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「全国学校対抗GAMEツクール大会」「GAME OF THE YEAR」「ゲーム投稿サイト」など,さまざまな展望が語られた「RPGツクールMV」発売イベントをレポート
本日(12月17日)発売された同ツールについて,「RPGツクールMV GAME OF THE YEAR」「RPGツクールMV 全国学校対抗GAMEツクール大会」「RPGツクールMV製ゲーム投稿サイト」など,今後の展望やアップデート計画などが語られた本イベントの模様をレポートしよう。
RPGツクールMV(以下,MV)は,難しいプログラミングができなくてもRPGを作れるツール。グラフィックスや音楽のデータも同梱されているため,アイデアさえあれば,すぐにゲーム制作を楽しむことができる。4年ぶりの新バージョンとなる今回は,作ったゲームがHTML5をサポートするブラウザで動作し,遊ぶためにランタイムを導入するなどの手間は不要。また,iOS,Androidのアプリも制作できるのが特徴だ。
すでに著名ツクラーが本ツールで作成したゲームの無料配信が「ニコニコゲームマガジン」でスタートしており,話題を呼んでいるのはご存じのとおりだ。
「RPGツクールMV」公式サイト
マルチデバイスに対応し,簡単に遊べるスタイルにこだわる
MVの構想がスタートしたのは2013年のこと。「RPGツクールはPCオンリーだし,プレイするにもランタイムなどが必要なため,ツクール製のゲームがあっても遊べる人が少ないのではないか」という指摘を受け,マルチデバイス対応と,グラフィックスを綺麗にするというアウトラインが決定。さまざまなコンテンツが余暇時間を奪い合っている現状,最も気軽に遊べるということで,完成したゲームがHTML上で動作できるようにしたという。
ニコニコゲームマガジンでサンプルゲームの無料配信を行ったところ効果はてきめんで,「Twitterで拡散されたゲームのリンクをクリックするだけで,そのままプレイできた」という喜びの声が上がったという。野田氏は,このように簡単に遊べるスタイルがツクール製ゲームの今後の姿であり,こうしてゲームが広がっていくならツクラーもプレイヤーも皆が楽しくなるのではないか,と語った。
世界同一環境の提供,「GAME OF THE YEAR」「全国学校対抗GAMEツクール大会」といった新たな試みも進行中
同社では,ゲームを作る人/遊ぶ人を増やすというコンセプトのもと,「ワールドワイドスタンダード」「IP素材の提供」「アカデミー施策」をキーワードとした取り組みを行っていくという。
●「ワールドワイドスタンダード」
これまで日本国外でRPGツクールシリーズをパブリッシングし,海外におけるツクラーコミュニティの形成に尽力してきたDigicaと連携し,MVの環境を世界中で同一のものとしていくという。
まずは12月17日より海外製プラグイン54種を日本語に翻訳したうえで,無料での提供が行われる。また,MVで作られた世界中の作品を評価する「RPGツクールMV GAME OF THE YEAR」的なイベントの開催も考えているという。
●「IP素材の提供」
さまざまなIPとコラボし,キャラクター素材をMV用として配信するというもので,こちらはすでにニュースとしてお伝えしているとおり。ちなみに飯塚氏は「ファイヤープロレスリング」(ファイプロ)シリーズが好きだそうで,ファイプロ素材が配信された際には「ファイプロRPG」を作ってほしいとアピールしていた。
●「アカデミー施策」
教育機関を対象に,価格が最大50%OFFになるアカデミックパックが提供されるほか,「RPGツクールMV 全国学校対抗GAMEツクール大会(仮)」と題した大会を企画中だという。
「RPGツクールMV GAME OF THE YEAR」「RPGツクールMV 全国学校対抗GAMEツクール大会(仮)」共に,詳細に関しては改めて公開されるとのことだ。
来年2月と4月には「不要素材削除ツール」など,さまざまなアップデートを実装予定
1990年にスタートしたPC版のRPGツクール。「RPGツクールXP」「同VX」「同VX Ace」は海外で61万5000本,国内で8万本の販売数を記録しているという。
これらのツールで作られた自作ゲームは,実況動画やTwitterといったネット文化とも相性が良く,ホラーゲーム「青鬼」をHIKAKINさんが実況した動画は4億14万回の視聴数を記録,先に公開されたMVのサンプルゲームは24時間で3万名以上が遊ぶなど,ネットを通して大きく拡散している。
ツクール製ゲームのメディアミックスも進んでおり,コミック化やノベライズだけでなく,「青鬼Ver2.0」や「死臭-つぐのひ異譚-」のように映画化に至った例もある。MVではデバイスを選ばない展開が可能で,制作したゲームは,TwitterにURLを貼るだけでプレイしてもらえるため,今後はさらにツクール製ゲームをプレイする人が増えるのではないかと一ノ瀬氏は語った。
そんなMVだが,直近ではいくつかのアップデートが予定されているという。動作に必要な素材のみにすることで完成品ゲームの容量を軽減する「不要素材削除ツール」,ゲームに使われる画像や音声を暗号化して外部から使えないようにする「画像・音声素材簡易暗号化ツール」,そして「キャラクター生成ツール」の新パーツの追加が行われていく。
また,「スロットマシンプラグイン」やタッチスクリーンに最適化した入力を可能とする「公式タッチUIプラグイン」,そしてスマートフォン向けに容量を抑えたグラフィックスやサウンドの素材データ,制作するうえで参考になるようなプロジェクトデータも提供予定だという。
このほか,ユーザーからの意見を受けてピックアップされた28項目の改善点が精査中とのこと。これらのアップデートは2016年2月と4月に実装される予定となっているそうだ。
制作環境のサポートから知名度アップ,そして収益化の手伝いまで
1990年代にゲーム制作集団「Bio_100%」の代表として活躍した“alty”こと森 栄樹氏がドワンゴ設立当時の副社長を務め,“Steelman”こと千野裕司氏や,Bio_100%の戀塚昭彦氏が今も在籍するなど,ドワンゴには自作ゲームを愛する文化があるという。そのため,自作ゲームを多くの人に遊んでほしいという願いがあるのだそうだ。また,田村氏は自身も個人でゲームを開発している。
●「制作環境のサポート」
ドワンゴはこれまでに中村光一氏を招くなどして自作ゲーム制作の勉強会を行ってきたが,今後は地方での開催も視野に入れていく予定だという。また,ニコニコ生放送では,MVの情報を発信する交流生放送も行っていくとのことだ。
●「自作ゲームを広げる」
「ニコニコ自作ゲームフェス」では,受賞した作品について,さまざまな展開がなされてきた。PS4とPS Vitaで発売された「TorqueL」,Steamで販売された「Hacker's Beat」のような市販化に加え,小説化や漫画化についてもサポートしてきたという。
ネット上ではニコニコ生放送,リアルでは「ニコニコ超会議」「闘会議2015」といった取り組みによって自作ゲームの魅力を周知している。
●「一緒に作品を作る」
自作ゲームを「連載」するニコニコゲームマガジンでは,田村氏が編集者的役割でゲームの企画段階から関わり,自作ゲームクリエイターと共に作品を作っている。ここからは「殺戮の天使」「Hero_and_Daughter」といったヒット作が誕生。「心霊写真使い涙歌 七人ミサキの呪い」ではゲームと小説が連動するというユニークな試みが行われるなど,大きな成果が上がっている。
●「収益化のお手伝い」
小説化や漫画化に加え,「Hero_and_Daughter」の英語版をSteamにて販売するといった,収益化についてのサポートも行われてきた。今後,ニコニコゲームマガジンの作品に関してはローカライズを支援していくとのことだ。
最後に田村氏は,サプライズとして,2016年春に「RPGツクールMV製ゲーム投稿サイト」を開設する予定があることを発表した。詳細は改めて公開されるとのことだが,MVがマルチデバイス対応したことによって,ツクール製ゲームが世に出るチャンスが広がった現状を踏まえ,「ツクール作品を,ニコニコユーザーを始めとするたくさんの人に届け,見て,遊んでもらえるような環境」になるとのこと。ここでは収益化についてもサポートされる予定だというので今後の発表に注目したい。
今後の活動予定を聞かれた三氏は,「まだVX Aceで作りたい作品があるので,こちらが落ち着いてからMVのエディターを触りたい」(花姫パパ氏),「MVで今度こそゾンビゲーを完成させたい」(tachi氏),「世界に通用するような,死ぬほど恐いホラーゲームを作りたい」(ImCyan氏)と意気軒昂だった。
「RPGツクールMV」公式サイト
(C)2015 KADOKAWA CORPORATION./YOJI OJIMA
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