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「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る
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印刷2015/07/21 14:00

レビュー

大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る

Radeon R9 Fury
(SAPPHIRE R9 FURY 4G HBM PCI-E HDMI/TRIPLE DP TRI-X OC VERSION(UEFI))

Text by 宮崎真一


R9 FURY 4G HBM PCI-E HDMI/TRIPLE DP TRI-X OC VERSION(UEFI)
メーカー:Sapphire Technology
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
価格:未定(※2015年7月21日現在)
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る
 2015年7月14日,AMDの新型GPU「Radeon R9 Fury」(以下,R9 Fury)を搭載するグラフィックスカードの国内販売が始まった。簡易液冷クーラーを搭載したフラグシップモデル「Radeon R9 Fury X」(以下,R9 Fury X)の下位に置かれるR9 Furyでは,グラフィックスカードメーカー各社が,空冷オリジナルクーラーを搭載して市場投入しているため,従来型のハイエンドグラフィックスカード的な外観になっているのが特徴だ。
 AMDが示す,北米市場における搭載カードのメーカー想定売価は549ドル(税別)。同649ドルのR9 Fury Xより100ドル(約1万2400円 ※2015年7月21現在)安価に,新技術「High Bandwidth Memory」(以下,HBM)の恩恵を享受できるのも魅力といえる。

 今回4Gamerでは,そんなR9 Fury搭載グラフィックスカードのうち,Sapphire Technology(以下,Sapphire)製の「R9 FURY 4G HBM PCI-E HDMI/TRIPLE DP TRI-X OC VERSION(UEFI)」を,AMDの日本法人である日本AMDから入手し,テストする機会を得た。税込10万円弱で国内発売になった「R9 FURY 4G HBM PCI-E HDMI/3DP TRI-X」の上位モデルだ。
 R9 Fury Xは「GeForce GTX 980 Ti」と戦えるだけの性能を持っていたが,R9 Furyはどういう位置づけになるだろうか。確かめてみたい。


Fijiのフルスペック比で87.5%のGPU規模

HBMを中心とした足回りはR9 Fury Xと同じ


 R9 Furyの概要は7月10日掲載の記事でお伝え済みだが,本稿でもおさらいしておこう。

R9 Fury Xのレビュー記事より,FijiのGPUパッケージを再掲
画像集 No.003のサムネイル画像 / 「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る
 Radeon R9 Furyシリーズの“無印”モデルとなるR9 Furyは,R9 Fury Xと同じ「Fiji」コアを採用したGPUだ。
 Fiji自体は,「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャに基づくGPUコア「Tonga」(≒「Radeon R9 285」)をベースとするコアで,“ミニGPU”たる「Shader Engine」あたりの演算ユニット「Compute Unit」(もしくは「GCN Compute Unit」)の数が,Tongaの8基から16基へと倍増しているのが最大の特徴となるが,R9 Furyの場合,そこからCompute Unitの数が8基削減されている。4基あるShader Engineの中で,どのように8基のCompute Unitが削減されているのかは明かされていないものの,おそらくは,Fijiコア自体の歩留まりを向上させるため,どのCompute Unitであれ最大8基までの不良なら,R9 Furyの良品として動くようになっているのだと思われる。

Fijiのブロック図。中央に4つ見える灰色のブロックがShader Engineで,中には16基のCompute Unitがあるが,R9 Furyでは,このうち8基のCompute Unitが無効化される
画像集 No.004のサムネイル画像 / 「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る

 なお,Compute Unitは,実行ユニット4基がキャッシュやレジスタファイル,スケジューラ,テクスチャユニットによって構成される。実行ユニットは,16基のシェーダプロセッサ「Stream Processor」がひと固まりになったものなので,総シェーダプロセッサユニット数は 16×4×(16×4−8) で3584基という計算だ。R9 Fury Xの4096基と比べると,GPU規模は87.5%である。

 一方,Fiji世代のキモでもあるHBMサポートを中心としたメモリ周りだと,R9 Furyの仕様は,R9 Fury Xとまったく同じ。そのため,リファレンスのメモリバス帯域幅も512GB/sだ。

4K解像度においてGTX 980より高い性能を発揮すると,AMDは主張している
画像集 No.005のサムネイル画像 / 「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る
 そんなR9 Furyの主なスペックを,上位モデルであるR9 Fury X,それに前世代のハイエンドモデルであり,「Hawaii」コアを採用した「Radeon R9 290X」(以下,R9 290X),前出のGTX 980 Ti,そしてAMDが「4K解像度においてはR9 Furyのほうが上」だと宣言しているため,事実上の対抗馬となる「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)ともどもまとめたものが表1である。

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基板長はR9 Fury Xと同じ196mmながら

R9 Fury TRI-X OCは300mmオーバーに


 GPUの仕様を押さえたところで,R9 FURY 4G HBM PCI-E HDMI/TRIPLE DP TRI-X OC VERSION(UEFI)というカード(以下,R9 Fury TRI-X OC)そのものをチェックしておこう。
 冒頭でも紹介したとおり,R9 Furyではカードメーカー各社がオリジナルクーラーを搭載した製品を投入することが許可されている。そのためSapphireは本製品で,同社自慢の3連ファン搭載型GPUクーラー「Tri-X」を装着してきた。

3連ファン仕様の大型クーラーが目を引くR9 Fury TRI-X OC
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カード背面側でR9 Fury Xリファレンスカード(上)と比較したところ。ちなみにR9 290Xリファレンスカードは実測約278mm,GTX 980 Tiリファレンスカードは同268mmなので,それらよりも28〜38mm長いわけだ
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 そのカード長は,実測で約306mm(※突起部除く)。堂々の30cmオーバーであり,端的に述べて非常に長い。R9 Fury Xだと同196mmしかないので,横に並べると,余計にその長さが際立つ。

 R9 Fury TRI-X OCでも,基板長自体はR9 Fury Xと変わらない。また,PCI Express補助電源コネクタが8ピン×2で,その近くに「GPU Tach」と呼ばれる9個のLEDが備わっており,その色は2系統のDIPスイッチで変更可能だ。付け加えると,2つとも中身が同じグラフィックスBIOS(VBIOS)を切り替えられる「Dual BIOS Toggle Switch」を搭載し,さらに,電源のフェーズ数も4+2の気配が濃厚なので,おそらく,基板自体はR9 Fury Xリファレンスカードとまったく同じか,ほぼ同じものではなかろうか。

PCI Express補助電源コネクタやGPU Tach,DIPスイッチの仕様や配置など,R9 Fury TRI-X OCとR9 Fury Xリファレンスカードの基板には共通の部分が多い
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カードを横から見ると,カード自体は2.5スロット分程度の厚みだと分かる
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ヒートパイプとフィンの構造を覗き込んだところ
 ちなみに,カード後方へ100mm以上はみ出た格好となるTRI-Xクーラーは,3スロット仕様。今回もクーラーの取り外しは許可されていないので,公開されている分解イメージを確認しながら実際に内部を覗き込んだ結果をお伝えしておくと,Tri-Xクーラーでは,GPUとHBMの熱は,銅製プレートで受けて,10mm径が3本,6mm径が2本のヒートパイプを使って,大小2つある放熱フィン部へ運び,それを90mm径相当のファン3基で冷却する仕様のようだ。正確を期すと,10mm径のヒートパイプ3本はカード後方にはみ出た大型放熱フィン部へ伸び,それを挟むようにされる6mmヒートパイプ2本だけが両方の放熱フィン部へ伸びているようである。

 なお,ファンは「Intelligent Fan Control 2」と呼ばれる機能によって制御されており,GPUの温度が50℃を切ると回転数を徐々に減速していき,最後には完全停止するようになっている。最近のグラフィックスカードのトレンドとなりつつある,アイドル時にファンを停止させる,準ファンレス仕様になっているわけだ。

AMDが公開している,R9 Fury TRI-X OCの分解イメージ
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 製品名に「OC VERSION」とあることから気になる動作クロックは,ブースト最大クロックがリファレンスの1000MHzから1040MHzへ引き上げられていた。メモリクロックは1000MHz(実クロック500MHz)で変わりなしである。

Catalyst Control Centerから動作クロックを確認。アイドル時は300MHzまでGPUコアクロックが下がる
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リファレンスクロックでのテストも実施

解像度にはAMDが優位を謳う4Kを選択


 テストのセットアップに入ろう。
 今回,比較対象には,表1でその名を挙げたGPUを用意した。いずれもリファレンスカードだ。つまり,主役であるR9 Fury TRI-X OCのみがクロックアップモデルとなる。
 そこで今回は,テストにあたって,MSIのオーバークロックツールである「Afterburner」(Version 4.1.1)を用い,R9 Fury TRI-X OCのGPUクロックをリファレンスにまで下げた状態でもテストを行うことにした。以後,文中,グラフ中とも,カードとしての標準クロックで動作する状態は本稿における製品名の略称である「R9 Fury TRI-X OC」,AMDのリファレンスクロックに設定した状態を「R9 Fury」と表記して区別するので,この点はあらかじめお断りしておきたい。

 テストに用いるグラフィックスドライバは,Radeon用が「Catalyst 15.7」,GeForce用が「GeForce 353.30 Driver」。いずれもテスト開始時の公式最新版だ。そのほかテスト環境は表2のとおりで,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。これは,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除するためである。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0準拠。テスト解像度は,本稿の序盤でも触れたとおり,AMDが4K解像度環境における対GTX 980での優位性を謳っていることから,3840×2160ドットと2560×1600ドットを選択した。
 なお,GTX 980 Tiは,ドライバのバージョンを含めたテスト環境およびテスト方法,テスト解像度がいずれもR9 Fury Xのレビュー時のときとまったく同じであるため,スコアを同記事から流用している。


R9 Fury X比で約90%の性能を発揮するR9 Fury

GTX 980に対してはおおむね優勢


 以下,テスト結果のグラフは,R9 Furyの2本を一番上に置き,それ以外はRadeon,GeForceとも製品型番順に並べているが,グラフ画像をクリックすると,4K解像度におけるスコア基準で並び替えたものを表示するようにしてあると紹介しつつ,テスト結果を順に見ていこう。
 グラフ1は,「3DMark」(Version 1.5.915)のスコアをまとめたものだ。R9 Furyのスコアは,R9 Fury X比で約92%であり,シェーダプロセッサ数の違いを考えると,妥当なスコアが出ていると言っていいのではなかろうか。対GTX 980 Tiでは88〜92%程度,対GTX 980では111〜115%程度というスコアも見どころといえる。
 R9 Fury TRI-X OCは,リファレンスクロックで動作するR9 Furyと比べて約3%高いスコアを示した。

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 続いてグラフ2,3は「Far Cry 4」のテスト結果となる。
 Far Cry 4においてもR9 FuryはR9 Fury X比で91〜93%程度と,3DMarkのスコア比をほぼ踏襲する傾向が出た。一方,対GeForceではR9 Furyが3840×2160ドット解像度の2条件と,「ULTRA」設定の2560×1600ドットでGTX 980 Tiに対して3〜10%程度高いスコアを示している点に注目したい。よりグラフィックスメモリ負荷の高い条件で,HBMのもたらす広帯域幅が効いているわけだ。
 対GTX 980では21〜35%高いスコアを示しており,これは「圧倒」と述べて差し支えない。

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 グラフ4,5の「Crysis 3」でも,R9 FuryはR9 Fury Xの91〜94%程度と,これまでを踏襲する結果になった。GTX 980 Tiには届いていないものの,GTX 980に対しては13〜22%程度のスコア差を付けている。

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 「EVOLVE」のテスト結果は,Far Cry 4のそれを踏襲する結果となった(グラフ6,7)。EVOLVEではGeForceのスコアがいまひとつ伸びない傾向があるとはいえ,R9 Furyが,テストしたすべての条件でGTX 980 Tiのスコアを上回っているのは大変興味深い。描画負荷が高まるにつれて,最大の約12%に向けてスコア差が開いていくのは,やはりHBMによる広いメモリバス帯域幅の恩恵だろう。
 対R9 Fury Xだとスコアは約90〜91%程度。クロックアップされたR9 Fury TRI-X OCは,リファレンスクロック比で約3%高いスコアを示している。

画像集 No.023のサムネイル画像 / 「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る
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 グラフ8,9は「Dragon Age: Inquisition」(以下,Inquisition)の結果だが,ここでR9 Furyのスコアは対R9 Fury Xで90〜92%程度,対GTX 980 Tiで82〜92%程度,対GTX 980で107〜114%程度。3DMarkの結果を踏襲する結果とまとめてしまっていいように思う。

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 「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果がグラフ10,11だ。FFXIV蒼天のイシュガルドは「GameWorks」タイトルであり,Radeonは分が悪いのだが,それだけに,対GTX 980 Tiで85〜91%程度,対GTX 980で103〜115%程度というスコアは,かなりがんばっているといえそうだ。
 「最高品質」の解像度2560×1600ドットで,GTX 980が届かない「非常に快適」ラインであるスコア7000を,R9 Furyがクリアしているのは感慨深い。

画像集 No.027のサムネイル画像 / 「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る
画像集 No.029のサムネイル画像 / 「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る

 総合スコアだけではいまいちピンとこないという人のため,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチでは,平均フレームレートベースのスコアもグラフ10’,11’としてまとめてみた。興味のある人はこちらも参考にしてほしい。

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 性能検証の最後は,グラフ12,13の「GRID Autosport」である。
 GRID AutosportではGCNベースのRadeonが今ひとつスコアを伸ばせないのだが,今回も解像度2560×1600ドットでR9 FuryはGTX 980の83〜87%程度に沈んでいる。ただ,3840×2160ドットでは,逆にGTX 980を約5%上回り,広いメモリバス帯域幅のアドバンテージを遺憾なく発揮してみせた。

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消費電力はR9 Fury Xから確実に低下

Tri-Xクーラーの冷却性能は優秀


 AMDが公開した製品スペックによれば,R9 Furyの公称典型消費電力は275Wであり,R9 Fury Xから変わっていない。少なくとも,有効なCompute Unit数が減っている以上は,多少なりとも消費電力は低くなるはずだが,実際のところはどうだろうか。今回も,ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定,比較してみよう。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 結果はグラフ14のとおり。まずアイドル時の消費電力だと,R9 Furyのスコアは84Wであり,比較対象と比べても大きな違いはない。R9 Fury Xが若干高めなのは,先のレビュー記事でも指摘したように,簡易液冷ユニットの分が“乗って”いるためだろう。
 なお,R9 Fury Xのレビュー記事で筆者は,R9 Fury Xにおいて,AMD独自の省電力機能「AMD ZeroCore Power Technology」がうまく動作しなかったと述べたが,R9 FuryでもGPU Tach(※TachはTachometerの略)の緑のLEDが点灯しなかったので,同機能はうまく働いていない可能性が高い。実際,アイドル状態が続いたとき,ディスプレイ出力が無効化されるよう設定しても,R9 Furyのスコアは81Wまでしか下がらなかった。

 続いてアプリケーション実行時だと,R9 FuryはR9 Fury Xと比べて13〜24W低いという結果になった。R9 Fury TRI-X OCはクロックアップモデルゆえ,電圧設定にも若干の手が入っている可能性があるだけに,リファレンスクロック採用モデルでは,あと少しスコア差は開くかもしれない。
 とはいえ,GTX 980よりは97〜143W高いスコアで,消費電力で第2世代Maxwellアーキテクチャの牙城を崩すには至っていない。

画像集 No.033のサムネイル画像 / 「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る

 最後に,GPUの温度も確認しておこう。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 0.8.4)からGPU温度を取得することにした。なお,テスト時の室温は24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態に置いてある。
 その結果がグラフ15となるが,カードによって温度センサーの位置やファン回転数の制御方法は異なるため,横並びの比較にあまり意味はない。ここでは,Tri-Xクーラーの冷却性能を確認する程度に留めるが,その冷却性能は高いと述べてよさそうだ。さすがにR9 Fury Xの簡易液冷ユニットが持つ実力には及ばないものの,高負荷時に70℃台前半というのは歓迎すべきだろう。
 なお,アイドル時に50℃オーバーと高めなのは,前述のとおり,これ以下のGPU温度でファンが停止するためである。

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 なお,気になる動作音だが,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,R9 Fury TRI-X OCは,このクラスの製品として十分静かな印象を受けた。GTX 980リファレンスカードといい勝負,と言ったら伝わるだろうか。


GTX 980キラーになれるかというと疑問だが

「かなり速く,ハイエンドよりちょっと安い」のはアリ


製品ボックス。メモリバス帯域幅が450GB/sと書いてあるのだが,その理由はよく分からない(※序盤で触れたとおり,メモリバス帯域幅は512GB/sある)
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 2015年7月21日現在における,搭載グラフィックスカードの実勢価格で比較したとき,GTX 980なら,ブランドにこだわらなければ税込6万円台中頃から購入できてしまうのに対し,R9 Furyのリファレンスクロック採用モデルで10万円前後。なので,少なくとも現在の日本においては,R9 FuryがGTX 980キラーとして立ち回れる気はしないというか,そもそもターゲットとなる市場が異なっていて比較にならないというのが正直なところだ。

すべてのR9 Furyカードがそうというわけではないだろうが,R9 Fury TRI-X OCはウルトラハイエンドモデル並の大きさがある
画像集 No.036のサムネイル画像 / 「Radeon R9 Fury」レビュー。大型クーラーを採用した空冷版Fijiの実力に迫る
 また,R9 Fury TRI-X OCに関して言えば,おそらく大きいと思われる発熱を完璧に処理するため,相当に大きなGPUクーラーを搭載せざるを得ず,結果として,ウルトラハイエンドモデルというわけでもないのに,カード長が300mm超級,高さが3スロット仕様になってしまった。これはなかなかハードルが高い。準ファンレス仕様を犠牲にしてでも,R9 290Xリファレンスカード並みのサイズにしてくれたほうが,結果として取り回しは楽になったのではないか。

 ……といった具合に,気になる部分は確実に存在するのだが,それでも,R9 Furyが,ほとんどのケースにおいてGTX 980を大幅に上回るベンチマークテスト結果を示していることは,疑いのない事実だ。そして(当たり前だが)R9 Fury Xを搭載するカードよりは間違いなく安価である。そのため,HBMによる広帯域幅のメモリバスがもたらす,シングルGPU仕様でトップクラスの性能を,少しでも安価に入手したいのであれば,R9 Furyカードは選択肢として検討する価値があるだろう。
 また,年末に向けて,店頭価格が,AMDの示す北米市場での想定売価である税別549ドル――1ドル124円,消費税8%として約7万4000円――に近づいてくれば,そのときこそ本当にGTX 980キラーとなり得るはずだ。今後の価格動向にも期待したい。

AMDのRadeon R9シリーズ製品情報ページ

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