インタビュー
「スター・ウォーズ/銀河の英雄」開発者インタビュー。奥深い戦術をカジュアルに楽しめる“スター・ウォーズのおもちゃ箱”の開発経緯を聞いた
言わずと知れたスター・ウォーズを題材にした本作では,映画のナンバリング作やスピンオフなどから,120以上もの“ヒーロー”が登場している。これらを収集・育成しながら,反乱軍や銀河帝国といった勢力から選んだ6名編成のパーティで,さまざまなシチュエーションのバトルに挑むのだ。
オートバトルでカジュアルに遊べる一方で,その気になればチームワークを駆使した奥深い戦術も満喫できる。ゲーム内でネタバレしないようにも配慮されており,長年のファンはもちろん,最新シリーズ作「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」で初めてスター・ウォーズに触れるような人でも,安心して楽しめるのだ。
本作の開発作業は,アメリカのカリフォルニア州サクラメントにオフィスを構える,EA Capital Gamesで行われている。今回4Gamerは,同社を訪問する機会が得られたので,リードプロデューサーを務めるキャリー・グスコス氏に開発経緯などを中心に話を聞いてきた。その模様を本稿で紹介しよう。
「スター・ウォーズ/銀河の英雄」公式サイト
カジュアルさと奥深い戦術を併せ持った
“スター・ウォーズのおもちゃ箱”を実現
4Gamer:
今回はよろしくお願いします。グスコスさんが本作でどういったお仕事をされているか,簡単に自己紹介をお願いします。
Carrie Gouskos氏(以下,グスコス氏):
「スター・ウォーズ/銀河の英雄」でリードプロデューサーを担当している,キャリー・グスコスです。開発作業のロードマップを設定し,そのとおりにチームが進行しているのかを管理するのが主な役割です。
ちなみにEAでは12年働いていますが,ゲーム開発者としてのキャリアは約20年になります。
4Gamer:
さきほどEAのスタッフさんに聞いたのですが,グスコスさんはMMORPGや日本のゲームもお詳しいとのことですね。
グスコス氏:
ええ。スマートフォン向けアプリの前は,「Warhammer Online」「Dark Age of Camelot」「Ultima Online」など,PC向けMMORPGなどの開発にも携わっていました。
日本のゲームも大好きで,プライベートでは10年以上にわたって研究しています。また,アジア方面に展開するゲームのプロデューサーを担当したこともありますし,ゲーム開発者になる前は,GameSpotのレビュアーとして,日本のゲームを担当していた時期もあるんですよ。
4Gamer:
個人的にはUltima Onlineなどの話も興味津々なのですが,今回は「スター・ウォーズ/銀河の英雄」を中心に聞かせてください。
今回の記事を見て初めて知るような読者に向けて,あらためてこのゲームの見どころを,簡潔ににお聞かせいただけますか。
グスコス氏:
「スター・ウォーズ/銀河の英雄」は,映画などの有名キャラが勢揃いする,まるで“スター・ウォーズのおもちゃ箱”のようなゲームです。
最初のうちは誰でも楽しめるカジュアルなゲーム内容なのですが,次第に奥深い戦術も求められ,この二面性を持っていることが大きな特徴です。ライトサイドとダークサイドに分かれたヒーローは個性豊かで,アビリティを駆使したコンビネーションを存分に楽しめるんです。
4Gamer:
自分も本作を楽しく遊ばせていただいています。最初はオートバトルでサクサク進められていたものの,次第に太刀打ちできなくなり,そこから戦術の面白さにどっぷりハマってしまいました。
グスコス氏:
まさに,そういった風に感じてもらえるように調整しています(笑)。
スター・ウォーズは巨大なIPで,また本作のプラットフォームはスマートフォンということもあり,とても幅広いプレイヤー層が触れるでしょう。そのため,ゲーム開始直後のハードルは極力下げる必要がありました。
そのうえで奥深い戦術も両立させるべく,プレイヤーが基本システムを一通り理解して「ああ,シンプルなゲームなんだな」って思い始めたタイミングで,ゲームの深みに気付いてもらえるように調整しました。
4Gamer:
確かに,自分はそのパターンだったようですね。
グスコス氏:
私は,本作の開発途中でチームに参加したのですが,その時点でゲームの基本システムやカジュアルな方向性は決まっていました。でも,長らくゲーム開発に携わってきた自分としては,やっぱり奥深いゲームにもしたかったんですよ。
4Gamer:
たとえばパーティ内のタンク役がTaunt(挑発)を行い,サポート役がバフや回復でサポートしつつ,アタッカー役がダメージを叩き込むのを見て,まるでMMORPGのチームワークを一人で楽しめるようなゲームだと思いました。
グスコス氏:
そう言ってもらえると嬉しいです。ああいったチームワークをスマートフォンで楽しめるタイトルって,あまり多くないと思うんですよね。
映画などの原作を尊重しつつ,幅広いシリーズ作から登場人物をピックアップ
4Gamer:
グスコス氏:
今回もっとも意識したのは,余計な部分をそぎ落とし,シンプルなゲーム内容にすることでした。
自分がこれまで携わってきたPCゲームなどでは,面白いと思ったゲームシステムやコンテンツなどはどんどん追加でき,それを良しとしていました。ですがスマートフォン向けアプリでは,複雑になると敬遠されてしまうんです。
4Gamer:
ゲーム内でのストーリー説明もあっさりしていますが,これもスマートフォンで遊ぶことを踏まえての判断だったのでしょうか。
グスコス氏:
そのとおりです。
スター・ウォーズの壮大なストーリーを楽しむには長いテキストが必要になりますが,モバイル端末でそれを読んでもらうのは無理があります。なのでご存じのとおり,いきなりバトルが始まるようにしています。
それに,ストーリーは映画などの原作を通じて楽しんでほしいと思っています。たとえば,「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」を映画館で観るよりも前に,そのあらすじがゲーム内で分かってしまうと,興醒めしてしまいますよね。なのでキャラクターを登場させつつも,彼らがどういった冒険を繰り広げるのかはあえて伏せているわけです。
4Gamer:
あの映画に関してですが,北米での劇場公開よりも先に,ハン・ソロやキーラなどの登場人物がゲーム内に実装されていたことに驚きました。自分もゲーム内で初めて目にしたクチですが,「ゲーム・オブ・スローンズのエミリア・クラークが,こういったキャラで映画に登場するんだ」と,期待が膨らみましたね。
グスコス氏:
本作ではルーカスフィルム(※Lucasfilm Mimited,スター・ウォーズを手がける映像制作会社)の監修も受けており,映画などのイメージを損なわないことに気を遣っています。たとえば今回の「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」では,劇場公開の約1年前からルーカスフィルムとミーティングを行い,キャラ設定に基づいたアビリティなどを開発してきました。
4Gamer:
ゲームに登場するキーラは格闘系のアビリティを有しており,映画を観るとその理由にも納得できましたが,1年もかけられていたんですね。
……それはさておき,劇場公開よりも前に映画のあらすじなどをご覧になられているのは,かなり羨ましいですね。
グスコス氏:
まぁ,役得といえる部分かもしれませんね(笑)。
4Gamer:
これだけの長きにわたって人気を博するシリーズなので,どの作品から追加キャラを選ぶのかが大変そうです。
グスコス氏:
このゲームの熱心なファンは,同時にスター・ウォーズの熱心なファンでもあります。なので,「あのキャラを実装してほしい!」といった要望は次から次へと来ていますね。期待の表れでもあるので我々としても前向きに受け止めていますが,かなりのプレッシャーを感じています。
4Gamer:
しかもエピソード7以降は,スピンオフを含め映像作品の公開ペースが上がっていますしね。キャラ開発の苦労話などはありますか。
グスコス氏:
たくさんありますよ(笑)!
開発作業がもっとも難航するのは,たとえばR2-D2のような“バトルが得意でないスター・ウォーズの人気キャラ”を開発するときです。開発スタッフによってさまざまなアイデアが出てくるのですが,ゲームバランスも含めると,どれを採用すればいいか本当に悩まされます。
4Gamer:
能力のバランシングが難しそうですよね。R2-D2やBB-8のようなキャラがバトルで頑張っている姿は,見ていて微笑ましいですけど。
グスコス氏:
あとは,映画における印象的な要素をゲーム内のアビリティで実装したくても,ゲームバランスの両立が難しいケースもあります。最近の例だと,“バウンティハンター”のバランス調整が難航しました。
4Gamer:
現在,ゲーム内に120体以上のキャラクターが実装されていますが,グスコスさんにとって特に思い入れのあるキャラは誰ですか?
グスコス氏:
たくさんいますが,そうですね……。もっとも好きなキャラは,「スター・ウォーズ 反乱者たち」(※注1)のフルクラムと,「クローン・ウォーズ」(※注2)のアソーカ・タノです。
※注1:エピソード3とエピソード4の間を描いたTVアニメ
※注2:エピソード2とエピソード3の間を描いたTVアニメ
4Gamer:
個人的にはキャラが個性たっぷりなので,さまざまな戦術を試したくなるのですが,普通に育てているとプレイヤーレベルのキャップにキャラレベルが追いつけません。一部のキャラしか十分に育てられず,スタメンが固定化されてしまうため,この点でジレンマを感じています。
グスコス氏:
確かに,その問題は開発チームも把握しています。そのほかにも遊びにくいと感じる部分は多々あり,優先順位をつけながら,改修作業を進めているところです。
言い訳になってしまうのですが,本作では配信開始から約2年半が経過しており,ベテランのプレイヤーと,新しく始めたプレイヤーの両方が楽しめるゲームバランスを維持するのは,想像以上に大変なんです。
大好きなスター・ウォーズの世界観を崩さないためにプロフェッショナルであり続ける
4Gamer:
今後実装予定のアップデートについて,話せる範囲でお願いできますか。
グスコス氏:
現在,“モッドシステム”(※注)の改修作業を行っています。これまでは1人のキャラに対して6個のモッドを装着するだけでしたが,これに対し,複数のセットを登録したうえで,任意で切り替えられるようにする予定です。今後2〜3か月位内に実装したいと考えています。
※注:キャラの能力を底上げする育成システム
4Gamer:
挑戦するコンテンツに応じて,キャラクターのスペックを調整できそうなシステムですね。
グスコス氏:
そのほかには,本作のPvP系コンテンツ,すなわちアリーナ/シップアリーナ/テリトリーウォーに関する改修作業を,2018年内の実装を目標に進めています。
4Gamer:
今後,本作をどのようなゲームに育てていきたいか,中長期のヴィジョンをお聞かせいただけますか。
グスコス氏:
スター・ウォーズのファンなら,誰でも楽しめるゲームにしたいですね。
この世界はあまりに広大で,人によって好きな作品や登場人物は千差万別です。たとえば追加キャラやコンテンツに関しても,その出展を特定のシリーズ作に偏らせず,まんべんなくカバーしたいと考えています。
4Gamer:
「スター・ウォーズ」という世界トップクラスのIPにゲーム開発者として携わるのは,どういった気分なのでしょうか。
グスコス氏:
私自身,スター・ウォーズの大ファンです。幼少期に「エピソード4/新たなる希望」を劇場で観たときの興奮は,今でもはっきりと覚えています。そういったIPにゲーム開発者として携わるのは大変な栄誉で,ちょっと言葉では説明しきれないですね。
4Gamer:
さきほどEA Capital Gamesの社内見学をさせていただきましたが(※その情報は掲載不可),スター・ウォーズ関連のタイトルはとても厳重なチェック体制が敷かれていると感じました。ビジネスパートナーとして,ルーカスフィルムをどのように見ていますか。
グスコス氏:
確かに,これまでの自分のキャリアを振り返っても,見たことのないほどの厳重さですね。ただ,この厳しさは,私たちが大好きなスター・ウォーズの世界を崩さず,ひいてはこのIPを守るために必要なことでもあります。
そういった意味において,ルーカスフィルムは極めてプロフェッショナルです。そしてEA Capital Gamesも同様に,プロフェッショナルでありたいと考えています。
4Gamer:
日本でも最新シリーズ作の「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」を見て,本作に新たに興味を抱く人もいると思います。最後になりますが,そういった人に向けて,本作をあらためてアピールしていただけますか。
グスコス氏:
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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