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「楽しいポスト・アポカリプス」を掲げるアドベンチャーゲーム「KAPIA」の不思議世界に触れてみた
そんななか,REBOOT Develop 2017にイスラエルのインディーズデベロッパ「Port5」が出展していた。彼らが制作する「KAPIA」と銘打たれた作品は,2人という最小のチームで作られており,「奇妙」「不思議」以外の言葉で表現するのが難しい作品になっている。そのため,言葉を尽くしても「こんなゲームだ」と説明するのは難しいのだが,それでも頑張ってどんなゲームなのかを紹介してみたい。
「楽しいポスト・アポカリプス」とは……?
ゲームジャンルとしての「KAPIA」は,基本的にアドベンチャーゲームと言える。プレイヤーは3Dで表現された不可思議な世界を旅しながら,さまざまな人(?)に会い,交渉し,問題を解決していく。
一方で「KAPIA」はたくさんのミニゲームが詰まった作品でもある。「Myst」や「Syberia」シリーズのように,世界を旅しながらところどころにあるロジックパズルを解くという基本構造を踏襲しながら,ロジックパズル以外にもアクションゲームがあったりする,といった具合だ。
さらに,「KAPIA」には「ちょっとしたサバイバル要素」もあるのだという。なんとも贅沢な設計と言えるだろう。
ゲームシステムから見れば「3Dのアドベンチャーゲームに,ミニゲームを詰め込んで,ちょっぴりサバイバル要素を足したもの」と要約できる「KAPIA」だが,本作を真に個性的なものにしているのは,その世界観とテイストだ。
「KAPIA」の世界観は,いわゆるポスト・アポカリプスものである。大戦争の後,人類(?)はドームの内部で生き延びているが,そこではいわば「機械派」と「自然派」が真っ向から対立しているという状況にある。しかもこの2派の中には,「彼らとは,けして相容れない」と考えている者もいれば,「我々は手を携えてやっていける」と考えている者もいて,情勢は混沌としている。
この混沌を反映するかのように,街にはたくさんのポスターが溢れている。ポスターにはさまざまな政治的主張が書かれていて,問題の根の深さを感じさせる。
ここだけを見れば,「KAPIA」はなんとも重たい雰囲気を持ったゲームのように思える。さらに「ちょっとしたサバイバル要素」も入ってくるのだから,どう想像しても明るい未来が見えてこない。
ところが実際のゲーム画面を見ると,そんな懸念はどこかに吹っ飛んでいく。なんというか,とにかく何もかもが「変」で「愉快」なのだ。
このあたりは言葉で説明しても伝わらないと思うので,実際に画面写真を見てもらおう。
左に見えるのは,その名も“NEKO”という猫で,筆者が理解した範囲で言えば「サイボーグ猫が二足歩行ロボに乗っている」という,とりあえず「そうですか」と頷くしかないキャラクターだ。
しかもNEKOはわりと気分屋というかなんというか,「精神状態のモード」があるらしく,政治的主張はそのタイミングによって変化する。猫なんだから仕方ないか。
主人公が旅する町並みも変わっていて,スチームパンクともポスト・アポカリプスともファンタジーとも言えない,実に不思議なテイストを有している(これを指して開発者は「楽しいポスト・アポカリプス」と称している)。
一言では語りきれない感の強い世界の雰囲気は,デベロッパである2人(実はご夫婦)が世界のあちこちを旅して,そこで体験したことを踏まえてデザインされているそうだ。
さて,なかなかに興味をそそられる「KAPIA」だが,本作はその世界観を支えるにあたって,インフォグラフィックスはもちろん,大量のポスターやハガキなど,「絵の一部として英文が存在する」作品となっている。このため,日本に向けた完全なローカライズは難しいかもしれない(キャラクターのセリフや選択肢などは問題なく日本語化できるだろうが)。
本作を余さず楽しむには,一定レベルの英語力が必要となるだろう。デモを見せてもらった範囲ではそれほど難しい英語はなかったが,「アルファベットを見ると死ぬ体質です」というプレイヤーには絶対におすすめできない。
とはいえ,本作がきわめて魅力的なゲームとして開発されていのは疑いない。本作は2017年4月現在,Steam Greenlightに登録されている(まさにREBOOT Develop 2017会期中に登録作業をしていた)ので,英語をさほど苦にしないプレイヤーであれば,1票を投じてみるのも面白いかもしれない。
「KAPIA」公式サイト
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KAPIA
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