インタビュー
「アルゴナビス」中島ヨシキさんが語る風神RIZING!の音楽は,“一緒に歌う人がいないと成立しない”。ボーカリストインタビュー企画第3弾
ブシロードは2020年8月より5か月連続で,「バンドリ!」発のボーイズバンドプロジェクト「ARGONAVIS from BanG Dream!」(以下,「アルゴナビス」)に登場し,2021年初春リリース予定のスマートフォン向けゲーム「アルゴナビス from BanG Dream! AAside」(iOS / Android)で活躍する5バンドの配信ライブイベント(Sound Only Live。以下,SOL)を行っている。「ARGONAVIS(アルゴナビス) from BanG Dream!」公式サイト
オーディション秘話や楽曲の制作エピソードなど,風神RIZING!の音楽を中心としたインタビューの模様をお届けしよう。
「歌は得意じゃないけど,“キャラソンはメロディのついたセリフ”だからできるんです」(中島さん)
4Gamer:
ARGONAVISプロジェクトのボーカリスト5か月連続インタビュー企画,第3弾は風神RIZING!です。まずは自己紹介とバンドのご説明をお願いします。
神ノ島風太役・中島ヨシキさん(以下,中島さん):
長崎発,スカ系バンドの風神RIZING!です。このバンドは長崎に住んでいる幼馴染4人と,東京出身の1人で結成されています。作中では技術としてはまだまだこれからだけど,とにかく明るくてお客さんを楽しませることに長けている,ある意味で一番音楽というものを楽しんでやっているバンドじゃないかなと思います。金管楽器の音がすごく特徴的ですし,聴いていて明るい気持ちになりますよね。
4Gamer:
5つあるバンドのなかでも明るさでは飛び抜けていますね。今回,このプロジェクトに中島さんの参加が決まったころのことを教えていただきたいのですが。
中島さん:
懐かしい,もちろんよく覚えています。もともと「BanG Dream!(バンドリ)」のことは知っていましたし,音ゲーが好きなので「バンドリ!ガールズバンドパーティ!」(iOS / Android)もちょこちょこ触ったりはしていました。それで男性版のバンドリがあるというのを風の噂で聞いていたところに,オーディションの話をいただいて「いよいよこの機会がきたか」と。
オーディションでは好きなキャラを複数選んでいいとのことだったので,神ノ島風太以外にも実はフェリクス(ヴィジュアル系バンド,Fantôme Irisのボーカルのフェリクス・ルイ=クロード・モンドール)も受けました。
4Gamer:
そうだったんですか!
中島さん:
はい。アーサー(前回インタビューしたフェリクス役,ランズベリー・アーサーさん)も話していたんですけど,シドさんの「ENAMEL」を歌って,音源も提出していました。風太の課題曲は星野 源さんの「恋」で,それも提出したことを覚えています。
このときフウライはバンド名もまだ決まっていなかったと思いますね。あと風太のセリフには方言がかなり入っていたので,九州出身の友達に添削してもらってめちゃめちゃ予習してからオーディションを受けました。
それで1次は受かったんですが,次のスタジオオーディションの日程がスケジュール的にどうしても合わなくて……。受けられないかもしれないと思っていたら,特別に別の日を用意してくださったんです。その時点で僕としては「もらった!」と(笑)。というかそこまでしていただいて,これで「中島イマイチだぞ?」ってなったらやばいなとは思いましたが。
4Gamer:
逆にプレッシャーもかかりますよね。
中島さん:
そうなんですよね。それで次のオーディションの質疑応答では,とあるスタッフさんに「このプロジェクトはリアルバンドとして活動しているバンドもあって,キャストが楽器を弾いたりすることもある」と言われまして,「はい知ってます,すごいですよね」と。それで,楽器に興味はありますか? と聞かれたんですが,「いや,ないです!」と正直に答えました。
4Gamer:
中島さんはアーティスト活動もされているので,楽器に興味があるのかなと思っていました。
中島さん:
僕は今趣味でギターをやっていますけど,それとキャラクターを背負ってステージに立つというのではやっぱり違って,責任が重いなと。これが仮にギターボーカルという話だったら受けたかもしれませんが,サックスとボーカルはさすがに……どんな肺活量していたら歌い上げたあとにサックスソロが吹けるんだ!? と(笑)。
サックスという楽器自体はとても格好よくて好きだし,聴いていてわくわくするんですけど,自分でやれるかって言われたらちょっと難しいなっていうのはありました。
4Gamer:
もう少し穏やかな曲ならいけるかもしれませんが,フウライの楽曲だとより難しそうですよね。このプロジェクトはバンド系コンテンツですが,中島さんご自身は学生時代などにバンドのご経験はあるんですか?
中島さん:
いや,学生時代はないです。声優になってからですね。
4Gamer:
では,歌うのはお好きだったんですか?
中島さん:
そうでもないんです。カラオケもあまり行かないですし,これまでとりたてて音楽に興味がある人生ではありませんでした。声優の養成所に通っていたころに歌のレッスンがあったんですけど,デュエット歌唱のレッスンで「ホール・ニュー・ワールド」(映画「アラジン」より)を,女の子とコンビで歌ったことがあるんですね。その子がめちゃくちゃ歌がうまくて,あとで先生に「相方に助けられたね」と言われたのがトラウマに……(笑)。あ,俺って歌うまくないんだって,音楽に対する苦手意識が生まれたところはありますね。
4Gamer:
そうすると,今回のプロジェクトはある意味で挑戦ということだったんでしょうか。
中島さん:
まあでも,キャラクターとして歌うこと自体に抵抗はないんです。“キャラクターソングはメロディのついたセリフと変わらない”というのが持論なので。だからキャラソンに対する苦手意識はなかったんですけど,「バンドリ」って音楽に対する比重が少し重いじゃないですか。なのでレコーディングのたびに,いろいろと相談させていただりとかはしていますね。
中島さんが語る,
風神RIZING!の音楽性とオリジナル&カバー楽曲解説
4Gamer:
このインタビュー企画では,主に音楽面について詳しくお伺いしていきたいと思います。まずは風神RIZING!が音楽的にどのようなバンドであるか,コンセプトなどを教えてください。
中島さん:
先ほど「スカ系バンド」と紹介しましたけど,「スカ」という言葉自体,僕は風神RIZING!に関わってから知ったんですよね。オーディション要項にもFantôme Irisがヴィジュアル系,εpsilonΦがEDM系,風神RIZING!がスカ系と書いてあって,「スカとはなんだ!?」という。
4Gamer:
そこからの出会いだったんですね。
中島さん:
そうですね。フウライはスカやパンク,メロコア系に分類されています。風太がサックス,(若草)あおいがトロンボーンを担当していることがまずほかのバンドとは大きな違いで,金管楽器がいると単純に楽曲が明るくなるというか,豊かになるじゃないですか。竿隊(ギターやベース)だけでは出ないグルーヴ感が間違いなくあります。
僕が思うスカ系というかフウライの音楽の方向性は“バカ明るい”。暗いところが1つもなくて,“格好いい”はあっても“もの悲しい”はない,“切ない”はあっても“落ち込む”はないというのが,彼らの持つパワーなのかなと思いました。
4Gamer:
フウライでは風太以外のメンバーもコーラスで参加しているんですよね。
中島さん:
そうなんです。あとオリジナル楽曲に関しては,今のところ全曲コールアンドレスポンスが入っています。僕も歌のレコーディングが終わったあと,レスポンスの部分を自分でもやらせていただいてます。曲によっては4人分とか。
4Gamer:
1人で違う声の4人をやったということですか?
中島さん:
はい。で,仕上がったものを聴いてみると,とても僕がやっているように聴こえないっていう(笑),うまい感じにしていただいていると思います。
4Gamer:
なるほど! では次に,各曲について深堀りしていきたいと思います。
◆バンザイRIZING!!!
中島さん:
風神RIZING!の看板曲ですね。僕はこのプロジェクトで,2019年のある時期に何曲か集中してレコーディングをしていたんですけど,実は「バンザイRIZING!!!」はその期間の一番最後に録りました。この曲はFLOWのTAKEさんが作詞作曲で,ディレクションもしていただいています。
デモを聴いたときは,そんなに音楽に詳しくない僕でも分かるFLOWさんらしい明るさや疾走感を感じました。歌うのは大変そうだけど,やっぱりいつかはライブをやりたいし,人前で披露したいからっていうのも相談しながらレコーディングに入ったことを覚えています。
メッセージとしてはずっと同じことを繰り返しているというか……なんだろうな。結局フウライはステージの上が一番楽しいんですよ。なかでも真ん中にいるボーカルのやつがすげえ楽しそうにしているから,客の俺たちも楽しいみたいな。分けあたえる,っていう意識は風太にはないんですけど,「俺はやっちゃ楽しかやけど,みんなはどうばい?」みたいな,押し付けがましくない元気みたいなものがコールアンドレスポンスに出ているんじゃないかと思います。
4Gamer:
この曲は「良かたい! 行くばい!」という方言のコールアンドレスポンスがまた印象的ですよね。
中島さん:
メンバー同士で掛け合ったりとか,5人はどういうテンションでライブをやっているかというのが,この4分間に詰まってますね。あとは「さぁ涙拭いて 笑顔になろ」から始まる落ちサビのエモさというか,すごくいろいろなものが込められているのを,レコーディングで歌ったときに感じました。この曲はフウライがはじめてゲストで参加したSOLの追加公演でフル尺で披露させていただいたのですが,明るいけどどこかちょっと泣けるなというか,感情を揺さぶられる楽曲になったんじゃないかなと思います。
4Game:
この曲は歌っていて難しいところはありましたか?
中島さん:
(キーが)ただただ高いです。難しいのは高いところです(笑)。Aメロからずっと高くて,ラスサビでは裏声までいくので。テクニックとかじゃない,自分のなかの限界みたいなものには挑ませていただいたなと思います。
4Gamer:
テンションもずっと高いですしね。
中島さん:
そうなんですよね。で,コーレスがあるということはそこで休めるわけでもないので。ずーっと歌ってる,ずーっとしゃべってる,でもその勢いが風神RIZING!なんじゃないかなと。うまく歌う必要がないというか……楽しければよかたい,みたいなことですかね。
4Gamer:
中島さんは,歌うときには完全にキャラクターになって歌う感じなんですか?
中島さん:
うーん……これもいろいろな人がいますし,コンテンツにもよると思うんですけど,僕が風太としてマイクの前で歌うときは“中間”です。風太としてお芝居をするけど,技術としては自分自身が培ってきたものを引っ張り出さないと歌えない難度のものもあるんですよね。だから風太にもこっちに寄り添ってもらいつつ,風神RIZING!が表現したいものを,僕が自分の全細胞を使ってやるという感じです。
4Gamer:
なるほど。この曲はMVもかなり話題になっていますね,なかなか謎が多そうというか……。
中島さん:
(とぼけた雰囲気で)ふう〜ん,そうなんですか? 知らなかったなあ(笑)。曲は明るいですよねえ,みんなニコニコしてますし。
◆ランガンラン
作詞:中村 航
作曲・編曲:藤井健太郎(HANO)
4Gamer:
「ランガンラン」はこれまた雰囲気が変わって,とても格好いい曲ですよね。
中島さん:
そうですね! 「ランガンラン」は先ほど話した何曲かのレコーディング期間のうち,中盤くらいに録りました,そのときディレクターさんに「ヨシキさんこの曲好きですよね」と言われたのですが,実際すごく好きです。ラッパも鳴ってますけど,ロックの要素が強いというか……これは(椿)大和にフィーチャーした曲なので,ギターが目立つように作られてます。楽しい感じとはまた違う勢いというか,この曲も息をつく暇もなく突っ走っているんですよ。歌詞は中村 航さんに書いてもらっていますが,すごくキャラクターに寄っている感じがあるし,ずっと道に迷っている大和のことが描かれていますね。
4Gamer:
メンバーのなかでは,大和だけ長崎出身ではないんですよね。
中島さん:
東京の人です。九州がどこにあるかも知らないまま来てます(笑)。中村 航さんが書いてくださった歌詞を見ると分かるんですが,大和の“ずっと道に迷ってる感じ”が表現されているんですよね。
4Gamer:
中島さんがこの曲で好きな部分はどのあたりですか?
中島さん:
サビとか,ボーカルが歌い上げるところをコーラスが支えてる感じが風神RIZING!らしいと思うんですよね。自分がボーカルとして歌っていたら100%歌えないところ,クロスして入ってくるところが格好いいんですよ。ライブでやったらメンバーにも一緒に歌ってほしいし,客席のみんなにも歌ってもらいたいなと。
4Gamer:
ほかの曲もそうなんですが,歌詞が書かれたものを見ると(コーラスを表す)カッコ書きが多いですよね。
中島さん:
そうなんです。成立しないんですよね,一緒に歌ってくれる人がいないと。
4Gamer:
先ほどこの曲は中盤くらいにレコーディングされたとおっしゃっていましたが,歌いはじめのときよりも「掴めた」感じはありましたか?
中島さん:
そうですね……最初はカバー曲を続けて録ったんですが,やっぱりオリジナル曲を歌うようになって馴染みはじめた感じはあります。僕はほかのタイトルで演じさせていただいたり歌を歌ったりするキャラクターもたくさんいるなかで,その子たちと風太の違いはなんだろう? と考えたら,やっぱり年齢感だと思ったんです。風太は大学生で,ちょっとした技術が身につきはじめているところなんですよ。
ただただ楽しくやっているだけだけど,なんとなく上達してきてるみたいな。ライブ経験が多いからステージングがうまいとか,そういうところで差別化をしていこうと思ったんです。なので,ほかのタイトルのキャラに比べると細かいテクニックを使っています。ビブラートを多めにかけたり,ちょっとしゃくってみたり,たくさん歌っていくなかで築かれていくテクニックを表現できたらいいなとは思いました。僕自身も歌えば歌うほどそれが馴染んでいくし,喉もそれに慣れていきましたね。
4Gamer:
どのくらいの塩梅でご自身の持つ技術を使うか……ということですね。
中島さん:
そうですね。音程の話ではなく,どこまで“外して”いいのか……風太の枠をちょっとずつ広げていきたかったので,前回やったことと違うことを試してみようとか。このあとでまた「ダチフレンド」の話をしますけど,そういうテイストの違うものとか,風太にはこういう表現もあるよね,というのを全曲で出せればいいなという試みはしていました。
◆ダチフレンド
作詞:中村 航
作曲・編曲:廣澤優也(HANO)/青木宏憲(HANO)
4Gamer:
そして「ダチフレンド」です。かなり雰囲気が変わって,これまでとは違うエモさがありますね。
中島さん:
「ダチフレンド」は風太とあおいの掛け合いがあるデュオソングなので,そもそも他の曲と同じになりようがないっていうのはあるんですけど,ここにきてようやくテンポが少し落ち着いてくれてます(笑)。 結局この曲ぐらいなんですよね,ミディアムテンポっぽいのは……。丁寧に歌っていますが,僕がこの曲で出したかったのは「ボーカルじゃないメンバーと歌うと,風太はうまいぞ」っていうところです。うまいというか慣れや安定感があるというか,ちょっとだけ余裕がある歌い方をしています。一緒に歌っているあおいの様子をうかがいながらというか,あおいは大丈夫かなと思いながら歌う風太がステージにいたらいいなと。
4Gamer:
なるほど,安定感と優しさがあるわけですね。ちなみに設定として,フウライの楽曲は誰が作っているんですか?
中島さん:
作詞はメンバーみんなで考えて決めて,曲はあおいが書いてます。ちなみにこの曲は,あおいがキーボードも弾いています。フウライは枠にとらわれず,やりたい楽器をやろう! みたいなところはあると思いますね。まあ,あおいは昔から楽器に触れている子なので……なんとなくイメージですけど,小さいころから楽器を習っている人はとりあえずピアノが弾けるみたいなイメージがあるじゃないですか(笑)。それプラス,トロンボーンだったんじゃないですかね。あおいはちょっといいところの子っぽいですし。
4Gamer:
そうですね。くどいようですが,中島さんご自身は楽器に興味は……?
中島さん:
今ギターをちょこちょこ触っているので精一杯ですね……。でもサックスができたら超格好いいですよね! ブシロードさんが買ってくれたら考えます(笑)。
4Gamer:
……だそうです!
プロデューサーK氏:
頑張ります(笑)。
中島さん:
頑張るんかーい!(笑)
4Gamer:
あと,先ほどインタビューの序盤で「4人分のレスポンスを1人で収録している」というお話が出ましたが,どの曲にあるんでしょうか?
中島さん:
基本的に全部そうですね。主メロを録って,ハモも録って,そのあとにやるのでなかなかきついんですが(笑)。
4Gamer:
いろんな曲にいっぱい中島さんがいらっしゃるということですね。
プロデューサーK氏:
実は金子さん(椿 大和役,金子 誠さん)と酒井さん(若草あおい役,酒井広大さん)もいっぱいいます(笑)。3人×4人で12人格分……。
中島さん:
メンバーにもたくさん助けてもらってます。
4Gamer:
そうなんですね! これを知ってから曲を聴くと,よりみなさんも一生懸命聴きたくなるんじゃないでしょうか。ちなみに,ガヤやコーラスでスタッフさんが入ることはないんですか?
プロデューサーK氏:
このプロジェクトに関しては入れてないですね。すべてキャストさんの声のみで。
中島さん:
メンバーの声しかないというのも,“バンドで作ってる感”があってまたいいですよね。
◆上京上等行ってきまーす☆
作詞:TAKE(FLOW)
作曲・編曲:TAKE(FLOW)
4Gamer:
そして10月26日にデジタルシングルとして発売される新曲が,「上京上等行ってきまーす☆」ですね。
中島さん:
これまでの曲は外に外にという方向性が多かったと思うんですけど,この曲では地元愛を包み隠さず猛烈に表現してますね。しゃらくさい言い回しも一切なく,ストレートに伝わるように歌ってます。これは「バンザイRIZING!!!」と同じくFLOWのTAKEさんに作詞作曲から歌録りまで担当していただいたんですが,まずデモをいただいて曲を流す前に歌詞カードを見て,一番上にタイトルで「上京上等行ってきまーす☆」と書いてあって,「そんな馬鹿な……!」と思いました(笑)。
4Gamer:
最初からタイトルに「☆」はついてたんですね。
中島さん:
はい。で,どんなトンチキな曲が来るんだろうと思って聴いたらこれがまたエモいんですよ……! めちゃめちゃいい歌だなあと。これも含めて,すごく振り幅のある曲をたくさん歌わせていただいてるなあと思います。あと,この曲はハモがまた超高かったんですよ。TAKEさんに「ごめん,こんな曲書いて」と謝られるくらい。サビの「盛り上がれ」の「れ」のハモが一番高いです。
プロデューサーK氏:
たしかhiC(ハイシー)くらい,もはや女性キーですね。
中島さん:
それを地声でいってるんですが,すごく綺麗に出ました。この日は調子が良かったんですよね(笑)。
4Gamer:
曲自体はすごく明るいですよね。
中島さん:
この曲はライブに来てくれるお客さんに向けたものというよりは,今まで自分たちを育ててくれた長崎に「ありがとう」と伝える歌です。ボイスドラマでも描かれますが,「俺たちは東京行って頑張ってくるけん,応援しててくれな!」という。
フウライには自分たちが育った土地に対する愛情と,そこに住む人に対する愛情があって,地元を離れることへの不安は一切感じさせないんですが,そういう強さ……じゃないんですけどね,これは。
ただ“そう”だというだけで,何が込められてるかと言ったら「行ってきます!」なんですよ。もちろん,嫌なこともつらかったことも地元にはたくさんあったけど,それも全部大好きで,そういう想いを持って「行ってきます」っていう。なんだろう,今東京に上京してきて暮らしている人にとっては,すごく刺さる曲なんじゃないかなと思います。
4Gamer:
中島さんは神奈川ご出身なんですよね。
中島さん:
はい。だから「地元を離れて」という感覚が僕のなかにはあまりなかったので,こういう子供のときから一緒に育った人たちがいて,自分のことを知ってる人たちに向けて……というのをあらためて歌えたのは,すごく素敵な機会だったなと思います。
4Gamer:
この曲は,一時的かもしれないですが彼らの“別れ”を描いた歌ですが,中島さんご自身にも思い出深い“別れ”はありましたか? ちょっとコンテンツとは離れる質問ですが……。
中島さん:
それでいうと,僕は声優の専門学校に2年間通っていたんですけど,ちょうどその卒業した年に東北の震災があって,卒業式をやっていないんですよ。
本当だったら次の日かその次かくらいのタイミングで卒業式をやるはずだった2011年3月11日,「お世話になった校舎の大掃除だ!」って床を拭いているときに地震が起きました。で,みんなで公園に避難して1時間くらい待って,戻ったら校舎や建物の壁がひび割れていて。神奈川でこれって,震源地はどれだけすごかったんだろうって……。
本当だったらそのあとみんなで卒業式をやって,終わったらご飯食べに行ってとなったと思うんですけど,そういうのがないまま,節目っぽいことがないまま学校生活を終えたんです。卒業してからは一切会っていない友達も,もう連絡も取れないような人たちもいっぱいいるんですけど,一生忘れないです。そういう意味では。
4Gamer:
卒業と,そういう記憶が紐付いているわけですね。
中島さん:
そうですね……。卒業式をやれなかったことが,逆に強く印象に残っている思い出ですね。
◆カバー楽曲について
「HOT LIMIT」 Cover
「One Night Carnival」 Cover
4Gamer:
今回はカバー曲についてもお話を伺えればと思います。すでにSOLで流れたもののなかから「HOT LIMIT」と「One Night Carnival」についてですが,これらを歌うことになると聞いたときはいかがでしたか?
中島さん:
やったー! って思いました(笑)。僕でもよく知っている楽曲でしたし,これがスカアレンジされて,風太として歌うのってすげえ面白いなって。フウライは他のバンドとちょっと違って,カバーがアニソン系じゃないんですよね。けっこうゴリゴリのJ-POPをやってたりしますが,ラインナップを見たときに「渋いな!」と思ったのもあれば,「HOT LIMIT」みたいにド派手な曲もあったりして。スカってけっこう,路線的には限定的な気がするんですよ。Argonavisほどいろいろできないし,フウライ的にも暗い感じにはしたくないってけっこう頑固に作っていると思うので,そんななかでこれだけいろいろやれることにワクワクしましたね。
4Gamer:
実際,風太として歌ってみてどうでしたか?
中島さん:
「HOT LIMIT」に関しては,もう確固たる意志で「キーは下げない! 俺は西川貴教になるんだ!」という気持ちで挑みました(笑)。ただ,この曲みたいに楽曲にパワーのあるものに関しては,西川さんが歌うのが一番強いに決まっているので,じゃあどうフウライ色にするか? って,この子たちはそもそもなんでこの曲をカバーしようと思い立ったのか考えていったんですよ。それで,風太は曲に込められた単語の意味とかはあまり分からずに歌っていると思ったんですね。たとえばですけど,「ナマ足 魅惑の マーメイド」という歌詞をめちゃくちゃ明るく歌うことによって,すっごい元気な人魚が出てくるみたいな(笑)。
4Gamer:
もともとの歌詞にある,セクシーな雰囲気を意識させないということですね。
中島さん:
そうです! この曲は必ずしもセクシーと結びつかなくてもよくて,「HOT LIMIT」にはこういう解釈もあるぞという感じです。原曲をたくさん聴いたことのある人たちがあらためて楽しんでもらえるような曲にしないとカバーにする意味がないので,フウライが演奏することによってそういう面白さが生まれたらいいなと。
演奏にしても,原曲はイントロがシンセサイザーとギターで始まるのが,このカバーでは最初にブラスが入ってるのが超格好いい。金管楽器の音ってセクシーになりがちですけど,風太はストレートに含みなく歌っていて,そういう思い込みもぜんぶひっくり返したいなって。
4Gamer:
おっしゃるとおりになっていると思います。「One Night Carnival」はいかがですか?
中島さん:
プロジェクトに参加した初期にごくごくわずかな風太のセリフを録らせていただいたんですが,それを除くと,一番最初に神ノ島風太として発したのがこの曲のセリフなんです。権利的にとかいろいろあって実現はできなかったんですけど,ほんとは長崎弁でやりたかった気持ちが自分のなかにありますね。
4Gamer:
いつかライブでなら実現できるかもしれませんね……!
中島さん:
もしかすると。「HOT LIMIT」も「ダイスケ的にもオールオッケー!」のところなんかはライブではアドリブになるかもしれませんね。あと「One Night Carnival」に関しては踊らないといけないですし。
4Gamer:
風太って踊るんですかね?
中島さん:
どうなんですかね? でもこの曲もどういう経緯でやることになったか考えると楽しくて,僕はたぶん(五島)岬あたりが「この曲ぜってーやりてー!」とか言い出して,練習するようになったら「おい風太,この曲は踊るんだよぉ!」とか言い出すんじゃないかなと思ってます。よっちんさん(岬役の吉野裕行さん)に言ってもらいたいくらいです(笑)。風太は渋々やりつつ,やっているうちに楽しくなっちゃってというのが想像できますね。マイクスタンドの前に立っておとなしくできない子だとは思うので……これ,1本ドラマにできそうですね。
10月25日のS-SOLで披露される新曲では,さらなる高みへ!
4Gamer:
いよいよ10月25日に配信となるS-SOLではボイスドラマがあると思いますが,収録していかがでしたか?
中島さん:
「上京上等行ってきまーす☆」の歌詞にもいろいろな名物グルメが出てきますけど,ドラマでも風太が「東京行くの楽しみばい! でも,あれもこれも東京には売ってないと!?」と騒いでます(笑)。でも,そんないつものようなやりとりをしつつ,あおいがちょっと“おセンチ”になるっていう……。上京するのって希望もあるし,東京に行くぞってワクワクも夢もあると思うんですけど,絶対に不安と隣り合わせになることもあって。
今,親元を離れていらっしゃる方はこの情勢でなかなか帰省もできないですけど,あおいに共感できるところも大きいんじゃないかなと思います。風太は長崎に帰ってくることが前提の「行ってきます」だし,そもそも東京がどこにあるかも分かってないんですけど,東京でライブできることをとにかくすごく楽しみにしてるんだと思います。
4Gamer:
この企画では恒例の質問ですが,SOLで今発表されている以外の新曲は……?
中島さん:
オリジナルもカバーもどちらも新曲あります! カバーに関しては,ちょっとクールな風太が聴けるかも? これもまたいったいどのメンバーの持ち込みなんだろうって考えるのも楽しいと思います。オリジナル曲に関しては,風太はいったいどこまで行ってしまうんだろうと。最初に曲をいただいたとき,無理だろ! と思ったレベルで高いです。でも彼はどこまでも行くんです,さらなる高みへ……。
勢いで言えば「ランガンラン」とはまた違う方向で突っ走ってますね。「ランガンラン」はみんなの声を聴きながら「一緒に行こうぜ!」って感じだとしたら,新曲は「どっかいっちゃったなあ……」と置いてけぼり食らうくらいの勢いがあります。でもこれ,ひょっとしたらフウライの曲のなかで一番人気出るんじゃないかなあ。
4Gamer:
これは楽しみです! それと,この記事が出るころにはすでに終わっていると思いますが,10月10日にはついに5バンドのボーカルが全員揃う「ライブ・ロワイヤル・フェス2020」が行われますね。
中島さん:
LRFではこれまでにプロジェクトの土台を作ってきてくれたArgonavisやGYROAXIAやみんなの胸を借りて挑むつもりではあるんですけど……舐めてると足元はすくって帰るぞ,という気持ちでいますね。フェスってやっぱり出演する側としては,自分を知らない人たちに何人興味を持ってもらえるかというところに醍醐味があるし,風神RIZING!にはそういうパワーがあると思ってます。
4Gamer:
先日行われた配信番組(2020年9月28日配信「Bar Navigate」)で小笠原さん(GYROAXIAボーカル・旭 那由多役の小笠原 仁さん)が,中島さんが闘志を燃やしていたと話題にしていました。
中島さん:
全然珍しくないんですよ! 毎回ギラギラやってるんです(笑)。それをあまり出さないようにしているだけで……。このタイミングでようやく風太としてライブに出られることになりましたが,僕のなかでも今までに挑戦したことのない試みもありますし,やっぱりフウライの曲ってすごく元気になってもらえると思うので,みんなにフウライってすごいぞ,いいなって思っていただけたら嬉しいです。小笠原くんは那由多としては超格好いいですけど,彼自身はあんな感じなので,楽屋でボコボコにしてからステージに出てもらおうかと思ってます(笑)。
4Gamer:
当日の絡みも楽しみです。それでは最後に,ファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。
中島さん:
アーティスト側というか演じ手側,ステージの上から投げかける言葉ってすごいパワーがあるんですよね。押し付けがましくなりがちというか,強い言葉に受け取られがちなところが難しいなと思うんですが,風神RIZING!はどちらかというとただ「楽しいことをしたい」というか「楽しさを共有したい」と思っているんじゃないかなと。
そして,彼らにとってそれができる一番の手段がたまたまバンドだったんです。だから,ステージにいる彼らのことを見て少しでも明るい気持ちになってもらえたら,それこそが彼らのやりたいことだし,彼らの良さが証明されることだと思います。これからもステージの上の彼らの姿をもっといっぱい見せてあげられる機会があったら嬉しいですし,そういう機会をぜひ見逃さずにいていただけたらと思います!
4Gamer:
本日はありがとうございました!
――2020年9月29日収録
風神RIZING!「上京上等行ってきまーす☆」
デジタルシングル情報
iTunes Storeにて予約受付中
https://itunes.apple.com/jp/album/id1535432487?app=itunes
「BanG Dream!」発のボーイズバンドプロジェクト「ARGONAVIS from BanG Dream!」に登場する風神RIZING!(フウジンライジング)初のデジタルシングル「上京上等行ってきまーす☆」が10月26日(月)に配信リリース決定。
「上京上等行ってきまーす☆」は地元の長崎を離れ、上京するフウライメンバーの気持ちを歌にした一曲。いつもの明るく朗らかなフウライらしさがありつつも、別れの寂しさもほんのりと感じさせる。カップリングには他1曲とボイスドラマが収録されます。
01.上京上等行ってきまーす☆
作詞:TAKE(FLOW)
作曲:TAKE(FLOW)
編曲:TAKE(FLOW)
02.One Night Carnival(Cover)
03.ボイスドラマ「フウライ上京物語」
※ボイスドラマは10月25日配信の「風神RIZING! S-SOL -フウライ上京物語-」のボイスドラマと同一になります。
※ボイスドラマは後日YouTubeで無料公開予定です。
配信詳細:https://argo-bdp.com/music/post-3531/
「アルゴナビス from BanG Dream!」公式サイト
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ライター:たまお(エンタメ系フリーライター。Twitter @tamao_writer)
撮影:大路政志
動画編集:まりメラ
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