プレイレポート
自分で描いた“かいぶつ”達に命を吹き込み,廃墟の港町に光を取り戻せ! 「アッシュと魔法の筆」プレイレポート
本作は,描いたものに命を吹き込むことができる「魔法の筆」を持つ主人公「アッシュ」を操り,「くらやみ」と呼ばれる暗黒のエリアが広まる寂れた港町に,プレイヤー自らが描いた「かいぶつ」と協力して光を取り戻していくという,独創性の高いコンセプトの作品だ。
“描いた落書きが動き出す”というファンタジックな設定や,ひらがなの固有名詞といった印象から子供向けの作品に見えるかもしれないが,実際はアクションやパズル性がうまくかみ合い,ゲーマーでも十分に楽しめる作品に仕上がっている。
今回は発売に先駆けて製品版をプレイできたので,プレイレポートをお届けしたい。なお,記事中の画像は公式スクリーンショットのみを使用している。
寂れた港町「デンスカ」。ここに広がる謎の“くらやみ”をかいぶつと協力して晴らしてこう
本作の舞台は,発電所誘致の失敗や漁業の衰退により,ほぼ廃墟となり不良のたまり場と化した港町「デンスカ」。主人公のアッシュは,ここで自分のスケッチブックを使い,絵を描くのが日課となっていた。風景画のみならず,オリジナルの“かいぶつ”をスケッチブックに描き溜め,想像の翼を広げていたのだった。
だがそんなある日,いつものように絵を描いているアッシュの元に,不良グループのいじめっ子達が現れる。お気に入りのスケッチブックは破かれたうえに,無理矢理ロープウェーに乗せられた彼は,曰く付きの灯台に連れて行かれてしまう。戻るために恐る恐る灯台の探索を始めるアッシュだったが,そこで待っていたのは恐ろしい幽霊……などではなく,描いたものに命が宿る「魔法の筆」と,自らがデザインした心優しき“かいぶつ”のひとり「ルナ」だった。
ルナと一緒に筆を操るうちに,アッシュはこの筆に“くらやみ”と呼ばれる,町を覆う謎の暗闇と黒いツタを除去する力があることを知る。“くらやみ”の影響からデンスカの町を解き放ち,かつての光あふれる場所にするため,アッシュは自ら命を吹き込んだ“かいぶつ”と協力し,町中に光のアートを描いていくことを決意するのだった。
本作のメインとなるのは,“魔法の筆を使ったグラフィティ”だ。アッシュはゲーム中にコントローラの[R2]を押すことで,いつでも筆を取りだして町中の壁に「光のアート」を描ける。
筆の操作は,コントローラー全体を動かすモーションセンサーか右スティックで行い,例えば星を選択して壁をなぞれば星が輝きだし,草を選べばたちどころに牧草地のような草原が広がる。“絵を描く”というより“イルミネーションを(壁に)重ねる”といった感じの雰囲気で,しかも動きや音があってとても美しい。
著者はかなり絵心がない方だが,それでも何となく“様になった”ように見えるのは,ゼロから絵を描くわけではなく,どちらかといえば「パーツに分かれたスタンプを使って絵を完成させる」形に近いからだろう。なので絵心がある人はもちろん,ない人でもゲームに詰まることはない。
ストーリー部分でも触れたように,アッシュの目的は「デンスカの町に光を取り戻す」ことだ。そのためには魔法の筆を使い,町中の壁にアートを描いていく。すると,その壁にある電球が光り出すといった具合だ。
電球は町中の至るところに配置されているので,あるときは壁を登り,またあるときは屋根を移動するなどして,ゾーン(エリア)にあるすべての電球を発見して発光させれば,次のゾーンに進める。ステージクリア型なので1つのゾーンはそこまで大きくないが,上下に移動できる範囲が広く,隅々まで探索するのは結構大変かもしれない。
また,本作は見た目の印象に反して意外とパルクール要素が高い。いじめられっ子のアッシュだが運動神経は抜群のようで,壁や屋根をスイスイ登っていく姿はたくましい。電球の場所はマップに表示されるが,入り組んだ場所にあることも多いので,「近くにあるはずなのにたどり着けない!」といったことも珍しくない。そんなときはまず,屋根に登れる場所がないか探してみるのがいいだろう。
“かいぶつ”と協力して道を開き,邪魔ないじめっ子達は声や機動力で出し抜こう
町に光を取り戻すには電球に光を灯す必要があるが,アッシュだけの力ではどうにもならない場面もある。「くらやみ」と呼ばれる暗い壁には絵を描けないし,物理的な障害物が道を塞いでいることも多々あるからだ。そういった場所では,アッシュ自らが描く「かいぶつ」の助けを借りなくてはいけない。
「かいぶつ」は,エリアの特定の場所で描ける。まず胴体を描き,それに角やしっぽといったパーツを組み合わせて“命を吹き込む”ことで完成する。星や樹木といった固定された「風景」と違い,かいぶつは壁がつながっている限り自由に動き回り,こちらの行動や壁に描いたアイテムなどに反応してくれる。
サイズの上限や下限は決められているようだが,スペースが許す限りしっぽなどのパーツは追加可能で,しかもそれが“そのまま”動き出すのが面白い。何となく不格好にできてしまうこともあるのだが,これはこれで味があり,愛着が湧いてくる。
かいぶつは[L1]で呼び寄せ,ボールなどのおもちゃを使って遊んだり,欲しがるものを近くに描いてやることによって,コミュニケーションを取れる。そうすることで右下にあるゲージがたまり,くらやみの上からでも絵を描ける「スーパーペイント」が発動できるのだ。
また,かいぶつにはそれぞれ得意技が用意されている。例えば,赤いかいぶつは可燃物を燃やせるので邪魔な障害物を除去できるし,黄色のかいぶつの発電能力を使えば,電源が切れた電動のパネルや発電機を稼働できる。
本作は,こうした「かいぶつの力を借りて先に進む」というシチュエーションが多く,アクション性と同じぐらいパズル要素も強い。かいぶつが思った通りに動いてくれない時もあるが,一定時間迷ってうろうろしているとヒントが表示されるので,筆者の場合は完全に詰まってしまうことはなかった。また時間制限があるタイプの作品ではないので,仮にヘルプ機能をオフにしていても,時間をかけて試行錯誤すれば問題なく先に進めるはずだ。
とはいえ,プレイヤーの行く手を邪魔するのは障害物だけではない。物語の冒頭で描かれるように,アッシュは不良グループに目を付けられていて,エリアを徘徊している奴らに見つかると,追いかけられたり石を投げられたりといった目に遭う。当然ながらそんな状態では落ち着いて絵など描くことはできず,捕まってしまうとゴミ箱の中などに押し込まれてしまう。要するに,完全な“お邪魔キャラ”というわけだ。
ただ,いじめっ子達はそこまで認知範囲が広いわけではなく,また上下の移動を苦手とするので,屋根の上などに登ってしまえば逃げ切ることは難しくない。通路上にいて邪魔なときは,大声を出して気を引くことも可能だ。数ではかなわないが,機動性はこちらの方が格段に上なので,立体的に移動して翻弄してやるのが,逃げ切るコツとなる。
かいぶつの“ほんわか”した印象とは裏腹に,しっかりとゲーマーでも楽しめるパズル性の高いアクションゲーム
本作の大きな魅力の1つは,間違いなく「魔法の筆による自由なペイント」だろう。電球を灯すといったクリアに必須な作業であると同時に,それ以外の壁にも自由自在に好きなだけ絵を描ける。エリアをクリアしていくと,それまでにはなかったサイズの「大キャンバス」が現れ,これを描くことによって物語が進んでいく。
PS4の能力を生かしたこれら光のアートは,絵心がなくても美しく仕上がり,コントローラを動かしているだけでも結構楽しい。個人的にはスティック操作より,ダイナミックに筆が動かせるモーションセンサーで描いた方が,より楽しめるのではないかと思う。
また“かいぶつ”は自ら描くことによって生み出されるので,例えあまりうまく描けなくても,愛着が湧いてくる。動きは多彩で見ているだけでもかわいいし,オブジェクトへの干渉やスーパーペイントのチャージなど,プレイを進めるだけでも自然とふれあえる。
ゲーム後半には,恐らく多くのプレイヤーが驚く展開が待っていたりするのだが,それを含めて彼らは主役級の存在だ。大幅に見た目をいじることは難しいが,それでも自分の作ったキャラが自ら生き生きと動き出すのは,けっこう感慨深い。
前述のとおりに,本作には見た目や設定の節々に“子供向け作品”の印象を受けるかもしれないが,実際にプレイしてみるとそんなことはなく,破かれたスケッチブックのページ集めといったやりこみ要素も含め,雰囲気優先ではないしっかりとしたアクションゲームに仕上がっている。
上で触れたパルクール要素も含めて,「お手軽なお絵かきゲームでしょ?」といった思い込みで始めると,恐らく(筆者のように)かなり驚くのではないかと思う。とはいえパズルを含めて難度自体はそこまで高いという感じではないので,アクションが苦手な人は,時間をかけてゆっくりとプレイすればいい。
魔法の筆で描かれる“美しく動くイルミネーション”や,ある種のキモかわいさを感じる“かいぶつ”に興味が引かれる人はもちろんのこと,「たまには銃や鈍器といった武器を使わない3Dアクションを楽しみたい」といったゲーマーにもオススメできる一作なので,ぜひ手に取って遊んでみてほしい。
「アッシュと魔法の筆」公式サイト
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アッシュと魔法の筆
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(C)Sony Interactive Entertainment LLC.
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