インタビュー
人間と恐竜が共存する世界を,現実と同じ感覚で生活できる――「ARK: Survival Evolved」を制作したStudio Wildcardのキーマン2人に,本作にかけた思いを聞いた
本作は恐竜達が闊歩する広大な島で,武器や防具,道具などを制作し,手なずけた恐竜とともに自給自足の生活を送るサバイバルアクションゲーム。Steamで2年を超えるアーリーアクセスが行われ,そのフィードバックを徹底的に反映させたものが,現在の完成型としていよいよリリースされるわけだ。
そんな本作を手掛けるStudio WildcardのCEOであるDoug Kennedy(ダグ・ケネディ)氏と,Community Managerを務めるCedric Burkes(セドリック・バークス)氏が,東京ゲームショウ2017開催に合わせて来日していたので,本作にかけた思いやその魅力,今後の展開などについて聞いてきた。
「ARK: Survival Evolved」公式サイト
この世界で何をすればいいか,私達は提案しない
すべてがプレイヤーの自由
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずはお二人の自己紹介をお願いします。
ダグ・ケネディ氏(以下,ケネディ氏):
私はStudio Wildcardの共同創立者の1人で,CEOとして本作のビジネス面の対応をしています。ゲーム業界で仕事を始めてからもう20年くらいになりますね。
4Gamer:
これまでどのようなタイトルを手掛けてきたのでしょう。
ケネディ氏:
「ギターヒーロー」シリーズや,「ロックバンド」シリーズに関わってきました。実はゲーム業界に入る前は音楽畑の人間だったんですが,それが音楽ゲームを数多く手掛けてきたきっかけにもなっていますね。
4Gamer:
共同創立者の1人ということですが,いつ設立されたんでしょう。
ケネディ氏:
2014年9月に,4人のメンバーで立ち上げました。そして,そのメンバーでどんなゲームを作りたいかを話し合っていたときに「多くの人達に愛されている『恐竜』を主役としたゲームはどうか」という意見が挙がって生まれたのが「ARK: Survival Evolved」だったんです。
4Gamer:
なるほど。このゲームがStudio Wildcardの最初のプロジェクトになるわけですね。
ケネディ氏:
はい,そうなります。
4Gamer:
では続いて,セドリックさんにお話をうかがいたいと思います。Studio Wildcardではどのような仕事をされているのでしょう。
セドリック・バークス氏(以下,バークス氏):
私はCommunity Manager(コミュニティマネージャー)として,ユーザーから届く要望や苦情といったフィードバックに対応しています。
その一方で,ゲームのプログラムも担当していて,一部のモードやダウンロードコンテンツなどの制作にも関わっています。
4Gamer:
それではゲームについて,あらためて教えてください。
まず「ARK: Survival Evolved」というタイトル名には,どんな意味が込められているのでしょうか。
ケネディ氏:
意味はいろいろありますが,まずはこの世界の中でいろいろな経験を積むことで,あなた自身が進化(= Evolved)して,サバイバル(=Survival)できる人間になっていくという意味が一番強いですね。
4Gamer:
本作の特徴はどこにあるのでしょう。
ケネディ氏:
広大なオープンワールドでサバイバルを体験するゲームで,そこに恐竜が存在し,それぞれの生活をおくっているというのが大きな特徴ですね。
過酷な環境でのサバイバル,ほかのプレイヤーとのコミュニケーション,恐竜達との戦いなど,楽しみ方はたくさんありますし,さまざまなゲームプレイに対応できるように作っています。
バークス氏:
私は本作を,「壮大なサンドボックスゲーム」と考えています。本作では,素材やツール,アイテムなどを好きに組み立てるという要素をかなり大きな規模で用意していて,高い自由度の中,十人十色の楽しみ方ができるようにしています。
4Gamer:
自由度が高いゲームとのことですが,何かメインとなる目的はありますか。
バークス氏:
強いて挙げるとすれば,特定のボスを倒したときに得られる「アセンション」によってレベル上限を解除して,自身をさらに強化するというのはありますね。
ただ私達は,本作において「こう遊んでほしい」という提案はしないことにしているんです。サバイバル,拠点作り,「テイム」で生物を手なずける,ボスとのバトル……先ほども少しお話しましたが,この世界にはさまざまな楽しみ方があります。何を軸にしてゲームをプレイするかは,プレイヤーの皆さんそれぞれ自由に選んでほしいという思いがあります。
ケネディ氏:
あと,これは目的という話とは変わってしまうかもしれませんが,「ARK: Survival Evolved」をプレイすることで得られる素晴らしいものとして,オンラインで一緒にゲームをプレイする“友人”があります。私も一プレイヤーとして,世界中の人達と知り合い,そして友人となりましたが,このゲームがなければ出会えなかった人達ですからね。
4Gamer:
ちなみにお2人は,この世界でどのような楽しみ方をされているのでしょう。
ケネディ氏:
私はとにかくひたすら探検して,広い世界を見て回るのが好きですね。
バークス氏:
私は制作者であるとともに,このゲームの大ファンなんですよ。プレイ時間も1000時間を超えています(笑)。
そんな私が好むプレイスタイルは,オンラインでのシングルプレイですね。1人で黙々と,食料や素材を集めて拠点を作っていくという,サバイバルに特化した遊び方で,この世界での生活を楽しんでいます。
あと,もう一つあるのですが,テイムですべての生物を集めようと思っています。当然集めるのは簡単ではなく,T-REXやヴェロキラプトルのようにテイムするのが難しい恐竜もいますが,それを乗り越えて手なずけることができたときの嬉しさは格別なんですよ。
手なずけたあとも,飼育や,ほかの恐竜に食べられないように守るといったこともあります。これも,とても楽しい体験になるんです。
4Gamer:
オンラインゲームですが,シングルプレイも問題なくできますか?
バークス氏:
はい,1人でも十分楽しめますよ。ただし,その分かなり過酷な挑戦にもなります。その例としてですが,私は8時間かけてテイムした恐竜を,手なずけてすぐT-REXに食べられてしまったことがありました(笑)。
テイムはもちろん素材の管理もなかなか大変ですが,1人でも生き延びていくことは十分可能です。工夫しながら生活するというやり応えもありますし,プレイスタイルの1つとして私は好きですね。
4Gamer:
Steamでは2年を超えるアーリーアクセスが行われていました。アーリーアクセスの期間としてはかなり長いものだと思いますが,最初からそのような予定で実施されたのでしょうか。
ケネディ氏:
いえ,最初から2年と決めていたわけではないです。PCを皮切りに,PlayStation 4とXbox Oneと3つのプラットフォーム展開を考えていましたが,それを行うにはそれなりの準備期間が必要で,その結果としてこれだけの期間を要したということですね。
4Gamer:
長期間行われていた分,多くのプレイヤーから反応があったと思います。アーリーアクセスでの手応えや,プレイヤーからの反応はいかがでしたか。
ケネディ氏:
アーリーアクセスの期間は我々にとっても非常に楽しく,身のある内容となりました。この2年の間,コミュニティからは感想や要望を積極的にフィードバックしていただけましたし,そのおかげでゲームを最適化することができました。
なによりプレイヤーの皆さんが,「ARK: Survival Evolved」を「自分達のゲームだ」と意識してくれていたのが感じられて,本当に嬉しかったですね。
4Gamer:
これはちょっと答えにくい質問かもしれませんが,アーリーアクセス後にゲームの価格が引き上げられました。一部のプレイヤーから批判なども出ていましたが,そのことについてお聞かせいただけますか。
ケネディ氏:
とてもいい質問です。例えばセールなどでゲームの価格が下がることありますが,こういった形で上がることはあまりないですよね。そのようにプレイヤーのみなさんが不慣れなことなのに,こちらの告知が足りなかったために皆さんを困惑させてしまい,それが批判にもつながったと受けとめています。
4Gamer:
なるほど。価格を変更された理由はなんだったのでしょう。
ケネディ氏:
変更前に設定した価格は,アーリーアクセスの初期段階でのゲーム内容に合わせたものでした。そののちゲームプレイの幅が広がり,コンテンツも増えていったので,適正な価格にあらためたというのが価格変更の理由ですね。
もちろん私達は,この「ARK: Survival Evolved」をあらためた価格以上の体験ができるゲームとして自信を持って送り出しているので,安心して手に取っていただきたいと思います。
「ARK」の世界での生活は実生活をイメージ
ゆえにチュートリアルは存在しない
4Gamer:
先ほど本作の基本となる部分や,お二人の遊び方などをうかがいましたが,これからPS4版などで初めて本作に触れるという人は,どんな遊び方をすればいいのでしょう。
ケネディ氏:
この島に初めて来た人は,まず下を向いてみてください。それによって自分が裸だということが分かるはずなので,すぐに服を作ってください。次に上を向いてみると,T-REXがあなたを狙っているので,早く逃げてサバイバルの準備を整えてください(笑)。
4Gamer:
(笑)。ゲームのチュートリアル的なものはありますか。
ケネディ氏:
基本的には,チュートリアルは用意していません。このゲームのコンセプトの1つに,実生活に近いものを作るというのがあるんですが,実生活にチュートリアルはないですよね? この世界に来てまず,「一体何をしていいのか分からない」というところから始まるというのも,ゲームプレイの一部になっていると考えています。
いきなりオンラインでプレイするのが不安だという人は,まずはオフラインのシングルプレイでサバイバルの基礎を身に付けるといいかもしれませんね。オフラインでいろいろ試しているうちに,オンラインにいる人達と同じような生活ができるようになりますよ。
バークス氏:
チュートリアルとは違いますが,この世界のところどころに先人達が残した「調査書」というものがあって,舞台となる島についての知識や情報が書かれています。
それを読むことで,サバイバル生活に役立つさまざまな知識を得られますので,ぜひ活用してほしいです。
ケネディ氏:
日本で発売されるPS4のパッケージ版には,スパイク・チュンソフトさんが作ってくれた「序盤サバイバルガイド」という冊子が付くんですが,これが凄く良くできているんですよ! そのタイトルのとおり,序盤の生活に役立つと思います。
4Gamer:
なるほど。今回,PS4版の日本国内での販売をスパイク・チュンソフトが担当されますが,それについてお聞かせいただけますか。
ケネディ氏:
パブリッシャとして過去に海外の大きなタイトルを日本で多く発売されているという実績もあるので,パートナーとしてベストな選択だと思いお願いしました。
最初のやりとりをしたときから,私達が作品に抱いている思いを深く理解してくれていましたし,先ほどの特典のガイドブックもそうですが,彼らの日本でのプロモーション展開は非常に新鮮で,「ARK: Survival Evolved」にもマッチしていると感じています。
4Gamer:
お2人は日本のゲーム市場についてどのような印象をお持ちですか。
バークス氏:
今回初めて日本の市場に参入して,凄く新鮮な体験をさせてもらっています。ちょっと抽象的ではあるんですが,ゲームに対する思いや情熱の種類が,アメリカとはかなり違うということは感じていますね。
ケネディ氏:
スパイク・チュンソフトさんのプロモーションやメディア展開が,やはりアメリカとはずいぶん違うなという印象です。どのプランもクリエイティブで,つい先ほど見せていただいたプロモーションムービーも,私自身のテンションが上がってしまう内容で,それに対する日本市場の反応も楽しみですね。
4Gamer:
アーリーアクセスでの日本人プレイヤーの反応はいかがでしたか?
バークス氏:
コミュニティでは英語でやり取りしていたこともあって,「日本ではこのような反応だ」といった形で直接伝わってくることはありませんでした。正式リリースに合わせて,日本のプレイヤーの皆さんの声を受け止められる体制も整ってきているので,どんな反応があるのか今からワクワクしています。
120種類以上の恐竜や生物が発売時に登場
架空の生物も含め,今後も増やしていきたい
4Gamer:
本作の主役でもある恐竜を含め,生物はどのぐらい登場するのでしょう。
ケネディ氏:
生物だけでも120種類以上,そのうち恐竜は30種類ほどいますが,実は我々が把握していた時点から,さらにどんどん追加されているので,正確な数は調べないと分からない状態なんです(笑)。
もちろん発売以降も,アップデートなどで生物はどんどん増えていく予定ですよ。
4Gamer:
お話しいただける範囲で結構ですので,こんな生物を新たに入れたいといった構想はありますか。
ケネディ氏:
今現在も,フェニックスやユニコーンといった架空の生物も登場していて,このあと日本絵画や中国の文献などにある昇り龍のような存在も加えたいと思っています。
今後生物を追加するときは,公式サイトでまず「調査書」を公開する形でアナウンスをして,その数日後にアンロックするような流れにしていく予定です。
4Gamer:
ちなみにお二人は,本作に登場する生物だとなにが好きですか。
バークス氏:
私はやはりT-REXですね。昔から好きな恐竜で,プレイヤーの中にもファンが多いのではないでしょうか。
ケネディ氏:
私の最近のお気に入りはドードーです。でも,先ほどお話ししたとおり,こちらでも把握できないくらい新しい生物が追加されてきているので,もしかしたらそれによって変わっていくかもしれません(笑)。
4Gamer:
今後も生物などの新要素が追加されるとのことですが,正式リリース後のプランをお聞きしてもよろしいでしょうか。
バークス氏:
弊社がゲームの追加要素として配信する要素については,今回北米での発売に合わせて配信したDLC「Ragnarok」のような新大陸のマップ,ストーリーやこれまでとは異なる体験ができる大型DLCをまとめた「Expansion Pack」などの提供を考えています。
4Gamer:
「Aberration」というExpansion Packが,近日中に配信予定であることがアナウンスされていますよね。こちらの内容を教えてもらえますか。
バークス氏:
「ARK: Survival Evolved」の普段の生活とは環境を一新して,洞窟を舞台としたサバイバルがメインとなります。太陽光が有害だったり,毒ガスが発生していたりと,それまでとは違うゲームプレイになると思います。これだけでも300時間以上のゲームプレイが可能で,ここでも新たに数十種類の生物が追加されます。
特徴としては,Expansion Packで入手した素材で製作した装備,テイムした生物などを本編に持っていくことが可能で,それをオンラインに連れていくこともできます。物々交換に出してサバイバルの糧とするのもいいでしょう。
4Gamer:
「ARK」のタイトルを冠したタイトルとして,本作のスピンオフとして制作された対戦アクション「ARK: Survival of the Fittest」と,中国のSnail Gamesから発売予定のVRタイトル「ARK Park」がありますね。これらはどのように展開していくのでしょう。
ケネディ氏:
「ARK: Survival of the Fittest」は,1年半ほど前にe-Sportsの参入を意図した対戦ゲームとして企画し,制作しました。
ただ,これをe-Sportsタイトルとして今後チューニングしていくとなると,「ARK: Survival Evolved」の開発が滞ってしまうと。そういったこともあり,我々は「ARK: Survival Evolved」の開発に集中することにしました。
「ARK Park」は,今後私達がどのようなサポートをしていくか未定なのですが,ゲームプレイというよりも,優れたVR技術によってこれまでにない体験を提供するコンテンツだと考えています。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,日本のゲームファンにメッセージをお願いします。
バークス氏:
私もプレイヤーとして1000時間以上を本作に費やしましたが,それだけの時間を過ごせるゲームですので,皆さんも今から準備をしておいてください。開発チームは,本作を凄く楽しみながら愛情を込めて制作していますが,皆さんにもそれと同じぐらいの愛情を持って遊んでいただけると嬉しいです。
ケネディ氏:
Studio Wildcardとしては,新タイトルが現在構想段階としてあって,近日中には情報を公開できればと考えています。でも今は「ARK: Survival Evolved」に力を入れるべき時期なので,チーム一丸となってオンラインの運営やDLCの開発に取り掛かり,皆さんの皆さんの期待に応える作品を提供していきたいですね。
あと,私個人の話ですが,日本のサーバーへ遊びに行こうと考えています。そのときはドードーとT-REXを連れて行く予定なので(笑),ぜひ皆さん一緒に楽しみましょう!
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「ARK: Survival Evolved」公式サイト
- 関連タイトル:
ARK: Survival Evolved
- 関連タイトル:
ARK: Survival Evolved
- 関連タイトル:
ARK: Survival Evolved
- 関連タイトル:
ARK: Survival Of The Fittest
- 関連タイトル:
ARK: Survival of the Fittest
- 関連タイトル:
ARK Park
- 関連タイトル:
ARK Park
- この記事のURL:
キーワード
(C) 2017 Studio Wildcard. ARK: Survival Evolved is a trademark of Studio Wildcard. Created and developed by Studio Wildcard, Snail Games, Efecto Studios, Instinct Games, and Virtual Basement.
Copyright 2016 Studio Wildcard. All rights reserved.
Copyright 2016 Studio Wildcard. All rights reserved.
(C)2018 Snail Games. All rights reserved. ARK Park and the respective logos are trademarks or registered trademarks of Snail Games in the U.S. and/ or other territories. All other trademarks are the property of their respective owners.