プレイレポート
「The Good Life」プレイレポート。“世界一幸福な町”に隠された秘密を追う物語と,田舎生活そのものを満喫するスローライフ要素が楽しい
本作は,「レッドシーズプロファイル(※原題:Deadly Premonition)」「D4 -Dark Dreams Don’t Die」「The Missing -J.J.マクフィールドと追憶島-」などで知られるSwery(末弘秀孝)氏が率いるWhite Owlsと,「パンツァードラグーン」や「ファントムダスト」で知られる二木幸生氏が率いるグランディングが開発を手がけるタイトルだ。
筆者がプレイしたSwery氏のタイトルで印象的だったのは「レッドシーズプロファイル」だ。同作の舞台となる田舎町「グリーンベイル」は,奇妙な殺人事件が起きているにもかかわらず,どこかマイペースだった。車に乗れば,主人公が映画のウンチクを語ってくれるし,ただ町を車で走っているだけで楽しかった。なので,本作が発表された時には小躍りしたものだ。そんなSwery氏のファンである筆者が本作のプレイレポートをお送りしたい。
フォトグラファー・ナオミの借金返済生活。「レイニーウッズ」というオープンワールドを楽しもう
本作の主人公で写真家のナオミ・ヘイワードは,はるばるニューヨークからイギリスの片田舎へとやって来た。
ナオミがレイニーウッズに到着すると,役場の責任者であるエリザベス・ディケンズという女性が出迎えてくれる。しかも,なんと,ナオミに一軒家を用意してくれるという。
その一軒家は,ただでさえ田舎町なのに,さらに少しはずれた場所のボロ家ということで,ナオミも来てみて納得。このボロ家を拠点に,レイニーウッズでのナオミの生活が始まる。
田舎が大嫌いなナオミがレイニーウッズに来た理由は,モーニングベル通信から届いた「“世界一幸福な町”とされるレイニーウッズという町の秘密を探ってほしい」という依頼のため。ナオミは3000万ポンドというとんでもない額の借金を抱えており,依頼の報酬で借金を返済すべく奔走する。
レイニーウッズの謎を追っていく物語がメインクエストとして設定されているが,モーニングベル通信からは,サブクエストとして写真撮影を依頼されることもある。依頼をこなしていくことで,少しずつではあるが報酬が入り,ナオミはそれを借金返済に充てていくというわけだ。
依頼された写真は,ネット上の「Flamingo」という写真共有サービスを通じてアップロードする。「Flamingo」では,アップロードした写真に付いた「エモいね!」の数に応じてスポンサーから広告料が手に入るので,モーニングベル通信社の依頼ではない写真も好きに撮影してアップロードし,借金返済の足しにできる。
サブクエストは,モーニングベル通信の依頼のほかに,レイニーウッズの住人と会話することでも発生する。クエスト達成により,それなりの額が報酬として得られるので,できる限りこなしていきたいところだ。
ただし,時間は刻一刻と流れており,何もせずにいてもやがて日が暮れ,夜となる。住民たちは時間に合わせて行動しているので,住民に用があるなら,日中にこなさないといけない点には注意しよう。
クエストをクリアすべく写真撮影に奔走していると,それだけで1日が終わることも珍しくない。基本的に「今日中に絶対これを完了しないといけない」というような“急かされるクエスト”はないし,メインクエストの進行が遅くても問題はない。自分のペースでスローライフを送ることができるのだ。
ただ,メインクエストを進行していると,たまに「URGENT QUEST」というものが発生することがある。これは緊急を要するクエストで,発生中は,ほかのクエストが一切進行できなくなる。また,一定時間内にクリアしないと,クエストの開始時からやり直しになるので,このときだけは優先的に片付けるようにしよう。
レイニーウッズは中心地となる広場付近こそ小ぢんまりしているのだが,地図画面を開いて見てみると,かなり遠く離れた場所にも人がいて,家があるのが分かる。小さな田舎町というイメージとは裏腹に行動範囲は意外と広い。
そのため,各地には「祠」というファストトラベルポイントが点在していて,開放した祠から祠へは瞬時に移動可能となっている。祠の数はかなり多く,何気なく実績欄を見ていたら,「祠を31箇所解放した」という項目があった。「The Good Life」は,田舎町を舞台にした立派なオープンワールドゲームなのだ。
昼と夜で様変わりするレイニーウッズの顔。そして起こる殺人事件
メインクエストを進めていると,夜に町の広場で,住人が犬や猫に変身してしまうシーンに遭遇する。そして,この一件以降,ナオミ自身も任意で猫に変身する能力を得ることになる。
猫になると,ちょっとした高さの柵を飛び越えられたり,人間より速く走れたり,爪痕のマークがある壁を登ったりできるようになる。また,素早さと爪を生かして,小動物を倒して皮を得ることも可能になる。
さらにストーリーが進むと,犬にも変身可能になる。猫と比べると,犬は長距離を走るのに向いていて,特定の匂いを覚えて追跡できる力も持っている。
レイニーウッズは石垣のような壁で仕切られている場所が多く,人間状態ではかなりの遠回りを強いられてしまうことも多い。しかし,猫なら飛び越えて進める場所もある。
また,ダッシュ時の移動速度は犬猫のほうが速いので,移動時は人間状態ではなく,犬猫に変身したほうが効率的だ。
レイニーウッズの秘密の一端に触れたナオミだったが,そんな折,殺人事件が発生してしまう。殺人とは無縁なのどかな田舎町という印象だったレイニーウッズ。それゆえに,「誰がどういう思惑で殺人事件を起こしたのか」が,物語の新たな牽引力として追加される。
不摂生は万病の元,体調管理には細心の注意を
殺人事件も気になるところだが,町の探索や調査を進めるうえで,ナオミの体調は常に気にしておきたいポイントだ。
ナオミには,「空腹度」「眠気」といったパラメータがあり,「風邪」「歯痛」「頭痛」といった状態異常まである。状態異常は主に普段の不摂生から発生するようになっており,これらを治すには病院へ行く必要があるのだが,この治療費がかなり高いのだ。
頻繁に体調を崩して,その度に病院のお世話になっていたら,借金返済はおろか日々の生活費にも困ってしまう。そうなると事件の調査どころではないので,体調管理は非常に重要なポイントなのだ。
常に健康体でいるために大事なことは,「食事」と「睡眠」だ。
何も食べないでいると,空腹度は日々強まっていくので,食事で腹を満たしておこう。夜間に睡眠を取っておけば昼間に眠気に襲われることはないが,夜に出歩く必要があったときは,その分翌日に休もう。
ただ,空腹度や眠気とは別のパラメータとして「健康度」というものがあり,こちらも気をつけなくてはいけない。食事の中には,空腹度は回復しても,健康度は回復しないものがあるからだ。
クエストによっては夜間でないと条件を満たせないものもあり,ついつい,徹夜でウロウロしてしまうこともある。しかし,ゲームだからといってナオミに無理をさせず,1日1日を大事に過ごしていきたい。健康第一であることが,お金を浪費せず,結果的にゲームをスムーズに進めることにつながるのだ。
治療費だけでなく,ナオミのカメラも金食い虫だ。初期装備のカメラはモノクロ写真しか撮れず,画質も悪いのだが,ゲームを進めると「中古のカラーカメラ」が手に入る。新品のカメラは非常に高いので,これをメインで使っていくことになるのだが,中古ゆえに故障が発生することがある。故障すると,町のカメラ屋で修理する必要があるのだが,この修理費が結構高い。
ナオミの体調管理やカメラの修理などでかなりお金が飛んでいくので,日が経つにつれて,お金の不安は強くなってくる。最初のうちはサブクエストや祠で受けられるミッションで稼げるが,受けられる数には限りがあるからだ。
そこで活路を見出したいのが,「Flamingo」でのお金稼ぎだ。「Flamingo」には定期的に変わる“ホットワード”が設定されており,それに合致する写真には「エモいね!」が付きやすいという性質がある。
ホットワードを常に追って写真を撮るのはそれなりに時間がかかるが,犬や猫の写真がウケるのは「The Good Life」の世界でも同じようで,夜に犬猫化した住人を撮影しておいた写真が,とんでもない数の「エモいね!」を稼ぎ出すこともある。うまく流行に乗り,多くの広告収入を手に入れたいところだ。
ウケる写真の基準は,正直よく分からない。夜に撮った暗い写真がバズることもあれば,時間帯に気を使って,同じ被写体を望遠レンズでドアップにして撮った写真がサッパリということもある。
基本的には急がなくていいスローライフゲームなのだが,体調管理のために食事代は要るし,中古カメラで写真を撮っていると,どうしても故障は発生するので修理代も要る。必要最低限のお金は稼いでおかないと,最初に持っている所持金がどんどん減っていくだけなので,1日の時間をどうお金に変えていくかは念頭に置いておきたいところだ。
レイニーウッズの居心地の良さに惚れる。ゆったりと世界に浸れる,良作スローライフゲーム
本作には,「町の謎を追っていく」というメインクエストが設定されているが,それを横に置いておいて,スローライフを満喫することもできる。どの場所にも居心地の良さがあり,しばらく写真だけを撮り歩いては帰宅して,アップロードして寝るという生活をしているだけでも楽しい。
BGMもイメージにピッタリで,田舎町のゆったりしたムード,それでいて新しい何かが始まりそうなワクワク感をうまく表現している。
ただ,おつかいイベントと移動が占める割合は高い。筆者は,こうした箱庭的な町で住民が時間に沿って生活しているゲームが好みで,おつかいイベントを通じて地理や住民の生活を覚えていく過程が好きなのだが,このあたりは人によって好みが分かれるだろう。
また,「The Good Life」というタイトル名が絶妙だと感じる。3000万ポンドもの借金を背負っている以上,ナオミの生き様は決してBestとは言えないだろう。しかし,Badではない。Goodだ。
事あるごとに「くされ地獄だぜ」と悪態をつきつつも,ナオミは底抜けに前向きで,露骨なおつかいイベントすら「マジかよ…… かっけぇ ロールプレイングゲームみてえじゃねえかよ」と笑顔を見せる。と思いきや,おつかいが度を過ぎると「ヤバいな 地獄古いRPGみたいになってきた」と愚痴をこぼす。
そんなナオミの飾らない性格は,プレイヤーの心の声を代弁してくれているかのように見えることもあり,眺めていて楽しいし,時には核心を突く鋭い一言を放つこともある。ストーリーが進むにつれて,ナオミというキャラクターがどんどん好きになっていくはずだ。
ほとんどのゲームには,「本編ストーリーのクリア」が設定されているものだ。それは本作も例外ではないし,レイニーウッズという町の秘密や殺人事件の真相は気になる。しかし,本作は「クリアだけが目的ではないゲーム」であると感じる。
道中で出会う変な住人たちとの交流。ふとした瞬間の写真撮影。鏡の前で身だしなみを整え,シャワーを浴びる。自分の畑で育てた食材から料理を作って食べるといった,レイニーウッズでのナオミの毎日を通じて,GoodなLifeとは何か,幸福な人生とは何なのかを問いかけられている気がするのだ。
願わくば本稿が,レイニーウッズを訪れるキッカケになりますように。そして,本稿を読んで興味を持ってくれた人,すでにレイニーウッズを訪れている人には,こう,声をかけたい。
“世界一幸福な町”レイニーウッズへ──ようこそ。
「The Good Life」公式サイト
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(C)2021 White Owls Inc. Licensed to and published by Active Gaming Media Inc.
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