プレイレポート
「スーパーマリオ オデッセイ」プレイレポート。マリオと敵の魅力を再発見できる“旅”は,ひたすら濃密で魅了的だった
「スーパーマリオ オデッセイ」公式サイト
好奇心のおもむくままに
濃密な箱庭空間を探索する
スーパーマリオ オデッセイは“旅”をテーマに,マリオと相棒のキャッピーがさまざまな国を巡るアクションゲームである。ピーチ姫と結婚式を挙げようとするクッパを阻止するのが,その旅の目的だ。
2人が訪れるのは,いずれも個性的な場所ばかり。メキシコを思わせる「砂の国 アッチーニャ」,優雅な「湖の国 ドレッシーバレー」,木々がうっそうと茂る中に鋼鉄の建造物がそびえる「森の国 スチームガーデン」,8頭身の人々が現代的な街を行き来する「都市の国 ニュードンク・シティ」など,バラエティ豊かだ。
箱庭マップのあちこちには,次の国へ行くのに必要な「パワームーン」や,服や帽子を買える「ローカルコイン」が隠されているのだが,その密度が非常に高い。怪しげな物陰や行けそうだがどうにも届かない高台,謎の扉や盛り上がった地面,動く足場に不思議な壁画,それっぽい沼やいかにもなスイッチなど,普通に歩き回っているだけでもたくさんの探索すべきポイントが見つかる。
これらをひととおり通過したうえであらためてマップを見渡してみると,さっきは気付かなかった場所にパワームーンやローカルコインが配置されていることが分かり,さらに探求心が刺激される。そのため,新しい国(マップ)に初めて訪れたときのワクワク感は大きなものがある。
美しくエキゾチックな光景が感情を,そこに隠されているパワームーンやローカルコインが知性を刺激する。それは本当の旅にも似た感覚であるようにも思える。「美しいグラフィックスと優れたゲーム体験が両立するからこその“旅”感覚」とでも表現すれば良いのだろうか。
初めての国にたどり着き,好奇心のままにあちらこちらと目移りしながら歩き回るのはとても楽しい。あえて旅以外で例えるなら,おいしそうな料理で一杯のビュッフェを食べ歩くというか,面白そうな店が並ぶところでウインドウショッピングするというか,とにかく目の前に並ぶものすべてに興味を引かれながら時間を過ごすような,ぜいたくなプレイ感を味わえた。
パワームーンやローカルコインを手に入れるための解法や難度もさまざま。周囲を見回すだけですぐにたどり着ける場所に置かれていたり,壁の間を三角跳びで渡る「壁キック」や通常より高く飛べる「バック宙」といったアクションを駆使する必要があったりと,バラエティ豊かだ。
ちなみに,次の国へ移動するために手に入れるべきパワームーンの数に比べ,実際に配置されているパワームーンは割と多め。また,ローカルコインで買える「服」や「帽子」,オデッセイを彩る「ステッカー」「置物」は,アクションにまつわる能力は持っていない。 極端な話,自分の腕前や得意分野に合ったパワームーンを手に入れ,ローカルコインには手を着けなくても次の国には進める。また,本作のマリオは通常3回のダメージでミスとなるが,「残機」という概念がなく,もしもミスしてもコインが少々減るくらいなので,思う存分トライアンドエラーできる(それだけに,同じギミックに引っかかり続けてムキになっているうちに,気付けばとんでもない時間が過ぎていることも……)。
また,プレイ中はいつでも「おたすけモード」に切り替えることができる。進むべきコースが矢印で表示されるのに加え,じっとしていれば体力も自動回復するようになる。アクションゲームが苦手な人でも,無理なく自分のペースで楽しめるだろう。
敵やモノに乗り移るキャプチャーで
おなじみの敵の面白さを再発見する
探索のうえで役立つのが,新要素の「帽子投げ」と「キャプチャー」である。マリオの帽子(キャッピー)を投げるのが帽子投げ。木箱や小さな岩を破壊したり,滞空させてジャンプの足場としたり,さまざまな活用法がある。これをうまく使えば,3D箱庭マップ独特のジャンプ感覚に慣れなくてもゲームを進められるだろう。
また,キャッピーが特定の敵やモノに当たると,マリオがこれに乗り移り,その対象を操作してそれぞれが持つ独自の能力を使えるようになる。これがキャプチャーだ。
帽子にまつわる新要素は上記の二つだが,プレイヤーが意識するのは「帽子を投げて何かに当てる」ことだけで良い。新要素でありながら直観的に理解できるという非常に整理された仕様であり,実に分かりやすい。
ちなみに,今回のマリオの帽子は開発チームの中にある三つのグループによるアイデアを統合したものだという。“敵に乗り移るというアイデアは出たものの,マリオというキャラクターでどうやって表現しようかと悩んでいるグループ”“Joy-Conを生かした帽子を投げる新アクションを作っているグループ”“別のゲームで使えそうなアクションを研究しているグループ”という,一見関連性のなさそうな物事を一つにまとめるさまはまさに任天堂イズム。この辺りの開発秘話は,本作のプロデューサーである小泉歓晃氏へのインタビュー(関連記事)に詳しいので,興味のある方はぜひご一読を。
乗り移れる対象や能力もとにかく多彩だ。クリボーならほかのクリボーの頭に乗ってタワークリボーになり,そこから高い所に飛び移ることができる。キラーは空中を飛行でき,ジャンプで越えられないような崖もひとっ飛び。プクプクなら,息切れを気にせず水中を泳ぎ回れる。ティラノサウルスに乗り移り,あのワンワンを蹴散らす。石像の巨大な拳をキャプチャーしてパンチをお見舞いする。戦車になって大砲をぶっ放す……といった具合。
敵に出会うたびに「こいつに乗り移ったらどうなるのか」とワクワクしてくる。また,シリーズでおなじみの敵も,キャプチャーで新たな魅力を獲得していることにも注目したい。単に懐かしさを呼び起こすだけでなく,「キャプチャーするとどんな能力を使えるんだろう?」と好奇心を刺激し,その面白さを再発見させてくれるのだ。
スーパーマリオ オデッセイという名の“旅”
無数の仕掛けが施された箱庭空間を,マリオ自身のアクションやキャプチャーした敵の能力で探索し,そのご褒美としてパワームーンやコインが手に入る。これがスーパーマリオ オデッセイのプレイにおけるワンサイクルだ。
区切りがハッキリしており,Nintendo Switchというハードの特徴でもあるスリープからの復帰の早さもあって,ちょっとした合間に遊ぶことができる。また,プレイ中に[▽]を押せば時間が止まり,写真を撮影できるのも嬉しい。こうしたフォトモード(本作における正式名称は「スナップショットモード」)は近年の流行だが,本作では待ち時間なくすぐにモードが切り替わるので,まるでスマートフォンで写真撮影をするような感覚だ。写真がどんどん溜まっていくのはまさに旅のだいご味で,見返すのも楽しい。
それでいてプレイは非常に濃密だ。ありとあらゆる場所にパワームーンやコインが隠されており,コンプを目指すのであれば,アクションのテクニックと観察眼の両方が必須となる。このあたりは,間口の広さとゲームとしての深みをうまく両立させていると感じられた。
そして何より,いろいろな国をさまよい歩くのが面白くて仕方ない。あちらに行けば怪しい場所があるのでパワームーンが隠されていないかと気になり,こちらに行けばキャプチャーできる敵がいて能力を確かめたくなる。別の国へと出発するはずが,いつの間にか目的を見失ってみっちり探索していたということも珍しくない。この感覚には,同じく任天堂の「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(Nintendo Switch / Wii U)を遊んでいるときのそれと似たものがあった。
個人的に強く印象に残ったのが,都市の国 ニュードンク・シティだ。ビルとビルの谷間を壁登りで駆け上がり,たやすく屋上にたどり着く。空中に吊られた不安定な鉄骨の上を走り抜ける。ビルの壁面から生えた旗ポールに掴まり,段違い平行棒のように飛び渡る。この国は,現実世界の我々がスケール感を想像することのできるモノで構成されているため,マリオが涼しい顔でこなすアクションがどれだけ凄いものであるかが身に染みて分かる。
そのため,アクションスターとしてのマリオの魅力を,新たな側面から再確認させてくれるステージであると感じられた。
また,都市の国でフェスティバルも感動的だ。1981年の「ドンキーコング」からの歴史をスマートに表現するものになっているので,これはぜひ自分の目で確認してほしい。筆者はちょっと目頭が熱くなってしまった。
ニュードンク・シティをはじめとした,これまでのシリーズにはなかったような異境や,キャプチャーやパワームーン集めといった新たな遊びによって,マリオと敵達の魅力を再確認する旅。それが,スーパーマリオ オデッセイなのかもしれない。
「スーパーマリオ オデッセイ」公式サイト
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