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ハロー!Steam広場 第259回:近未来のタクシードライバーとなり,友人失踪の謎を追うADVゲーム「Neo Cab」
「すちーむ」ってなぁに?というよい子のみんな集まれー! 「ハロー! Steam広場」は,PCゲームのダウンロード販売サイトSteamで公開されている気になるタイトルを,筆者が独断と偏見でピックアップして紹介する,とっても有意義なコーナーだ。毎週欠かさずチェックすれば,英語もドイツ語もできないのに架空言語はパーフェクトな上級Steamerにジョブチェンジできるかも。
ハロー!Steam広場 第259回は,アドベンチャーゲーム「Neo Cab」を紹介しよう。プレイヤーは,タクシーが自動化された近未来都市で数少ない有人のドライバーとなり,失踪した友人の手掛かりを追っていく。乗客との会話では,プレイヤーの感情によって選択肢が減ってしまうので,うまく感情を制御して有益な情報を聞き出そう。
4Gamer公式キュレーター
失踪した友人を追うタクシードライバーとなり,乗客から有益な情報を聞き出していくアドベンチャーゲーム「Neo Cab」
今回は,サンフランシスコのインディーズ系デベロッパ,Chance Agencyが手掛けるアドベンチャーゲーム「Neo Cab」を紹介しよう。
本作の舞台となるのは,近未来都市「ロス・オジョス」。この街には,オートメーションの分野でトップに立つ大企業「Capra」の本部があり,街のほとんどの仕事は同社により自動化されている。とくに顕著なのが運送業で,街を走るほとんどのタクシーはロボットドライバーによる自動運転だ。
そんな中で主人公のリナは,タクシー会社「Neo Cab」の有人ドライバーとして生活していたが,Capraで働いている親友のザビーから連絡を受け,彼女が暮らすロス・オジョスの都心へ転居することを決めていた。しかし,そのザビーがある日を境に失踪してしまう。
リナは彼女の行方を追うために,商売敵ともいえるCapraに支配されたこの街で,ドライバーとして活動していくことになる。
ゲームの目的は,ロス・オジョスの各地域で乗客を拾い,彼らと会話をしてヒントを得ながら,ザビーを探し出すことにある。乗客にはそれぞれのストーリー があり,会話の選択肢によって話の流れが二転三転する。ファーストコンタクトで有益な情報を得ることは難しいので,うまいこと接客してリピーターになってもらわなければならない。
Neo Cabはいわば「Uber」のようなサービスなので,接客の評価は「星」と「チップ」という形で受け取ることになる。同居予定だったザビーが失踪したことで,しばらくはその日暮らしの生活を強いられることになったリナにとって,ドライバーとしての評価は生命線でもあるわけだ。
ゲーム画面は,臨場感の高いドライバー視点と,リナと乗客の様子を一度に確認できる車内カメラ視点に切り替えられる。プレイヤーが実際に運転することはなく,基本的には乗客との会話中に現れる選択肢を選ぶことでゲームは進んでいく。マウスのみで遊べるし,コントローラにも対応しているので,楽な姿勢で物語に集中できるのは嬉しいところだ。
このゲームで重要となるのが,Feelgridと呼ばれるバイオフィードバックデバイスである。これは,装着者の血液をスキャンして感情を読み取り,それを色で可視化してくれるアイテムだ。Feelgridは,首輪や腕輪などさまざまな形のものが存在しており,それを装着している客を乗せることも多い。
相手の感情が可視化されていれば接客もしやすいが,実際のところ注視すべきなのは,客ではなくリナ本人が装着しているFeelgridである。なぜかというと,リナの感情によって潰されてしまう選択肢が出てくるからだ。
たとえば,冷静に会話を進めて情報を引き出すべき相手に対して,いきなり感情をぶつけるような選択肢を選んでしまうと,リナのFeelgridが一気に赤くなり,それを見た相手を怖がらせてしまう。当然そんな状態では,その後の選択肢も少なくなり,大事な情報を入手する機会を逃すことにもなりかねないわけだ。
評価のことを考えるなら,相手に感情を合わせなければならない。しかしプレイヤーも人間だ。時には評価のことなど顧みず,感情的に接してしまうこともあるだろう。それならそれで物語は進んでいくし,選択肢によっていきなりゲームオーバーになることもない。感情をどう動かしていくかが,このゲームの難しいところでもあり,面白い部分でもある。
リナを高く評価した乗客は,次もリナのタクシーを利用するようになる。そういったつながりを作ることで,自然と友好関係ができあがっていくところも見どころの1つだ。どういう性格なのかを知っていれば,話の流れも作りやすいし,安心して会話もできる。
だからこそ,ファーストコンタクトで仲良くなることが重要なのだが,この街の人間は個性が強すぎなうえ,初対面の人間に対してはぶっきらぼうな人が多いので,扱いに難儀するだろう。相手がFeelgridを身に着けていなくても,表情で感情を読み取ることは可能なので,相手の顔色をうかがいながら,うまいこと会話をコントロールしていきたいところだ。
プレイヤー自身の感情がゲームに反映される――いや,されてしまうところがいやらしくも面白く,感情を制御することの難しさにやきもきしながらも,目まぐるしく分岐していく物語を追いかけていくのは,なかなかにのめり込める。キャラクターのデザインや世界観が独特で,人を選ぶゲームではあるが,本作にはDEMO版も用意されているので,興味のある人はぜひ試してみてほしい。
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