できるはずだ。

 テストに用いたグラフィックスドライバは,GTX 1070 Tiのレビュワーに対してNVIDIAから配布された「GeForce 388.09 Driver」。公式にはより新しい「GeForce 388.13 Driver」がリリース済みだが,テスト開始タイミングの都合もあり,今回はレビュワー向けドライバで統一することをあらかじめお断りしておきたい。
 そのほかテスト環境は表2のとおりだ。

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 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション20.1準拠。ただし,21.0を先取りする形で,以下のテストを追加している。

  1. 3DMark「Time Spy」の「Extreme」テスト
    〜テスト方法は“無印”に準拠する
  2. 「Middle-earth:Shadow of War」(以下,Shadow of War)テスト
    〜「Superposition Benchmark」を差し替え。ゲーム側の公式ベンチマークモードを利用し,描画負荷が最も高くなる「ウルトラ」プリセットを採用する

 テスト解像度は,GTX 1070 Tiの立ち位置から,3840×2160ドットと2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つとした。


GTX 1070 Tiの性能はGTX 1080とGTX 1070のちょうど中間!?


 以下,グラフ中に限り,ROG-STRIX-GTX1070TIのOCモードとGamingモードを順に「ASUS 1070 Ti(OC)」「ASUS 1070 Ti(GA)」と表記することと,今回,グラフのバーはGTX 1080を一番上に置くスペック順の並びにしてあることを断りつつ,「3DMark」(Version 2.4.3819)の結果から見ていこう。

 グラフ1は,3DMarkのFire Strikeにおける総合スコアをまとめたものだが,GTX 1070 TiはGTX 1080の92〜93%程度,GTX 1070の112〜114%程度というところに落ち着いている。
 ROG-STRIX-GTX1070TIのGamingモードはGTX 1070 Tiとほぼ同じか,最大約1%高いスコアだ。OCモードだと約2%高いスコアを示し,対GTX 1080のスコアを94〜95%程度にまで詰めている。

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 Fire StrikeのGPUテスト結果である「Graphics score」を抜き出したグラフ2でも,総合スコアをおおむね踏襲する結果が出ている。GTX 1070 TiはGTX 1080の約91%,GTX 1070の約114%というスコアで,ROG-STRIX-GTX1070TIのOCモードはそこからさらに2〜3%程度高い値を示した。

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 続いてグラフ3は3DMarkのTime Spyにおける総合スコア,グラフ4はそのGPUテスト結果をまとめたものだ。
 ここでGTX 1070 Tiは対GTX 1080で93〜95%程度,対GTX 1070で114〜119%程度のスコアを出している。なので,Fire Strikeよりも相対的によい数字ということになるだろう。
 GTX 1070 TiとROG-STRIX-GTX1070TIの力関係はFire Strikeとほぼ同じだ。

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 ここまでのテストで,ROG-STRIX-GTX1070TIのスコアはわずかながらも確実にGTX 1070 Ti Founders Editionより高いことが分かったわけだが,その理由を確認しておこう。
 グラフ5はGTX 1070 Tiの3条件で,Time Spy実行中のGPU動作クロックを「GPU-Z」(Version 2.4.0)から追ったものだ。これを見ると,GTX 1070 TiとROG-STRIX-GTX1070TIは同じ動作クロック設定であるものの,搭載するクーラーが持つ冷却能力の違いによって,実際の動作クロックに違いが出ているのが分かる。2.5スロット仕様のクーラーは,伊達ではないということである。

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 以上を踏まえつつ,ゲームタイトルを用いたテストの結果を見ていくとしよう。
 グラフ6〜8は「Prey」の結果である。1920×1080ドット条件ではGTX 1070以外で相対的なCPUボトルネックが生じてスコアの頭打ちが生じ,逆説的にGTX 1070 Tiの優位性を示しているが,ともあれ残る2条件で平均フレームレートを比較すると,GTX 1070 Tiは対GTX 1080で91〜92%程度,対GTX 1070で112〜113%程度と,3DMarkをほぼ踏襲する結果になった。

 面白いのは,ROG-STRIX-GTX1070TIのGamingモードがGTX 1070 Tiに対して5〜6%高いスコアを示す一方,OCモードは6〜7%程度高いスコアと,ほとんど変わらない結果になっていることだ。
 グラフ自体はなだらかなスペック順になっているので,とくにおかしくないと言えばそれまでだが,ちょっと気になるところではある。

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 続いて「Overwatch」の結果がグラフ9〜11だ。ここでも平均フレームレートを追ってみると,OverwatchでGTX 1070 TiはGTX 1080の約90%,GTX 1070の114〜115%程度なので,ほぼ中間の位置という理解でいいのではなかろうか。
 GTX 1070 Tiと比べると,ROG-STRIX-GTX1070TIのGamingモードは約1%,OCモードは1〜2%程度高いという,3DMarkを踏襲したスコアで,最小フレームレートにもこれといった特徴は出ていない。

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 グラフ12〜14は「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)の結果だが,GTX 1070 Tiの平均フレームレートは対GTX 1080で88〜91%程度,対GTX 1070で115〜116%程度なので,立ち位置はここまでと変わっていない。ただ,4Gamerが合格ラインとする平均100fps,最小80fpsのラインを,1920×1080ドット条件のGTX 1070がかろうじてクリアしているのに対し,GTX 1070 Tiは楽々とクリアできているのは,1つの見どころと言っていいのではなかろうか。
 ROG-STRIX-GTX1070TIのOCモードがGTX 1070 Tiより4〜7%程度高いスコアを示し,対GTX 1080のスコアを詰めている点も押さえておきたいところだ。

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 「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)の結果がグラフ15〜17だ。
 平均フレームレートでGTX 1070 TiはGTX 1080の91〜93%程度,GTX 1070の114〜115%程度で,やはり両者の中央程度というところに落ち着いている。ROG-STRIX-GTX1070TIのOCモードは,そんなGTX 1070 Tiより約3%程度高いスコアを示しているが,GTX 1080との間にはなお5%以上の開きがあった。

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 今回初登場となるShadow of Warの結果がグラフ18〜20だ。Shadow of Warは,ウルトラプリセットを選んだ場合,解像度1920×1080ドットでもグラフィックスメモリ使用量が8GBを超えるという,とてもメモリに厳しいテストなのだが,それゆえ3840×2160ドットではスコアが明らかに丸まっており,とくに最小フレームレートは,おそらくゲーム側のフェイルセーフ機能によって24fpsの横並びになってしまった。
 そこでそれ以外のテスト条件でスコアを比較することになるが,GTX 1070の平均フレームレートは対GTX 1080で91〜92%程度,対GTX 1070で115〜116%程度と,ここまでとほぼ同じ傾向になっている。

 一方,ROG-STRIX-GTX1070TIはOCモードであっても対してスコアが上がらず,GTX 1080との間にあるスコア差を詰められていない。ここにGTX 1070 Tiの抱える,メモリという相対的な弱点の存在を確認することができるだろう。

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 「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものがグラフ21である。
 FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチでは,1920×1080ドットでCPUボトルネックによってスコアが丸まり気味になるが,それ以外の解像度だと,GTX 1070 TiはGTX 1080の90〜91%程度,GTX 1070の約115%程度と,ここまで見てきたような力関係になっている。
 ROG-STRIX-GTX1070TIのスコアがGTX 1070 Tiとほとんど変わらないのはShadow of Warと同じだが,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチはそこまでグラフィックスメモリを使い切るようなタイトルではないので,高い動作クロックがスコアにあまり影響を及ぼしたりはしないということなのだろう。

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 グラフ22〜24は,そんなFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものになる。
 平均フレームレートはスコアを踏襲したものとなったが,最小フレームレートはCPUの影響を大きく受けるため,平均フレームレートほどはGPU間のスコア差が開いていない。ただそれだけに,2560×1440ドット時にGTX 1070の最小フレームレートが40fpsのところ,GTX 1070 Tiでは50fpsを超えてくるというのは,インパクトのある結果だと言えるだろう。

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 「Forza Horizon 3」の結果がグラフ25〜27だ。
 ここにおいて,GTX 1070 Tiは平均フレームレートでGTX 1070より15〜22%程度高い,ほかのテストよりもスコア差を付けた結果を残している。対GTX 1080だと91〜94%程度で,こちらはあまり変わらないが,ROG-STRIX-GTX1070TIのOCモードだと対GTX 1080で94〜98%程度のスコアとなるため,「上位モデルに迫るスコア」とまとめていいのではなかろうか。
 なお,Forza Horizon 3で最小フレームレートが極めて低くなるのはGeForceの仕様だ。実際にGTX 1070 Tiでプレイアブルなのは,最小フレームレートが20fpsを超える2560×1440ドット以下だろう。

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消費電力はGTX 1070比で30W近く増大。ROG-STRIX-GTX1070TIとGTX 1070 Tiとの違いはあまりない


 続いて,GTX 1070 Tiの消費電力もチェックしていこう。まず,「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて計測した,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移をまとめたものがグラフ28だ。
 GTX 1070 Tiは100W台から200W前後を推移し,まれに300Wを超えてくるのを確認できる。ROG-STRIX-GTX1070TIのOCモードだと300W超を記録する回数が増えているのも見てとれるだろう。少なくとも「GTX 1070より高い」ことだけは間違いないと言える。

※グラフ画像をクリックすると拡大版を表示します
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 そんなグラフ28のスコアから中央値を求めたものがグラフ29となる。GTX 1070 TiはGTX 1070と比べて約26W上がり,GTX 1080とのスコア差は10W弱だ。
 一方,GTX 1070 TiとROG-STRIX-GTX1070TIの2条件では,後者のほうが若干高いものの,劇的に異なるというわけではないという結果になった。OCモードであったとしても,出荷レベルでのクロックアップではないことが影響しているのかもしれない。

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 念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力も計測した。その結果がグラフ30だ。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
 スコアはおおむねグラフ29を踏襲しているが,それだけに,GTX 1070 TiとGTX 1070のスコアがより大きく開く傾向にあるのは少し気になるところだ。

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 最後に,「GPU-Z」(Version 2.4.0)を用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。
 ここでは,温度24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。

 結果はグラフ31のとおり。GPUごとに温度センサーの位置が同じとは断定できず,とくにROG-STRIX-GTX1070TIは,温度の制御法もGPUクーラーもFounders Editionとは異なるため,横並びの比較に意味はないと断ってから続けるが,まず,GTX 1070 Ti Founders Editionの高負荷時における温度は,既存のFounders Editionと大差ないところに落ち着いている。従来同様の制御が入っているということなのだろう。
 一方のROG-STRIX-GTX1070TIは高負荷時に70℃を下回っており,冷却能力はかなり高いと言っていい。
 そんなROG-STRIX-GTX1070TIでアイドル時の温度が高くなるのは,本製品でアイドル時にファンの回転が停止するためである。

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 気になる動作音だが,筆者の主観であることを断ってから記しておくと,GTX 1070 Ti Founders EditionのそれはGTX 1080やGTX 1070のFounders Editionと変わらない。
 対するROG-STRIX-GTX1070TIは非常に静かだ。少なくとも,GTX 1070 Ti Founders Editionよりは明らかに静音性が高いと言える。


GTX 1080とGTX 1070の間を埋めるモデルとして相応の存在感はあるGTX 1070 Ti。問題は一にも二にも価格だ


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 「NVIDIAがそのように設定しているのだから当たり前」ではあるのだが,GTX 1070 Tiの性能は,GTX 1080とGTX 1070のちょうど中間という,見事なところに収まった。また,カードメーカーオリジナルモデルは,「出荷時のGPU動作クロックがベース1607MHz,ブースト1683MHzで固定」という制限はあれども,現実にはカードメーカーが独自に用意している「クロックアップ動作モード」を保証の範囲で選べるケースが多いため,ソフトウェアのインストールという一手間が面倒でないなら,とくに問題にはならないだろう。

ROG-STRIX-GTX1070TIの製品ボックス
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 しかし問題は価格だ。北米市場におけるGTX 1070 Ti搭載カードのメーカー想定売価は449ドル(税別)で,GTX 1080より100ドル安いはずなのだが,発売から時間が経って値段の下がっているGTX 1080カードは,2017年11月2日現在,安価なものであれば6万円台前半から購入できてしまう。もちろんハイエンドモデルだと10万円近いのだが,中心価格帯は6万円台後半から7万円台だ。
 ならGTX 1070 Tiはというと,発売時点での実勢価格は6万円台半ばから8万円程度。つまり,GTX 1080搭載カードとほとんど変わらないのである。発売日時点の話に限って言うのであれば,GTX 1070 Tiカードを選ぶ理由はない。

 GTX 1070搭載カードの実勢価格は4万円台後半から6万円程度(※2017年11月2日現在)。となるとGTX 1070 Tiカードの適正価格は5万円台中後半ということになるのではなかろうか。年末商戦にかけて,そこまで下がってくるようなら,GTX 1070 Tiカードは狙い目である。

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