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龍が如くスタジオが切り開く新境地“リーガルサスペンス”とは。「JUDGE EYES:死神の遺言」の名越総合監督&細川プロデューサーにインタビュー
東京ゲームショウ2018の会期中,「ジャッジアイズ」の総合監督を務める名越稔洋氏とプロデューサーの細川一毅氏にインタビューを実施した。まだ全貌が明かされていない本作には気になることばかりだが,時間の許す限り答えてもらったので,ぜひご一読を。
「JUDGE EYES:死神の遺言」公式サイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,あらためて「ジャッジアイズ」の企画が誕生した経緯を教えてください。
原案自体は3年以上前にありました。そのときはゲームのために作ったものではなかったんですが,それが「ジャッジアイズ」の発端ということになります。
ただ,龍が如くシリーズを十数年と作り続けるなかで,「どこかで新しいプロジェクトをやりたい」という思いがあり,そのためにゆっくりと徐々にチームを作ってきたら,このタイミングで実現できたという感じですね。
龍が如くシリーズではタイトルが完成するとその瞬間から「はい,次!」,それが終わると「はい,次!」ということを繰り返してきましたから,その点で「ジャッジアイズ」はじっくりと作ることができたタイトルだと思います。
4Gamer:
「ジャッジアイズ」というタイトルに込められたメッセージとは何でしょうか。
名越監督:
主人公が弁護士なので,もともとチームでは「JUDGE」というコード名で呼んでいたんですが,「物事の真理や真実,真相を見極める」という意味を込めて,「ジャッジアイズ」と命名しました。今回,被害者の眼球がくり抜かれるという連続猟奇殺人の謎を追うことになるので,それに引っ掛けたというのも少しありますね。
プレイヤーがゲームを進めて,ある程度まで達したら,「ああ,なるほど!」と感じてもらえるタイトル名になったと思っています。
4Gamer:
先日の発表会では,“リーガルサスペンス”というジャンルについて「以前からトライしたかったテーマ」と発言されていました。
木村拓哉さんも登壇した「JUDGE EYES:死神の遺言」の完成披露会をレポート
SIEは2018年9月10日,ライブショーイベント「PlayStation LineUp Tour」を,六本木の東京ミッドタウンにて開催した。本稿では,セガゲームスの新作「JUDGE EYES:死神の遺言」が発表されたステージ,およびイベント終了後に開催された本作の完成披露会の模様をお伝えしよう。
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- ライター:大陸新秩序
名越監督:
はい,僕の個人的な希望です。映画でもドラマでも,検事や弁護士,刑事に焦点を当てたサスペンスやミステリが好きなんですよ。最近はかなり少なくなりましたが,アドベンチャーゲームの「解く楽しみ」というのも,ファミコンの頃から好きだったので,「いつかはそういった作品に携わりたい」と思っていたんです。
4Gamer:
「解く楽しみ」ですか。なかでも印象に残っている作品を教えていただけますか。
名越監督:
最初に出会ったアドベンチャーゲーム,「ポートピア連続殺人事件」は外せないですね。挙げていくとキリがないんですけど,例えばアガサ・クリスティ原作の名探偵ポアロシリーズ,木村拓哉さんが出演されていた「HERO」なども好きな作品です。
4Gamer:
なるほど。今回は満を持して,そうしたテーマにトライしているというわけですね。
名越監督:
「解く楽しみ」というものは,みんな好きだと思うんです。ただ,スマホでゲームをする時代になり,アドベンチャーゲームの「じっくり考えて謎を解く」という遊び方は焦れったくもあり,今の主軸にはないジャンルなのかもしれません。
だからこそ,今の時代に合った提案の仕方が必要です。それはキャスティングもそうですし,ゲームシステムもそうです。根っこの部分にはアドベンチャーゲームの面白さがあり,そのうえで「今風のアドベンチャーゲーム」として提案したものが,「ジャッジアイズ」だと思っていただければと。
4Gamer:
龍が如くシリーズでは,物語のターニングポイントに「バトル」がありました。裏社会の大物に立ち向かい,それを倒すことで新たな展開が開かれる。その点,「ジャッジアイズ」はどうなるのでしょうか。
名越監督:
アクションアドベンチャーゲームですから,「バトル」は重要なものです。さらに「謎を解く」という要素も重要。両方によって,物語が展開していくと思ってください。
龍が如くシリーズは,「移動」と「バトル」によって紡がれていくゲームデザインでした。「ジャッジアイズ」ではバトルの要素が無くなるわけではなくて,バトルを含むさまざまな「調査アクション」によって,ゲームを進めていくことになります。
4Gamer:
「ジャッジアイズ」は神室町を舞台にしていますが,龍が如くシリーズのそれとは異なる雰囲気を感じました。ビジュアル面ではどのようなコンセプトになっているのでしょうか。
細川氏:
そもそも,龍が如くシリーズのリソースを引き継ぐとはいえ,ルック(見た目)に関しては「ジャッジアイズ」が必要としているものに仕上げていこうと考えていました。そこで問われるものというのは,サスペンスらしいどっしりとした雰囲気だったり,少し暗い雰囲気だったりですね。
そうした作りたいものに達するためには,ドラゴンエンジンには足りないところが見えてきましたが,プログラマーとデザイナーが協力しあって機能を強化することで,本作の特徴である深い色調や印象的な色味,ライティングの強化といったグラフィックスを実現しています。
4Gamer:
神室町という舞台を同じくしていることから,龍が如くシリーズとのつながりを期待される声が多いと思います。ただ,「ジャッジアイズ」は龍が如くシリーズではない,新規IPという見せ方を意識されていますか。
んー,我々が「『ジャッジアイズ』をどう見せたいか」と聞かれるならば,龍が如くシリーズとは関係のない作品ということになります。そのように認識してもらうために努力してきた部分が大きいので,そう感じてもらえるのが理想ではありますね。
龍が如くシリーズの場合,裏社会ものということで敬遠されていた人もいたと思います。そういう人にも,アドンベンチャー要素が強い現代劇である「ジャッジアイズ」に興味を持ってもらえたら,もちろん嬉しいですよ。
その一方,開発スタジオが同じですし,コンテンツに対する感じ方が龍が如くシリーズに近いからこそ,「ジャッジアイズ」が欲しいという方もおられると思います。欲張っていると思われるかもしれませんが,両方にアピールしたい気持ちはあります。
4Gamer:
それでは,主人公・八神隆之役に木村拓哉さんを起用した経緯をお聞きしたいです。
名越監督:
当初,僕には実在の俳優を主人公役に起用するという考えはありませんでした。一方で細川は「それもアリ」と考えていたんです。実在の俳優を起用することには一長一短がありますからね。ただ,そのときは結論が出なかったんです。
とはいえ,主人公なしではゲームを作れませんから,その段階ではシナリオありきで開発を進めていたなかで,木村さんに出会えたんです。
そこから,「もし木村さんに出演をお願いして,仮にオーケーがもらえたらどうなるか」ということを考えるステップに入りました。実際にオファーを出したところ,たいへん興味を持ってくれましたし,さらに「やりたい」という返事までたどり着けたんです。
だから,彼(木村さん)じゃなかったら,僕の考えは変わらなかったかもしれません。
4Gamer:
相手が木村さんだったから,「主人公・八神を演じてほしい」と考えたということですね。
一方,細川さんが実在の俳優を起用することに肯定的だった理由はなんでしょうか。
理由はいろいろとありますが,まずは皆さんに興味を持ってもらうことが大事だと考えたからですね。新しいIPを作るうえでは,「あのゲームってなんだろう?」と感じてもらうことが第一歩です。
龍が如くシリーズには桐生一馬という絶対的なキャラクターが存在することに対して,「ジャッジアイズ」はゼロからスタートでしたから,高い知名度と演技力を持った理想的な人物が見つかるのであれば,ぜひ主役としてキャスティングしたいと考えていました。
ただ,我々の希望だけで成立する話ではありませんから,オリジナルキャラクターでいくという線も考えていたところ,木村さんとの縁に恵まれたということです。
4Gamer:
「ジャッジアイズ」の主人公・八神は,その外見だけでなく,歩き方や走り方,細かい仕草まで,まさに我々が知る木村拓哉さんが再現されているようで,たいへん驚きました。
名越監督:
子供からお年寄りまで,日本人のほとんどが「木村拓哉はどんな人か? どんな声か? どんな印象か?」といったことが分かっているんです。長年のアーカイブが記憶の中にありますから。それはモーションキャプチャを担当するスタッフも同様で,「今日は木村拓哉の役を演じてください」と言われれば,細かく説明しなくても乗り移るということでしょう。
さらに言えば,実際の木村さんのそれとは多少違っていても,受け取る側が脳内補完によってアーカイブと結びつけるんです。
だから,主人公を演じてもらうのであれば,アイコンが強い人がいいんですよ。木村さんじゃなかったら,僕の考えは変わらなかったかもしれないというのは,そういうことなんです。
4Gamer:
確かに木村さん演じる八神隆之は,ゲームでも絶対的な存在感を放っています。さらに脇を固める俳優陣も豪華ですね。
名越監督:
八神の親代わりであり,弁護士事務所の所長を務める源田龍造は,八神にとってかなり近い存在です。木村さんに負けないくらいアイコンが強い人に演じてほしい,と思っていたんですが,中尾 彬さんにお願いすることができました。
中尾さんと言えば,目をつぶっていても声だけで分かるほどの俳優ですから,「いつか何かでお願いできればいいなあ」と思っていたんです。
つねに「この人に読んでもらいたい。演じてもらいたい」という候補があるんですけど,中尾さんはその代表格でしたね。大御所でありながら,好奇心の高い方で,ゲームの仕事は初めてとのことでしたが,すぐにいい返事をいただけました。
4Gamer:
会場ではシアター映像を拝見しましたが,東城会系松金組の若頭・羽村京平の異様な存在感が印象に残りました。
木村拓哉さん主演の「JUDGE EYES:死神の遺言」,東京ゲームショウ2018の特設シアターで上映されていた2つのロングトレイラーが公開
セガゲームスは本日,木村拓哉さん主演のPS4向け新作「JUDGE EYES:死神の遺言」の,ストーリーとゲームプレイそれぞれにフォーカスしたロングトレイラーを公開した。この2つのトレイラーはいずれも,東京ゲームショウ2018のセガゲームスブースに用意された特設シアターで上映されていたものだ。
名越監督:
八神の邪魔をするキャラクターですから,存在感はありますよね。ただ,羽村に対する最初の印象と,話が転がった後の展開における行動には,またコントラストがあります。もちろん,それは羽村に限らず,5人の登場人物に当てはまることで,それぞれに意外性だったり,説得力だったりを感じることになるでしょう。
話の筋に触れそうになるので,あまり詳しくは言えないんですけど(笑)。今回,達者な俳優陣が揃いましたから,すごく満足してもらえると思いますよ。
4Gamer:
それでは,現在配信中の先行体験版についてお聞きします。収録されている内容は,製品版の一部を切り出したものでしょうか。
細川氏:
そうですね。製品版となる本編から一部のシーケンスを切り出したものです。もちろん,先行体験版というフォーマットに合わせて,さまざまな調整を加えてはいます。
4Gamer:
なるほど。先行体験版ではバトルや尾行,チェイスといった要素が楽しめますが,そのほかの注目すべきポイントを挙げていただけますか。
名越監督:
まずは「写真撮影」ですね。ただ写真を撮るだけではなく,「どこで,誰を,どのように撮るか」という撮り方が重要になる。より良い条件を達成すると,報酬や経験値が多くもらえるので,探偵らしく決定的な場面を押さえるために,頭を使って考える必要があります。非常に面白いものになったと思います。
先行体験版に収録されている「尾行」も,ターゲットはつねに1人とは限りません。ゲームの進行度によって,複数のターゲットを追うケースもあります。当然,1人のときより難しくなりますから,単調なものにはなっていませんよ。
細川氏:
先行体験版ではドローンを飛ばして偵察する場面がありましたが,本編では自らドローンを操作して調査を行うシチュエーションも出てきます。
トレイラーでも紹介していますが,さまざまな姿に変装して相手の気を逸したり,時にはだましたり,閉ざされた鍵をピッキングしたりといった,多彩な「調査アクション」にも期待してほしいですね。
4Gamer:
「プレイスポット」も気になるところです。
名越監督:
カジノや賭場,ピンボールなどに加えて,オリジナルの「VRすごろく:ダイキュー」「ドローンレース」,そして「ファイティングバイパーズ」「モーターレイド」の収録を発表しました。
「龍が如く」シリーズと比較するならば,無くしたものもあり,引き継いでバージョンアップを図ったものもあり,もちろん新たに加わったものもあります。全体のボリューム感は,あまり変わらないと思いますね。
4Gamer:
最後に4Gamer読者へメッセージをお願いします。
細川氏:
これまでの龍が如くスタジオの作品では,皆さんにストーリーを高く評価していただきました。「ジャッジアイズ」では従来と違うドラマ,違うモチーフにチャレンジしているものの,絶対に面白いと感じていただけると思います。ぜひ手に取って,遊んでいただけたら嬉しいですね。
名越監督:
「ジャッジアイズ」は完全新作として,しっかりと手応えのあるものになったと自信を持っています。ぜひ予約して楽しみに待っていてほしいと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。個人的にも大いに楽しみにしています。
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