プレイレポート
16年ぶりのナンバリング新作「Age of Empires IV」がリリース。往年のシリーズ作品を彷彿とさせる,奥深いやり込みがたまらない
ここ数年,相次いでリマスター版がリリースされている「Age of Empires」シリーズだが,ついに最新作が登場することになる。ナンバリング新作が登場するのは,2005年の「Age of Empires III」以来,実に16年ぶり。ちなみに,本作が発表されたのは2017年8月なので,ファンは発表から4年間待ちわびたことになる。時の流れは早いですね……。久々の新作ということで,まずはシリーズを簡単に振り返ってみよう。
1997年にリリースされた初代「Age of Empires」は,町の人や戦士,投石機といったユニットを生産,操作して戦うRTS(リアルタイムストラテジー)である。その名のとおり,ゲームがリアルタイムで進行することが大きな特徴であり,次々に訪れる局面では瞬時の判断や正確な操作が求められるアクション要素の強いタイトルだった。
世にRTSは多数存在しているが,「Age of Empires」は歴史上の文明をモチーフとしたところがポイントだ。ローマやマケドニア,ヒッタイトなどが登場し,太古のロマンに満ち満ちたバトルを楽しめた。インターネット黎明期に登場したこともあり,当時のゲーマーはネット対戦という新しい遊びに熱中した。
なお,同作は2018年にリマスター版「Age of Empires: Definitive Edition」がリリースされている。あれから3年も経っているのか……。
RTSの金字塔が20周年。「Age of Empires: Definitive Edition」がリリースされたので,初代AoEの魅力を語らせてほしい
1997年に発売された名作RTS「Age of Empires」のリマスター版「Age of Empires: Definitive Edition」が配信中だ。約20年前にオリジナル版と出会い,その奥深さの虜(とりこ)になったライターが,当時を振り返りつつ初代AoEの魅力をお伝えする。
「Age of Empires」は大ヒット作となり,当然のように拡張パックや続編がリリースされている。第2作「Age of Empires II: The Age of Kings」では中世,第3作「Age of Empires III」では大航海時代が舞台となり,作品を重ねるにつれて題材となる文明の時代が進んできた。だが,「IV」ではその法則から外れ,1000〜1600年ごろに活躍した文明が登場する。
※以下,本稿では「Age of Empires」をAoEと略記します。
ゲームシステムの根幹はAoE IIゆずり
シリーズの正当進化形と言えるものに
本作のゲームモードはシングルプレイヤーとマルチプレイヤーに大きく分かれており,シングルプレイヤーにはキャンペーン,孫子の兵法といったモードが存在する。まずはコンピュータとの対戦が楽しめる,シリーズファンにはお馴染みの「スカーミッシュ」を題材として基本ルールを解説しよう。
使用する文明やマップなどを決めたら,さっそくゲームスタート。スカーミッシュではいくつかの勝利条件(詳細は後述)のうち,いずれかを達成し,所属チームを勝利に導くことが目的だ。だが,いずれの勝利条件も文明を発展させ,軍隊を強化しなくては達成が難しい。
文明の発展についてだが,AoEシリーズには“時代”という概念があり,ゲームスタート時は「暗黒の時代(I)」からスタートする。条件を満たせば,IIの時代,IIIの時代へと進化し,より強力な建物やユニットが生産できるようになる。そのため,どの勝利条件を目指すにせよ,時代を進めて文明を強化することがセオリーとなる。
ゲームスタート時,プレイヤーは拠点となる建物“町の中心”と,生産ユニットである町の人を6体,軍事ユニットである斥候を1体,食料である羊を1体所持している。まずは,町の人を使って資源回収を行う。
町の人を羊や木などに向かわせると,そこから資源を回収して町の中心に運ばれる。資源には木材や食料,黄金,石材があり,基本的に有限だ。木は切ったら,金や石は掘り尽くしたらなくなってしまう。
こうして集めた資源を用いてユニットや建物を作成し,どんどん文明を強化していく。例えば町の中心では,食料を消費して町の人を作成できる。町の人が多くなれば,より多くの資源が手に入り,さらに新しいユニットや建物を作れるようになる。
ユニットだけではなく,さまざまな機能を持った建物を建設していくことも重要だ。例えば家。本作は初期状態の人口上限が10,つまり10ユニットしか所持できないのだが,家を作成すると10ずつ増えていく。
戦士育成所では,戦士や槍兵といった歩兵の戦闘ユニットを生産できる。同様に,騎兵育成所では騎士などの騎兵ユニット,弓兵育成所では間接攻撃ユニットの弓兵などが作成可能。敵陣に攻め込むには,戦闘ユニットを多数生産して軍を強化しなくてはならない。
建物の中でも特に重要なのが,「歴史的建造物」と呼ばれるカテゴリ。これを建設することで文明の時代が進化する。暗黒の時代(I)から領主の時代(II),城主の時代(III),帝王の時代(IV)へと移行するのだ。
歴史的建造物は各文明の各時代に2つずつ用意されており,いずれかを選択して建設することになる。例えばイングランドの場合,IからIIへと進化するときは,「評議会議事堂」か「諸王修道院」のどちらかを選択する。前者ではユニークユニットのロングボウが作成でき,かつロングボウの生産速度が+100%となる。一方,後者は建物の近くにいる非戦闘状態の味方ユニットを回復(1.5秒ごとに+4)するという効果を持つ。
どちらが正解と言い切るのは難しく,プレイ時の状況や好みの戦略によって建物を決めることになるだろう。AoE IVは町の中心で進化するのではなく,特別な建物の完成によって時代が進化するというわけだ。
時代を進化させるメリットについて,もう少し具体的に見ていこう。
1つ目は,新たな建物とユニットが解禁されること。先ほど挙げた戦闘ユニットの場合,Iの時代で建設できるのは戦士育成所のみだが,IIの時代になれば騎兵育成所と弓兵育成所が加わる。つまり,機動力が高い騎兵系ユニットと間接攻撃が可能な弓系ユニットが生産可能になる。歩兵しか作れない文明と,さらに騎兵と弓兵が作れる文明では,どちらが有利か。あえて語るまでもないだろう。
2つ目のメリットは,新たなテクノロジーの解禁だ。簡単に言えば,建物やユニットの強化となる。採掘所では町の人が金や石を掘る速度を強化でき,同じ時間でさらに多くの資源を入手できる。戦闘ユニットは攻撃力や守備力を強化でき,戦闘力の底上げとなる。
城主の時代(III)になれば,戦闘に特化したお城のような「天守」が解禁。同時に攻囲兵器工房も建設できるようになり,スプリンガルドや投石機といった兵器が作れる。高価だがその性能は強力,また射石砲などの建物への攻撃に長けたユニットも多く,後半戦の主力ユニットといった存在だ。ただし,攻撃の要ではあるものの,戦闘ユニットに攻撃されると弱い。そのため,騎士などのユニットでしっかり守る必要がある。
序盤はユニット同士がぶつかり合う小競り合いの戦闘だったのが,攻囲兵器を中心とした軍を編成し,それを守りながら進軍し,相手軍のユニットや建物をガンガン破壊していく戦闘へと移り変わる。時代の進化とともに,戦闘がダイナミックになっていくのも,AoEシリーズの大きな魅力だ。
勝利条件は明確になった3種類
戦局に応じて目標を切り替えるのもアリ
続いて,勝利条件について解説しよう。AoE IVでは,「敵の歴史的建造物をすべて破壊する」「民族の象徴を建設する」「すべての聖地を支配する」という3つの勝利条件が用意されている。このいずれかを満たしたチームが勝者となるわけだ。
「敵の歴史的建造物をすべて破壊する」という目標は読んで字の如し,時代を進化させるときに建設する建物と,町の中心をすべて壊せば勝利となる。相手チームをガンガン倒しまくることで達成できる条件だ。
従来作では「相手チーム全員が降伏する」という目標だったものが,より明確になった。大した違いではないと思われるかもしれないが,コンピュータ戦ではかなり嬉しい。
というのも,AoE IIでは敵軍を倒しまくっても,ほんの数体がマップの隅に逃げていて,なかなか降参しないことがあったのだ。こうなると,マップを隅々まで探索して敵の残党を見つけ出し,完全に全滅させるしかない。ほぼ勝敗が決しているのに,ダラダラ試合を続けさせられる(しかもコンピュータ相手)のは結構ツライ。要となる建物がはっきりしたため,攻守において重要なポイントが分かりやすくことも利点だろう。
「民族の象徴を建設する」はシリーズ伝統の勝利条件だ。IVの時代に解禁される「民族の象徴」を建設し,一定時間守り抜けば勝利となる。
「民族の象徴」は建設に大量の資源が必要で,また建設にも長い時間がかかる。当然,相手に建設しているのがバレれば,総攻撃を仕掛けられる。完成後も敵の攻撃から15分間守らなければならないため,しっかりと防衛を固めた場所に建設する必要があり,守備型の勝利条件と言えるだろう。
「すべての聖地を支配する」は,新たに登場した勝利条件。マップに複数存在する聖地は,聖職者であれば所有権を奪える。すべての聖地を支配し,一定時間守り抜けば勝利となる。
もちろん,敵軍に侵入されると奪われてしまうため,こちらも民族の象徴ほどでないにしろ,しっかり防備を固める必要がある。シューターにおけるコンクエストモードに近い感じだろうか。
目標となる勝利条件は,戦局に応じて臨機応変に変えられる。とりあえず,「敵の歴史的建造物をすべて破壊する」を目指して戦ってみたものの,敵陣の防備が意外としっかりしていた場合,こちらも防備を固めて「民族の象徴」を狙ってみるという戦略もアリだ。あるいは,聖地をいくつか支配し,慌てて攻めてきた敵軍を返り討ちにするというのも楽しい。
戦闘の基本はAoE IIに近い
細かな新要素で戦闘がより早く発生する
AoE IVの戦闘ユニットには,得意とする敵が存在するものがある。例えば槍兵は騎兵ユニットに有利で,多少の戦力差もひっくり返せるほど効果的だ。しかし弓兵や装甲歩兵には弱く,一方的に倒されてしまうだろう。
多くのユニットに,このような有利不利が設定されているため,同一のユニットで軍を編成するのは得策ではない。遠距離から攻撃できる弓兵を主力に据えるのであれば,弓兵が苦手とする装甲ユニットに対処するための護衛を一緒に行動させるといった,弱点をカバーするように複数のユニットを生産するのが基本だ。
AoEシリーズと言えば,自分が好きなユニットを主力にするのが楽しみだ。とはいえ,筆者はまだAoE IVの全貌がつかめておらず,好きなユニットや文明が定まっていない。
文明にはそれぞれ固有のユニットや建物が存在しているため,今は固有ユニットを主力にしながら,戦いかたを探っているような状況だ。例えば,デリー スルタン国の固有ユニットは,体力と装甲が高いエレファント。AoEシリーズ初登場となる文明ではあるが,エレファントはシリーズファンにお馴染みのユニットだ。そこそこ愛着もある。
AoE IVでは,城主の時代(III)からエレファントを生産でき,ほとんどのユニットと有利に戦えるうえに,建物への攻撃力も高い。ただし,槍兵に弱い。また生産時間が長く,コストも高いため,数を揃えるには資源と時間がかかるのもネックだ。
そのため,エレファントの生産体制が整うまで,自陣を防衛する軍を作っておきたいところ。エレファントが苦手とする槍兵に対して,弓兵を揃えておけば,のちのちエレファントの護衛に転用できるはず……。こんなかんじで自分なりの戦略を立案して,実際に試していくトライアンドエラーが醍醐味だ。
また戦闘が始まるタイミングも早くなったようだ。新ユニットである攻城塔は,それ自体に戦闘力はないが,駐留している歩兵を石壁の上に下ろせる巨大はしごのような兵器。強力な敵の石壁を破壊せずに,石壁の上に駐留している弓兵を倒したり,陣地内に攻め入ったりできる。また,お馴染みの破城槌も登場する。
本作の特徴は,攻城塔と破城槌を(テクノロジーの研究が必要になるが)兵士が作成できるようになったこと。過去作では前線に町の人を連れて行き,包囲攻撃訓練所などを建設し,そこで生産して戦局に投入という感じだった。それがAoE IVではいきなり兵士が作成でき,しかも過去作より早い時代(領主の時代(II))から作成できる。このため,本格的な城攻めを早いタイミングで行えるようになり,ひいてはバトルが発生するタイミングが早まっている。ゲーム展開がスピーディになった印象だ。
歴史上の戦いを体験できる壮大なキャンペーン
プレイヤーマークをカスタマイズできる機能もアリ
ここからは,スカーミッシュ以外のモードを紹介しよう。
「学習」では,各文明のテクノロジー系統図を確認可能だ。文明ごとの建設できる建物や作成できるユニット,文明のボーナスが記載されている。また,「ビギナー向けチュートリアル」ではその名のとおり,基本操作や基本ルールを学ぶことができる。これは初回起動時に自動で実行されるモードでもある。
シングルプレイヤー内にある「孫子の兵法」は,チュートリアルを終えたプレイヤー向けのミッション。初期の経済や包囲戦といった,実践的なゲームルールを学べるものだ。クリアタイムなどの内容に応じてブロンズ,シルバー,ゴールドのメダルがもらえるため,チャレンジしてみるのも楽しいだろう。
同じくシングルプレイヤーの「キャンペーン」は,「ノルマン人」「百年戦争」「モンゴル帝国」「モスクワの台頭」という4つのシナリオを収録。歴史を題材とした壮大な物語を,ミッション形式の戦いを通じて追体験していく。これがメインモードという人もいるだろう。
また,モードではないが,プレイヤー個人のレベルや肖像といった要素が新たに登場している。レベルはスカーミッシュなどをプレイしたり,デイリークエストという日替わりの目標を達成したりして,経験値を獲得するとアップするようだ。ただし,レベルが上がったことによる報酬などは見当たらず,どれだけ遊んだかを示す数値と言えるだろう。
プレイヤー名の横に表示されるマーク「肖像」,マルチプレイヤーマッチに参加するときに表示される「紋章」,対戦中にプロフィールと町の中心に表示される「モニュメント」といったものもあり,これらの模様をカスタマイズして個性をアピールできるようになった。
「マスター」というゲーム内でのアチーブメント要素も実装された。各文明に用意された目標を順次達成していくという内容で,これを達成すると肖像や紋章,モニュメントの新しい模様がアンロックされる。
16年ぶりに登場したAoEシリーズ最新作だが,その基本的なシステムはAoE IIIの延長ではなく,AoE IIを進化させたものになっている。これは時代に逆行しているということではない。AoE IIIがホームタウンやデッキシステムなどの新要素を満載した,いわば異端の存在だったため,AoEシリーズの本流に戻った感覚だ。AoEやAoE IIのプレイヤーには,すんなり受け入れられるゲームシステムだろう。
目立つ新要素こそ存在しないが,新文明および新ユニットによる戦闘は魅力にあふれている。どのユニットの,どんな戦法が強いのか。もちろん未知数なので手探りでアレコレ試しているところだが,これもまた楽しい。AoE IVでは石壁の上に歩兵が乗れるようになったため,城壁の上に弓兵を常駐させてお城を守るといった戦いかたも可能になった。
一方,ローカライズには不満が残る。「学習」メニューでは各文明の概要やホットキーのガイドを見られる項目があるのだが,選択するとWebページにジャンプし,その内容は当然のごとく英語。「コミュニティー」の最新ニュースやTwitterも英語のリンクなのだ。
ゲームルールは難解で,操作も非常に忙しく,コツをつかむには相当な時間を要する。とてもじゃないが,「手軽に遊べる」とは言えないが,やりこめばやりこむほど上達でき,楽しくなっていくゲームであることは間違いない。その点では格闘ゲームに通ずるものがあるように思う。
幸い,本作はXbox Game Passに対応しているため,加入者には気軽にオススメできる。「誰でも楽しめる」とは言わないが,秋の夜長にじっくり遊び込めるゲームを求めている人は,ぜひ戦場の飛び込んでみてほしい。
なお,今回は発売前にプレイしているため,本命のマルチプレイはこれからだ。かつて没頭した熱いネット対戦を再び楽しめることを心待ちにしている。
「Age of Empires IV」公式サイト
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