連載
「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第31回。「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Witness of Miracle-」上演記念,「キセキ」シリーズ三部作を紹介&見どころを語る
Happy Elementsがサービス中のアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」(以下,あんスタ)のストーリーを紹介する記事の第31回は,「!」のメインストーリー第二部「キセキ」シリーズ三部作の【輝石☆前哨戦のサマーライブ】【軌跡★電撃戦のオータムライブ】【奇跡☆決勝戦のウインターライブ】を取り上げる。今回は,2022年10月7日から上演予定の「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Witness of Miracle-」にあわせて,原作アプリの“知っているとより面白くなる過去ストーリー”を紹介,解説する。記事では詳細なネタバレは控えているが,できるだけ各ストーリーの読了後に読むのがおすすめだ。
もくじ
“原作アプリと「あんステ」との関係を説明”を読む
【輝石☆前哨戦のサマーライブ】の解説を読む
【軌跡★電撃戦のオータムライブ】の解説を読む
【奇跡☆決勝戦のウインターライブ】の解説を読む
ストーリー紹介連載のバックナンバーはコチラ
「あんさんぶるスターズ!!」公式サイト
「キセキ」シリーズとは?
原作アプリと「あんステ」との関係を説明
〜原作アプリと「キセキ」シリーズ〜
「あんスタ!」メインストーリー第二部「キセキ」シリーズとは? を説明する前に,まずはメインストーリー第一部を少し振り返ろう。メインストーリー第一部は,現在の「あんスタ!!」の時間軸から1年前の春,アイドルたちが生徒会によって抑圧されていた夢ノ咲学院で,Trickstarが革命を起こすというストーリーを描いたものだった。
そのなかでTrickstarは,生徒会会長の天祥院英智が率いるfineと戦い,全国各地からプロアマ問わずアイドルたちが参加し,日本一のアイドルを決める一大祭典「SS」への出場権を獲得した。これが後に「キセキ」シリーズで語られる「SS」だ。
そして2017年,Trickstarが「SS」に出場するまでの物語を描くメインストーリー第二部「キセキ」シリーズ三部作が公開された。「キセキ」シリーズは,夏の【サマーライブ】,秋の【オータムライブ】,冬の【ウインターライブ】の三部構成となっており,年末のSS(ウインターライブ)に向けた前哨戦と本戦が描かれたものだった。
●ちょこっとメモ
「キセキ」シリーズが公開されるまでの期間,アプリ内では実際の季節に沿って各ユニットの物語がイベントストーリーとして綴られていった(同じ1年間で起きた出来事を別の視点でくり返し描いたもの)。
なお,「キセキ」シリーズ公開前までのイベントストーリーでは,作中でTrickstarが「SS」で優勝できたのかどうかは描かれていなかったため,この「キセキ」シリーズで満を持して結果が明かされることになったのだ。また,「あんスタ!」では “他校アイドル”が新キャラクターとして初めて登場したことも,当時は大いに話題となった。
〜舞台の「あんスタ」(あんステ)と「キセキ」シリーズ〜
舞台版の「キセキ」シリーズは二部作で構成されており,2022年2月19日に上演された「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Track to Miracle-」(以下,「あんステ TtM」)では夏の【サマーライブ】と秋の【オータムライブ】をベースとした物語が描かれた。「あんステ TtM」では,天祥院英智,乱 凪砂,巴 日和,青葉つむぎ4人からなる旧「fine」と呼ばれるユニットのパフォーマンスも披露された。旧「fine」はかつて天祥院英智が革命を成すために作ったユニットで,彼らのパフォーマンスそのものは原作アプリですら詳細に描かれてはいなかった。これは舞台ならではの見どころといえるだろう(関連記事)。
そして10月上演予定の「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Witness of Miracle-」(以下,「あんステ WoM」)では,「SS」の決勝戦を描く【ウインターライブ】を原作としたストーリーが描かれる。今回も原作アプリの膨大なエピソードをどのように組み合わせ,アレンジさせていくのか楽しみである。
ここからは,「あんステ WoM」の観劇がもっと楽しめるように,原作アプリでの「キセキ」シリーズの見どころや小ネタを紹介していく。アプリのストーリーは知らないけれど舞台版は気になる……という人も参考にしてもらえたら幸いだ。
「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Witness of Miracle-」公式サイト
【サマーライブ】と【オータムライブ】
原作アプリストーリーの見どころをチェック
「輝石☆前哨戦のサマーライブ」
アプリでの初公開:2017年7月15日〜
――あらすじ ※アプリ内より引用――
英智の計らいによって「Eve」と合同ライブを行うことになった「Trickstar」。夢ノ咲学院のアイドルとは異なる意識やペースに戸惑いつつも【サマーライブ】に向けて親睦を深めようとするが……。<全27話/シナリオ:日日日>
英智の計らいによって「Eve」と合同ライブを行うことになった「Trickstar」。夢ノ咲学院のアイドルとは異なる意識やペースに戸惑いつつも【サマーライブ】に向けて親睦を深めようとするが……。<全27話/シナリオ:日日日>
◆【サマーライブ】の見どころを解説
・Trickstarの漫才(?)
Trickstarがfineと「SS」の出場権をかけて戦った【DDD】(「!」メインストーリー第一部)から少し経った夏。彼らは天祥院英智に命じられ,“武者修行”として【サマーライブ】に出場した。
ストーリー序盤の明星スバルと氷鷹北斗の会話は,漫才を彷彿とさせるいつものTrickstarらしいやりとりだった。ちなみにTrickstar=漫才(?)となったのは,当初からスバルと遊木 真が自らを「アホコンビ」と言ってボケ&ツッコミの掛け合いをしていたことと,【DDD】の前に北斗が2winkから漫才特訓(表情筋を柔らかくするため)を受けたことでエスカレートしていったというのが筆者の推測である。
・漣ジュン,登場
プロデューサー(プレイヤー)と真が立ち寄ったゲームセンターで,Eve(/Eden)のメンバーである漣ジュンが現れる。彼は一見ガラが悪そうでありながら礼儀正しく,「玲明学園では、『特待生』ではなかった下っ端の自分は舐められたら終わり」だと話していた。ジュンは特待生だった巴 日和に“拾われ”,Eveを結成したという経緯がある。
なお,2022年4月に公開された【追憶*遊色が奏でるオブリガード】で,ジュンが特待生ではなかったころの話や,過去の玲明学園の様子が明らかとなった。想像以上に凄まじい環境で,玲明学園にも「革命」が起きていたことが詳しく綴られている。
・朔間 零の助言
【サマーライブ】には朔間 零も登場し,物語の重要な役割を果たしている(※「あんステ TtM」には未登場)。ここで彼が言う「『五奇人』に匹敵するほどの天稟」とは真のことで,真緒には「天才に傑物、怪物に得体の知れない生き物……それらを御し、仲間として寄り添い、救いを与えるのは衣更くんのような普通の人間の役目じゃ」と話していた。
零による真と真緒の分析は,そのまま【サマーライブ】後半の展開と,【オータムライブ】の真緒のエピソードにつながっていく。
・巴 日和,登場
Eveのリーダーである巴 日和は,その名のとおり太陽のように明るく,常に過剰なほどハイテンションな人物だ。“貴族”らしく周りの人間をやや下に見ている発言もするが,まったく悪意が感じられないので,不思議と憎めない。
彼はかつて夢ノ咲学院に通っており,英智や青葉つむぎ,乱 凪砂とともにfineとして活動していた(いわゆる“旧fine”)。その旧fineが五奇人の1人である日々樹 渉と対決した際,北斗は渉の助っ人として謎の怪人ホッケーマスクになりステージに上がっていた(「!」【追憶*集いし三人の魔法使い】)。
日和と凪砂がfineを脱退し,七種 茨がコズミック・プロダクションに2人を勧誘する流れは「!」【駆け引き◆ワンダーゲーム】の過去パートで描かれる。
・佐賀美 陣を探すジュン
ジュンは夢ノ咲学院に来校後,教師の佐賀美 陣を探す。【サマーライブ】で詳細な描写はないが,ジュンの父は元アイドルで,当時のスーパーアイドルだった陣の“噛ませ犬”として業界に使い捨てられてしまった過去がある。そのため,ジュンは陣を見返したいという想いがあったのだ。
その後,ジュンと陣が実際に会うストーリーは「!」漣ジュンアイドルストーリー「呪いの落胤」を参照。さらに後,とある企画で一時的にアイドルとして復活した陣と,ジュンがステージで対面する物語は「!」メインストーリー第三部「Sagaシリーズ」の後編【Saga*ぶつかり合うリバースライブ】で描かれる。
・氷鷹北斗のモノローグ
日和とのレッスンで彼の高い実力を目の当たりにし,自らの未熟さを痛感して考え込んでしまう北斗。この場面は,「!」メインストーリー第一部のモノローグを彷彿とさせる。日和と北斗はどちらも裕福な家庭の生まれでありながら,北斗のほうは「誰が相手でも対等でありたい」タイプなため,意見が衝突してしまうのかもしれない。
このとき日和は北斗に「教え甲斐がない」という印象を抱くが,かつて北斗が演劇部に入部を希望した際も,日々樹 渉が「演劇の才能はまったくありません」とこき下ろしていたことがある。北斗は芸能界のサラブレッドだが,それに頼らぬ“努力の人”であることが分かるエピソードだとも言える。
・零と英智
【サマーライブ】本番,Trickstarを応援しにきた英智と零。この英智のセリフに対して零は,「『先輩』などと、他人行儀じゃのう」「気安く『零くん♪』と呼んでも構わんぞい」と応えるが,実は昔,逆の意味で彼らの印象的なやりとりがあった。
そのときは英智が「朔間先輩」と呼びかけて零を注意したのだが,零は「あはは。気安く話しかけてんじゃね〜ぞ、根暗野郎」と応えるのである(「!」【追憶*集いし三人の魔法使い】)。なんという殺伐さ……! 2人は「五奇人」と「五奇人を討伐した側」として因縁があったのがその理由だが,【サマーライブ】では2人とも良き“保護者”としての姿を見せてくれる。ちなみに現在の彼らは,星奏館という寮の同じ部屋で,新人アイドルの白鳥藍良とともに3人で生活している。
・プロデューサーに向けた零の“苦言”
英智が「彼がこんなふうに厳しくお説教するのは珍しい」と言うとおり,このシーンでは零がかなりの長台詞で「なぜTrickstarのそばにいてやらなかったのか」とプロデューサーを非難する。アプリのストーリーにおけるTrickstarの革命は“プロデューサーがいなければ成し得なかった”ものとして描かれており,いわばプロデューサーは“5人目のTrickstar”だったのだ。
これまではどちらかというと英智がムチ,零がアメのような立場である印象が強かったこともあり,ここでの零の言葉は非常に重い。
・“ワイルドハイエナ”漣ジュン
Eveとして明るく爽やかなパフォーマンスを見せながら,ジュンの内側では燃えるような闘志が渦巻いている。まさに彼のキャッチコピーである「ワイルドハイエナ」というイメージ通りだ。ちなみに,(作中の)今年度になってから,ジュンが舞台でハイエナの王子役をオファーされ,それを受けるストーリーがある(【スカウト!ケモノサバイバル】)。
・遊木 真の覚醒
Eveの戦略に嵌められたTrickstarは,【サマーライブ】の“主役”を奪われてしまう。だが真は,ジュンたちの手腕に感心し「完敗だ」と認めながらも,Trickstarの底力を誇ってみせる。真はメンバー一人一人の名前を挙げ,彼らがいかに素晴らしいアイドルかを熱く語り,自分も「命懸けでやるのは、けっこう得意なんだ」「僕は僕から、もう逃げない」と覚悟を決める。
この真の一連のセリフは極めて痛快で,零が真の高い才能を認めていた言葉を思い出す。外の世界から来たライバルに向かって堂々と宣戦布告したのが,いつも自分を足手まといだと言っていた真だというところも熱い。
・日和という存在
日和はTrickstarとの共演を経て,彼らを“凝縮されてより強固になる宝石”と評する。結果はともかく【サマーライブ】が非常に爽やかな幕切れなのは,日和の存在も大きいように感じられる。
終盤でもう1つ印象的だったのは,ライブが終わった後,日和が買ったおもちゃを欲しがるスバルに対して「自分で見つけて、選んで買うといいね」と答えたところだ。おもちゃしかり,相方のジュンしかり,ジュンと一緒に拾った犬のブラッディ・メアリしかり,日和は自ら選んだ尊いものを大切にし,愛し続ける人なのだろう。
そして物語の最後に,【サマーライブ】でのEveの戦略は,凪砂の相方(=七種 茨。【サマーライブ】公開当時は乱 凪砂と茨のビジュアルや詳しい情報は明かされていなかった)であったことが明かされる。そのAdamとTrickstarが対峙するストーリーが,次の【オータムライブ】だ。
「軌跡★電撃戦のオータムライブ」
初公開:2017年10月15日〜
――あらすじ ※アプリ内より引用――
秀越学園主催の【オータムライブ】にゲストとして参加することになった「Trickstar」。一週間、秀越学園でレッスンを重ねながら「Adam」と交流していくが、「Eve」とは異なる思惑に翻弄される……。<全30話/シナリオ:日日日>
秀越学園主催の【オータムライブ】にゲストとして参加することになった「Trickstar」。一週間、秀越学園でレッスンを重ねながら「Adam」と交流していくが、「Eve」とは異なる思惑に翻弄される……。<全30話/シナリオ:日日日>
◆【オータムライブ】の見どころを解説
・「あんステ」でもおなじみ「ジェノサイド学園」
Adamが通う秀越学園にやってきたTrickstar。ここは休日でも賑やかな夢ノ咲学院とは正反対の静けさで,「トップエリートのみが通う学び舎」という雰囲気なのだという。秀越学園は玲明学園と同じアイドル事務所(コズプロことコズミック・プロダクション)が母体となっており,系列校のなかでもとくに優れた「特待生」のみが在籍している超エリート校らしい。
ちなみに,先ほど言及した【追憶*遊色が奏でるオブリガード】のなかで,玲明学園は夢ノ咲学院よりも学費が安く,アイドルを志していたジュンが夢ノ咲ではなく玲明学園を選んだのは,それが理由だったと語られている。
・七種 茨,登場
北斗が「何か思っていたよりグイグイくる」「妙に腰が低い」と驚くとおり,クールそうな見た目とは裏腹な態度の茨に,登場当時は多くのプレイヤーが驚いたものである。彼の最初のストーリーである「!」七種 茨アイドルストーリー第一話などは,まさに立て板に水,テレビショッピングかな? と思うほどのマシンガントークを聞かせてくれる。
彼の口癖とも言える「突撃、侵略、制覇」や敬礼ポーズは「軍隊っぽいところにいた」のが理由だというが,その当時の話は「!」【スカウト!ギャング】や【スカウト!前線の番犬】で描かれている。
・アイドル事務所「コズミック・プロダクション」
「あんスタ」はアイドルたちの物語だが,アイドル事務所として名前が登場したのはコズプロが初である。これは夢ノ咲学院自体が事務所としても機能していたため,アイドルたちが外部の事務所に所属する必要がなかったからだ(ただしモデル活動については別の場合もある)。
今年度(作中)からは,アイドル全員が事務所所属となっている。コズプロのほかには,スターメイカープロダクション(スタプロ),リズムリンク(リズリン),ニューディメンション(ニューディ)という事務所が登場している。
・乱 凪砂,登場
スバルたちが茨からコズプロに入所するよう勧誘される一方で,真緒は凪砂と出会う。凪砂から歌って踊ってみせるよう命じられて応える真緒だったが,凪砂には「自分が星だって勘違いした憐れな懐中電灯の光」と言われてしまう。
この当時の凪砂は今よりずっと捉えどころのない人物で,何を考えているのか分からない怖さがあった。どんなことでも器用にこなし,皆が頼りにする真緒がショックを受ける姿に,読み手もまた動揺したことをよく覚えている。
・青葉つむぎの魔法の言葉
【オータムライブ】は,つむぎと伏見弓弦の“ナイスアシスト”ぶりも注目ポイントだ。このシーンでのつむぎは,真緒に厳しい言葉を放った凪砂のフォローをするとともに,真緒に寄り添った言葉をかける。ここでのセリフはその場限りの慰めではなく,落ち込んでいた真緒にとっても素直に納得できるものだったのではないだろうか。
また,「!」【ノエル*天使たちのスターライトフェスティバル】での筆者の好きなセリフは,以下の画像を見てもらいたい。つむぎの言葉には,相手の心にじんわり沁みていくような優しくて不思議な魔力があると思う。それこそが彼の使う魔法の1つなのだ。
・凪砂の生い立ちと「ゴッドファーザー」
Adamを調査するため,つむぎと真緒は日和から凪砂に関する情報を得る。凪砂の生い立ちをごく簡潔にまとめると“「原始のスーパーアイドル」と呼ばれ,引退後は「ゴッドファーザー」と呼ばれるアイドル界の今は亡き重鎮が,秘密裏に育てていた少年が凪砂だった”といったところだろうか。
このゴッドファーザー周りの話は,後に「!」メインストーリー第三部【Saga*かけ上がるレインボーステージ】で佐賀美 陣の口から「語り継いでいくべきアイドル史」として明かされ,さらにその後いくつものストーリーに登場してきた。
今年度の物語であるメインストーリー第二部「SS編」にも深く関係があり,ゴッドファーザー周辺には「門番」「神父」「使徒」といった関係者がいたことも明らかとなっている。筆者の私見だが,凪砂とゴッドファーザー関連については今後も物語が続いていくような気もしている。
・芸能界の大御所,北斗の両親
現役トップアイドルである北斗の父は,玲明や秀越などの系列校で講師も務めている。また,北斗の母は数々の賞を総なめにしてきた女優だ。この2人の持つ影響力は,【オータムライブ】で大きく作用することになった。
このときはまだ名前が明かされていなかった北斗の父・氷鷹誠矢は,「!」メインストーリー第三部【Saga*ぶつかり合うリバースライブ】で新キャラクターとして登場。日和とジュンとともにLilithという臨時ユニットを結成,北斗が所属していた臨時ユニットのRain-bows(メンバーは佐賀美 陣,守沢千秋,氷鷹北斗,姫宮桃李)のライバルとなった。
北斗の母は現在も作中に名前や姿は出ていないが,日々樹 渉が夢ノ咲学院を卒業後,彼女の所属する劇団に入団したことが明かされている(「!」【Link♪ここから始まるシンフォニア】より)。
・影の立役者,伏見弓弦
つむぎとともに,【オータムライブ】の影の立役者と言えるのが伏見弓弦だ。弓弦は,今回のTrickstarのライバルであるAdamの茨とともに幼少期に同じ軍事施設にいたことがある(当時,茨は弓弦を「教官殿」と呼んでいた)。原作では“見えない敵”としてお互いを強く意識していた様子だが,「あんステ TtM」では2人の絡みが見られることも,舞台版の大きな見どころの1つと言えるだろう。
余談だが,【オータムライブ】で弓弦がTrickstarについて「(旅館で)枕投げなどをしていたらしばき倒せるように腕まくりをしていた」と言うセリフがある。しかし,このあと彼らが行った修学旅行では,弓弦も皆とともに枕投げに興じるシーンがあった(「!」【満喫♪秋の修学旅行】)。高校生らしい弓弦の姿が見られる,比較的珍しい場面である。
・演技の才覚を発揮した真
【サマーライブ】で逃げない覚悟を決めた真の,再びの活躍。彼は秀越学園で情報を集めるため,下っ端のふりをして「特待生」ではない生徒と交流していたのだという。演技力が評価された一場面だが,真はその後,fineとTrickstarが出演するカンフー映画「桃源郷偶像拳」で主役に抜擢される。ちなみに準主役は弓弦である(【銀幕死闘の/桃源郷偶像拳】より)。
・衣更真緒の“リベンジ”
【サマーライブ】の真同様,【オータムライブ】で“覚醒”したのが真緒だ。真緒は周りから何かと頼りにされる人物だったが,自分では「本当はずっと不安だった」「普通なことが上手にできる、俺が重宝されてるだけ」と感じていた。だがここで彼も,Trickstarの仲間たちのようになりふり構わず戦いたい,大好きな少年漫画の主人公のように輝きたいと想いを新たにするのである。この決意には胸を打たれると同時に,大きな力をもらえた読者も多いのではないだろうか。
・立ちはだかる強敵,Adam
Trickstarの予想以上の健闘に驚きつつも,まだまだ余裕なAdamの2人。茨は極めて好戦的な姿勢を見せ,Trickstarを倒すと息巻く。そして凪砂もまた,自らを「人の世を終わらせる、終末の獣でいい。貪欲に、すべてを食い尽くそう」と言う。
ストーリーにおける明確な“主人公の敵”としてのAdamは,これまでの「あんスタ」には存在しなかった魅力に溢れている。敵やライバルは強ければ強いほど物語は面白くなる,というのは本当にそのとおりだと感じられるシーンだ。
そしてAdamとEveが「Eden」となり,Trickstarとの決戦の舞台は「SS」へとなだれ込んでいく。
【ウインターライブ】
原作アプリストーリーの見どころを解説
「奇跡☆決勝戦のウインターライブ」
初公開:2017年12月31日〜
――あらすじ ※アプリ内より引用――
【スタフェス】が終わり、いよいよ本番の『SS』を控えた『Trickstar』。残された数日の中、各々の時間を過ごし士気を高めていくが、学院の近くにあるショッピングモールで『Eden』がライブを行う情報を聞き……。<全45話/シナリオ:日日日>
【スタフェス】が終わり、いよいよ本番の『SS』を控えた『Trickstar』。残された数日の中、各々の時間を過ごし士気を高めていくが、学院の近くにあるショッピングモールで『Eden』がライブを行う情報を聞き……。<全45話/シナリオ:日日日>
◆【ウインターライブ】の見どころを解説
時期は年末,ついに「SS」がスタートする。ここでは,舞台で初めてこの物語に触れる人のため,ストーリーのネタバレを避けつつ(と言ってもなんとなく展開は読めてしまうと思うが……),この物語のメインであるTrickstarとEdenについて,見どころを交えながら語っていきたい。
なお,これから上演される舞台版では,原作ストーリーとは異なる展開が出てくる可能性もあるのでご注意を。
・Trickstarについて
「SS」とは,プロアマ問わず全国各地からアイドルたちが集結し,日本一のアイドルを決める催しである。つまり,すべてのアイドルやアイドルの卵たちにとっての憧れの地といえる。本来の夢ノ咲学院代表はfineだったが,Trickstarが革命を起こしたことで,“まだ何者でもなかった”彼ら自身が,すべてのアイドルが目指す場所で戦うことになった。
Trickstarは,春の革命後も努力や挑戦を続け,次第に力をつけていった。そして「SS」の直前に行われた【スタフェス】で,なんと「SS」の出場権をいったん返却。【DDD】のときの英智のように,【スタフェス】優勝ユニットが「SS」に出場できるルールにしてほしいと頼み込んだ。
【スタフェス】は,クリスマスに夢ノ咲学院のすべてのアイドルが参加するドリフェスだ。これはTrickstar自身が夢ノ咲学院の代表にふさわしいと証明し,胸を張って「SS」に出場するための決意表明だった。
【サマーライブ】と【オータムライブ】では,真と真緒が「もう逃げたりしない」と覚悟を決めた。個人的な解釈ではあるが,このときの「『SS』から逃げないための宣言」は,Trickstarのリーダーである北斗の覚悟そのものだったようにも感じられる。
自らが作った高いハードルを乗り越え,「SS」へと向かったTrickstar。【ウインターライブ】ではメンバー4人の活躍はもちろんだが,それぞれの先輩との関係性も大きな見どころの1つだと筆者は考えている。
氷鷹北斗と日々樹 渉,明星スバルと守沢千秋,遊木 真と瀬名 泉,衣更真緒と蓮巳敬人……。Trickstarにとっての先輩である3年生は,かつての夢ノ咲学院で栄光や挫折を味わった者たちだ。もちろん「先輩」と呼べるアイドルは彼らだけではないが,あの苦境を知る者たちだからこそ,これからの未来を担う後輩たちに向ける想いが伝わり,胸を打つ。
最初の春の革命から「SS」に至るまでのストーリーで,Trickstarの4人はそれぞれに悩み,もがきながら成長してきた。そのなかで唯一,誰にも文句がつけられないくらいの“(アイドルの)天才”として活躍してきたのが明星スバルだ。だが【ウインターライブ】では,誰もが信じていたスバルの“強さ”が,ある1つの弱点を突かれたことにより,脆く崩れてしまったのだ。
・Edenについて
前述のとおり,Edenの4人は「あんスタ」初の他校キャラクターとして物語に登場した。実はこの当時の彼らは,いわばゲスト的な扱いであり,「キセキ」シリーズ公開時点では今後のストーリーに絡むかどうかは未定とされていた。しかし【サマーライブ】や【オータムライブ】を読んで,その抗いようのない魅力に夢中になった読者は多かった。ひょっとしたらこの物語のなかの世界の“夢ノ咲アイドルのファン”も,ほかのアイドルとは異なる個性に心が惹きつけられ,「彼らをもっと知りたい」という気持ちにさせられたのではないかと思う。
おそらく,ファンの目から見るEdenは完璧なアイドルだ。とはいえ,彼らにもここまで歩んできた人生がある。【ウインターライブ】でも彼らの背景が垣間見えるセリフが出てきたが,この当時にはまだ明かされていなかったストーリーなどから,Edenの4人の過去をかいつまんで紹介したい。
かつての夢ノ咲学院で,英智とつむぎとともに革命の一端を担った凪砂と日和。歴史の勝者となったはずの旧fineだが,彼らもまた深く傷つき疲れ果て,限界を感じていたことが分かる。
ジュンが物心つくころには,元アイドルの父はもうかなり心が壊れてしまっていたのだという。ほかの子供が遊んでいる時間にもひたむきに努力を続けていたジュンだが,玲明学園で日和に出会うまでは辛く苦しい日々を送っていた。
茨については,とくに今回の【ウインターライブ】で出生について語った一連のセリフを見てほしい。地獄の幼少期を送ったと語る彼は,自ら「悪人になることを選んだ」のだと話した。生い立ちも遺伝も関係なく,自分が手にしたものはすべてが自分で望んで得たものだという言葉には,決して揺らぐことのない彼の矜持を感じる。
ここまでの彼らは非常に“個”のイメージが強く,実際彼らも自分自身だけを信じて生きてきたようにも感じられる。それだけの胆力があり,ステージやファンの前ではアイドルとして理想とする姿を完璧に演じられていたからこそ,Edenは強いユニットになったのではないだろうか。
そんな4人だったが,【ウインターライブ】では,ふとしたきっかけでお互いの心のうちを明かす場面がある。それは血の通う人間同士としての距離が縮まった瞬間だったのかもしれない。彼らの間に生まれたばかりのあたたかい空気は,まだ少し照れくささも見え,微笑ましいものだった。
今,このときのEdenの4人の想いを想像すると,あまりにも胸にくるものがある。【ウインターライブ】はTrickstar目線で進んでいたストーリーではあるが,あらためて読み返してみると,Edenの過去が明かされたことによって,物語もより深みを増したように思える。
・明星スバルというアイドル
そんな2組のユニットが雌雄を決するステージで,スバル(というより,スバルの亡き父)をめぐる事件が起きる。これもまた,当時の読者には大きな衝撃を与えるものだった。その内容や,ここからどうやってアイドルたちが問題を解決していくかについて詳細を書くことは避けるが,ここではスバルの1年前――彼がTrickstarの仲間に出会ったころのエピソードに触れていきたい。それが描かれていたストーリーは,「!」【追憶*春待ち桜と出会いの夜】。舞台では,「『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』〜Night of Blossoming Stars〜」でも綴られた物語だ。
我々読者が,明星スバルという人物が見た目通りの明るくて元気なだけのアイドルではないと気付かされたのは,「!」メインストーリー第一部でのセリフだった。彼は1年生のころ,クラスでは浮いた存在だった。泣いているより笑っているほうがいいからと,そうした行為を他人が重荷に思うこともあると気付かずにはしゃいでいたからだ。けれど彼もまた,自覚をしていないだけで深く傷ついていたという。そのころの実際の様子やスバルの心情が,【春待ち桜】ではより詳しく描かれていたのである。
どう生きればいいのか分からないまま,孤独に過ごしてきたスバル。そんななか,何かに導かれるようにして現れたのが北斗,真,真緒の3人だった。桜の木の下で偶然顔を合わせた4人は,その後の秋に再び出会い,初めて一緒にステージに上がる。ここでスバルは,初めて誰かと肩を並べて歌う喜びに気付くのだった。
以前,別の記事に書いたこともあるが,筆者はTrickstarの4人が全員“他人から羨ましがられるような何か”を持っているものの,逆にそれが己を苦しめ,孤独を感じる原因にもなっていたように感じていた。だからこそ彼らが出会ったとき,無条件にその“欠けていた部分”を埋めあえる感覚があったのではないかという解釈だ。
お互いを補い合い,高め合って成長し,彼らは確かな絆を手に入れた。そして,【ウインターライブ】の事件でスバルが立ち止まってしまったとき,何よりも大切な存在として,3人は彼に手を差し伸べたのだと思う。
ステージでのスバルの告白シーンからエンディングへの流れは,【ウインターライブ】でも極めて印象に残るハイライトだ。この結末を迎えられたのは,もちろんTrickstarだけの力ではない。そこにいたアイドルたち全員が笑顔と輝きを望んでいたからこそ,それを取り戻すことができたのだろう。
・おまけ:スバルと凪砂の会話
最後にもう1つ今作での見どころとして,ラストの凪砂とスバルの会話を挙げておきたい。特殊な生まれだった凪砂は,「アイドルになること」がそれまでの人生そのものだったとも言える。だが他人からは「アイドル以外にも他にも楽しいことはある」と言われ,凪砂はそれがよく理解できずにいた。それを聞いたスバルが凪砂の純粋さを「羨ましい」と心からの言葉をかけると,凪砂は「羨ましいなんて言われたの、初めてかも」「可哀想だって言わないでくれてありがとう」と答える。環境こそ違えど,このときの彼らの心に浮かんだ想いや感覚は,きっと2人にしか分からないものだったのではないかと思う。
そして凪砂はスバルに対し,「君が強く正しい、良い子で救われた。私も、父も、たぶん君のお父さんも」と,スバルの輝きに救われた人がたくさんいたとも話した。
あらためてこの物語を読み,凪砂のスバルへの言葉を目にしたとき,愛や共感や励ましの心といった“深さ”を感じ,思わず涙が出そうになった。一緒に歩んできた仲間ではなく,けれど他人でもなく,スバルの境遇をよく知る凪砂だからこそ言えた言葉のように感じられたからだ。
それから,最後の最後にもう1つ。後日談というわけではないが,この【ウインターライブ】を踏まえたうえでぜひ読んでいただきたいのが【スカウト!荒野の花】だ。これは【ウインターライブ】からおよそ半年後,新年度を迎えた春ごろのストーリーとなっている。スバルの亡き父のことや,凪砂が経験した過去のことなど,久しぶりに会った彼らが2人だけで交わす会話の空気を,ぜひ多くの人に知ってもらいたい。
未来とは今起きている出来事によって作られるが,今の誰かの行動が,過去の誰かを救うこともある。そして,それこそが「奇跡」と呼ばれるものなのだろう。そんなことをあらためて感じた【ウインターライブ】だった。
「キセキ」シリーズ三部作の解説は以上となるが,この連載では,今後も公式のイベントや企画に合わせた過去ストーリーの紹介,解説を行っていくので,ぜひ新しい物語などを楽しむための参考としてほしい。
第32回記事もお楽しみに!
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