連載
「異世界Role-Players」第9回:造られた命〜It's Alive! It's Alive!!
ある雷鳴響く夜の冒険
語り部:今日の依頼は,ダンジョンのモンスターからだよ
戦士:なんだよ。自分達を退治してくれってか?
語り部:ダンジョンと言っても,おとなしい連中が住んでいるモンスターの町,みたいなところだ。ところが近ごろ,次々にモンスターが襲われて体の一部分を奪われる事件が発生しているそうだ。どうやら人間の仕業らしい。ということで,君達に依頼が来た
戦士:モンスターを襲う人間!? そんなのがいるなんて……驚いたぜ!
魔術師:おい,冒険者。自分達の仕事が何か分かってるか?
調査の結果,冒険者達は町はずれの丘の上に立つ,古びた館にたどりついた。稲妻とどろく夜,冒険者達が館の奥で出会ったのは,歪んだ天才と呼ばれた錬金術師だった……!
魔術師:ラミアの下半身,スキュラの触腕,サキュバスの尻尾,そしてバジリスクの舌。そんなものを使って何をしようとしているんだ?
天才錬金術師:……ふふ,ここまでたどりついたことに免じて教えてやろう,冒険者。かつて,私は戦乱に巻き込まれて家族を失った。だから私は,私に必要なものを作ろうとしたのだ。究極の……
戦士:なるほど。究極の合成魔獣か何かで戦いに関わった奴らへの復讐……
天才錬金術師:……究極の! 花嫁を!
戦士:……え?
天才錬金術師:選び抜いたパーツをつなぎあわせ! 稲妻で命を与え,そして永遠にぬめぬめねとねとすることで,私は失った寂しさを埋め合わせるのだ。うわはははは!
魔術師:……死体から合成された花嫁は定番だけど……
戦士:こじらせてるなあ……
造られた命。生殖という通常の手段ではなく,言うなれば「製造」された生命体というものが,物語にはしばしば登場します。ときとして「生命」とは認められないこともある彼らについて,今回はお話しようと思います。
現実世界ならまだしも,ファンタジーにおいて「命の創造」は,必ずしも人の分際を超えた,禁忌の領域ではありませんし,そもそも神と人の境界が曖昧な世界が多いですよね。そこでは多くの魔物が,その由来を「魔法の実験で〜」とか「魔法で命を吹き込まれた〜」と説明されるわけですし。その中でもとくに「人間の形をしたもの」は,その振る舞いなどから,人間に準じる者として扱われることが多くなります。造られた,その一世代のみで終わることなく,連綿と命をつないでいくことだってあるわけです。生物の生殖とは違う形であっても,文明や文化を受け継ぎ,伝え,互いを家族と認識できるなら。ファンタジー世界では,それは「種族」とみなされます。
- 神々や自然発生以外の,別の知的生命によって創造された。
- そのうえで,自分達を独立した存在と認識して,独自のアイデンティティを確立している
というのが「造られた種族」の共通事項と言えましょう。ゴーレムやホムンクルス,あるいはロボットなどなど。これまで語られてきた,そういった者達の物語はしかし,往々にして悲劇でありました。
フランケンシュタイン博士の創造物
まずは,このキャラクターの話から始めましょう。モンスターとして,一般的には「フランケンシュタイン」という名で認識されている存在です。フランケン,という略称で呼ばれることも多いですね。生命の神秘に挑戦する天才が,死体をつなぎあわせ,稲妻を利用した電気ショックで再度の命を与えることに成功しました。けれど,それは祝福ではなく呪われた悲劇へ,まっしぐらに向かう運命でしかなく……というあの物語の主役です。
ちょっとホラーが好きな方なら,フランケンシュタインが怪物の名ではない,ということはご存じでしょう。インゴルシュタット大学で医学を学んだ天才,ヴィクター・フランケンシュタイン博士。怪物と呼ばれた彼を造りあげた男の名です。
そして結局この創造主は,みずからの被造物に名を与えることはしませんでした。そう,彼に名はないのです。だから,本来ならクリーチャー(創造されたもの),すなわち怪物とだけ呼ばれるべき存在です。
けれど私個人としては,彼をフランケンシュタインと呼ぶのは間違っていないと思っています。なぜならば,彼はフランケンシュタイン博士によって創られ,博士に「我が父」と呼びかけているからです。認知されてませんけどね。息子が父の姓を名乗ることに,なんの不都合がありましょうか。映画などの影響で言葉を話せないイメージのある彼ですが,Mary Shelley(メアリ・シェリー)の原作小説ではかなりの知性を備えており,言葉も巧みに操って,なかなかに哲学的な会話を成立させております。
その醜さゆえに,父たる博士に存在を認めてもらえず,孤独さから「俺と同じ方法で,俺の伴侶を創ってくれ」と頼むも受け入れられず。そして彼は,自らが造られたこと,そのものへの復讐に走ります。映画などでは「損壊された脳を使用したがゆえに凶行に走る,完全なモンスター」という描かれ方であることも多いのですが,原作小説ではさまざまな葛藤の果て,互いに関係をこじらせまくって恨みを重ね合うお話になってまして,最後は北極の吹雪へ姿を消してゆく,という結末を迎えます(その先で,大空洞から地球の裏側へ入りこんで放浪する,というパロディ続編もありますが)。姿は醜いけれど怪物ではなく,人としての優しい心を持った巨人。それが原典での彼です。前回のドラキュラなどもそうですが,原典と映画のイメージがけっこう,かけ離れているキャラクターなんですよね。
フランケンシュタインは,このKarloff主演の映画によって,キャラクターとして広く一般化し,いろいろな作品に登場するようになりました。ちなみに,この記事タイトルの「It's Alive!」は,稲妻の電気で彼が動きだしたときの,博士のセリフです。
本邦でもフランケンシュタインの怪物は,少なくとも昭和のころはメジャーなキャラクターでした。例えば特撮映画「フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)」では,身長18メートルの巨人であるフランケンシュタインの怪物が,地底からあらわれた怪獣と戦います。巨人vs.巨大生物という絵作りは,後のウルトラマンのプロトタイプともなったと言います。
そのほか彼をテーマにした作品としては,和田慎二作の少女漫画「わが友フランケンシュタイン」を個人的に挙げておきたいと思います。醜い姿と優しい心を合わせ持ってしまった,正統派のフランケンシュタインの怪物を主人公にした連作です。彼には,友人となった少女によってサイラスの名が与えられますが,いかに優しい気持ちで人々を救っても,安住の地を得られない,永遠のさすらいびととして描かれています。
つぎはぎの少女達
設定上は「つぎはぎされた死体」なのでアンデッドと思われがちですが,「一旦は死んだ肉体に,再び命を宿らせた」ものであり,「あくまでも『肉』は素材であって,それを魔法的/疑似科学的な生命エネルギーが動かしている」こと,そして「創られたものとして,新たなアイデンティティを得ていること」から,ネクロニカのドール達はフランケンシュタインタイプのクリーチャーと見なすほうが,個人的にはしっくりきます。作者によると「戦闘で手足がばらばらに壊れていくゲームシステムは,もとはロボットバトルものとして考えていた」そうなので,出自もやはり「動く死体」ではなく,「新たな命を得たものたち」なのです。
吸血鬼やゾンビとフランケンシュタインタイプの違いは,私が思うに「死の前後で,自我が継続しているかどうか」なんじゃないかと。ゲームではありませんが,テレビアニメ「ゾンビランドサガ」に登場するゾンビアイドル達は,クリーチャーとゾンビの中間のように感じます。基本的に自我は継続しているんですけど,主人公である1号ことさくらが生前の記憶を失っているので,テーマとしてはフランケンシュタインに近いというか。新たな自我を確立しようともがく姿なんか,そのまんまじゃないでしょうか。ちなみに,記憶のある2号から6号は,モンスターの定義としては“肉体のある亡霊”と見なすのが適切ではないかと思います。
いや,私の勝手な定義などどうでもよろしい。フランケンシュタインに話を戻しましょう。
プレイヤーキャラクターでこそありませんが,これ系の怪物を使役できるキャラクターとして,「シルバーレインRPG」には「フランケンシュタインの花嫁」というジョブがあります。プレイヤーに近しい誰かの遺体を改造して,共に戦う相棒になってもらうという,なかなかにエモい設定です。なおジョブの名前は“花嫁”ですが,性別に縛りはありません。
ちなみに筆者がこの作品をプレイするときは,このクラスを好んで選択しておりました。で,名前は必ずエルザ・ランチェスターにちなんだものを付けていました。傑作映画「フランケンシュタインの花嫁」で,女性型クリーチャーを演じた女優さんですね。
我はゴーレム,幽霊船の使いなり
ある日の暗い路地裏での冒険
戦士:こないだの錬金術師事件の後から,なーんか毎日,視線を感じるんだ。まさか,花嫁が完成してて,俺に惚れちゃったなんてことはないよな?
魔術師:あー……それはないと思うがな
語り部:ここで耳寄りな情報。取り調べ中の,正義神の司祭が聞いた話では,奴が作った黒曜石のゴーレムが一体,消えてるそうだ
戦士:ゴーレムって,あのノシノシ歩く,動きのにぶいでっかいやつ?
語り部:そうとは限らんよ。なんか,動きの素早そうなデザインだったそうだ
魔術師:黒曜石製か。闇に溶ける暗殺者タイプとかの可能性もある
戦士:ご主人の復讐ってか? はは,返り討ちにしてやるぜ。燃える〜っ
と,戦士君が調子に乗ったその夜。冒険者達の前に,黒づくめでスタイリッシュなデザインのゴーレムが出現した。
謎のゴーレム:先のご主人を,私の奉仕が受けられぬ身にしてくださったお2人のことは,よく観察させていただきました。責任を取っていただくにふさわしいとお見受けいたします
戦士:(身構えて)いいだろう。正々堂々受けて立つ。かたき討ち……
魔術師:あ,こいつが引き受けてくれるそうだぞ。俺はパスだ
黒いスーツ風デザインの執事型ゴーレム:承知いただきました。では,今日から新しいご主人さまになっていただきます
戦士:ようし分かった。かかってこ……ええっ?
執事型ゴーレム:ワタクシからご主人さまを奪ったあなた……責任とっていただきます
魔術師:うわー,黒曜石にほほを赤らめる機能とか,どこまで凝り性の天才だったんだ,あいつ
戦士:平然としてんなよ! あっ! てめぇ,この展開に気がついてたな!?
魔術師:あたりまえだろう。おまえこそいい加減に慣れたらどうだ
執事型ゴーレム:それでは,ただいまより,ご奉仕させていただきます。末永くよろしくお願い致します
「我はゴーレム,幽霊船の使いなり」――というのは,かの宮崎駿が作画で参加した昭和の劇場用アニメ映画「空飛ぶ幽霊船」に登場する巨大ロボット,ゴーレムのセリフです。昭和40年代,ゴーレムという名前を私はこの作品で覚え,後に元ネタとしてユダヤの伝説があることを知りました。戦前にモノクロ映画にもなっていて,怪物好きの間ではそれなりに知られたモンスターではあったようです。
ゴーレムはもともと,ユダヤ教のラビ(宗教的指導者)が作ったという,自律的に動ける土人形のこと。故地を失い,放浪の民であった中世のユダヤの人々が,自分達を守ってくれる超自然の存在として想像,あるいは創造したものでした。それが20世紀のはじめ,東欧の映画や小説に登場したことで,その存在は広く知れわたるようになります。Paul Wegener(パウル・ウェゲナー)監督の映画が有名で,何作か作られたそうですが,残念ながら現在残っているのは1920年のフィルムのみだとか。巨体でずしんずしん歩くその姿は,後の映画「フランケンシュタイン」や,本邦の特撮時代劇である「大魔神」――これは神が宿った巨像なので,人に使役されるゴーレムとはちと違うのですが――などに影響を与えたと言われています。
ちなみにゴーレム伝説は,「魔術都市」あるいは「魔法都市」とも呼ばれるチェコの都市,プラハが舞台となっています。十年以上前ですけど,私も観光旅行で行ったことがありまして,とてもきれいな都市でした。そこにはかつて錬金術師達が住んだという黄金小路があり,ドッペルゲンガーものの有名作品「プラーグの大学生」の舞台でもあって……ゴーレム伝説が語られるにふさわしい雰囲気でありました。
この「土人形」のゴーレムがファンタジーゲームに導入されると,これが非常に使い勝手の良い存在となります。なにせ,命令どおりに動いて敵と戦ってくれる強力な兵器なんですから。悪の魔術師の護衛をさせるにも,善のパーティの支援をさせるにもぴったりです。
バリエーションを付けるために,さまざまな素材で作られるようになりました。元来の土を素材にしたものなどは下級なゴーレムで,銅や鉄,銀や白金など,高額な素材で作るほど強い,という現金な話になっていきます。あと,死肉(ときには生きた肉)を素材としたフレッシュゴーレムというのもありまして,フランケンシュタイン的な存在がファンタジーに登場するときは,この括りになることが多いですね。
こんな風に便利なゴーレムですが,いざ作ろうとするとけっこう面倒なものでして。名作ボードゲーム「センチュリー:スパイスロード」の派生作品である「センチュリー:ゴーレム」は,まさにこのゴーレム作りをテーマにしたタイトルで,非常に良作です。素材集めに苦労しますが,「俺は今,ゴーレムを創っている!」という気分が味わえます。オススメですよ。
フラスコで生まれた命,我はロボットくん
“造られた命”としては,ルネッサンスの頃に実在した大錬金術師・パラケルススが,その創造法を発明した「ホムンクルス」も忘れてはいけません。言葉の意味は「小さな人」だそうで,フラスコなどの中で造られます。蒸留器に人間の精液を入れ,それにいくつかの素材を加え,馬の胎内と同じ温度を維持し,40日間密閉して腐敗させると,そこに「あらゆる知識を身に受けた」ごく小さな人間が生まれてくる……のだとか。20世紀にも,現代を代表するイギリスの魔術師・アレイスター・クロウリーが,魔術的な知恵を持つ人工生命体を作り上げたと言います。
死体のつぎはぎなどではなく,化学的な,あるいは錬金術的な手法で生まれてくる命。こうした存在は,ファンタジーゲームでも魔術師の使い魔や,知性と魔法に優れた人造生命のモンスターとして,しばしば登場します。そして,それが一つの種族として定着した世界も生まれてきました。
例えばロボット。産業用のロボットなどを知らない人はまずいないでしょうが,その「ロボット」の語源はチェコの作家,Karel Capek(カレル・チャペック)の戯曲「R.U.R」に遡ることができます。この「R.U.R」のロボットは,歯車やネジで造られた機械ではなく,生化学的に合成されて造られる「労働力」でした。
テーブルトークRPG「ソード・ワールド2.0 / 2.5」に登場するルーンフォークは,まさにそのようにして生まれた種族です。300年前に滅びた魔動機文明の時代に,彼らは生みだされました。当初は「財産」「道具」扱いだった彼らも,今ではきちんと人権を認められています。
一方「アリアンロッドRPG」には,「エクスマキナ」という機械種族が登場します。こちらはロボットそのもので,基本的には人型ですが,非人間タイプにすることも(GMの許可さえあれば)可能です。それから「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の舞台の1つであるエベロンには,ウォーフォージドという種族が登場します。エベロンは魔法文明と機械文明が共存する世界でして,中ボスあたりにメカメカしい敵が登場したりするのです。ウォーフォージドはそうした兵器が自我を獲得した結果,確立した種族なのですね。
それにしても,ゴーレムに続いてロボットもまたチェコ発なんですよね。フランケンシュタインもドイツの東のほうですし,吸血鬼と同様,生と死の境を越えるモンスターは東欧が本場なのでしょうか(妖精は西からなんですが)。
あと,“造られた種族”とは少々違うのですが,関連として触れておきたいものに,「命を授かった彫像」と「見た目がゴーレムっぽい鉱物系種族」があります。
命を授かった彫像の元祖は,ギリシャ神話のピュグマリオン伝説ですかね。自分の作った美女の彫像があまりにもできが良かったので,恋をしてしまった彫刻家がピュグマリオンです。あまりに愛しすぎたので,神がその彫像に命を授けてくれた,というお話。うらやましさに悶絶する方もいるんじゃないでしょうか。先ほどちらりと名前を挙げた特撮時代劇の「大魔神」も,広い意味ではここに分類されるものかもしれません。
一方,鉱物系種族は金属や宝石などに魔法的な命が宿ったものです。最近だと,アニメにもなった人気漫画「宝石の国」がありますが,ああいう感じ。
「ソード・ワールド2.0/2.5」には,前者の種族として「ティエンス」が,後者の鉱物系種族に生ける魔晶石こと「フロウライト」が登場します。テーブルトークRPGの「アースドーン」にも岩の体を持つ「オブシディマン」といった種族がおりました。
我々はどこから来て,どこへ行くのか
創られた/造られた命を持つ種族を演じようとするのなら,大切になるポイントは「アイデンティティ」,そして「自分には何かが欠けている」というコンプレックスでしょう。
まずは「アイデンティティ」のお話から。自然に生まれてくる種族は「自分が果たすべき役割」を,生まれてきてから探します。しかし,創造された種族達は生まれたときから,へたをすれば生まれる前から「なんのために生まれてきたか」が明白なのです。では,与えられたその道を,素直に信じて疑わず歩くべきでしょうか。その与えられた役に殉じる日まで。それとも徹底して疑い抜いて,自分なりの新たな道を見い出すべき,なのでしょうか。
自分は誰それに忠義を尽くすために生まれてきたと信じて,裏切られようが邪険にされようが,命が尽きるまで一途に頑張ってみる。それもいいでしょう。過去の裏切りで歪んでしまい,それを創造主の種族全体へ恨みとしてぶつける。それもいいと思います。
とにもかくにも,生まれたときから「与えられた役割がある」というのが,造られた種族の醍醐味です。それに向き合ってください。「いちいち,生まれた目的を探さねばならない天然生まれの種族がかわいそう」でもいいですし,「押し付けられた役割から逃げたい。しかし……」という苦悩も,きっと美味しく味わえるはず。
ただフランケンシュタインの場合は,「生まれた瞬間に役割を終えてしまっていた。あるいは,役割を果たせないと見限られた」というパターンになりがちです。原典では,それゆえの恨みと復讐に走ったわけですが,自分が世に存在する「新しい意味」を見出すのも,被造物たる種族の楽しみだと,私は思っています。……まあ,結局,我々天然種族だって大して変わらないのですけれど。
さて,もう一つの「何かが欠けている」コンプレックスについてですが,実のところ,これは「与えられたアイデンティティ」と表裏一体です。先ほど紹介した「ソード・ワールド2.5」のルーンフォークなんて,「ほかの種族と違い,魂が見つかっていないので神の声が聞けない」という設定ですが,それで苦悩することは,実際のプレイでは(そうしたロールプレイが好きな人を除けば)あまりないかもしれません。
でも小説やコミックなどに登場した「造られた命」「自然でない命」は,いつもそのことにもがき,苦しんできました。偶然によって生まれた妖怪人間も,人間に組みたてられたキカイダーも,「人間になりたい」と憧れ,苦悩します。「人造人間キカイダー」は石森章太郎(作家名は発表当時のもの)のロボットヒーロー漫画。テレビ特撮でも大人気でした。主人公である人造人間ジローは,与えられた「良心回路」ゆえに「善の心」を持ってしまい,善悪の区別なく忠実に命令を実行する「兄弟」達と戦います。彼が迎える壮絶な決着(漫画版のほうですよ)は,ぜひご一読いただきたいインパクトです。
そういうシリアスすぎるのはつらい,コミカルにやりたい,ということであれば,獣人のときと似てしまいますが,テンプレっぽい口調というか,口癖や語尾を使う手もあります。フランケンシュタインなら「ふんが―」(「怪物くん」由来だと思うのですが,それ以前にもあるんでしょうか?)とか,ロボットならカタカナしゃべりや「ソレハ論理的デハアリマセン」とか,メカを強調したしゃべりですね。
個人的には,昔から「機械と人間の友情」という話に弱くて,こうしたコミカルで命令を実行するだけのキャラが,友情のために命令にそむいて犠牲になったりなんかすると,もう滂沱の涙ですよ。ロボ,どうしたんだ,ロボ。行くんじゃない……!
さて,前に陸と海の種族の話をしたときに,「いつかは空を飛ぶ種族も」と申し上げておりました。間が空きましたが,いよいよ〜ということで,次回は鳥人系や天使など,背に翼のある種族のお話をしようかと思います。
次回の掲載は,2020年に入った1月28日を予定しています。今年一年,この連載にお付き合いいただき,ありがとうございました。よいお年をお迎えください。そして来年も,よろしくお願いいたします。
■■友野 詳(グループSNE)■■ 1990年代の初めからクリエイター集団・グループSNEに所属し,テーブルトークRPGやライトノベルの執筆を手がける。とくに設定に凝ったホラーやファンタジーを得意とし,代表作に「コクーン・ワールド」「ルナル・サーガ」など。近年はグループSNE刊行のアナログゲーム専門誌「ゲームマスタリーマガジン」でもちょくちょく記事を書いています!(リンクはAmazonアソシエイト) |
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