レビュー
性能怪獣ではないが,なんでもそつなくこなせる狙い目の1台
ASUS ZenFone 5(ZE620KL)
ZenFone 5シリーズには,ハイエンド市場向けからエントリー市場向けまで3種類の製品があり,とくに4Gamer読者には,Qualcomm製SoC(System-on-a-Chip)「Snap
というわけで本稿では,Qualcommの「Snap
iPhone X風味のデザイン
狭額縁ゆえに持ちやすさを確保する工夫も
ZenFone 5は,6.2インチサイズで解像度1080×2246ドット,アスペクト比9:18.7という,最近ではお馴染みになりつつある縦長アスペクトのIPS液晶パネルを採用するスマートフォンだ。
写真を見ても分かるが,前面のディスプレイ占有率は約90%と高く,ほとんど画面といった印象だ。液晶パネル上端部には,iPhone Xとよく似たノッチ(切り欠け)部分があり,その部分に近接センサーやスピーカーを兼ねた受話口やフロントカメラなどが配置されている。
一方,背面は,中心線上の上寄りに指紋認証センサーがあり,背面左上にデュアルレンズ式のアウトカメラとLEDフラッシュが縦に並ぶというレイアウトだ。
片手操作が快適かどうかを重視する人は,店頭にZenFone 5のデモ機が並んだら,手に取ってよく確認しておこう。
ZenFone 4に比べると,本体の四側面は,手に引っかかりやすい形状に変わっている。人によっては,エッジが少し手に刺さるような印象を覚えるかもしれないが,前面のほとんどが画面であることを考えると取り落とさないように配慮した結果の形状であろう。
ZenFone 5では,スピーカーが受話口と本体下側面にあり,ステレオ再生が可能だ。ただ,音量バランスが悪く,受話口側スピーカーの音量がなかなか上がらないので,いちおうステレオに聞こえるという程度だ。縦持ち時のゲームサウンドが,多少は雰囲気良く聞こえる程度の認識でいるのが無難だろう。
ゲーマー向け機能「Game Genie」はアスペクト比に合わせてアップデート
使い方は簡単。Game Genieの設定にある「ゲームツールバー」にゲームを登録しておくと,ゲームの動作中には,ナビゲーションバーのエリアにゲームパッド型のアイコンが表示される。そのアイコンをタップすると,ゲーム画面上にGame Genieがオーバーラップで表示されるので,そこから各機能を利用するという流れだ。
Game Genieが持つ機能自体は,ZenFone 4時代から大きくは変わっていない。録画や配信のほかに,不要なアプリが使っているメモリを開放する機能「最適化」(旧称スピードブースター)や,タップやドラッグといった操作を記録して任意に実行できる機能「マクロ」などは,そのまま継承している。
ZenFone 5で目についたGame Genieの新機能といえば,「全画面モード」程度だ。全画面モードとは,文字通りのもので,横持ち時のアスペクト比18.7:9での表示に非対応のアプリであっても,画面全体で表示するというもの。
ただし,筆者が試した限りでは,ゲーム画面はアスペクト比16:9のままで,その左右には余白を差し込んで表示するアプリもあったため,すべてのゲームに対応できるわけではないようだ。
なお,18.7:9での表示に対応するタイトルでは,ナビゲーションバーを表示すると画面の一部がタップできなくなって面倒になることもある。そんなときは,Game Genieの機能にある「ロックモード」をオンにして,ゲーム中はナビゲーションバーを表示させなくするのがお勧めだ。
AIブーストでSoCの性能差は覆せるのか?
ZenFone 5はZenFone 4の後継機種であるから,スペックはZenFone 4以上か,同等程度になっていると思うのが自然だろう。だが,ZenFone 5では,そうとは言い切れない面がある。
ZenFone 5とZenFone 4のスペックを表にまとめてみた。ここで重要なのはSoCとCPUコア,およびGPUコアだ。冒頭で述べたとおり,ZenFone 5が搭載するSoCはSnapdragon 636であるが,前世代機であるZenFone 4は,それよりも若干高スペックな「Snapdragon 660 Mobile Platform」(以下,Snapdragon 660)を採用している。CPUコアの動作クロックは,Snapdragon 660のほうがやや高く,GPUコアも上位のものを統合しているので,ことSoCについては,ZenFone 5はZenFone 4よりもスペックダウンしているわけだ。
ただ,ASUS側に確認したところ,AIブーストが機能するのはCPUの動作クロックだけで,GPUコアはクロックアップしないそうだ。そうなると,GPUコアを酷使するゲームアプリでは,あまり効果が期待できないかもしれない。
計測に使用したアプリは,3Dグラフィックスベンチマークアプリ「3DMark」(Version 2.0.4574)と,総合ベンチマークアプリの「PCMark for Android」(Version 2.0.3716)および「Antutu Benchmark」(Version 7.0.7)の3種類。3DMarkでは,「Sling Shot Extreme」テストの「OpenGL 3.1」プリセットと「Vulkan」プリセットを選択。PCMark for Androidからは「Work 2.0 Performance」テストと「Storage」テストを使用した。
OSはともに「Android 8.0.0」(Oreo)を使用し,バッテリーモードは「パフォーマンス」に設定した。なお,全画面モードをオンにしたままSling Shot ExtremeのVulkanプリセットを実行すると,途中で計測が停止するのを確認したため,上記のテストはすべて,Game Genieをオフにした状態で計測している。
まずは3DMarkの結果から見ていこう。グラフ1はOpenGL 3.1プリセット,グラフ2はVulkanプリセットのスコアをまとめたものだ。見てのとおり,AIブーストのオン/オフに関わらず,ZenFone 5のスコアはZenFone 4に及ばない。
AIブーストがGPU性能には影響しないこともあって,総合スコアは,AIブーストオン状態でもZenFone 4比で70〜71%程度と,大きな差を付けられている。ただ,CPU性能を計測するPhysics scoreでは,AIブーストオフ状態ではZenFone 4の83〜85%程度に留まるのに対して,AIブーストをオンにすると,93〜96%程度まで詰め寄ってはいるので,クロックアップの効果がまったくないわけではない。
PCMark for Androidの結果をまとめたグラフ3を見ると,Work 2.0 Per
一方で,ストレージ性能を計測するStorageの結果は,AIブーストオンのZenFone 5が最も高いスコアを記録して,次いでZenFone 4,AIブーストオフのZenFone 5はZenFone 4よりもわずかに低いという結果となった。
ZenFone 5とZenFone 4は,いずれも「eMCP」というインタフェース規格に対応した容量64GBのフラッシュメモリを使用しているので,フラッシュメモリとインタフェースに大きな性能差はなさそうだ。結果から推測するに,AIブーストオフ状態のZenFone 5とZenFone 4のストレージ性能はほぼ互角だが,AIブーストでCPUがクロックアップ状態になれば,多少はストレージ性能が高まって,ZenFone 4をしのげるというところだろうか。
最後に,Antutu Benckmarkの結果をグラフ4にまとめてみた。
Antutu Benckmarkでも,総合性能ではZenFone 4が最も優れており,AIブーストオンのZenFone 5がそれに続くという傾向に違いはない。ただ,実アプリケーションを想定したテスト「UX」と,メインメモリおよびストレージのアクセス性能テストである「MEM」の項目は,ZenFone 5のAIブーストオン状態が最も高いスコアを記録しており,次いでZenFone 5のAIブーストオフ状態で,ZenFone 4は最も低いという意外な結果となったのだ。
細目を見比べてみたところ,ZenFone 5は,UXの「画像処理スコア」とMEMの「ROMスコア」でZenFone 4を上回っていることが確認できた。とくに画像処理スコアは,ZenFone 4比でAIブーストオン状態が約131%,AIブーストオフ状態でも約130%と,2倍以上のスコアを記録している。
ROMスコアのほうは,もう少し大人しく,ZenFone 4比でAIブーストオン状態が約22%,AIブーストオフ状態は約14%高いという結果だった。
UXの画像処理スコアは,「QR-Code Test」というQRコードの画像認識処理の性能を計測した結果のようだが,AIブーストオンの状態ならともかく,AIブーストオフ状態のZenFone 5が,ZenFone 4のスコアを2倍以上も上回る理由が分からない。
可能性としては,Snapdragon 845搭載のZenFone 5Z用に作られた筐体を流用したことにより,ZenFone 5は放熱面でZenFone 4よりも有利にあるため,テストによってはAIブーストがオフの状態でも,CPUコアが高クロックで動作しやすいのもかもしれない。その結果が,Antutu Benchmarkの一部テストに現れたとも考えられるが,スコアそのものに対する疑念も拭えないのが正直なところだ。
4種類のテスト結果を見るに,AIブーストをオンにしても,GPU性能に変化はほとんどないが,CPU性能は明確に向上しており,ZenFone 4に及ばないまでも,そうそう見劣りはしない程度になると言えよう。CPUクロックの差は,かなり縮めることに成功しており,複数のアプリを同時に使うような場合では,効果が期待できる。
ただ,3Dグラフィックス中心のアプリでは,AIブーストの効果をあまり感じられそうもないので,放熱やバッテリー駆動時間を考慮すると,AIブーストをオフにしたほうが良さそうだ。
どちらかといえば,前面がほとんど画面だけなので,連打中に手のひらなどが画面に触れてしまい,計測のリトライが多かったほうが気になった。軽く握っているつもりでも,画面に少し触れてしまい,入力を受け付けないアレだ。リズムゲームへの影響はないのだが,通常のOS操作時で不意に遭遇することが多かった。回避策としては,持ち方を見直したり,ジャケットで包んだりといった対策が効果的である。
毎度おなじみ「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(以下,デレステ)をプレイしてみたところ,入力の取得は良好なもので,ゲーム全般において入力面でストレスを感じることはなかった。タイミング調整結果も「+13」で済み,Android端末としては調整が少ないほうである。
3DMarkのスコアから想像できる人もいるだろうが,グラフィックス描写については,「3Dリッチ」ではもたつきが目立ち,快適とは言えなかった。ZenFone 5では,「3D標準」が妥当だ。MVにおいてもフレームレートの落ち込みがあり,スクリーンショット用としては十分だが,鑑賞用としてはお勧めしかねるといったところか。
最近のゲームアプリは,グラフィックス設定が用意されているので,最高設定からワンランク落とすのを基本としておくと,ZenFone 5におけるゲームライフは快適になるだろう。
ZenFone 4よりもグラフィックス性能は低いZenFone 5だが,3Dグラフィックスに重点を置いたタイトルをそれほど遊ばないのであれば,価格帯的にも候補に入る1台といえる。
また,縦長アスペクト比に対応できるタイトルであれば,指を画面に置いても見える領域を広く取れるので,グラフィックス設定を下げる必要はあるものの,スマートフォンでも増えているバトルロイヤル系ゲームにも向くだろう。
ZenFone 5シリーズから1台選ぶとすると,性能重視であれば当然ZenFone 5Zが最適となる。しかし,広い画面でそこそこのスペックと価格の端末という点では,ZenFone 5もバランスよく仕上がっていると言える。「常に最高のグラフィックスで遊びたい」というほどではないなら,ZenFone 5は,十分にゲームを楽しめる端末と思える。店頭に実機が並び始めたら,実機をチェックしてほしい。
ASUSのZenFone 5製品情報ページ
- 関連タイトル:
Zen
- 関連タイトル:
Android端末本体
- この記事のURL: