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欧米でヒット中の都市建設シム「Cities: Skylines」をレビュー。きれいにカーブを描いた道路を自由に引いて,理想の都市建設を目指せ
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印刷2015/03/28 12:00

プレイレポート

欧米でヒット中の都市建設シム「Cities: Skylines」をレビュー。きれいにカーブを描いた道路を自由に引いて,理想の都市建設を目指せ

Cities in Motionのデベロッパによる新作都市開発シム


 統一地方選挙を控え,皆さんが住む地域でも「自分達の住む街はどうあるべきか」という議論が行われているはず。そんな時期にふさわしいタイムリーなゲームとして,2015年3月に発売された都市建設シミュレーション「Cities: Skylines」を紹介したい。ちょっと無理があることは,自覚している。

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 フィンランドのデベロッパColossal Orderが開発し,日本でもおなじみのParadox Interactiveから発売された本作は,メディアとプレイヤーから高い評価を受け,Paradox史上最大のセールスを記録したという。いわゆるパラドゲーで知られる同社だが,プロジェクトのキャンセルが頻発するなど,パブリッシャとしての業績がここ数年低調であっただけに,本作の高い評判と売上はパラドゲーのファンにとっても嬉しいニュースだったはずだ。

「Cities: Skylines」公式サイト


 さて,シミュレーションゲームのファンにとって気になるのは,やはり都市建設シムの代表格である「シムシティ」シリーズとの違いだろう。これについて,Colossal OrderのCEOであるMariina Hallikainen氏は,「シムシティ」(2013年)が賛否両論であったことを受けて,Paradoxから開発のゴーサインが出たとしており,その意味において本作は,都市交通に焦点を当てた「Cities in Motion」シリーズで実績のある同社が,シムシティシリーズを踏まえたうえで「自分達ならどのような都市建設シムを作りたいか」を追求した作品だといえる。

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 オフラインでのプレイが前提になっているなど,一見しただけで分かる違いも多いが,プレイした印象では,とくに交通システムに関するゲームバランスにおいて,Cities in Motionシリーズで培われた経験を活かした独自性が発揮されているように感じた。
 発売から若干時間が空いてしまったが,ここで,筆者の街の発展を通じてゲームの内容を紹介しつつ,開発者のこだわりポイントについても考えてみたい。ちなみに,現在のところ日本語版の予定はないものの,非公式の日本語化ファイルが有志の手によって作られているので,自己責任で試してみるのもいいかもしれない。


都市開発シムの常道を押さえたゲームシステム


 さて,プレイヤーが開発を任されるのは,高速道路や鉄道こそ整備されてはいるが,ほかには何もない2×2kmの土地だ。選択できるマップは複数あり,それぞれ地形や利用できる遠距離交通機関,資源の量などに違いがある。筆者が選んだのは「リバーラン」で,ここはバランスが取れた平野地域のマップだ。
 都市の名前は,海外デベロッパのゲームなのでそれっぽい名前をつけるべきなのかもしれないが,あえて筆者の故郷にちなんで「新福井」とした。北陸新幹線の開通に沸く隣接県に負けないくらいの発展を,せめてゲームの中だけでも実現したいところだが,このように,日本語の名前の使用も問題なく行える。
 なお,スタート画面で道路の進行方向を右側にするか,左側にするかを選択できる(デフォルトはヨーロッパ式に右側通行)。イメージは日本の都市なので,もちろん左側通行を選択した。

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 ゲーム開始と同時に,まずは時間を止めてマップをじっくり眺め,大まかな開発プランを立てることにする。その際,注意すべきことは3点。水資源の確保電力供給の方法,そして高速道路との接続だ。初期資金には比較的余裕があるとはいえ,水道管や電線,道路を好きなように引けるほど潤沢ではないので,開発する地区と水や電力の供給源とは,なるべく隣接させたほうがいいだろう。
 筆者の新福井は,川沿いを中心に開発を進めることにした。川の近くに風力発電所を建てることで,水と電力の供給地域を一体化させ,電線を遠くまで引く分のコストを浮かせる。本作の風力発電所は,風の強い場所に建てないといけないという難しさはあるものの,環境にやさしく低コストのため,序盤の電力確保の施設として使い勝手がいい。

風力発電には十分な風が必要になる。水道施設にも電力を供給することを忘れないように
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 また,上下水道のパイプは一体なのだが,水を取り入れるポンプ場や取水塔と,水を排出する排水場は別に設置しなければならない。その際,排水管をポンプ場よりも川下にしないと,生活排水を上水として再利用することになってしまうのだ。現実世界にはありがちとはいえ,ゲームでは都市環境や住民の健康に悪影響を与えることになるので,避けるようにしよう。

こちらは水道インフラのマップ。建築物を建てるときには,対応するマップモードに自動的に切り替わるので便利だ
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 多くのマップでは,高速道路のインターチェンジがゲーム開始時点ですでに設置されている。遠距離交通網との接続は街を活性化させるため,ゲームスタートと同時に道路をつなげてしまいたいところだ。ここで気をつけなければならないのは,インターチェンジの上下線と街の道路をつなぐ場合,短い距離で合流させてしまうと,将来的にそこで大渋滞が起きてしまうことだ。そのため,複数の方向から高速道路と接続できるような道路網のイメージを,あらかじめ持っておく必要がある。

 開発を進める前に気をつけておいたほうがいい事柄は,このほかにもいくつかあるだろうが,いずれも都市開発シムにとっては普通のことなので,このジャンルに慣れ親しんだプレイヤーは違和感なくゲームに入っていけるだろう。チュートリアルもかなり丁寧に作られているので,ゲームシステムが分からずに混乱することはほとんどないはずだ。

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 これらの基本インフラを整備し終わったら,道路に面した土地に自動的に作られていく建設可能スペースに住宅地区商業地区工業地区を割り振っていくことになる。ここでも,「住宅地は,ほかの二つの地区よりも広い土地が必要」だったり「工業地区は環境汚染を発生させるので,住宅地から離れたところに設置しなければいけない」などの都市建設シム定番のお約束事は有効だ。
 興味深かったのは,地区の範囲を指定する操作が複数種類あることだ。一般的なドラッグ&ドロップによる指定に加え,まとまった地区を一気に塗りつぶすことも,逆に1マスずつ指定していくことも可能になっており,とくに,1クリックで広範囲の指定ができる塗りつぶしは非常に便利だと感じた。この“地区の指定”というアクションは交通網の敷設と並んでゲーム中で最も頻度の高いものであり,その部分でのストレスが大幅に軽減される点は,高く評価したい。

初期の新福井。詳しくは後述するが,本作ではかなり自然なカーブを描いた道路が引ける
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都市レベルを上げて街を発展させ
隣接地域を征服(?)しよう


 ゲームの序盤では,これらの一般地区以外の建造物,例えば学校や病院などの公共施設はほとんど建てられず,これらは人口が一定数に到達し,都市のレベルが上がることで順次アンロックされていく。最初のレベルアップに必要な人口は460人と比較的少ないので,各地区の需要を見ながら,住宅地区とそのほかの地区のバランスに気をつけつつ,それぞれの地区で人口を増やしていけば,次のレベルには容易に到達できる。

小さな都市へと進化した新福井
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 次のレベルでは,小学校や病院などを建てられるようになる。この頃には,ささやかながらも街の財政は黒字になっているはずだし,建てた公共施設にかかる予算は財政を圧迫するほどではないので,アンロックされた施設は積極的に建てていきたい。
 ランダムに災害が発生するのも都市建設シムのお約束だが,プレイした限り,火災が頻繁に発生するという印象だ。複数地区が炎上する大火災に発展することは多くないが,消防署は多めに建てておいたほうがいいかもしれない。

 続くレベルアップに必要な人口もそれほど多くないので,枯渇しやすい電力の確保と,住宅地区と工業地区を結ぶ道路の渋滞にさえ気をつけていれば,テンポよく次々と新しい建築物や交通機関を設置できる。

レベルアップによって予算編成なども可能に。やれることが少しずつ広がるので,順に覚えられる
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 都市のレベルが上がることで,街全体に一括して条例を施行することも可能になるが,街の中に個々の行政地区を設定し,それぞれの地区ごとに異なる条例を設定できるところも興味深い。
 筆者の新福井では,工場の密集する足羽地区や住宅地の多い藤島地区などを行政地区に設定し,それぞれの地区を優遇する税制や政策を実施してみた。また工業地区を,林業や農業などに特化させることも可能だ(語感がちょっと変だが,仕方ない)。
 都市建設シムにおける多くの工業地区は「環境汚染をまき散らす必要悪」的な存在だったが,これらの特化地区のおかげで,環境に配慮した工業地区の色づけをプレイヤーが主体的に決定できるわけだ。

地区を分けることで,街の各所に対する愛着も湧いてくる。妙にローカルな名前が見えるが,気にしてはいけない
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建築物と同様に,都市の条例も次第にアンロックされていく
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 バスや地下鉄などの公共交通機関を導入できるようになるのも,この頃だ。本作の公共バスは,路線を設定するだけで停留所を設置する必要がないシステムになっている。そのため,経営上の最適化を図るうえでのバス停の移動といった微調整も不必要で,これは個人的に嬉しいところ。交通状況の変化に応じて,バス交通網を柔軟に変更できるのだ。地下鉄については,駅に付随する最低限の施設が自動的に建設されるため,車輌が走れそうな路線を引くのには少々コツがいるかもしれない。

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 さらに,都市レベルの上昇によって隣接する地域を征服……じゃなかった,買収し,領域を拡張できるところも本作ならでは。購入資金は高くないが,拡張できる回数には限りがある。街が発展する方向や,ほかの地域に続く遠距離交通,あるいは資源の埋蔵量などを比べながら計画的に市域を拡大していきたい。

鉄道が走る右側の地区を購入した
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 従来の低密度の地区に加え,高密度地区やオフィス地区などを設定できるようになる人口5000人前後から,ゲームも中盤にさしかかる。人口の伸びも次第に緩やかになり,開発できる用地も少なくなっていくので,ここからさらに人口を増やすためには,工夫が必要だ。

川沿いから工業地区を望む。ズームアップすることでミニチュアのようなグラフィックスが楽しめる
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 複雑なシステムを持つ都市建設シムにはよくあることだが,人口増加が止まる原因は多岐にわたり,しかも最大の阻害要因が実は都市計画に対するプレイヤー自身のこだわりであったりもするので,なかなか「これをすれば必ず成長しますよ」と言えるものはない。
 領域を拡張することで開発可能な地域を増やしてもいいし,街の中心部を高密度地区に変えることで面積あたりの人口密度を増やしていってもいいだろう。また,公共施設の充実や公園などを整備することによる都市環境の向上,あるいはマップ上にすでに存在する高速道路や鉄道との接続など,ある意味,定番といえる政策がここでも有効になる。

無事人口1万8千人に到達し,晴れて「大都市」となった新福井。めでたし,めでたし
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この道路……曲がるぞ!


 このように,Cities: Skylinesは都市建設シムの基本を押さえたうえで,過去の作品でプレイヤーの多くが感じたであろうゲームシステムや操作上の細かい不満点をしっかりとフォローした作品になっている。そのため,本作ならではの独自性をお伝えするのはなかなか難しいのだが,誤解を恐れずに言えば,最大の特徴は「非常に滑らかに曲線道路が引ける」ことだろう。90°に近い急カーブはもちろん,現実に自動車を運転していてストレスがかからないような緩やかなカーブが簡単に設定でき,なおかつビジュアル面での変化にも富んでいるところが素晴らしいのだ。

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 「たかが道路」と思われるかもしれないが,大半の建築物は道路に隣接して建てなければならず,また渋滞をいかに回避するかが都市発展の鍵となる本作にとって,道路が果たす役割は非常に大きい。
 ゲームシステム面だけでなくビジュアル面でも,Cities: Skylinesで実現可能な,緩やかに曲線を描く道路を中心にした街は(都市という存在が人工物の極みであることを考えると,矛盾した表現かもしれないが)非常に自然に見える。曲線道路と直線道路をうまく組み合わせることで,無機質な感じのない,あたかも長い歴史を経てきたかのような景観を設計できるのだ。

2車線道路から6車線道路やロータリーまで,引ける道路の種類も幅広い
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 曲線道路を主体にした都市設計をする際,問題になるのが各種建築物の設置場所だ。特殊建築物の多くは四角形の敷地を必要とすることもあり,カーブを多用した都市では住宅,商業,工業,オフィス地区の敷地が凸型や細切れになりやすい。だが,これらの地区に自動的にできる建物のグラフィックスは,例え敷地が四角形でなくとも不自然にならないだけのバリエーションを備えている。

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 余談だが,以前ドイツ出身の知り合いと街の地理の話になったとき,筆者が「アメリカはヨーロッパと違って,比較的直線道路が多い(だから道を覚えやすい)」とヨーロッパの都市の街路が複雑に交差することに対して苦情を述べたところ,「だからアメリカの街は退屈なんだ」と返されたことを思い出す。本作におけるカーブにこだわった交通網は,デベロッパであるColossal Orderがフィンランドの会社であることも影響しているのかもしれない。
 直線道路は曲線道路の特殊な形態である,といってもいいくらい曲線道路へのケアがなされている本作だが,直交する道路のみでできた街を作りたいという人のニーズにも,ちゃんと対応しているので直線道路ファンも安心してほしい。


再開発にかかるストレスを軽減したゲームシステム


 さて,街を一定規模以上に発展させようとすると,どうしても道路を追加,拡張したり,地区や建築物の配置を見直したりする必要が出てくる。とくにCities: Skylinesの場合,建築物が順番にアンロックされていくため,将来を見すえた都市開発というより,短期目標をクリアする形で街を発展させていくことになる。したがって,再開発をしなければいけない時期は必ずやってくるのだ。

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 ときとしてこの再開発事業は非常に面倒であり,筆者のようなものぐさプレイヤーの場合,この「痛みを伴う改革」が嫌でゲームを投げ出してしまったりする。
 しかし本作では,この再開発に関わるストレスが非常に軽減されているのだ。すでに住宅などが建っている場所に道路を新しく引き直すときには,単純に上書きすればいいだけだ。しかし,設置コストがかかる特殊建築物への上書きは不可能なので,間違って高価な施設を壊してしまうこともないというアンバイだ。

 さらに,これらの特殊建築物はメニューウインドウを開くことで任意の場所に移転させることができるので,いちいち再建設する資金も節約できる。先にも述べたように住宅地などの地区を指定する操作が楽なことや,公共バスの路線変更をするとき,停留所を一つ一つ変える必要がないことも,目立たないがプレイするうえではありがたい点であり,こうした操作面や資金面での配慮によって,再開発のストレスは非常に低く抑えられている。

道路が引けないなあと思ったら,この写真のように特殊建築物と重なっている場合が多い
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そんなときは,建物をクリックして施設の移築を選んでやろう
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 ちなみに,都市の再設計が容易なこと,財政面での難度が低いこと,またプレイヤーを「市長」として意識させる要素がゲーム中に比較的少ないことから,本作のプレイヤーは,市長というよりもむしろ都市デザイン担当者の役割を担当しているように感じられる。
 失政の末,住宅地を潰して住民を追い出しても,市民達から非難されることはない。というわけで,創造の名のもとにどんどん街を壊して大丈夫だ。

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 以上のように,Cities: Skylinesはゲームシステム,操作性,そしてグラフィックスの面で非常にバランスのとれた都市建設シムであり,万人にオススメできる作品に仕上がっている。現在のバージョンでは,複数の車線を横切る道路を一度に引けないこと,道路に比べて特殊建築物のバリエーションが乏しいことなど,気になる部分がまったくないわけではないが,この作品の評価に影響を与えるほどのものではない。
 「Steam Workshop」には熱心なファンによる建築物が毎日のようにアップロードされているため,建物のバリエーション不足を部分的に解消することができるのも強みだろう。

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 気になる今後の展開だが,Colossal OrderのCEOであるMariina Hallikainen氏によれば,Cities: SkylinesはパブリッシャであるParadoxの「Crusader Kings II」「Europa Universalis IV」のDLC戦略を真似て,無料パッチとDLCを並行して開発していくという。高い人気を集める本作だけに,将来のアップデートにも期待が持てそうだ。

「Cities: Skylines」公式サイト

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