そうだ アニメ，見よう：第215回は「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」。銀髪ハーフの女子高生をめぐる学園ラブコメディ

　2020年5月に小説投稿サイト「小説家になろう」で発表され，現在は角川スニーカー文庫から書籍版を刊行中の「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」（既刊9巻，通称：ロシデレ）。著者・燦々SUN氏×イラスト・ももこ氏のタッグが手掛ける本作は，第1巻が「2020年度紙本ライトノベル新作売上」で第1位を獲得し，シリーズ累計発行部数が500万部を突破（2024年8月時点）している人気作だ。手名町紗帆氏によるコミカライズ版も累計100万部を達成している。

　というわけで，「そうだ アニメ，見よう」第215回のタイトルは，同作をアニメ化した「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」（毎週水曜23:30〜TOKYO MXほか）。制作は動画工房が担当。監督・シリーズ構成は「先輩がうざい後輩の話」や「可愛いだけじゃない式守さん」の伊藤良太氏が務めている。

「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」

　私立征嶺学園に通う久世政近（CV：天﨑滉平）は，ごく普通の高校1年生。その隣の席に座るアリサ・ミハイロヴナ・九条（CV：上坂すみれ，通称：アーリャ）は，歩けば誰もが振り向くほどの美少女で，ロシア人の父を持つ銀髪ハーフの女子高生だ。彼女は，学校で寝てばかりいる政近に，いつも冷ややかな目線を向けている。

　ところが，時々ボソッとロシア語で政近にデレてくる。本人は，政近に分からないよう母国語でつぶやいているつもりだが，政近はロシア語のリスニングがネイティブレベル。その意味を理解しながらも，気付いていない振りをしているのだ。
「Милашка（ミラーシュカ/可愛い人）」
　普段はクールな言動をとりながら，たまにロシア語の“デレデレなセリフ”をつぶやくアーリャに，政近は内心喜びながらも恥ずかしさで日々悶えるのだった。
　そんな政近は，隣のクラスのお嬢様・周防有希（CV：丸岡和佳奈）と仲がいい。なんでも幼馴染みらしいが，そんな2人の距離感に気が気でないアーリャ。


　ある日，政近とアーリャは有希の手伝いで，学園の備品を整理することになった。使用用途の分からない備品に呆れつつ作業を進める中，生徒会長の統也（CV：石川界人）が現れる。彼は政近の仕事ぶりを認め，生徒会へ勧誘してきた。政近はその誘いを断るものの，同時にアーリャが生徒会長選挙への出馬を考えていることを知る。
　実は，中等部で生徒会長を務めていた有希も，生徒会長に立候補するつもりなのだ。それを知っている政近はある決意をするのだが……。

ロシア語のデレは“精神的露出狂”

　本作は，いわゆる“王道の学園ラブコメ”を描いた作品だが，味付けが少々他作品と異なる。学園一の美少女が隣の席にいて，主人公と仲がいい。しかも彼女はロシア人とのハーフで，ことあるごとにロシア語で「かまってよ」「浮気者」とデレてくるのだ。
　主人公の政近は，幼い頃にロシア語を話す金髪ハーフの幼馴染みの少女がいたことから，ロシア語を理解できる。しかし，事実を知ってショックを受けるアーリャを気の毒に思い，内緒にしている模様。日々羞恥プレイとも言える“デレ攻撃”に耐えているわけだ。


　アーリャはなぜそんなことを？ と疑問に思う人も多いかと思う。それは，小中学生の頃に流行った“好きな人の名前を消しゴムに書くおまじない”に似た行為。好きな人にバレるかバレないかのスリル，そのハラハラドキドキを楽しんでいるのだと，原作者の燦々SUN氏は語っている。

　作者が“精神的露出狂”と名付けたこの行動は，誰しも一度は通る道だろう。普段は模範的な優等生として振る舞っているアーリャが，政近に対してだけそんなイケない遊びをしちゃう。そしてアーリャがデレているにもかかわらず，知らないふりをしなくてはならない政近の，何とも言えない“じれったい空気”が見ているこちらをキュンキュンさせてくるのだ。そんな2人の甘酸っぱい関係が，本作の見どころであり，醍醐味となる。

恋のライバルは実の妹!?

　そんなアーリャの前に立ちふさがる人物が，政近の幼馴染みの有希。実は彼女，両親が離婚する時に母親に引き取られた政近の実の妹なのだ。学園ではそのことを隠しているので，仲がいいのは当たり前。アーリャが2人の関係に焼きもちを焼き「ぐぬぬ」となるのは，仕方がないことと言える。


　本作の物語は，そのライバル（？）とも言える有希とアーリャが，生徒会長の座を巡って争う“美少女対決”が軸になっている。政近がどちらの味方になるのかが，注目のポイントとなるわけだ。
　というのも，学校ではやる気を見せない政近だが，実は中等部時代に生徒会副会長を務めた，やればデキルる人。訳あって今は昼行燈を演じているが，その片鱗を所々でアーリャに披露したりする。「努力のできない天才」だと作者が語る政近の力は有希とアーリャ，どちらのために発揮されるのだろうか。

EDテーマは懐かしの名曲

　そんな青春ストーリーを盛り上げているのが，アーリャ役を演じる上坂すみれさんが歌うオープニングテーマ「1番輝く星」だ。上坂さんはロシア語が堪能で，アニメ化発表前から本作のヒロインに最適と噂されていた人物。アーリャの魅力を詰め込んだこの曲を，のびのびと歌い上げている。

　注目すべきはエンディングテーマで，毎回アーリャが懐かしの名曲を歌うという趣向となっている。第1話の「学園天国」から第8話の「CHE.R.RY」まで，エンディングアニメーションも変更するというこだわりぶりだ。各曲のノンクレジットムービーが公開されているので，早速視聴してみよう。

第1話「学園天国」
https://youtu.be/wiciFs4eZg0?si=DkAsPBvjA483sYA5

第2話「可愛くてごめん」
https://youtu.be/O9S2bWkaiMI?si=O4MCSSHWbFawM-Va

第3話「想い出がいっぱい」
https://youtu.be/L3Arh1ccQuI?si=mU33ShEgR2TCWVx0

第4話「ハレ晴レユカイ」
https://youtu.be/tdMxdWc3NG0?si=is5G8bb8HExm3bhy

第5話「小さな恋のうた」
https://youtu.be/0ronVoomulM?si=kTVJynqu5thLjEWD

第6話「秘密の言葉」
https://youtu.be/2O4k95zmNz8?si=7JRlwGVjN7ZcCT_G

第7話「ラブ・ストーリーは突然に」
https://youtu.be/eBDoVnddW58?si=ZicaVLUkLDjAGG3r

第8話「CHE.R.RY」
https://youtu.be/QCldu2IMJXY?si=hCGJaj89ctcXxN8r

パズルゲームも制作中

　書籍発売前からSNSで話題となり，第1巻は発売から約1か月で4刷を達成するという，ライトノベル史に残る記録を打ち立てた本作。その待望のアニメ化作品を，「【推しの子】」や「NEW GAME!!」の動画工房が丁寧に作り上げている。
　政近の実家の事情や，アーリャの姉であるマリヤ・ミハイロヴナ・九条（CV：藤井ゆきよ，通称：マーシャ）との関係など，気になるポイントはいくつもあるが，焦点となるのはやはり政近とアーリャの恋の行方だ。なかなか進展しない2人の関係が今後どうなっていくのか，見逃せない。


　なお，本作をベースにしたパズルゲーム「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん パズルパーティ！」（iOS/Android）の制作が発表されている。リリース時期は未定だが，事前登録の受付が始まっているので，アニメだけでは満足できないという人はチェックしておこう。

TVアニメ「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」公式サイト

TVアニメ「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」公式X

放映データ
2024年7月3日〜
毎週水曜23：30〜TOKYO MXほか

キャスト
久世政近：天﨑滉平
アリサ・ミハイロヴナ・九条：上坂すみれ
周防有希：丸岡和佳奈
マリヤ・ミハイロヴナ・九条：藤井ゆきよ
君嶋綾乃：会沢紗弥
更科茅咲：河瀬茉希
剣崎統也：石川界人
谷山沙也加：長谷川育美
宮前乃々亜：青山吉能
丸山 毅：酒井広大
清宮光瑠：市川太一

スタッフ
原作：燦々SUN（株式会社KADOKAWA 角川スニーカー文庫刊）
原作イラスト：ももこ
監督・シリーズ構成：伊藤良太
キャラクターデザイン・総作画監督：室田雄平
プロップデザイン：成瀬 藍、永田杏子
総作画監督：室田雄平、渥美智也、熊谷勝弘、菊池 愛、迫由里香、板倉 健、まじろ、勝又聖人、おさしみ丸
美術監督：若林里紗
美術設定：石原由光、松本浩樹
色彩設計：伊藤裕香
撮影監督：杉浦誠一
音響効果：櫻井陽子
編集：木村佳史子（MADBOX）
音響監督：高寺たけし
音楽：堤博明
OPディレクター：猫富ちゃお
EDディレクター：桒野貴文
制作プロデューサー：小林 涼
アニメーション制作：動画工房
主題歌 OP：「1番輝く星」アーリャ（CV:上坂すみれ）
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