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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第29回。スカウト!五黄の寅,「メインストーリー第二部『SS』編/Final Stage『SS』」を語る
Happy Elementsがサービス中のアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」のストーリーを紹介する記事の第29回は,「スカウト!五黄の寅」と,「メインストーリー第二部『SS』編 Final Stage『SS』」の2本を取りあげる。本記事では,“知っているとストーリーをより楽しめるポイント”の解説と,筆者の感想や考察をお届けする。記事では詳細なネタバレは控えているが,できるだけ各ストーリーの読了後に読むのがおすすめだ。
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ストーリーピックアップ
「スカウト!五黄の寅」
開催期間:2021年12月30日〜2022年1月14日(Basic/Music)同時期開催イベント:「メインストーリー第二部『SS』編/Final Stage 『SS』」
――あらすじ――
依頼の締め切りを前に,曲作りに悩む月永レオ。そんなとき,みんなのリクエストに応えて逆先夏目が寮内で催眠術を披露するという話を聞き,興味がわいて一緒に参加することに。しかし,夏目がアイドルたちに催眠術をかけていくなか,近くで見ていただけの南雲鉄虎が自分を「虎」と思い込む催眠術にかかってしまう。<全8話/シナリオ:梅田千歳(Happy Elements株式会社)>
◆ストーリー中のキーワードを解説
「ルカたん」とは,月永レオの妹のこと。「あんスタ!!」では名前のみが登場しており,初出は「!」月永レオストーリー第一話。その溺愛ぶりは相当なもので,その後も「もし妹が結婚したら……」と考えただけで取り乱す姿を見せた(【SHUFFLE×Ringが誘う鐘の音】より)。なお,レオが妹を「ルカたん」と呼ぶのは本人には秘密で,実際は「ルカ」と呼んでいるらしい(「!」三毛縞斑ストーリー「お祭り男の帰港」)。
逆先夏目の言うとおり,レオは夏目と仁兎なずなと寮で同室である。この部屋のエピソードには,月永レオアイドルストーリー「好奇心は……?」がある。これはアイドル活動に復帰したなずなが引っ越してくる日の話。ほのぼの楽しい展開でおすすめだ。
前回記事でも解説したが,神崎颯馬が催眠術によって赤ん坊になってしまったのは「!」【決別!思い出と喧嘩祭】。かけたのは日々樹 渉で,颯馬の「我は赤ん坊、ばぶばぶ……♪」というセリフは,当時ものすごくインパクトがあった(いや,今でもあるが)。
猫の「リトル・ジョン」は,さまざまなストーリーに(ほとんど名前のみだが)登場している。初登場は「!」【スカウト!ロビンフッド】(時系列的に古いのは「!」【追憶*モノクロのチェックメイト】)で,もともとは夢ノ咲学院の弓道場によく現れていた野良猫である。【ロビンフッド】のころに子猫を生んだリトル・ジョンは,その後見つかった里親によって引き取られた。最近では,ある日里親のもとからいなくなってしまったというエピソードも語られた(朱桜 司アイドルストーリー「風のように、猫のように」)。
真白友也には,動物に懐かれる(好かれる)性質がある。月永レオが“友也に猫が懐いているのを見た”というエピソードは,「!」【メルティ♥甘くほどけるショコラフェス】。
蓮巳敬人の実家はお寺。お説教が長いのは普段から説法をしているからだろうか。ちなみにこの「五黄の寅」3話にて,夏目が「寮監のひと」と言うセリフがあるが,星奏館の寮監は敬人が務めている。似合う。
ESアイドルのなかでペットを飼っている者は多い。なかでも猫を飼っているのは,このストーリーで何度も名前が出た鳴上 嵐(名前は「にゃんこ」),逆先夏目,葵ひなた・ゆうたである。
舞台がESに移ったため,夢ノ咲学院の制服姿が新鮮だ。夢ノ咲はネクタイとジャージの色が学年固定となっており,1年生は赤,2年生は青,3年生は緑である。アドニスの緑ネクタイ,とてもよく似合っているのではないだろうか。
レオが言う「あいつ」は“こたつ”のこと。Knightsのたまり場(?)となっていた夢ノ咲学院のスタジオにはこたつがあり,レオと朔間凛月で奪い合いになっていたことがある。昨年度の冬の風物詩だった。
◆ストーリー所感
夏目がかけた催眠術をめぐるほのぼのストーリー。「あんスタ」で最初に催眠術が登場したのは前述の【喧嘩祭】(かけた人:日々樹 渉/かけられた人:神崎颯馬)で,そのほかには「!」【スカウト!明鏡止水】(かけた人:逆先夏目/かけられた人:神崎颯馬?),今年度のものには逆先夏目アイドルストーリー「導きの先に」(かけた人:夏目/かけられた人:影片みか)がある。
こうしてみると,今回の南雲鉄虎しかり,催眠術には素直な性格の人がかかりやすいと言えるのかもしれない。「自分を虎だと思い込んだアイドルが行方不明に!」というのはなかなかの大事件な気もするが,みんなで手分けして探す姿や,解決後のほのぼのとした空気に癒やされる一作だ。
ストーリーピックアップ
「メインストーリー第二部『SS』編」
第一章〜第七章を振り返る
「メインストーリー第二部『SS』編/Final Stage『SS』」を取り上げる前に,まず予選会の流れについてあらためておさらいしていこう。簡易的なあらすじのみ記載するので,詳しい解説などは過去記事を参照してほしい。
●1st Stage「サテライト」
開催地:北海道
登場ユニット:Trickstar/ALKALOID
前回「SS」の優勝者であるTrickstarと,結成から1年に満たない新人ユニットのALKALOIDが対決することに。なぜか“北海道ジャングル”に放り込まれたTrickstarと,彼らを手助けするALKALOIDだが,事件の真相は……?
●2nd Stage「サブマリン」
対戦地:沖縄県
登場ユニット:流星隊/紅月
地元アイドルとESアイドルの対決で殺伐とする沖縄。流星隊は助けを求められた地元アイドルに協力し,一方の紅月はリズリンのベテラン勢に下剋上を企てる。そんな折,深海奏汰と地元の宗教団体に関わる情報が入る。
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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第21回。エイプリルフール企画「宇宙戦争編」,メインストーリー第二部SS編・第一章「サテライト」,第二章「サブマリン」を語る
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- 紹介記事
- イケメン
- アドベンチャー
- 声優:伊藤マサミ
- 声優:羽多野 渉
- 声優:柿原徹也
- 学園物
- 声優:梶 裕貴
- 声優:橋本晃太朗
- 声優:江口拓也
- 声優:高橋広樹
- 声優:高坂知也
- 声優:細貝 圭
- 声優:山下大輝
- 声優:山本和臣
- 声優:小野友樹
- 声優:新田杏樹
- 声優:森久保祥太郎
- 声優:神永圭佑
- 声優:神尾晋一郎
- 声優:西山宏太朗
- 声優:斉藤壮馬
- 声優:石川界人
- 声優:浅沼晋太郎
- 声優:前野智昭
- 声優:増田俊樹
- 声優:村瀬 歩
- 声優:大須賀 純
- 声優:池田純矢
- 声優:中島ヨシキ
- 声優:渡辺拓海
- 声優:土田玲央
- 声優:梅原裕一郎
- 声優:帆世雄一
- 声優:比留間俊哉
- 声優:米内佑希
- 声優:北村 諒
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- 声優:野島健児
- 声優:緑川 光
- 「あんさんぶるスターズ!!」ストーリー紹介連載
- ライター:玉尾たまお
- 女性向け
◆3rd Stage「シークレットサービス」
対戦地:九州地方・四国地方
登場ユニット:Eden/Double Face
シード権があるため,九州でのんびり過ごしていたしていたEdenと,四国で単身ゲリラライブを行っていた斑。「ゴッドファーザー」に関するある情報をめぐり,一同は四国に集結する。すると,とある廃寺で乱 凪砂が驚愕の真実を見つける。
●4th Stage「シンセカイ」
対戦地:東北地方
登場ユニット:Valkyrie/Switch
Switchが提案した“優勝者決定戦”で勝利したValkyrie。しかしその翌日,ValkyrieはSwitchが作ったVR空間「シンセカイ」の中に入ってしまう。バーチャルキャラクターに翻弄されながらも,Valkyrieは「SS」出場権を守るために奮闘する。
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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第26回。メインストーリー第二部SS編 第三章「シークレットサービス」,第四章「シンセカイ」を語る
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●5th Stage「サンドストーム」
対戦地:中国地方
登場ユニット:2wink/UNDEAD
2winkとUNDEADそれぞれの代表として,中国地方の砂漠にいた葵ひなたと羽風 薫。2人はサバイバルに勝ち残らねば,所属ユニットが「SS」への出場権を失うという。ほかのメンバーたちは彼らを救うために奔走するのだが……。
●6th Stage「サンクチュアリ」
対戦地:関東地方
登場ユニット:fine/Ra*bits
ふと気がつくと,見知らぬ場所にいたRa*bitsの真白友也は,記憶喪失となったfineの日々樹 渉を発見する。一方のメンバーたちは,天祥院英智が作った誰もがアイドルになれる新感覚遊園地“SANCTUARY”にいた。
●7th Stage「サドンデス」
対戦地:関西地方
登場ユニット:Crazy:B/Knights
何者かによってアイドルたちの“指令”がバラされ,紛争地帯となっていた関西地方。KnightsはCrazy:Bに同盟締結を持ちかけるのだが,そんななか,月永レオと瀬名 泉が欧州の仕事で移動しなければならなくなってしまう。
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以上の予選を経て,年末の「SS」本戦がスタートする。
ストーリーピックアップ
「メインストーリー第二部『SS』編/Final Stage『SS』」
公開開始:2021年12月31日〜(Basic/Music)
――あらすじ――
全国各地での予選を経て,アイドル業界の頂点を決める一大イベント「SS」がついにスタートした。今年は「紅組」と「白組」に分かれたチーム戦で,各チームからユニットが1組ずつ登場し,勝敗を決めていくのだという。紅組の総大将はfine,白組の総大将はEdenが務めることになった。そんななか,ゴッドファーザーにまつわる情報を握る乱 凪砂は,ある考えを実行するため,白組の各ユニットに「託宣」を配布する――。<全64話/シナリオ:日日日>
◆「SS」編・複雑なストーリーを解説
今作「SS」編には全ユニット・全キャラクターが登場し,さらにはストーリー中の時系列が前後するため,すこし複雑な内容となっている。そこで,まずは「SS」本戦はどういったルールだったのかを少し整理してみよう。
「SS」本戦ルールについて |
・全国各地で開催された予選会を勝ち抜いたアイドルたちが出演。昨年までは夢ノ咲学院が主催だったが,今年度からES主催になった |
・開催地は中部地方である(「SS」のために新設された,通称「ESドーム」も中部地方) |
・「紅組」「白組」のチームに振り分けられ,チームごとに選ばれた“代表”が一対一でライブ対決する |
・勝敗は観客の投票によって決められる。すべての国民が投票権を持ち,サイリウムを使って票を投じる |
・本戦が行われる「ESドーム」の入場チケットを購入していれば,1000票分として計上される |
・ES後援会の会員は100票分として計上される |
・対決ユニットのどちらにも投票せずためておき,“推しユニット”にためた票を投じることも可能 |
・最も多くの票を集めたユニットが優勝。総合結果での組の勝敗とは関係がない |
・勝者には,“天祥院英智ですら驚くほどの”莫大な賞金が贈られるという |
組分けについて | ||
組 | ユニット | 所属事務所 |
紅組 | fine(総大将) | スターメイカープロダクション |
Trickstar | ||
流星隊 | ||
ALKALOID | ||
Ra*bits | リズムリンク | |
紅月 | ||
Switch | ニューディメンション | |
白組 | Eden(総大将) | コズミック・プロダクション |
Valkyrie | ||
2wink | ||
Crazy:B | ||
UNDEAD | リズムリンク | |
Knights | ニューディメンション | |
Double Face ※1 |
※2022年8月8日18:00,ユニットが抜けていたため表を修正しました。
※1Double Faceは予選出場権を勝ち取った。だが,桜河こはくはCrazy:Bとしてステージに出ると決めたため,Double Faceとしては出場していない(ユニットをまたいで出演できない決まりがある)。
ここまでの予選では勝敗がはっきりしていない回があったが,上記を見れば分かるとおり,「SS」本戦には全ユニットが出場することになった。ストーリーのなかで流星隊の守沢千秋が,本戦に選ばれたことに対して懐疑心を抱いていると話すが,同じように感じていたアイドルもいたかもしれない。
なお,出場できなかったユニットがある場合などに備えて,それぞれの組には“助っ人”が用意されている。紅組は氷鷹北斗の父にして現役スーパーアイドルの氷鷹誠矢,白組は“ルシフェル”という名前のアイドルだという。
◆ストーリーの見どころをチェック
続いて,筆者が選ぶストーリーの見どころやチェックしておきたいポイントを紹介していこう。なお,重大なネタバレを避けるため,内容はエピローグの前までとする。
プロローグ・日常/第一話〜第十二話
「SS」本戦直前の恒例となった特番。昨年はTrickstarとEdenが出演していたが,今年は紅組と白組の総大将であるfineとEdenが出演した。なお,この特番は昨年に引き続き夢ノ咲学院から放送された。
天祥院英智の寮室(同室メンバーは朔間 零と白鳥藍良)を明星スバルが訪れるシーン。スバルは,6th Stage「サンクチュアリ」のラストシーンで桃李に尋ねた「スバルの父が生きている」という情報を確かめにいったと見られる。ちなみに英智が“何度か遊びに行った”という話は,「!」の明星スバル・キャラストーリー「皇帝に真珠」を参照。
とある神社で撮影に勤しむEdenのほのぼのパート。しかし,予選(3rd Stage「シークレットサービス」参照)以来,凪砂は何らかの考えがある様子である(そして,それについて巴 日和も何かを感じているようだ)。
いつもの明るさがなく,思い詰めたような表情を見せる桃李。彼の苦悩は,体調にも影響を及ぼしてしまう。
日々樹 渉と「ゲートキーパー」の貴重な2ショット。実は,ここには「ゲートキーパー」に長く軟禁(?)されていたプロデューサーもいる。内心はどうあれ,たいていのことには動じない渉がたのもしい。
漣ジュンは,元アイドルだった父親の“仇”として佐賀美 陣を敵視していた。しかし,昨年度の「Sagaシリーズ」で陣たちと対決したり,「SS」をとおしたできごとによって,その憎しみが消えたと言う。また,ジュンはそうしたしがらみから自分を自由にしてくれた日和たちに恩を感じ,「今度は自分が」と決意するのだった。
fineとEdenの放送風景その2。「鳩ぽっぽ」は,言わずもがな渉のペットが鳩であること,「いばにゃん」は【バラエティとタッグ/ボギータイム】でEdenとRa*bitsが番組共演し,七種 茨と紫之 創が「いばにゃん」「じめにゃん」と呼びあったのが由来。むしろこの2チームの対決もぜひ見てみたい。
乱戦/第一話〜第十七話
本戦当日,バス移動の時間を利用して行われた“リーダー会議”の様子が興味深い。ここで蓮巳敬人が言うセリフは,英智が敬人に喧嘩を吹っかけた(※筆者の主観),「!」【決別!思い出と喧嘩祭】を思い出させる。名作なので,未読の人はぜひ。
後輩の前ではなかなか見せない守沢千秋の心情に胸が痛くなる。今年度の流星隊は思うようにいかない場面も多かったことからくるのだろう(【変身!星々を繋ぐコメットショウ】を参照)。なお,この一連のリーダー会議のシーンでは「ゲートキーパー」の思惑について推測を述べ合う場面もあるので,こちらもチェックしておきたい。
“落ちこぼれ”が集められ,ステージでいい成績を残さなければ解散だと言われ,メンバー同士で支えあって問題を乗り越えたALKALOID。既存のユニットで結成当初の物語を見られることは決して多くないため,そういう意味でもメインストーリー第一章は貴重な物語だったと言えるかもしれない。ALKALOIDは非常に真っ直ぐ成長しているところが見ていて安心する。
Double Faceは出場権を得たものの,ユニットの兼任はできないルールのため,桜河こはくはCrazy:Bとして出場することを選んだ。三毛縞 斑は3rd Stage「シークレットサービス」で多数の“助っ人”を得たため,彼らとともにDouble Faceとして本戦に出ることとしたようだ(ソロでの出場は不可なので,“MaM”としては出られない)。
何ということはないが,【追憶*遊色が奏でるオブリガート】(2022年5月)のストーリーを読んだうえで聞くと,今となっては非常に深読みしたくなるセリフである。
本調子ではない様子の月永レオ。落ち込んでいる理由は,「SS」のために書き下ろした新曲を白組の“総大将”に提出したものの,全否定されてしまったからだという。名前は出ていないが,このダメ出しをしたのが凪砂であるとしたら,何らかの思惑から受け取りを拒否したのだと思われる。
白組の各ユニットに配られた「託宣」。内容は「『SS』で各ユニットがどう動くべきか」が書かれており,作ったのは凪砂である。それを受け取った巴 日和が少し手を加えたうえで「託宣」と名付けたのだという。
5th Stage「サンドストーム」の砂漠での出来事を経た羽風 薫が言っていると思うと,なかなか深いセリフである。これは個人的に,“後悔しないために,傍観者でいてはいけない”という想いからくるものだと感じている。この作品に度々出てくる「もう二度と過たぬように、もう誰も喪わぬように」という言葉がそれを表している気がする(朔間 零がよく言うセリフでもある)。
ちょっと久々な氷鷹誠矢の登場である(今回は親子の絡みはない)。このセリフから,彼もまた大きな陰謀に巻き込まれる可能性があることが分かる。
倒れてしまった姫宮桃李。これは偶然に起きたものだったが,凪砂はこのできごとを“利用”し,桃李を誘拐したという声明を出す。なぜそのような行動を起こしたのか? は,後半に明かされる。
栄冠/第一話〜第二十六話
桃李が誘拐されたと聞き,取り乱す斎宮 宗と激怒する青葉つむぎ。普段は怒りや憎しみなどを芸術に昇華する宗と,そうした感情とは無縁に思えるほど穏やかなつむぎを思うと,とても心が動かされる場面である。
今年度の【召しませ/ナイトクラブ】【Beyond!共鳴するツインピークス】,そして5th Stage「サンドストーム」を読んでいくと,2winkというユニットが,ずっと複雑な想いを抱え続けていることが分かる。もがきながらも前に進もうとする2人には,とにかく幸せになれる道を見つけてほしいと思う。
2winkの2人の目の前に現れたのは,見る人に勇気と元気を与え,癒してくれるRa*bitsだった。2winkも,お互いに苦労してきた仲間であるRa*bitsを見て思うところがあったようだ。ここで,全員のなかで年長者である仁兎なずなが言うセリフがアツい。
オープニングから名コンビ(?)ぶりを見せてくれた伏見弓弦と七種 茨。彼らが胸の内を少しだけ明かし合う会話は,幼少期から続く彼らの歴史において,わりと重要なポイントである気がする。ここで茨が弓弦を名前で呼ぶシーンは,これまでのなかで最も温かみを感じた気がする。
流星隊登場。苦労はあれど「それでも前に進み続ける」と必死で上を向く後輩たちに,千秋は「もう何も言うことはない」と言う。このカタルシスにいたるまでの物語を早く読みたい。そして,彼らの様子を見た英智が「自分は桃李に何を贈れただろう」と自問する場面にも心を揺さぶられる。
流星隊の対戦相手であるDouble Faceとしてステージに立った,元流星隊の斑。しかし個人的には,ここでの斑はDouble FaceでもMaMでもなく,三毛縞 斑という1人の人間として,彼らに戦いを挑んだようにも思える。
舞台裏の紅月。ここでは彼らがステージの斑をどう見ているか,また対戦した盟友のUNDEADについて何を思ったかが語られる。2nd Stage「サブマリン」では,敬人に代わって神崎颯馬がユニットを率いる場面があったが,そのときに見ることができた采配の才能に長けた颯馬を感じられるシーンでもある。
この「SS」でのキーマンの1人は天城燐音だった。これまで“局面をひっくり返す”のはTrickstarの役目だったが,彼らは己の立場を考えてこれを燐音に譲る。前回「SS」優勝者で強豪の仲間入りをしたと言っても過言ではないTrickstarが,今後どういった段階に進んでいくのかが楽しみである。
本作「SS」編では,凪砂と日和の強い絆が重要な役割を果たす。今年度のストーリーでは,ぜひ【軋轢◆内なるコンクエスト】をチェックしておきたいところ。
メインストーリー第二章「SS」シリーズから登場し,大いに場を盛り上げてくれた(?)「ゲートキーパー」。彼は本当に悪人なのか,事件の真相はいったいどんなものだったのかなどは,ぜひストーリーを読んで確かめてほしい。
〜「SS」編・おさえたいポイントについて〜
複雑なストーリーではあるが,より理解を深めるためにここをチェックするといいかも? なポイントを挙げておく。
- 「ゲートキーパー」の思惑とは何だったのか?
- 凪砂は何をしようとしていたのか? 「託宣」の狙いとは
- 桃李の誘拐は事件の真相は?
- 「門番」「神父」,ゴッドファーザーとの関係は?
- 明星スバルの父の正体とは?
- 「ゲートキーパー」,凪砂,英智は最終的に何を得たのか?
「SS」編には今後の伏線ともとれる会話や展開もあるため,ぜひ細部まで読んでおきたいところだ。
◆ストーリー所感
正直言って,このFinal Round「SS」編の解説が,これまでの連載で最も苦戦したものとなってしまった。物語が複雑に絡み合っているうえに,全64話の特大ボリュームである。しっかり内容を把握して読み進めようとすると丸1日はかかってしまうレベルだし,関連ストーリーまで網羅しようとすると,新章だけでなく「!」時代にまで及ぶ。とにかく本作は「SS」シリーズのフィナーレに相応しい濃密な物語なので,この記事が少しでも役に立てば幸いだ。最後に少しだけ,「SS」編Final Stageの感想を述べておきたいと思う。
この「SS」編は,「ゲートキーパー」,紅組総大将であるfineのリーダー・天祥院英智,白組総大将であるEdenのリーダー・乱 凪砂の3人の思惑をめぐるストーリーが本筋となっている。アイドルたちが繰り広げる華やかなストーリー! というよりは,悪事や陰謀といった少々ダークな側面が多い。だが個人的には,凪砂という1人のアイドルの物語に強く胸を打たれた。なぜなら「SS」編は,「凪砂がようやく“人間”になった」話でもあるからだ。
終盤で,ある人物に対し凪砂がこう言う。「怒り、憎悪、復讐心。そんなものは、存在しないほうが良い負の感情だけど それらが欠けていた私は、人間としては足りなかった」「……けれど。君がそれを芽生えさせてくれたから、私もようやく人間になれた気がするよ 綺麗なだけのお人形じゃない、私が愛する、みんなと同じ人間に」と。
初めて凪砂が「あんスタ」に登場したとき,「物言いは大人びているのに,赤ん坊のような人だ」と思った人は少なくないだろう。この認識は間違っていないと思うし,彼は特殊な生い立ちをしているのだから当然のことではある。だが,神たる“父”の亡き後,彼のそばには日和がいてくれた。日和のおかげで彼は「人間とは何か?」を学び,人を愛するようになり,アイドルになって多くの人たちと過ごすうちに,自分も同じようになりたいと願ったのかもしれない。もう1つ,セリフをピックアップしてみよう。
この言葉を見てハッとした。昨年度の「SS」で,凪砂がスバルの顔を見て何を感じたのかは分からない。けれど今こうやって日々を過ごし,凪砂のなかでさまざまな感情が芽生えていくうちに,あのときのスバルの顔がどんな気持ちを表していたのかを理解していったということではないだろうか。そうして,あの表情が持つ意味が凪砂にとってどんどん重いものになっていったのだとすれば,それはどんなにつらいことだっただろう。
また,凪砂は「どれだけ高い地位を得ても、天にまします全知全能の神の足元にも届かない」「だからこそ。誰にでも、縋るものは必要だ」「信仰は、神は必要だ。すくなくとも、そのように思える尊いものが」と言う。そして,父のように,誰かにとっての“それ”になりたかったのだと。
人間である私たちに必要な“それ”は,自己愛や自分を信じることとはまた違う。“それ”は,自分とは違う宇宙を持つ“他者”の存在だと筆者は捉えている。物語のラスト,fineとEdenが共演したステージで,日和は「ぼく、こうして舞台に立ってると生きている感じがする」と言った。それは「愛されていると実感できるから」であり,愛されていると感じられるということは,自分ではない誰かがそこにいてくれることを示している。ファンはアイドルを求め,アイドルはファンを求める。そうすることで,愛や光といったあたたかいものが世界に満ちていくのだと思う。
1人で生きていくことは,不可能ではないけれど難しい。人間らしく生きていこうとすればなおさらだ。輝きたいと願う誰かから光が生まれ,またほかの誰かがその光を反射する。それが仲間へ,ユニットへと広がっていき,アイドルたちみんなが輝きを増していく。それこそがきっと“アンサンブル”ということだ。「あんスタ」という物語が始まって以来,ずっと繰り返し紡がれてきたその願いが,またここで大きな光を生み出したように思う。
彼らは皆,ただ綺麗なだけの人形のようなアイドルではない。笑って,怒って,泣いて,喜んで,そうした人間らしさあるからこそ,私たちにとってこれほどまでに魅力的なのだ。本作「SS」編を読み,そんなことを感じた。
第30回記事もお楽しみに!
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