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Intel,Skylake-Kこと「Core i7-6700K」「Core i5-6600K」を発表。多くの仕様が謎に包まれたまま,Skylake時代が始まる
日本時間2015年8月5日21:00,Intelは,開発コードネーム「Skylake」(スカイレイク)と呼ばれていた新世代プロセッサのうち,「Skylake-K」シリーズに属する2モデル「Core i7-6700K」「Core i5-6600K」を発表した。同時に,対応チップセットとなる「Intel Z170」(以下,Z170)もリリースしている。
近年のIntelは,新世代CPUのリリースにあたって,モバイル市場向けを先行し,その後,デスクトップ向けも……というパターンになりつつあった。しかし,Skylake世代で最初に登場するのは,「K」型番の倍率ロックフリーモデルだ。テスト結果は別途お伝えしているので(関連記事1,関連記事2),本稿では,製品の概要をまとめてみたい。
多くの謎を残したまま発表・発売されるSkylake
発表された2製品の主なスペックは以下のとおり。ゲーマーに分かりやすいところでいうと,Core i7-6700KはHaswell世代の「Core i7-4790K」後継,Core i5-6600Kは同じくHaswell世代の「Core i5-4690K」後継という理解でいいだろう。
- Core i7-6700K
定格クロック4GHz,最大クロック4.2GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量8MB,PCI Express 3.0 16レーン,デュアルチャネルDDR4-2133/ DDR3L-1600,TDP 91W,1000個時ロット単価350ドル - Core i5-6600K
定格クロック3.5GHz,最大クロック3.9GHz,4C4T,共有L3キャッシュ容量6MB,PCI Express 3.0 16レーン,デュアルチャネルDDR4-2133/ DDR3L-1600,TDP 91W,1000個時ロット単価243ドル
2015年半ばになって,DDR4メモリモジュールの店頭売価は大きく下がっており,また,マザーボードメーカー各社も,日本におけるIntel 100シリーズチップセット搭載マザーボードではDDR4のサポートを優先することが明らかになっていることからすると,Skylakeの登場を受け,DDR4は主力メインメモリへの歩みを一気に進めることになると思われる。
ちなみに,DDR4-2133のメモリバス帯域幅は1チャネルあたり34GB/s,2チャネル合計で68GB/sとなる。これまで使われてきたデュアルチャネルDDR3-1600だと1チャネルあたり25.6GB/sなので,帯域幅は約33%向上した計算だ。
もう1つ,これはIntelからではなく,マザーボードメーカーから明らかになった情報だが,Skylake世代ではクロックジェネレータが外付けになったこともトピックといえるだろう。
少し振り返っておくと,Intel製CPUだと,Westmereマイクロアーキテクチャ以前のCPUで,1MHz刻みのオーバークロックを普通に行えていたのが,Sandy Bridgeマイクロアーキテクチャ(≒2000番台のCoreプロセッサ)以降では,クロックジェネレータがPCHに統合され,動作クロック設定の自由度が低下してしまった。
これは,PCHに統合されたクロックジェネレータでは固定されたいくつかの「BCLK」(ベースクロック),具体的には100/133/166MHzといったクロックしか出力できなかったからだ。CPUの動作クロックは,BCLKに「CPU Strap」と呼ばれる一種の倍率と,さらにCPU内部の逓倍率(Multipler)を掛けた周波数になる仕様であったため,1MHz刻みのオーバークロックができなかったのである。
そのため,Skylake世代において,Intel 100シリーズチップセットのPCHからクロックジェネレータが外に出たというのは,「Westmere以前の状況に戻った」という言い方もできたりする。
ただし,これ以外の詳細,とくにマイクロアーキテクチャの詳細は,ほとんどゼロと言っていいほど,明らかになっていない。
Intelはかつて,コアマイクロアーキテクチャの刷新と製造プロセス技術の刷新を1年おきに繰り返す「Tick-Tock」戦略をとってきた。最近はスケジュールの遅れもあって,強くアピールされなくなったが,「順繰りに刷新する」ところは生きており,2013年の第4世代Coreプロセッサ(=Haswell)がコアアーキテクチャの刷新,2014年から2015年にかけて――大多数は2015年だが――発表された第5世代Coreプロセッサ(=Broadwell)では製造プロセス技術の刷新が行われた。なので,今回の第6世代Coreプロセッサではマイクロアーキテクチャの刷新があるはずなのだが,その詳細が明らかになっていないのである。
マイクロアーキテクチャが刷新されればCPUコアの性能がクロック周波数以上に上がるといったことを期待できるわけだが,そこが分からない。現状で明らかになっているのは,「1年前のPCに対して10%の性能向上」「2年前のPCに対して20%の性能向上」「3年前のPCに対して30%性能向上」という,ざっくりした数字だけだ。
「1年前のPC」は,スライドによるとCore i7-4790Kなので,それと比べて10%の性能向上があるということになる。詳細はレビューや基礎検証レポートを参照してもらえればと思うが,10%というのを大きいと思うか小さいと思うかは人によるだろう。
また,統合されるグラフィックス機能も,分からないことだらけだ。たとえば,Core i7-6700KとCore i5-6600Kは,いずれも「Intel HD Graphics 530」というブランド名が与えられたグラフィックス機能を統合し,動作クロックは最大1.15GHzに達するらしいのだが,実行ユニット(Execution Unit)の数はもちろんのこと,アーキテクチャレベルで何か変わったのか否かすら,Intelからは公開されていないという有様である。
CPUコアでもGPUコアでもない,いわゆる「Uncore」(アンコア)部分では,すでに述べたとおりDDR4メモリコントローラの新規対応とクロックジェネレータの外付け化がトピックだが,これはつまり,それ以外のところ,たとえばCPUに統合されるPCI Express(以下,PCIe)3.0のレーン数は16だったりするところは,LGA1150時代からまったく変わっていないということでもある。この点は注意が必要だろう。
なお,マザーボード側の実装次第で,PCIe x16 ×1,あるいはPCIe x8 ×2,PCIe x8 ×1+PCIe x4 ×2という構成をとれるのは,これまでどおりだ。
Intel Z170でI/O帯域幅が大幅に拡大
DMI 3.0に関する情報も公式なものはほとんどなく,「Intel 9シリーズチップセット比で40%のI/Oレーン速度向上」が,現時点で公開されている情報のすべてだ。
DMI 2.0がPCI Express Gen.2の4レーン相当なのに対し,DMI 3.0では,非公式ながら,PCI Express Gen.3の4レーン相当になるといわれている。それが事実であれば,帯域幅ではDMI 2.0の4Gb/s(500MB/s)から,DMI 3.0では7.877Gb/s(984.6MB/s)へと,約1.97倍の向上を果たすはずだ。
この数字は,Intelの謳い文句である「I/O性能40%アップ」とは合わないが,スライドには「USB 3.0 and PCIe 3.0」と注記されていたりもするので,40%という数字は単純に帯域幅を比較したものではないのだろう。
いま指摘した数字のギャップを生んでいる理由のヒントは,ブロック図にありそうだ。
下に示したのはCore i7-6700KとZ170を接続したときのブロック図で,Z170は,最大20レーンのPCIe 3.0,最大6ポートのSerial ATA 6Gbps,最大10ポートのUSB 3.0,最大14ポートのUSB 2.0をサポートできるだけのI/Oコントローラが統合されているのが分かる。
DMIの接続インタフェースがPCIe Gen.3 x4相当であったとしても,ブロック図で示されている仕様は,完全にその帯域幅を上回ってしまう。
PCH側で20レーンものPCIe 3.0をサポートできるようにした理由だが,おそらくは,Haswell世代のIntel 8シリーズチップセットで導入された「Flexible I/O」か,その後継的な技術によって,「何かを減らす代わりに何かを増やす」ことができるようになっているからだろうと思われる。
PCIe 3.0のサポートによりPCIe 3.0接続のSSDが利用されることになるが,トップクラスの製品だと,SSD 1台あたり最大4レーンが消費される。なので,マザーボードに4レーンのM.2スロットを2基搭載すると,それだけで8レーンが消費されるわけだ。残りをFlexible I/Oを使ってUSB 3.0やSerial ATAに割り振るとすると,20レーンくらいのI/Oがあったほうが,マザーボードメーカーとしてはありがたいというようなことがあるかもしれない。
ただ,理由はどうあれ,20レーンものPCIe 3.0をサポートするとなれば,DMI 3.0がボトルネックになりかねない。Z97に対して「I/O性能が40%アップ」という控えめな数字は,DMI 3.0のボトルネックを踏まえた数字なのではないかというのが,筆者の推測だ。
さて,PCH側でのPCIe 3.0サポートに合わせて,Intel 100シリーズチップセットでは,レーン数以外にもSSDのサポートが強化される。具体的には,それまでPCIe接続のSSDでは利用できなかったオンボードRAID機能「Intel Rapid Storage Technology」が,PCIe接続型SSDでも利用できるようになった。
簡単にいうと,現時点で一般ユーザー向けの“最強ストレージ”となるPCIe 3.0+NVM Expressという仕様のSSDを,PCH側のPCIeでフルサポートできるようになるわけだ。
余談気味に続けると,Intelはそれに合わせて,PCIe 3.0
Intel 100シリーズチップセットの仕様で少し注意が必要なのは,USB 1.1が標準では無効化されていることだ。
USBは1.1,2.0,3.0と帯域幅を拡大させてきたが,そのコントローラとしてはUSB 1.1のUHCI,USB 2.0のEHCI,そしてUSB 3.0のxHCIという3とおりが存在している。そして,Intel 9シリーズチップセットまでは,最も古いUCHI互換のコントローラが組み込まれてきたのだが,Intel 100シリーズチップセットではUSBポートがxHCIコントローラに統合され,UCHI互換のコントローラは廃止になっている(ような)のだ。
これがどういう問題を生むのかというと,たとえば,古いWindowsのインストールメディアにはUHCIのドライバしか組み込まれていないので,Intel 100シリーズチップセットではインストール時にキーボードやマウスといったUSB 1.1接続のデバイスが認識されないといったものが挙げられるだろう。
筆者が調べた限りで,Windows 7+Service Pack 1やそれ以前のWindowsに対してxHCIのドライバを組み込んだインストールメディアは,公式には存在していないらしい。なので,Intel 100シリーズチップセットにWindows 7+Service Pack 1やそれ以前のWindowsをインストールしようと思った場合は,自力でxHCIコントローラのドライバを組み込んだインストールメディアを作成しなければならないはずである。
なお,xHCIコントローラドライバがインストールメディアに組み込まれたのはWindows 8.1以降だ。Windows 8.1以降であればインストール時にキーボードやマウスがに認識されないという事態は生じない。xHCIのドライバが組み込まれていないWindows 8.0のインストールメディアを持っている人はいるかもしれないが,そういう人はプロダクトキーに互換性があるWindows 8.1のインストールメディアをMicrosoftから入手してインストールしたほうがいいだろう(関連リンク)。
詳細が明らかになるのはIDF15 San Franciscoか
以上,いま手元にある情報を基に,Skylake-KとZ170の情報を整理してみた。誤解を恐れず,ものすごく簡単にまとめると,現時点で断言できるSkylakeのトピックは,以下の2点だ。
- SkylakeはDDR4メモリをサポート
- Intel 100シリーズはDMI帯域幅の向上
Intelは,8月18日から20日の日程で開催される開発者向け会議「IDF15 San Francisco」の場でSkylakeのマイクロアーキテクチャを開示することを明らかにしている。詳しい情報は,そこで出てくるのだろう。
ともあれ,4Gamerでは実機を使い,ゲーム性能を検証したレビュー記事と,ハードウェア特性を掘り下げる基礎検証レポートを掲載しているので,ベンチマーク結果から「どんなCPU/チップセットか」を,ざっくり推測することはできる。Intelの新世代プラットフォームが気になる人は,ぜひ両記事をチェックしてほしい。
「Core i7-6700K」「Core i5-6600K」レビュー。Skylake世代の第1弾となる倍率ロックフリーモデルは,ゲームプレイにメリットをもたらすか
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- 関連タイトル:
Core i7・i5・i3・M(Skylake)
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