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どうぶつタワーバトル
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「どうぶつタワーバトル」,ヒットの裏にはなにがあったのか。開発にまつわる苦悩と喜びが語られた講演をレポート
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印刷2020/01/16 13:49

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「どうぶつタワーバトル」,ヒットの裏にはなにがあったのか。開発にまつわる苦悩と喜びが語られた講演をレポート

 2020年1月12日,京都府とポノスは京都・下京区の京都産業会館ホールにてeスポーツイベント「京都eスポーツサミット2020 Winter」を開催した。。会場では「どうぶつタワーバトル」iOS / Android)の開発者であるYuta Yabuzaki氏が登壇し,ブレイク前の苦悩やeスポーツ展開への意欲などを語った。

<2020年1月17日12:20修正>
※文中にあるYuta Yabuzaki氏の経歴に誤りがありました。お詫びして訂正します。


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「どうぶつタワーバトル」の開発者であるYuta Yabuzaki氏

 2017年に登場した「どうぶつタワーバトル」はスマートフォン用のパズルゲームだ。高い人気も誇っているのでご存じの人も多いと思うが,2人のプレイヤーがランダムで選ばれた動物を交代で積み上げていき,台から落とした方が負けとなる対戦型のタイトルとなっている。

 実写の動物を積み上げていく可愛らしくてシュールな画面と,シンプルで奥深いルールからSNSを中心にブレイク。現在はeスポーツとしての側面に注目するプレイヤーも現れ,昨年末にはFacebookで本作のライセンスを受けた「ポケモンタワーバトル」関連記事)のサービスがスタート(関連記事)するなど,広く親しまれるタイトルに成長した。

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2019年12月にサービスが始まった「ポケモンタワーバトル」。Yuta Yabuzaki氏は監修を行っている

 同イベントで実施されたクリエイター講演「どうぶつタワーバトル制作ウラ話」では,開発者のYuta Yabuzaki氏が,ブレイク前の事情や,アプリ開発者が1人で開発を続けることについての苦労などを語ったので,その内容を紹介していこう。
 
 氏は1989年生まれの30歳。地元静岡の大学を中退後,上京して改めて別の大学に入り直したものの,やりたいことが見つからずに悶々とした日々が続いたという。そんな中,ほかの学生がスマートフォン用のアプリを開発していることを知って一念発起し,自分もアプリを作るようになったそうだ。
 また,就職活動ではIT関連企業から内定をもらったものの,最終的には個人で開発する道を選んだとのこと。そんなこんなで,親から縁を切られ,勘当同然でアプリを作り始めた氏だが,しばらくはヒットに恵まれなかった上,たった1人での開発だったことからさまざまな辛い思いをしてきたという。

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 そして氏は「どうぶつタワーバトル」の制作に着手することになる。これは自身がかつて手がけた1人用ゲーム「どうぶつタワー」iOS / Android)に対戦要素を追加したもので,新たに「インストールして5秒で遊べる」「子供から大人まで遊べる」「自分なりに細部まで妥協しない」「レート性の導入」といったテーマの元で開発を進めたそうである。
 また,対戦ゲームを作るのは初めてだったため,通信関連について勉強をしながらの作業でもあったという。

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 2017年3月にアプリは完成したが,配信直後は現在のような大ヒットとはいかなかった。ユーザー数が少ないため,対戦プレイを求めるユーザーのために氏自身が夜中であってもスマートフォンを並べて待機。また,わざとプレイを放棄するなどの“荒らし”行為についても氏が自分で対応せねばならず,こちらも心身に負担を掛けることになった。

 氏いわく「マーケティング不足」のため,レビューの評価はいいもののユーザーの数がなかなか増えず,かなり早期にスタミナ制を廃止するなどの対応をしたが,この時点では思うようなヒットにはならなかった。

 結局,1〜2か月ほど運営を続けた後,氏は「どうぶつタワーバトル」を諦めてしまい,経済的な要因もあって新作の開発などの仕事を始めた。この時期については,「苦しい思い出だった。ヒットしない上に“荒らし”も来るので,(アプリを)見たくもなかった」と振り返る。現在からはとても考えられない苦境といえるだろう。

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 こうした状況が変わったのは,2017年11月に「どうぶつの森 ポケットキャンプ」iOS / Android)が配信されたことがきっかけだという。このアプリを求めたユーザーが「どうぶつ」というキーワードで検索した際,たまたま同じ単語を使っていた「どうぶつタワーバトル」が引っかかることからか,ユーザー数が一気に増えたという。

 SNSではプレイ動画も増え,動物が回り続けるなどの不具合(バグ)も笑いに昇華された。また,同じスマホアプリである「Shadowverse」iOS / Android / PC)のプレイヤーが対戦ゲーム的な側面に注目するなど,人が人を呼ぶ循環が動き始めた。

 さらに,こうしたムーブメントをネットメディアが記事にし,App StoreとGoogle Playでは無料アプリの総合1位を獲得,ヒット街道をばく進することになったのだ。

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SNSに投稿されたバグ動画の一例。中央の2匹がグルグルと回り続けている

 念願のヒットを達成したのだが,同時に新たな苦悩も生まれている。同時接続数が数人から数万人という規模に跳ね上がったことでサーバーダウンが発生し,「繋がらない・まともに遊べない」ことでレビューの評価も悪化。大量の誹謗中傷によって問い合わせ対応にも支障を来すようになり,ストレスから何度も嘔吐することがあったそうだ。

 対戦ゲームのプレイ人口が増えるということは,それだけサーバーの利用料も増えるわけで,ブレイク直後の2017年12月にはサーバー利用料が230万円という額にまで膨らんだという。
 当時は「どうぶつタワーバトル」を諦めて就職先を探すような状態だったため,とても支払えない額であったが,広告料の入金が間に合ったことで乗り切ることができたようである。もしもの時のために,友達に借金を打診していたというから,これは個人開発者ならではの悩みといえるだろう。また,このような問題を1人で対処していたということもあり,体調を崩し布団から出ることすら辛い状況がしばらく続いたそうだ。

 現在はアプリ開発のシェアオフィスで仕事をしており,開発者やユーザー,友人らのおかげで精神的な負担は和らいでいるという。そして,こうした経験から,人と話すことの大事さを再認識。「開発者は孤独になりがちだが,たまには発散することも大事だ」と氏は語った。

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 そんな「どうぶつタワーバトル」だが,氏はeスポーツとしての側面にも注目しているという。ルールが分かりやすい上に,実力と運のバランスが絶妙で,先手と後手のどちらかが著しく有利になるというTCGなどにありがちな問題もない……と,eスポーツ用ゲームとしての条件も揃っていることが理由だ。
 既に「獣王杯」のようなユーザー主催の大会も行われ,eスポーツ的な観点からも研究が進んでいるようなので,今後に注目したいところだ。

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 最後に氏は,さらなるユーザーの拡大と,海外でのヒットを目標に掲げ,「今後も楽しくゲームを作っていきたい」と意気込みをアピールして講演を締めくくった。

 いまでは,氏が構想した通りに幅広い年齢層が楽しむソフトとなった「どうぶつタワーバトル」。そんな同作ですら,当初は同時接続数が数人だった。これは,いかにゲームが優れていても,何らかの理由で人の目に留まらなければヒットにならないという,現代のアプリ事情が伺える。
 また,開発者は,“開発する”こと以外に“メンタル的な健康”を保つことがいかに大事であるかも分かる。最も大事なヒットの直後こそ,心身の負担が大きいというわけで,氏がこの時期を乗り切れたのは「どうぶつタワーバトル」ファンにとっても幸運だったといえる。

 誰もが知る大ヒットアプリのリリース初期の知られざる苦悩が赤裸々に明かされたということで,アプリ開発者にとっては貴重な講演だったことだろう。

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