プレイレポート
カワイイ見た目の箱庭生態系シム「Birthdays the Beginning」ファーストインプレッション。お手軽なれど骨太な展開が楽しめる,恐竜好き期待の一作
東京ゲームショウ2016にプレイアブル版が出展された折,4Gamerでもプレイレポートを掲載したが,なにぶん試遊できたのは十数分だけだったこともあって,本作の魅力を十分に伝えるには不十分だったように思う。
そこで今回は,TGS会場では遊べなかったストーリーモードを中心としたファーストインプレッションをお届けしたい。TGSのときに掲載した記事での,和田氏による解説と合わせて,その魅力の一端を感じてもらえたら幸いだ。
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「Birthdays the Beginning」公式サイト
基本操作は土地の上下のみ。あとは静かに見守るのみ
本作のストーリーモードは,主人公が古い本の間に挟まれていた,地図を見つけるところからスタートする。地図に示された場所に向かった主人公は,そこで不思議な光に導かれ,未知の世界「キューブ」へと迷い込んでしまう。プレイヤーはそこで出会った生命体「ナービィ」に導かれ,自身の分身となるアバターを操作しながら,このキューブ世界に生命を誕生させるべく,奮闘していくことになる。これが本作の導入である。
TGSのレポートでもお伝えしたとおり,本作の操作は非常に簡単だ。
飛行能力を持ったアバターを操作し,これから生まれてくる生命体を育む大地であるキューブ上を移動する。任意の場所で[R1]を押せば,その場所をせり上げる。[R2]を押すと,反対に掘り下げる。基本的にはこれだけである。
地面がせり上がると,標高が高くなって全体の平均気温が下がり,逆に堀り下げると平均気温は上がる。プレイヤーは,こうしてキューブ上の平均気温を上げ下げすることで,その気温に応じた生命体を生み出すことができる。
ゲームには,このように地面を上げ下げして世界を形作っていく「ミクロモード」と,ミクロモードで作った世界を引いた視点で見る「マクロモード」があり,[△]ボタンで切り替えられるようになっている。ミクロモードでは時間が進まないため,納得がいくまで世界を作り込んだり,じっくり観察したりできる。一方,マクロモードでは時間の進む速度を2段階で調整でき,生物の繁栄もしくは衰退といった,世界の行く末を見守るモードとなっている。
キューブ状の世界に生みだされる,地球さながらの生態系
ストーリーモードでは,こうしてキューブ世界に生命が生まれ,進化していくプロセスをナービィのガイドと共に体験していくことになる。具体的には,「ある特定の生物を生み出すこと」が目標に設定され,これをクリアすると「エピソード」が進んでいく仕組みだ。
目標生物の発生条件は,序盤こそ単純に温度を上げ下げするだけで満たすことができるが,生物が増えてくると一筋縄ではいかなくなってくる。生まれた生物を繁栄させるには,その食料となる生物も必要で,さらに進化させるには,それに適した環境を用意しなくてはならない……といった具合である。
そこで思い出されるのは,かつて学校の授業などで習った,地球上の生命の誕生と進化の過程だ。地球の表面に,生命の源となる海ができ,そこにプランクトンのような単純な生物が生まれ,それを食料としてクラゲや魚が生まれてくる。魚達の一部が陸に上がって両生類に進化し,さらにその一部が水辺を離れて爬虫類へと進化,恐竜の時代がやってくる……という流れである。
学生の自分,このあたりの授業にワクワクした人なら,この感覚はきっと分かってもらえるだろう。上野の国立科学博物館でときおり開かれている,恐竜や生物にまつわる特別展示によく足を運んだりする筆者としては,正直かなりツボである。
そうしたコツが分かってくると,地形を上げ下げするだけで新しい生命体がモリモリと生まれ,数もどんどん増えていく。多くの生物が暮らしやすい適正気温を保ちつつ,地面に高低差をつければ,温度の低い深海や高地などが作り出せる。そうすることで,極地に特化した生物が生まれやすくなる。後述するアイテムを使って高地から川を流せば,湿度の高いエリアが生まれ,さらに淡水に対応できる生物の進化なども期待できる,という塩梅だ。
その一方で,順調に繁栄していたはずの生物が,いきなり絶滅の危機に瀕することも起こりえる。食物となる生物が減少したのか,あるいは捕食者となる生物が増えてしまったのか。食物連鎖の崩壊でないのなら,環境に原因があったのかもしれない。TGSで話を聞いたとき,和田氏は「内部ではガチガチのシミュレータが動いている」と話していたが,今ならその意味が分かる。なんにせよ,その危機には必ず理由があるはずなのだ
そして原因が分かったところで,それを正すべきなのかどうかもまた,プレイヤーの自由である。進化の中の諸行無常として受け入れてもいい。しかし,その生物が食物連鎖の一角をになっていたり,進化ツリーの根幹にある生物だったりすればどうだろうか。その後の生物の繁栄や進化に,影響を及ぼす可能性は大きいだろう。
こうした絶滅をどうしても回避したい場合や,そのほかのハプニングに対処するにあたっては,アイテムを使って環境に直接干渉するという方法もある。
アイテムは,アバターのHP(地面を上げ下げすると減り,マクロモードで時間を進めると回復する)をその場で回復するもののほか,地面の高さに関わらず平均気温を上げ下げしたり,山や谷を作り出したり,周囲の保水率を上げる川を作り出したりなどといった環境を変化させるもの,生物の繁殖力を上げたり,新種や変異種を作り出したりといった,生物に干渉するものがある。プレイ中はいつでも使用可能だが,数に限りがあるうえ,影響も大きいので,使用するときはよく考えたいところだ。
こうして生まれてくる生物達の栄枯盛衰を見守りながら,ストーリーは進行していく。エピソードが進むほどにクリア条件は厳しくなり,決して簡単なゲームではないのだが,操作自体は基本的に「地面の上げ下げ」だけなので,実に単純だ。この辺りが,本作のもっとも楽しいところだろう。使うべきは手ではなく,頭なのだ。
ちなみに,筆者がプレイしたときは,最初の両生類「イクチオステガ」が生まれるまでは比較的あっさり進んだのだが,そこから進化した爬虫類「ディメトロドン」が最初の恐竜「エオラプトル」発生後に絶滅してしまったため,ディメトロドン以下の進化ツリーがオープンしないままストーリーがが進んでしまった。
今回のプレイでの最終目標である「ティラノザウルス」についても,事前の話では1〜2時間ほどで到達できると聞いていたのだが,筆者場合はいくつかの生物の絶滅を経たのち,発生までに7時間ほどかかってしまった。
■異なる楽しさが用意された3つのゲームモード
本文では主にストーリーモードについて紹介したが,本作にはこのほかにも,ステージごとに設けられた目標の達成を目指す「チャレンジ」モード,目標設定なしに,自由に生態系を構築できる「フリー」モードの2つのモードが用意されている。
チャレンジモードは,各ステージごとにある程度まで生態系が整った状態からスタートし,そこからいかにして特定の生物を生み出すかという挑戦となる。ただし,アバターのレベルは固定で,かつ「アイテム使用不可」「高さによる温度変化3倍」など特殊な条件もあるため,一筋縄ではいかない。とくに,後半のステージはかなり難しいようだった。
もう一方のフリーモードは,キューブの広さも自由に設定できる,いわゆるサンドボックス的なモードといえる。セーブデータをストーリーモードから引き継げるので,ストーリーモードのその後を楽しんだり,生物のコレクションを完成させたりといった楽しみ方ができる。
一人で黙々と楽しむもよし,子供と一緒に楽しむのもよし
骨太な生態系シムを,可愛い見た目とシンプルな操作でリファインした本作。1990年代の箱庭シミュレーションが思い浮かぶゲームデザインでありながら,手触りはしっかりと現代のゲームなので,プレイ中にストレスを感じることもない。筆者のような大人が楽しめるのはもちろんのこと,子供の食いつきもかなり高そうなゲームだと感じられた。
このワクワク感は……例えば子供の頃に読んだ,学研の「ひみつシリーズ」に近いと言えば,筆者と年齢が近い,アラフォー世代の読者には伝わるだろうか。知育ゲーム的な側面をことさら強調するつもりはないが,たまにはこういうゲームも悪くない。お子さんがいる読者は,ぜひ一緒にプレイしてみてはいかがだろうか。
なお,そんなアラフォー世代(の,とくにSF映画好き)は,地面を上げ下げするときの音階にも注目してほしいとを付け加えておく。本作の手触りの良さを象徴するような演出なのだが,実はこの音階にはいくつかのパターンがあり,きっと音色に懐かしさを覚えることうけあいだ。
発売は少し先だが,生物や恐竜に興味があれば必ず楽しめるタイトルなので,ぜひ期待していてほしい。
「Birthdays the Beginning」公式サイト
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