インタビュー
実は「創造2」になるかもしれなかった? 「信長の野望・創造 with パワーアップキット」について,プロデューサーとディレクターにインタビュー
そこで4Gamerでは,本作の内容について,プロデューサーを務めるコーエーテクモゲームスの小笠原賢一氏と,ディレクターの小山宏行氏に,あらためて聞いてみた。
「信長の野望・創造 with パワーアップキット」公式サイト
パワーアップキットは「創造」で見合わせた要素とプレイヤーの意見を盛り込んだ大ボリュームに
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。完成発表会では,今回のパワーアップキットが新作に匹敵するボリュームになったとおっしゃっていましたね。
ええ。発表会で話したとおり,かなりのボリュームになりました。というのも,そもそも「信長の野望・創造」は,シリーズ30周年を記念する作品として幅広いプレイヤーに遊んでもらうことを考え,これまでの「革新」「天道」から大きくシステムを変えました。そのため「創造」では,ゲームの主軸から少し外れた細かな部分に関しては,あえて入れないでおこうと考えたんです。
4Gamer:
それは,たとえばどんな部分ですか?
小笠原氏:
発表会で紹介した配下軍団制や,朝廷外交,調略要素などです。また城の改修については,従来のシリーズにあった要素ですが,「創造」では見合わせていたんです。
一方で,実際に「創造」を遊んでいただいたお客様からは,「内政や外交などをもっと深くやりたい」といった声をたくさんいただきました。そこで,私達が本当は入れたかった部分と,お客様からリクエストのあった部分を,「創造」に合うようパワーアップキットとして作ったことで,このボリュームになったのです。
小山宏行氏(以下,小山氏):
とくに調略要素は,「創造」のシステムに合わせるため,かなり考えましたね。
4Gamer:
全体的にまったく新しいシステムなので,まずは「創造」本編で基本部分だけをリリースして,パワーアップキットでさまざまな要素を補うことにしたわけですか。名称をパワーアップキットではなく,「信長の野望・創造2」にする案もあったとのことでしたが。
小笠原氏:
ええ。「ここまで作り直すなら『創造2』というネーミングのほうがしっくりくるのではないか」と考え,ゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウ(コーエーテクモゲームス 代表取締役社長 襟川陽一氏)に具申しました。最終的には発表会でお話したとおり,従来のシリーズにならってパワーアップキットに落ち着きましたが。
私達としては,「ただのパワーアップではなく,もっとすごいことをやっている」ということを伝えたほうがいいのではと考えたんです。従来のパワーアップキットは,本編のシステムをあまり変えずにシナリオを増やしたり,エディット機能を加えたりしてきましたが,その一方で今回は会戦システムがまったく違うものになっていますから。ここまで作り直しをしたのは,初めてなんですよ。
小笠原氏:
とくに会戦システムに関しては,関ヶ原の戦いのような大きな合戦ができるようにするため,完全なリニューアルが必要だったんです。
4Gamer:
関ヶ原の戦いのような,東軍西軍に分かれてのダイナミックな合戦を再現するためだったと。
小笠原氏:
そのとおりです。また関ヶ原の戦いだけでなく,桶狭間の戦いや川中島の戦いといった知名度の高い合戦に関して,もっと臨場感を出せないだろうかとも考えていました。
小山氏:
また「創造」本編では,会戦をやってもあまりメリットがないという意見もいただきました。そこで今回は,会戦に勝つとアイテムがもらえたり,経験値が多めに入ったりと,それなりにメリットを増やしています。
4Gamer:
それにしても,本編の発売から約1年で新作1本分のコンテンツを作るのというのは,大変だったと思うのですが。
小山氏:
そうですね。通常,パワーアップキットの開発は本編よりも小規模のチームで行うのですが,今回は本編のメンバーがそのまま残って開発を続ける形になりました。
ただ,小笠原が話したように,お客様の声や私達が本編でやりたかったことなどがありましたから,何をやればいいのか迷うことはありませんでした。
小笠原氏:
実は,アップデートによる機能拡張で何とかなるんじゃないかと考えていたこともありました。しかし,それではできることが限られます。そこで私達が考えていたことやお客様の声を実現し,かつサウンドやビジュアルにも手を加えたフルバージョンとして,きちんと作り込もうと考えを切り替えたんです。
4Gamer:
「創造」では,何度か無償の機能拡張アップデートを実施していますよね。やはりサウンドやビジュアルまで手を加えるとなると,アップデートでの対応は難しいのでしょうか。
小笠原氏:
時間も人手も必要になりますから,なかなか実現は難しいですね。たとえば城の改修に関しては,数値の変化だけならアップデートでも可能です。しかし城の外観といった表現は戦国時代における重要な部分ですから,数値が変わるだけでは不十分です。それはもったいない話ですから,きちんとパワーアップキットとしてお届けしたかったんです。
またパワーアップキットでは各システムの拡張について,可能な限りお客様の好みに合わせた設定ができるようにしています。
小山氏:
アップデートだとそういった選択ができませんから。たとえばある部分を「もっと深く遊びたい」という声にお応えして作り込んだら,逆に「シンプルだからこそ,よかったのに」という意見をいただくこともあるでしょう。ですからパワーアップキットでは,そういった事態が起こらないように,慎重に検討を進めました。
パワーアップキットに盛り込まれたシブサワ・コウ氏のリクエストとは
4Gamer:
パワーアップキットの開発上で,もっとも苦労したことは何でしょう。
チーム全体が一番「え?」となったのは,オープニングムービーのリニューアルですね。
4Gamer:
そう言えば,パワーアップキットでオープニングをリニューアルするのは,初の試みだとか。
小笠原氏:
当初は,「創造2」にするのであれば新たにオープニングを作る,パワーアップキットなら従来シリーズと同じく作らないと話していたんです。
小山氏:
結果,タイトルはパワーアップキットになりましたから,誰もがオープニングは作らないと考えていたんですよ。
小笠原氏:
ところがシブサワ・コウから「30周年記念作品の集大成だし,やはりオープニングを新しくした方がいい」とのリクエストが開発の終盤にありまして……。
そこで本編のオープニングを手がけていただいた樋口真嗣監督に再び連絡を取りました。お忙しい中,何とか時間を作っていただいて完成したのが,あの関ヶ原を表現した映像です。
4Gamer:
発表会では,500人以上の武将追加が大変だったという話もありました。
小笠原氏:
ゲーム中に登場する城の数が多いですから,そのぶん武将の数もしっかり用意しようと。そもそもの発端は,「“武田二十四将”と言うくらいだから,きちんと24人そろえよう」というものだったんです。ただ,それを実現するなら,ほかの大名家も同じようにしないと,ただのプロデューサーの武田びいきになってしまう(※小笠原氏は武田家好きを公言している)ので,最終的にすごい数になってしまったというわけなんです(笑)。
4Gamer:
と言うと,最初に500人という目標を定めたわけではなかったと。
小笠原氏:
「500人も追加したらすごいね」みたいなことは言っていましたけれど。
ただ500人にもなると,あまりメジャーではない武将も入ってくるので,資料を見つけるのが大変でした。本当に社内の資料を総当たりして……。それでも「あの武将が入ってない」という意見が出てくるでしょうけれども。
4Gamer:
もう,細かすぎて分からないことに……。
小笠原氏:
そこは申し訳ないのですが,パワーアップキットのエディタでお客様自身で作っていただくということでお願いしたいです。
4Gamer:
新要素としては「姫武将」が追加されますね。とくに姫武将の顔グラフィックスが,これまでに公開されたものから変わっているとのことですが。
小笠原氏:
シブサワ・コウは,コーエーテクモゲームスのゲームに登場する女性キャラの顔に関して,相当厳しいんです。そのため,一度正式版として公開した顔グラフィックスが,ゲーム本編で変更されることがままあります。
今回に関しては,実在して名前も知られた人物ですから,よりイメージに合うようなブラッシュアップが掛けられています。とくにメインビジュアルの濃姫に関してはかなりこだわっていました。
4Gamer:
ちなみに小笠原さんと小山さんが推す姫武将を教えてもらえますか。
小笠原氏:
絵的な部分で言うと,私は,「ねね」ですね。何か朗らかで,癒やされるところが好きです。
私は今回だと「ガラシャ」がいいですね。ちょっと憂いのある表情とか。
4Gamer:
なるほど。姫武将は新要素としてフィーチャーされていますけれど,そのほかの特徴はありますか。
小笠原氏:
「創造」本編の反省の一つとして,プレイ上,敵対小勢力はそのまま潰してしまうことが多く,あまり「従属」を使っていただけていないというものがありました。そこで今回,敵を従属させると,姫の輿入れが発生する確率を高めています。
小山氏:
両家のつながりを深めるための政略結婚は,史実でもよくある話ですからね。まあゲーム中では,いろいろオブラートに包んだ表現になっていますけれども。
小笠原氏:
よろしければ,姫のコレクションにもチャレンジしてみてください。
「信長の野望」として,幅広いプレイヤーに長く愛される仕上がりに
4Gamer:
パワーアップキット発売後にも,アップデートやDLCを予定しているとのことですね。
いま準備を進めていますが,時期については検討中です。やはり発売後に,「もっとこうなったらいいのに」という意見を頂戴することになるでしょうから。
4Gamer:
それではコラボレーションについても教えてください。
小笠原氏:
コミックのコラボに関しては,「創造」本編で「戦国武将列伝」とコラボさせていただいたとき,お客様から「センゴク」や「ドリフターズ」とのコラボに関して,リクエストが結構あったんです。
また社内コラボの「采配のゆくえ」に関しては,遊んでいただいた方から「(采配のゆくえの)三成を出してほしい」といったリクエストをいただきました。こちらは,「采配のゆくえ」のプロデューサーが私ですし,関ヶ原の戦いをクローズアップしている共通点もありましたので,「じゃあ,やろうか」という感じでしたね。
4Gamer:
今後,「采配のゆくえ」以外にも,コーエーテクモゲームスタイトルとのコラボはあるのでしょうか。
小笠原氏:
「創造」本編では,「戦国無双」シリーズや「のぶニャがの野望」(PC / iPhone)とコラボしているんですよ。個人的には「信長の野望 201X」(PC / iPhone / Android)とやってみたいですね。謎仕様で戦車が作れるようになり,会戦がよりダイナミックになるとか(笑)。
4Gamer:
それはダイナミックすぎるでしょう(笑)。
小笠原氏:
ともあれ,3月30日の「信長の野望の日」には何かやりたいです。
4Gamer:
続報をお待ちしています。では,あらためて教えてほしいのですが,シブサワ・コウ ゼネラルプロデューサーは,「信長の野望」を冠するタイトルについて,「お客様から長く愛されるタイトルでなければならない」という発言をしています。今回のパワーアップキットはそういった仕上がりになっていますか。
小笠原氏:
発表会でもお話ししたように,このパワーアップキットはさまざまな要素をてんこ盛りにしています。そこで,ここから始めるというお客様が苦にならないよう,ゲームの序盤ではこれだけ考えればいいといったところからスタートし,だんだんやることが増えていく形になっています。
それに加えて,「ここは面倒だ」という細かい部分はAIに任せてしまうことも可能です。またチュートリアルも充実しているので,「信長の野望」のコアなファンから,久々にシリーズを遊んでみようというお客様まで広くカバーできていると言えます。
とくに「創造」本編ではゲームの展開が速くなってしまい,腰を落ち着けて楽しむことができないという反省がありました。パワーアップキットでは,カスタマイズ要素ややり込み要素も多数用意しましたから,長く楽しんでいただけるのではないでしょうか。
小山氏:
今回は「創造」本編を超える自信作として,お客様の意見やリクエストを踏まえたパワーアップをしています。ある意味,今まで不満があった部分を解消できているはずですので,「これを待っていたんだ」と言っていただけるようなゲームになったと思います。
もっともお客様からすれば「まだ足りない」という部分があると思います。そういったお声に対しては,今後のアップデートで完成度を高めていきますのでご期待ください。
4Gamer:
ありがとうございました。
「信長の野望・創造 with パワーアップキット」公式サイト
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