プレイレポート
「レッド・デッド・リデンプション2」プレイレポート。もはや無法者の居場所がなくなったこの西部で,文明に屈して生きるか,逆らって死ぬか
本作は大ヒット作となったRDRの久々の新作というだけでなく,PS3とXbox 360で発売され,後にPS4やXbox Oneなどにも移植された「グランド・セフト・オート V」を除外すれば,Rockstar GamesのPS4とXbox Oneにおける初の本格的なオープンワールド作品であり,その出来が気になっていた人は多いだろう。
また,続編として登場した本作の時代設定は,RDRよりも過去の話となっており,当時は明らかにされなかった物語の謎がストーリーのキモになるなど,個人的にも注目していた作品だった。
筆者はRDR2のプレイ直前におさらいの意味も込めて,RDRをプレイし,記事を書いているが,そのときも主人公のジョンが家族を人質に取られてるとはいえ,かつての仲間を躊躇せず追い詰めている部分に,少し違和感を覚えていた。ジョンがたびたび口にしていた「裏切られた」という言葉の真意が,前作では語られなかったからだ。
「レッド・デッド・リデンプション」は何がユーザーを引きつけ,そして熱かったのか。「2」の発売直前となった今,振り返ってみた
2018年10月26日に発売される,Rockstar Gamesの新作アクションADV「レッド・デッド・リデンプション2」。8年ぶりの最新作に期待が高まっているファンも多いことだろう。ここでは発売前の予習として前作のプレイレポートをお届けする。前作をプレイした人もそうでない人も本稿でおさらいしておこう。
今回は発売直前に前作をおさらいし,万全を期して待望のRDR2をプレイできたので,そのレポートをお届けしたい。8年という期間を経て,RDRがどう生まれ変わったのか,その魅力を存分に伝えられたらと思う。
なお,今回はPS4版を使ってプレイしており,記事中のスクリーンショットは標準のPS4 ProのSHARE機能から撮影している。また,ボタンなどの表記もPS4版に準拠する形となっている。
「レッド・デッド・リデンプション2」公式サイト
スタート地点はなぜか雪山。その裏には,ダッチギャング団の追い詰められた実態があった
西部開拓時代も終わろうとする1899年の春,季節外れの猛吹雪の中を進む馬車の一団があった。ダッチ・ファン・デル・リンデ,通称「ダッチ」と呼ばれる無法者たちのリーダーと,その彼が率いるダッチギャングのメンバーだ。本作の主人公となるアーサー・モーガンもその一員であり,ボスであるダッチと共に,身を隠せる場所を懸命に探していた。
実はダッチギャング団は,アメリカ西部の街・ブラックウォーターでのデカいヤマ(仕事)に失敗し,官憲や賞金稼ぎの手から逃れるため,必死の逃避行を続けている最中だった。仲間の一部をすでに失い,取るものも取り敢えず逃げ出した彼らの手元には,武器や金どころか食料すらろくになく,「追い詰められたネズミ」同然となっていた。
数少ない希望は,逃げる直前にダッチがブラックウォーターに隠したと語る大金と,天候が回復するまでは,追っ手も自分たちを探し出せないだろうという安心感のみの状態だった。
その後,アーサーとダッチはゴーストタウンとなった山中の集落を発見し,一時的にここに身を寄せ再起を図ることになる。だがそれは,その後も長きにわたって続く,ダッチギャング団の逃亡劇の始まりの1ページに過ぎなかった。
その大きな理由は,文明社会から遠く離れたこの西部の地でも,20人を超える規模のギャング団のメンバーが都合よく隠れて生活できる場所は,ほとんど残っていなかったからだ。それでも「昔ながらの無法者」として生きようとする彼らは,ライバルギャングや賞金稼ぎ,官憲,そして各地の資産家に軍隊までも敵に回し,徐々に追い詰められていくことになる。
本作の主人公アーサーは,ギャング団のボスであるダッチの右腕であり,常に組織や仲間のことを考えて行動し,そのためなら多少の犠牲もいとわない,非常にタフな人物だ。
だが「単なる粗暴なギャング」ではなく,人種差別や奴隷売買に強い嫌悪を抱き,弱者を対象とする借金の取り立てには苦悩し,また毎日こまめに日記を残すなど几帳面で繊細な面もあったりと,人間味あふれる人物として描かれている。前作の主人公ジョンと同じく小さい頃からダッチの元で育ち,組織の中ではまだ若手の部類に入るが,まさに「みんなの兄貴」といったポジションがピッタリと当てはまるだろう。
また,前作で敵役を務めたダッチは,本作では有能かつ剛胆なリーダーとしての姿を見せるのが感慨深い。上述した雪山での行軍の後,明かりがついている民家を発見し接触を試みるが,決して住民を「邪魔なので出会い頭に撃ち殺す」なんて粗暴なことはせず,自ら交渉して物資を融通してもらおうと試みている。
結果的にその民家はすでに別の無法者たちに乗っ取られており,激しい銃撃戦の末に炎上してしまうのだが,民家に元々住んでいた女性を保護し,亡くなった旦那はわざわざ埋葬しようとするなど,とてもギャング団のボスとは思えない行動をとっている。この時点でダッチギャングはほぼ限界まで追い詰められており,自分たちが食うものすらないのに,さらに養うべき人間を増やすという判断をしているのだ。
さらにいざという時は自ら銃を抱えて現場に赴き,率先して銃撃戦の中に身を置くなど,胆力も申し分ない。作中でアーサーが全幅の信頼を置いていたことも納得できる,ギャングという前提は付くものの「一本筋の通った男」なのだ。
ギャング団の中には初登場の新キャラも多く,ミッションに出てこなくてもキャンプなどで触れあえるのだが,興味深いのは前作にも登場したキャラクターたちだ。彼らからは今まで知り得ることのできなかった人間性が垣間見えることも多い。
主人公だったジョンは,アーサー同様ダッチに目をかけられており実力はあるものの,実態はまだまだ未熟な若造といった印象だ。前半の最初の暗殺ターゲットになったビルは,ギャングとしての能力は十分でタフではあるが,大事なところでヘマをしたりとお間抜け気味なキャラだったり,逆にメキシコで探し回ることになるハビエルは,優秀かつ実直なエリート構成員という対照的な存在だったりするのが面白い。
覚えている人は少ないかもしれないが,前作でジョンは自分の農場におじさん(Uncle)という人物を護衛代わりに住まわせていた。この人も続投組の1人で,人物像としては「いつも酒を煽ってる怠け者」なのだが,お調子者の憎めないキャラで「ギャングにもやっぱりムードメーカーが必要なんだな」と妙に納得してしまった。
前作のジョンが(協力者はいたものの)「孤独な流しのガンマン」であったなら,今作のアーサーは間違いなくそれとは違った存在だ。基本的にギャング団の一員としての活動が主になっており,実際にゲーム中は転々と移動することになるキャンプで,仲間と共に生活している。
メインのミッションも多くは仲間とつるむ形で始まるため,自由行動のとき以外は,ひとりぼっちで何かをするというシチュエーションはあまりない。アーサーの行動原理も最初は「ダッチに忠誠を尽くす」と非常にシンプルなものであり,組織の一員という立場を疑うことはない。
だがそれは,逆にいえば「ギャング以外の生き方を知らず,上からの命令は絶対」ということでもあり,組織が追い詰められるごとに,彼を苦しい立場に追い込んでいってしまうのだ。
ギャング団としての活動は,当然ながら「悪事」。儲けた金で快適な冒険を目指そう
次はシステム面の話に移ろう。本作はRockstar Gamesでは定番となった,オープンワールドを採用した3人称視点のアクションゲームだ。ゲーム序盤では前述の雪に覆われた山を嫌でも満喫することになるが,もちろんそれ以外にも広大な緑の平原,うっそうとした森林地帯,ジメジメとした湿地帯など,さまざまな場所が存在している。これらを自分の気分次第で探索しにいったり,ミッションに応じて訪ねていったりする,恒例のフリーローミングなシステムだ。
前作では荒野や砂漠地帯など不毛な地が多かった印象だが,今作は緑豊かな草原やさまざまな生き物が集う河川などが豊富に存在していて,雰囲気はかなり異なる。詳しくは後述するが,広大な大自然の中では狩りや釣りの場所にはまったく困らないはずだ。
なお,GTA Vで採用されていた「一人称視点への変更」は本作でも使用可能なので,任意のタイミングで切り替えるとプレイの没入感が高まり,人によってはエイムがしやすくなるだろう。また,乗馬時は馬の姿が見えたりと,視点が変わると発見も多いので,ふだんとはまた違った感覚でプレイできるはずだ。
物語は章立てになっており,その章で用意されたメインミッションをクリアすることで,次の章に進んでいく。また,それとは別に多数のサブミッションやアクティビティなどが用意されており,これらをどういった順番で進めるかはプレイヤーの自由だ。チュートリアルも兼ねた1章の雪山こそ,行動に大幅な制限がかかっているが,そこをクリアすれば一気に広い世界を体験できる。
そのメインとなるミッションは,当然のことながらほとんどが「ギャング団による悪事」だ。空き巣や家畜泥棒といった軽めのものもあれば,列車の襲撃や銀行強盗など大規模なものもあり,仲間とのデカいヤマはテンションが上がる。当然のことながらきつい仕事の方が利益が大きく,一部は事前の下準備が必要など,GTA Vの強盗ミッションを思い出す場面もあった。また,個人的な仕事として,馬車泥棒や通行人に対する強盗を行うこともできる。
ただ悪事を働けば,当然罰が待っている。軽微なものは変装用のマスクを装着すればごまかせるが,列車強盗などで大暴れすれば容赦なく指名手配され,賞金首への道が免れない。賞金首になると官権に追われるのはもちろんのこと,ランダムで賞金稼ぎが現れて戦闘になったりする。今作でも賞金稼ぎミッションで犯罪者を追うことができるが,このときは逆に追われる立場になるわけだ。この賞金は自然消滅しないため,手配が及ばない別の地域に移動するか,自分で賞金を精算(罰金の支払いを)しなくてはいけない。
犯罪街道まっしぐらなメインミッションに比べ,サブミッションは個人的に請け負うものがほとんどで,人探しや物品の回収など簡単なものが多い。だが,Rockstar Games恒例である「発注者が奇人変人」だったり,「思ってもいないトラブルが発生する」など意外な展開もあり,なかなか楽しませてくれる。移動中の街道では,前作同様にランダムイベントが多発し,寄り道のタネには事欠かない。ストーリー上は行く必要はないが,敵やアイテムが設置されているロケーションも多く,隅々まで楽しむにはどれぐらい時間が必要なのか,ちょっと見当がつかないほどだ。
前述のとおり街を追われたダッチギャングは,人里から少し離れた場所をキャンプにしているが,アーサーの拠点もまさにここになる。キャンプには個人の寝床はもちろん,ワードローブや共用の青空食堂,あるいは弾丸や医薬品の保管場所があり,自由に利用できる。ギャングの仲間も大概はここにたむろしており,挨拶すると悩みを打ち明けられたり,直近のクリアしたミッションについて語ったりと,友好を深められる。夜にはたき火を囲んで酒を飲みながら歌ったりと,まさに「自由な無法者生活」を満喫できるし,酔っ払いの使いが面倒ならさっさと寝るなり出かけてしまえばいい。すべてはプレイヤーの自由だ。
とはいえ,実際のところはダッチギャングは追い詰められており,楽しいことばかりではない。雪山から脱出した直後にキャンプを設営したときは,医薬品と弾薬どころか食料まで底をついている。こんな状態で生活できるわけもなく,自らの手で何とかするしかないわけだ。
実はキャンプの施設はアップグレード対象になっており,ギャング稼業で稼いだ資金や貴金属を寄付して,規模を大きくできる。食堂などは安価にアップグレードできるが,一部の特殊な施設は結構な元手が必要で,序盤は手が出しにくい。だが,施設の規模を大きくすると特殊な弾薬を補給できたり,食事の品質と種類が向上したりと,直接的にもアーサーのメリットにつながる。お金は武器や馬の購入などにも使用できるが,こちらに優先的に回すのも悪くない。
なお,キャンプの備蓄は時間が経つと減少していくので,再度お金を使って補充したり,自ら食材を届けたりする必要がある。当たり前だが,人は生きているだけでお金も物資も食いつぶすのだ。
さて,キャンプの話の流れになったのでここで触れておくと,本作にも前作同様ファストトラベルはあるが,有料で乗車する駅を除けば最初は使用できない。若干条件がわかりにくいのだが,無料で使えるものはキャンプの宿泊施設を2回アップグレードすることでアンロックされる。最初に投資資金がそこそこ必要なので,恐らくある程度ギャング稼業が軌道に乗らないと使えないだろう。
また,アンロックしても使用条件はそこそこ厳しく,キャンプからの移動にしか使えないので,基本的には片道切符だ。移動先には馬と一緒に到着するので,移動手段に困ることはないが,さまざまなロケーションに次々とワープするようなことはできない。Rockstar Gamesは,GTA Vでもファストトラベルにはタクシーを使うなど制限を付けることが多いのだが,本作でもその路線が継続されているようだ。
発動すると時間経過がゆっくりになる「デッドアイ」は今作にも採用されており,初期段階ではカーソルを動かしただけで勝手にロックオンしてしまうが,ゲームが進むと敵の任意の部位をターゲットできるようになったり,弱点がハイライトされたりと,使い勝手が向上する。多数の敵を一網打尽にするのはもちろん,今作では後述する狩りがなかなか楽しいため,獲物の弱点を狙い撃ちにしたりと,相変わらず使用するシーンには困らない。
ただ,前作と同じように決闘シーンでも使用するのだが,実は決闘する機会自体が結構減ってしまったため,タイマンで使用する場面はあまりない印象だ。基本的には,多対一の戦闘を有利に進めたいときに使うことが多いだろう。
掛け値なく美しいグラフィックスでアメリカの開拓時代を満喫
本作はオープンワールドを採用しており,基本的にどこへでも行けるが,そのグラフィックスはまさに文句の付けようがないほど美しく,Rockstar Gamesの本気と執念が感じられる。冒頭の猛吹雪の山中,穏やかな草原,動物のオアシスとして機能する水辺,そして人々が行き交う街中,どれをとってもまるで現実を切り取ったかのようなリアルさで,正直なところただ驚くしかない。時間の経過によって日々訪れる朝日や夕日は,ただそこにいるだけで絵になり,道を行き交う人や馬が作り出す道路のぬかるみすらも圧倒的なリアリティを漂わせる。
モデリングやグラフィックスが素晴らしいゲーム作品は,今までにいくつも体験してきたが,オープンワールドゆえの「広範囲のエリアと,多数のオブジェクトを一度に表示しなければいけない」という制約を持った作品で,ここまで質と量を両立させたものは,ほとんど見た記憶がない。個人的にはふだんあまりゲームをしない人より,むしろ(ハードウェアの限界を知っている)目が肥えた古参ゲーマーのようなタイプほど,驚けるのではないかと思う。
広いマップは美しいだけではなく,十分に自然が堪能できるようになっている。フィールド上にはさまざまな動植物があふれており,動物は銃や弓矢で倒し,植物は直接採取することで,料理や薬の材料に使用できる。動物は鹿やバッファローといった一般的な狩猟対象から,キジやウサギ,熊や狼,さらには亀やワニなど数え切れないほどの種類が各地の環境に応じて生息しているのだ。
今作のアーサーは「イーグルアイ」という特殊能力を持っており,獲物のにおいをたどったり,遠くの動物をハイライトすることができるので,より効率的な狩りが可能だ。また,獲物は馬に乗るサイズなら,解体せずにそのまま後ろに乗せて獲物を持ち帰れるため,ちょっとしたマタギのような生活も楽しめる。
肉以外の皮や骨は,料理以外のクラフトに使用可能で,キャンプやアーサーの装備のアップグレードに使える。さらに,一部の地域には伝説級の飛び抜けた大型種が棲み着いており,これを倒すことがチャレンジ要素となっている。クリアそのものに必須の要素ではないが,前作では基本的に換金要素でしなかった狩りは,大幅にパワーアップしたと言えよう。
また,ステータスの扱いに変化があり,調理と食事が重要な要素になっている。
本作は主なステータスがライフ,スタミナ,デッドアイの3種類あり,左下のアイコンで現在の状態を確認できる。それらは周囲のゲージ部分と,中心のアイコンが表す基本値に分かれており,アイコン周囲のゲージは,デッドアイを除き,基本的に自然回復するが,基本値の方は回復せず,時間経過や戦闘で減る一方という仕組みとなっている。つまり「体力やスタミナは自然回復するが無限ではなく,活動しただけドンドン減っていく」ようになっており,さらに基本値が下がると自動回復速度も遅くなったりと,プレイにさまざまな影響をもたらす。
ライフやスタミナを根本的に回復させたいなら,飲食物を摂取したり寝たりするしかなく,これは間接的に疲労や空腹を表している。実際に序盤の雪山では,スタミナの基本値などが非常に低くなっており,食料もろくにない状況を否が応でも体験できるわけだ。
ライフやスタミナといったステータスの上限は,馬から下りて走ったり,湖や川で泳いだり,魚を釣り上げたり,肉弾戦で勝利したりと,プレイ中のさまざまな行動で上がるようになっている。ステータスの成長はGTA Vでもあった要素だが,今作では意味なくビル街を駆け回ったりする必要はなく,「自然と戯れていると,勝手に上がる」といった場面が多い。昔の漫画では「修行の定番は山ごもり」だったりしたが,本作における山ごもりも効果てきめんだ。
RDRと同じように今作でも,持ち歩いているキャンプキットでいつでも野営が可能で,道のど真ん中で開いても勝手に最適な場所に設営されるようになるなど,使い勝手が向上している。また,野営のだいご味と言えば料理だろう。狩りで入手した肉や,釣った魚はたき火でダイレクトに調理可能で,その場で食べることも「お弁当」にもできる。シンプルに焼いただけでもうまそうなのだが,荒野でオレガノやミントといったスパイスを入手していればさらに味付けが可能で,回復値も上昇する。
おまけに道具とコーヒーを持っていれば,たき火で淹れることも可能で,気分はちょっとした1人バーベキューパーティーだ。広大な大自然の中,新鮮な素材をその場で調理してうまい飯を食らい,一杯のコーヒーまで楽しめる。こんな贅沢あるだろうか?
もちろん,モーニングコーヒーも格別で,見ているこっちがリアルにコーヒーを飲みたくなってしまう。飯テロならぬ「コーヒーテロ」である。
多数の武器を携行するには,愛馬との連携が必須に。今作ではカスタマイズも可能
前作ではジョンの足として,山岳地帯からメキシコまで過酷な旅に付いてきてくれた愛馬だが,本作でも重要性は変わらない。というか,むしろ増している。広大なフィールドを馬なしでまともに移動するのは無理ということもあるのだが,今作ではアーサーが携行できる武器の数が決まっており,携行できない残りの武器は愛馬のインベントリに残されている。つまり馬に乗っていたり,近くにいない限りは,武器の切り替えが自由にできないのだ。
前作のあらゆる武器を懐に入れているジョンは(ゲームとしてはよくあることではあるが)いささか不自然なきらいもあり,リアリティの向上と馬の存在感アップのために施された変更,という感じだろうか。
馬に対するこだわりはかなりのもので,細部までリアルに再現された馬体はもちろんのこと,餌をやったり,ブラシをかけたり,撫でてやったりと存分に愛でられる。前作に引き続き信頼度も存在し,手間をかけるほど仲良くなり,ライフやスタミナの上限値が向上するといった仕組みとなっている。
つまり新しく買った高級馬より強い信頼関係で結ばれたそこそこの馬の方が,能力が高かったりするのだ。これは「長年連れ添った馬の方が本気で働いてくれるし,乗り手も癖をつかみきっている」といったことを感じさせてくれるゲームの仕様にも見えて,なかなかに面白い。
また,口笛で呼び寄せるという従来の方法以外に,手綱を引いたり,その場で動かないようにしたり,逆に付いてこさせるように指示したりと,細かい指示が可能となった。例えば「馬車を奪って移動したい」というシチュエーションでは,後を追わせたいなら事前に指示してもいいし,襲撃後に口笛を吹いてこちらに呼び寄せてもいい。これなら馬車を途中で壊したり,売ってしまったりしても,後ろから付いてきた自分の馬でそのまま移動できる。馬屋では鞍やたてがみを変えるなどカスタマイズも可能で,まさに19世紀における自動運転車といったところだろうか。
こんなに便利な愛馬なのだが,生き物であるため死んでしまう可能性があるのは変わらない。だが,今回は蘇生薬というアイテムがあり,通常の衝突事故というレベルであれば,素早くアイテムを使えば重体の状態から復活できる。
本作の馬は血統書を買うのではなく,あくまで馬本体を入手できるだけなので,死んでも再度呼び出せるといったことはない。軽い衝突程度でやられるほどヤワではないが,手塩にかけた馬を死なすと本当に精神的ダメージが(高かったら金銭的なダメージも)大きいので,鞄の中に最低1個は馬の薬を忍ばせておくのがオススメだ。
時代に逆らって生きた男たちの悲しくも熱い物語。「前作に続く」ダッチギャングの最期を見届けよう
RDR2を初めてプレイしたときに一番驚いたのは,もちろんグラフィックスなのだが,同時にもうひとつ意外だったポイントがある。それは,操作方法が今風に変更されなかったことだ。
RDRの発売は8年前なので,一部に古さを感じるのも当然だったわけだが,今作でも一番多用するダッシュや馬の拍車が[×]ボタン連打に割り当てられている。ボタンを押すタイミングでスタミナの消費が変わるし,オプションで連打の補助をONにすることもできるのだが,長時間プレイするときは馬の操作時間も自然と長くなるため,車のアクセルを押しっぱなしでいいGTAシリーズと比べるとちょっと大変な感じだ。
また,全体的な操作方法も若干複雑に感じる場面も多く,例えば銃を構えて撃つとき,手に装備しているときは[L2]を押しながら[R2]で発射するが,ホルスターにしまっているときは[R2]だけになったり,メニュー画面でのアイテムの使い方が「スティックを倒しながらメニューを閉じる」というタイプなので,焦っていると誤爆してしまったりと,慣れるまで結構時間がかかってしまった。個人的には「簡単操作モード」的なものがあると,よりよかったように思う。
前述のファストトラベルの仕様や,(特に狩りで感じる)インベントリの狭さなどは,恐らく「リアリティを追求し,意図的に調節している」のだろう。これは世界観に浸るときはバッチリ有効に働くのだが,面倒さと表裏一体であるため,好みが分かれそうな部分でもある。実際に筆者もイベントの関係で,何もない荒野に放り出されて馬すら(遠すぎて)呼べない状態になり,ヒーヒーいいながら野山をひたすら歩く……なんて羽目になることもあった。
ただ,個人的には朝起きて仲間に挨拶しながらモーニングコーヒーを決めて,愛馬と一緒に狩りに出発。道中で困っている人をデッドアイで助け,平原に出たら鹿とウサギを撃ち,ウサギはその場で調理。残りの鹿は馬に乗せて,意気揚々と帰宅……なんて生活がとても楽しい。無法者にあるまじきスローライフだが,実際にやってみると強盗とはまた違った面白さがあり,今日も狩りに出てしまうのだ。
本作が発表され,そのストーリーがRDRより過去を描くと知ったとき,筆者は「もっとコテコテの西部劇モノ」になると思っていた。前作はすでに20世紀に入った時代を舞台にしており,西部劇への徹底したリスペクトは感じたものの,設定としてはやはり遅すぎる感が否めなかったからだ。
その点,過去を舞台にすれば「より一般的な西部劇に寄せた」演出やストーリーが可能になる。つまり西部劇と聞いて多くの人がイメージする,真昼の決闘や悪漢どもとの牧場での銃撃戦といったミッションが,最新鋭のグラフィックスで再現されるのかな……と予想した。
だがフタを開けると,そのふつうすぎる予想はいろいろな意味で裏切られた。確かに時代は過去に遡ったものの,主なテーマは「無法者たちの興亡」や「仲間との共闘や裏切り」といったものに移り,結果的に西部劇感は前作に比べ,若干薄れたように思う。やはりガンマンはふらりと町にやってきて,無法者と命がけの戦いをして,孤独に町を去ってく……といった流れの方がそれっぽいように感じる。
繰り返しになるが,前作のジョンはさまざまな事情が重なり「結果的にそうなっていた」に過ぎないが,基本的には孤独な流しのガンマンだった。その点,今作のアーサーは常に仲間が近くにおり,場所を移すときはキャラバンで移動するし,そもそも存在が無法者である。時代設定こそ西部開拓時代であるが,感覚的には19世紀を舞台にしたGTAといったものに近い印象も受ける。
とはいえ,それが本作の欠点になっているかといえば,それは違う。作中でダッチと仲間たちは,懸命に大金を稼いで「こことは違う場所」に逃げようとするが,そこには非常に大きな矛盾点がある。組織の維持のために目立つ大きい仕事(犯罪)をこなしていけば,より文明に目を付けられ,さらに追い込まれ打つ手がなくなっていく。現実的に考えれば,そもそも数十人の規模のギャング団を犯罪によって維持するということ自体が,無理な時代になっていたのだろう。この「時代遅れの男たちが必死にあがく生き様」こそ,本作のメインテーマでもあり,見所なのだ。
アーサーやダッチは,自分たちがどんどんと追い詰められていることを頭の片隅では理解しつつも,全力で組織の維持のために戦う。その理由は今までの経験やギャングとしてのプライド,あるいは仲間との絆だったりするのだろうが,生き方を変えられなかった彼らの行動は結果的に裏目に出続けることになり,とある事情も重なって,アーサーは当たり前だった無法者生活に疑問を抱くようになる。
だが,生粋の無法者で組織のリーダーであるダッチには組織を抜けるという考えはない。ギャングと自分自身が完全に一体化しており,ありとあらゆる手を尽くし,ギャング組織の存続を図った結果,人心は離れて前作でジョンが繰り返し言っていた裏切りにもつながっていく。「どん詰まりになった人間が,起死回生の手を狙って博打を打ち,むしろ裏目に出る」というのはRockstar Gamesの作品の定番であり,また現実でもあることだと思うが,それによって頼れるリーダーからあっという間に転落していくダッチの姿は印象深い。
冒頭で書いたとおり,本作はRockstar Gamesの久々の大作オープンワールドゲームだ。現時点で最高レベルのグラフィックスや大ボリュームのシナリオ,どこまでも続く大自然のフィールドに大小さまざまなイベントやアクティビティなど,その物量は圧倒的で筆者はまったく遊び切れた気がしない。プレイスタイルもメインシナリオに沿って文明に追い詰められる無法者に徹するのもいいし,あえて寄り道して人助けばかりしたり,狩猟採集生活の道を歩むのも面白い。筆者のアーサーは「たまに強盗とかする,コーヒー好きのマタギ」みたいになっているが,こういった楽しみ方もありだ。
また,前作のプレイヤーなら,本作をより一層楽しめるはずだ。前作のストーリーではいまいち判然としなかったビルやハビエルの人柄はきっちりフォローされ,ジョンが躊躇なく彼らと戦ったわけや,ダッチが最後に率いていたギャングの構成員が先住民であったことも納得できるようになっている。逆に未経験なら,時系列どおりに本作をクリアしたあとに,RDRをプレイし始めるのも面白そうだ。
操作性で少し気になる点もあるが,世界観にどっぷり浸かれるころには西部開拓時代を生きるアーサーと一体化しているはず。オープンワールドやクライムアクションが好きな人はもちろんのこと,とくに前作経験者にはダッチギャング団の行く末と,アーサー・モーガンからジョン・マーストンに受け継がれる物語をぜひ堪能してほしい。
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