レビュー
DHARMAPOINT「DRTCM37」のクローンを冷静に正面から評価してみる
COUGAR 300M Gaming Mouse
なお,先の記事で語られている内容は繰り返さないので,この点はご注意を。マウスの中を見たい人は,先の記事をチェックしてもらえれば幸いだ。
これはコピーというレベルじゃない。「COUGAR 300M」とDHARMAPOINT「DRTCM37」を横並びで比較してみた
もともと定評ある形状ということで
その外観に違和感はない
テストに先立って,COUGAR 300Mのスペックを下のリストで概観しておきたい。「ケーブル抜き」としてある重量は,分解時,実際にケーブルを取り外して計測したときのものである。
●COUGAR 300Mの主なスペック
- 基本仕様:光学センサー搭載ワイヤードタイプ
- ボタン数:7個(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,ホイール手前×1,左サイド×2,プロファイル変更×1)
- 最大トラッキング速度:60IPS(≒1.52m/s)
- 最大加速度:20G
- 画像処理能力:未公開
- フレームレート:6400fps
- DPI設定:400〜4000DPI(400DPI刻み)
- USBレポートレート(ポーリングレート):125/250/500/1000Hz
- データ転送フォーマット:16bit
- 実測サイズ:78(W)×135(D)×40(H)mm
- 実測重量:約131g(※ケーブル込み),約92g(※ケーブル抜き)
- マウスソール:未公開
- ケーブル長:1.8m
DPI設定は400刻みのざっくりとした選択しかできないので,この点も注意が必要だろう。
さて,あらためて確認するまでもないが,68(W)×124(D)×39(H)mmという実測サイズは,DRTCM37と完全に同じ。DRTCM37だとケーブル込みの重量は約129.5g,ケーブル抜きのそれは約91gだったので,「ほぼ同じだが,若干重い」ということになる。ネジが増えたりしているので,それが影響しているのだろうか。
そんな上面カバーにはつや消し加工が施されており,指先が触れるとわずかにサラサラとした感触がある。この表面加工が若干の滑り止めとなっているため操作は快適だ。ただ,この加工は,指先の油分が付着すると,その部分だけ色が濃くなり,若干目立ってしまうのは気になった。定期的に拭けば“痕跡”は消えてくれるのだが,それでも,触れていない部分と比べるとややテカって見えてしまう。これを安っぽく感じる人はいるだろう。
「つまみ持ち」や「かぶせ持ち」時,凹みに指が自然と収まるデザインになっている |
ケーブルは布巻きタイプで,太さは実測約3mm。若干硬めに感じたが,引っ張られるほどでもなかったので,意外と馴染みやすいのかもしれない |
なお,2015年5月8日の記事では,サイドボタン手前側スイッチの高さがCOUGAR 300MとDRTCM37で違うという指摘を行っているが,使用感レベルで劇的な違いはなかった。
スクロールホイールはラバーで覆われている。ラバーの幅は実測約7mmあり,3mmごとに約1.5mmほどの大きさの溝が掘られていた。個人的には,ZOWIE GEARのマウスに近い感触で,とくにこれといった問題もなく,普通に扱える印象だ。
握った印象はDRTCM37と完全に同じ
ただし,滑りは鈍くなっている
実際に握った感じはどうか。写真と短評で以下のとおりまとめてみたので,参考にしてもらえればと思う。
以上,もともとDRTCM37が「小型の『IntelliMouse Explorer 3.0』」的な位置づけの製品だったこともあり,それと同じ形状を採用するCOUGAR 300Mも,DRTCM37,そしてオリジナルとなるIntelliMouse Explorer 3.0同様,さまざまな持ち方をカバーできる。今回筆者は,「ARMA 3」や「Verdun」といったFPSだけでなく,最近遊ぶようになってきた「Heroes of the Storm」といったMOBAで,何時間もプレイし続けてみたが,使い勝手という点で,違和感を覚えることはほとんどなかった。
なお,上面カバーの変更により,左右メインボタンの“返り”が変わったこと自体は,1時間も連続でプレイしていれば慣れると思う。
ダウンロードで入手できる設定ツールは
シンプルながら必要最低限の機能を持つ
下に示したのはUIXのメイン画面だ。
COUGAR 300Mは3つの動作モードを本体底面のボタンで順繰りに切り替えられる関係で,UIXでも「モード1」〜「モード3」で異なるセンサー設定とキー割り当て設定,LED設定を行える。DPIは最大で2パターン選択しておくと,スクロールホイール手前のボタンを使ってやはり順繰りに切り替え可能になっている。
メイン画面で「モード1」〜「モード3」の上には「ゲームプロファイル管理」という選択肢もあるが,ここでは各モードに割り当てる「ゲームプロファイル」を文字どおり管理できる。「ゲームプロファイル」にゲームタイトルの実行ファイルを紐付けておくと,COUGAR 300Mの底面に用意されたモード切り替えボタンを押さずとも,自動的に動作モードを切り替えられるので便利だ……と書こうと思ったのだが,ゲームを終了しても,モード切り替え前の状態には戻ってくれない。結局は底面部のボタンを押さねばならないので,激しく微妙である。
なお,ボタンへの機能割り当てと,LEDカスタマイズの画面は下に示したとおりだ。
「キー割り当て」では,「基本」「詳細」「マクロ」のタブから割り当てたい役割のアイコンを選択し,マウスの画像にあるボタンから伸びているボックスへとドラッグすることで割り当てを設定できる |
「ライティングコントロール」では,動作モードに応じて光るLEDの色と点灯方法を確認可能。LEDが埋め込まれているのはDPIインジケータ部分だけなので,意外と地味だったりする |
全体としては,ゲーマー向けマウスの設定用ツールとして,最低限必要な要素がしっかり入っている印象である。多機能ではないが,無難な完成度になっていると言っていいのではなかろうか。
センサー性能は「残念」の一言
ほとんどチューンされていない?
恒例のセンサー検証に入ろう。今回は,下に示したテスト環境および設定でテストを行う。
●テスト環境
- CPU:Core-i7 4770(定格クロック3.4GHz,最大クロック3.9GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量8MB)
- マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z87X-UD4H(Intel Z87 Express)
※マウスはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結 - メインメモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2
- グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-760OC-2GD(GeForce GTX 760,グラフィックスメモリ容量2GB)
- ストレージ:SSD(CFD販売「CSSD-S6T128NHG5Q」,Serial ATA 6Gbps,容量128GB)
- サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:V5
- UIXバージョン:V1.03
- DPI設定:400〜4000 DPI(主にデフォルト設定の800 DPIを利用)
- レポートレート設定:125/250/500/1000Hz(※主にデフォルト設定の1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
まずは,マウスを接地面から持ち上げ,反応が途絶する高さ「リフトオフディスタンス」から見ていこう。ここでは,市販されているマウスパッド14製品上で,厚みの異なるステンレスプレートを重ねながら,反応が途絶する高さを計測する。その結果をまとめたのが表で,「Razer Manticor」を除き,すべてで2.1mm以上となった。リフトオフディスタンスに関し,COUGARとしてのチューンが一切入っていないのではないかと疑われる結果だ。
センサーチューニングに関する疑問が若干生じたところで,次は「MouseTester」を用いたテストだ。
ここではマウスパッドを「ARTISAN 隼XSOFT」,レポートレートはデフォルトの1000Hzでそれぞれ固定。その状態から,400/800/1200/1600/2000/4000DPIを選択し,その挙動をチェックすることにした。
下に示したグラフは,Y軸のプラス方向が左への移動。対するマイナス方向が右への移動時におけるカウント数,横軸がms(ミリ秒)をそれぞれ示している。青い点が実際に検出したカウントで,青い線は検出された点を正規化したものだ。ざっくり,「波線が青いライン上にあればあるほどよい」ことを踏まえつつ,並べた結果を見てみてほしい。
というわけで,端的に述べてひどい結果になった。テストミスを疑って何度かテストし直したくらいだが,頂点付近でガッツリと挙動が不安定になり,マイナス方向へ加速しながらマウスを動かしている最中にプラス方向へのネガティブアクセルが生じている状況に変化はなかった。
なぜこういう現象が生じるのか,断言はできないものの,先ほどのリフトオフディスタンスを見ても,COUGAR 300M(のファームウェアV5)でセンサー出力の最適化らしきものがほとんど行われていないとはいえそうである。
最後に,直線補正の有無を確認しておきたい。
UIXに直線補正関連の設定項目はないのだが,下に示したテスト結果を見る限り,体感できるレベルの直線補正は入っていないと述べていいだろう。実際,ゲーム中にも,直線補正特有の引っ張られる感覚を受けることはなかった。
COUGAR 300MはDRTCM37のバージョン0.9!?
現時点では勧めにくい
以前,MizarはDRTCM38のバージョン1.5的な存在だという話をしたことがあるが(関連記事),それに準じて語るなら,COUGAR 300MはDRTCM37のバージョン0.9的な存在といえるかもしれない。
この形でなければダメだという人も,最低限,今後のファームウェアのアップデートで「センサー性能が改善された」という情報が出てくるのを待ったほうがいいのではなかろうか。
COUGARのCOUGAR 300M製品情報ページ(英語)
マイルストーン(販売代理店)のCOUGAR 300M製品情報ページ
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