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[SPIEL’17]Richard Garfield氏の新作「SpyNet」プレイレポート。MtGライクな手番数マネジメントが面白い,チーム対戦型カードゲーム
そんなGarfield氏の新作が,これから紹介する「SpyNet」だ。チームを組んで戦う対戦カードゲームである本作をSPIEL’17の会場で遊んでみたので,そのプレイフィールをお伝えしていこう。
「SpyNet」公式サイト
ホビージャパン「リチャード・ガーフィールドのスパイネット」紹介ページ
工作員を操り,影から世界を支配せよ
「SpyNet」における,プレイヤーは秘密工作員に指令を下す立場のボスであり,世界を裏から支配することを目的としている。
ゲームの骨子は簡単だ。まず手札にある4色の「工作員カード」から,好きなものを選んで手元に公開していこう。プレイヤーにはこの工作員のカードに応じたバーが最初に配られるので,その色に合った場所に置いていく。ちなみに工作員カードには1から4までのパワーが設定されていて,大きい数字であるほど強いカードである。
続いて公開された「同じ色の」工作員カードの中で,一番強いカードを出したプレイヤーを探す。このとき,チームメイトのプレイヤーが出したカードはカウントしない。そして,もっとも強いカードを出したプレイヤーが,その色を「支配した」ことになる(このため,同じチーム内で色が競合した場合,支配するプレイヤーが2人出ることもある)。
そして特定の色を支配するとどうなるかとえいば,同じ色に配置した「ミッションカード」をプレイする資格が得られる。手札には工作員カードのほかに,このミッションカードがあり,工作員カードを出すだけでなく,対応する色のミッションカードを裏向きに配置してもいい。ミッションカードは「自分が今支配している色」に対応したものしか場に出すことができないが,プレイすればその表に書かれた勝利点がチームに得られるので,どんどん置いて勝利点を回収していきたいところ。最終的には,ゲーム終了時(山札が尽きたとき)にもっとも得点の高かったチームの勝利となる。
ここまでが本作の基本的な流れだが,もちろんこれだけではない。とくにユニークなのは,カードをドローするメカニズムだ。
本作ではカードを引くための場所として,山札のほかに3つの山――ドローパイルが用意されている(初期状態のドローパイルは各1枚しかないが)。
さて,手番が来たプレイヤーがカードをドローすると決めたとしよう。その時,プレイヤーは一列に並べられた山札と3つのドローパイルから,必ず一番右端のパイルをこっそりめくって内容を見る。見た結果そのカードで問題なければ,そのまま引いたカードを手札に加えればいい。
だが気に入らないなら,めくったカードは裏返しのまま場に戻し,二つ目のパイルをめくって,手札に加えるかどうか考える。ダメならその次のパイルだ。そして山札まで辿り着いたら,そのカードは必ず手札に加えなくてはならない。
しかるに,このようにドローパイルをチェックした場合,「中身は見たけれど,手札に加えなかった」パイルについては,山札から1枚カードを注ぎ足さなくてはならない。例えば最初のパイルをスルーして2番目で手札に加えたなら,最初のパイルは1枚カードがつぎ足され,2枚のパイルとなる。
そして,次のプレイヤーがカードをドローするときは,パイルに詰まれたすべてのカードを確認し,加えると決めたらそのすべてを獲得できてしまう。
上記を踏まえたうえで重要な意味を持ってくるのが,手番プレイヤーは「カードを引く」か「カードをプレイする」か,そのどちらかしかできないということだ。
結果として本作では,「状況を動かす」か「体制を整える」かを,慎重に判断する必要が出てくる。
例えばゲームの序盤なら,(手札1枚からスタートすることもあって)なるべく早く手札を増やしたい。けれどゲーム開始時には誰も工作員カードを場に出していないのだから,たとえパワー1の最弱の工作員であっても,プレイしさえすればその色を「支配」できる。
さらにカードをプレイするなら,「工作員を1枚場に出す」「ミッションカードを1枚場に出す」「自分の工作員カードに増強カードをつける」「チームメイトにカードを1枚渡す」の4つの行動すべてをどんな順番で行っていいので,パワー1の工作員でその色を支配し,即座にその色のミッションカードをプレイする,といった速攻も可能となる。
反対に,敵チームがこうした速攻を仕掛けてきた場合を考えてみよう。例えパワー1であっても,同じ色の工作員を場に出しさえすれば,敵プレイヤーの「支配」は途絶える(パワーが同点なら「誰も支配していない」ことになる)。なので,そういう工作員カードがあれば,とりあえず支配を阻止することは可能だ。
けれどそうやって敵の支配を阻止すれば,カードは補充できない。つまり敵チームに対して「一手遅れ」になってしまう。とはいえ一度プレイされたミッションカードは,ゲームの途中で「支配」が途切れても有効なので,敵勢力に得点を与えたくならいなら,「いますぐに」手を打つしかない。
このあたりの「手番数をマネジメントする」感覚が,つくづくGarfield氏のゲームだな,と感じさせられる。
勝利の鍵はチームワークにあり
もう1つ,本作において重要なのがチームワークだ。
ゲーム終了時において,得点はチームごとに集計する。4人のプレイヤーに対し,支配すべき色は4色(ワイルドカードがあるので厳密には5色だが,システム的に言えば4色)なので,相手チームに対抗するなら,少なくともうち2色は「俺達の色」として支配しておくのが大前提となる。
だが前述のとおり,本作は「カードをドローすればプレイできず,カードをプレイすればドローできない」構造だ。敵チームがもしこちらの既得権となる色を脅かしに来た場合,今その色を「支配」しているプレイヤーは,「カードをプレイ」して防衛策を講じるしかない。結果,守りにまわったプレイヤーは,どうしてもドローを選べなくなっていく。
具体的に言えば,「防御」するプレイヤーは,
- 支配が続いているうちにミッションカードをプレイしてしまう。
- より強い工作員を場に出す(同色の工作員を複数出した場合,パワーは最後にプレイした工作員のものだけが参照される)。
- 増強カードをプレイしてパワーの値を上げる。
- 「ほかの工作員を殺す」CIP能力(場に出たときに発動する能力)を持つ工作員をプレイして,ライバルを排除する
といった形で,手札をすり減らしていく。
そこで相方のプレイヤーは,なるべく積極的にカードをドローすることで状況に対して有効なカードを引き込み,しかるに「カードプレイ」でパートナーにカードを渡すことで,パートナーに擬似的な(そして内容の濃い)ドローを提供する必要がある。
ただしチームワークにも制限があって,「自分はこんな手札を持ってますよ」といった具体的な状況は,チームメイトに直接教えることは禁じられている。なので,ここはタイトルの「SpyNet」が示すとおり,洒落た暗号でチームメイトと連係を取りたいところである。
「SpyNet」は独特なカードドロー方式と相まって,なかなか展開が早いゲームである。「選ばれなかったカードの上にリソースが乗る」というのはボードゲームでは一般的だが,なにせ追加リソースがカードそのものなのだ。山札は76枚しかないにも関わらず,山札から最大で3枚ずつ場に流れていくのだから,皆が「このカードでは状況を打開できない!」というモードに入ると,一気に山札は薄くなっていく。
一方で,ユニークなCIP能力を持ったさまざま工作員や,「ゲーム終了時にその色を支配できていなかったら得点になるミッションカード」など,展開の幅はかなり広い(ちなみにその逆のミッションカードもある)。加えて基本ゲームに慣れてきたら,ゲームの前提を変化させる「シチュエーションカード」を使うことで,再プレイ性をよりを向上させられる。
理想は4人プレイだが,2人ないし3人でも遊べるし(この場合,チームメイトがいないものとしてプレイする),とくに3人プレイはゲームの様相がかなり変わるので,「4人プレイできないとき」ではなく,あえて3人でプレイするのも選択肢としてありだろう。
ゲームの進行はやや淡々としたところがあるが,工作員の個性などによって押さえるべき盛り上がりどころは用意されている。ゲーム会の隙間時間や,ウォームアップ時間などに最適なゲームとして,ぜひ一つ確保しておきたいタイトルだ。
「SpyNet」公式サイト
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