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「Radeon VII」レビュー。世界初の「7nm,16GB HBM2,1TB/s」なゲーマー向けGPUはRTX 2080に勝てるか
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印刷2019/02/07 23:00

レビュー

世界初の「7nm,16GB HBM2,1TB/s」なゲーマー向けGPUはRTX 2080に勝てるか

Radeon VII
(Radeon VIIリファレンスカード)

Text by 宮崎真一


 日本時間2019年2月7日23:00,AMDの新世代GPU「Radeon VII」(ラデオン7)が正式発表のタイミングを迎えた。コンシューマ向けとしては世界で初めて,7nm FinFETプロセス技術を用いて製造されるGPUを搭載したグラフィックスカードが,いよいよ市場に登場するわけだ。
 AMDによると,搭載グラフィックスカードの国内発売は2月8日19:00に始まるという。

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CES 2019のAMD基調講演より。条件付きながらRadeon VIIはRTX 2080と互角以上に立ち回れるとAMDはアピールしていた
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 「4K解像度,かつゲーム側のグラフィックス設定を最大にしたとき」という条件付きながら,競合製品である「GeForce RTX 2080」(以下,RTX 2080)より高いフレームレートを発揮できるというのがAMDの謳い文句だが(関連記事),それだけに性能が気になるという読者も多いと思う。

 2月4日の記事でお伝えしているとおり,4GamerではRadeon VIIのリファレンスカードを入手できたので,さっそく,テスト結果をお伝えしていきたい。注目はRTX 2080との勝負だが,果たしてAMDがアピールするとおりの結果は得られるだろうか。


GPUアーキテクチャは第1世代Vegaを踏襲するものの,メモリバス帯域幅はついに1TB/sへ到達


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 テストに先立って,Radeon VIIがどんなGPUなのかおさらいしておこう。
 冒頭でも簡単に紹介したとおり,AMDはRadeon VII,より正確にはRadeon VIIのGPUコアである「Vega 7nm」(※AMDの社内コードだと「Vega 20」)の製造にあたって,台湾TSMCの7nm FinFETプロセス技術「N7」を採用している。GPUコアの名称からも想像できるとおり,Radeon RX Vegaシリーズなどが採用しているGPUコア「Vega」(※AMDの社内コードだと「Vega 10」)の第2世代モデルに当たる。

Radeon VIIリファレンスカード。北米市場におけるメーカー想定売価は699ドル(税別)となっている
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 では,第2世代Vegaで何が新しくなったかだが,結論から言うと,採用するアーキテクチャは第5世代GCN(5th Gen. Graphics Core Next)のままであって,第1世代のVegaから変わっていない。

 なので当然のことながら,シェーダプロセッサである「Stream Processor」16基をひと固まりにして,それを4つ束ねたうえでキャッシュやレジスタファイル,スケジューラ,テクスチャユニットとセットにし,演算ユニット「Next Compute Unit」(以下,NCU)とする基本構造も同じだ。さらに言えば,「NCUを16基束ねて,CPUで言うところのCPUコア的な機能を持たせた『Shader Engine』を構成し,そのShader Engineを4基搭載した状態をフルスペックとする」という第1世代Vegaの仕様も,第2世代Vegaはそのまま踏襲している。

 シリコンダイレベルでの歩留まり向上を図るためか,Radeon VIIではNCUが合計4基無効になっているため,Vega 7nmおよびVegaのフルスペックだとNCU数は64基,Stream Processor数が4096基となるところ,Radeon VIIでは順に60基,3840基となる点は押さえておきたい。つまり,単純な「プロセッサの規模」で話をするなら,第1世代Vegaのフルスペックとなる「Radeon RX Vega 64」のほうがRadeon VIIより上ということだ。

Radeon VIIのブロック図(※筆者推測)。こんな感じでNCU 4基が無効になっているはずだ。特定のShader Engineで2基以上無効,その代わり別のShader Engineでは1基も無効になっていないといった実装になる可能性もあるが,並列性を考えるなら,Shader Engineあたり1基無効化のほうが理に叶っていると考えている
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 では,Vega 7nmは何が新しいのかというと,1つは7nmプロセスへの微細化がもたらす,小さなダイサイズだ。14nm FinFETプロセス技術を採用して製造される第1世代Vegaの場合,125億トランジスタを495mm2のシリコンダイへ集積していたのに対し,Vega 7nmは従来比で約6%多い132億トランジスタを,従来比で約67%にまで小さくなった331mm2のシリコンダイへ集積できている。
 結果として,面積あたりの性能は1.8倍となり,さらにGPUパッケージ上の空きスペースが増したことを受け,容量4GBのHBM2(High Bandwidth Memory 2)を従来比で2倍の4基搭載できるようになった。

RX Vega 64とRadeon VIIにおける最大の違いがまとまったスライド。7nm化でVega 7nmのダイサイズは第1世代Vega比で約67%となり,これによってHBM2を4基搭載できるようになったというのが非常に大きい
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 HBM系メモリでは,積み上げた(=スタックさせた)メモリシリコンに貫通ビア(Through Hole Via)と呼ばれる穴を開けて一気に配線することでインタフェースを確保できるが,Vega系で採用するHBM2では1スタックあたり1024bitインタフェース,容量4GBを実現する。そのため,HBM2のスタックをオンパッケージで2基搭載する第1世代Vegaは2048bit,容量8GBなのに対し,4基搭載するVega 7nmでは4096bit,容量16GBとなっているのだ。

4K解像度では10GB超級のグラフィックスメモリ容量が必要になるケースがけっこうあって,そこで16GBというRadeon VIIのメモリ容量が活きるというスライド
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 さらに,7nmプロセス技術の採用でメモリコントローラのクロックにプラスの影響があったのだと思われるが,メモリクロックもRadeon RX Vega 64の1890MHz相当からRadeon VIIでは2000MHz相当に上がっており,メモリバス帯域幅はRadeon RX Vega 64の484GB/sから2倍以上の1024GB/sへと,大幅に向上している。コンシューマ向けグラフィックスカードでメモリバス帯域幅が1TB/sの大台に達したのは,もちろん今回が初めてだ。

Radeon VIIはゲーマー向けGPUとして初めてメモリバス帯域幅が1TB/sに達した
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 なお,やや余談気味な話として触れておくと,AMDは第1世代Vegaを発表したとき,HBM2を従来型のグラフィックスメモリとは区別し,広帯域幅のキャッシュ(High Bandwidth Cache,以下 HBC)であると大々的にアピールしていた。なのでVega 7nm世代でもHBM2はHBCとして機能するはずなのだが,AMDはHBCという呼び名をアピールせず,一部ではただ「メモリ」とだけ呼んでいたりする。
 筆者の推測ではあるが,HBCという呼び名が“後退”したのは,エンドユーザーの間で浸透しなかったからではないだろうか。

橙色の点がGPU用の温度センサーだ。なお,HBM2用の温度センサーも別途搭載するが,このイメージ上では描画されていない
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 ところで,先の説明でトランジスタ数が増えたのはなぜか疑問に思った人もいるだろうが,AMDはその回答(の,おそらく1つ)として,Vega 7nmで第1世代Vegaと比べて2倍の数の温度センサーをシリコンダイに統合しており,より緻密な温度管理を実現できるようになったことを挙げている。

 いわく,7nmプロセス技術の採用と進化した温度管理によって,Vega 7nmではコアクロックの引き上げを果たしているのとのことだ。Radeon VIIの場合,ベースクロックこそ1400MHzと,Radeon RX Vegaシリーズの最上位モデルである「Radeon RX Vega 64 Liquid Cooled Edition」(以下,RX Vega 64 LCE)の1408MHzよりは若干下であるものの,ブーストクロックは1750MHzと,RX Vega 64 LCEの1668MHzに対して82MHz高いが,これには温度管理技術も寄与しているということなのだろう。

Radeon Settingsの「ハードウェア」タブを開いたところ。「コアのクロック」はブースト最大クロックに準じた1802MHzとなっている
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 なお,AMDは今回,Radeon VIIのブースト最大クロックが1800MHzに到達するとアピールしているのだが,これについては1点注意が必要だ。というのも,1800MHzのブーストクロックに達するのはレンダリングやトランスコードといったクリエイティブな処理にGPUを使うときだけで,ゲームではそこまで上がらないそうだ。
 実際,後述するテスト環境で「Radeon Settings」の「WattMan」でRadeon VIIリファレンスカードの動作クロックを追ってみても,1769MHzまでしか上がらなかった。

WattManで,テスト中におけるRadeon VIIの動作クロックを追ったところ。橙色の折れ線がGPUのコアクロックを示すが,そのピークは1769MHzだった
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 なお,そんなRadeon VIIの主なスペックを,RX Vega 64 LCEとRTX 2080,そしてGeForce GTX 10シリーズの最上位モデルで,3製品と同じく発表時点の北米市場におけるメーカー想定売価が699ドル(税別)となる「GeForce GTX 1080 Ti」(以下,GTX 1080 Ti)とともにまとめたものが表1となる。

※1 Texture/Processor Clusterの略
※2 Founders Editionはブーストクロックが1800MHz,FP32が10.6 TFLOPS,FP16が21.2 TFLOPS,FP64が0.33 TFLOPS
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 細かい話をしておくと,当初AMDはRadeon VIIの倍精度浮動小数点演算性能値(FP64)を0.86 TFLOPS(シェーダプロセッサ数比で16分の1)としていたが,最終製品ではこれを3.46 TFLOPS(同4分の1)へ引き上げている。これはフィードバックに基づく仕様変更で,最終製品はすべてこの仕様で出荷になっているそうだ。
 ちなみにAMDは「ピークで3.52 TFLOPSを実現できる」としているのだが,その根拠までは語っていないため,表ではスペックから求められるほうを記載した次第である。


カードはRTX 2080のFounders Editionとほぼ同サイズ。外観はRX Vega 64 LCE直系!?


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 続いてはRadeon VIIリファレンスカード自体を見ていきたい。
 カード長は実測で約268mm(※突起部除く)。RX Vega 64 LCEだと同272mmなので,それより約4mm短くなった計算だ。RTX 2080 Founders Editionが同267mmなので,ほぼ同サイズと言ってしまっていいと思う。

参考として,こちらがRX Vega 64 LCE
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 GPUクーラーは2スロット仕様で,80mm角相当のファンを3基搭載する。GPUクーラーがアルミニウム製のカバーで覆ってあって,カバーが鈍く光るところと,カード側面の「RADEON」ロゴ部,そしてカード後方にある「R」の文字入りブロックがいずれも通電時に赤く光るところからは,RX Vega 64 LCEを踏襲した印象を受ける。

“アルミ感”の強い,Radeon VIIリファレンスカード。カード背面側もアルミ製の補強板がほぼ全体を覆っている
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通電させたところ。2か所が赤く常時点灯する
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補助電源コネクタは8ピン×2。両方の端子に正しく8ピンケーブルをつないでいないと動作しない
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 補助電源コネクタは8ピン×2で,これもRX Vega 64 LCEと同じ仕様になっている。ただ,RX Vega 64 LCEの場合,GPUコアの負荷状況を示すLEDインジケータ「GPU Tach」(GPUタコ)や,2基搭載するグラフィックスBIOS(以下,VBIOS)を切り換えるためのスライドスイッチ「Dual BIOS Toggle Switch」を搭載しているのだが,Radeon VIIでこれらは省略されており,カードの仕様としてはかなりシンプルである。

外部インタフェースはRX Vega 64 LCEとまったく同じ。8K解像度での映像処理を謳うのなら,DisplayPort 1.4aへの対応は実現してもよかったようには思う
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 外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b×1という構成で,こちらもRX Vega 64 LCEから変わっていない。
 AMDはRadeon VIIが持つ優位性の1つとして,広帯域幅のHBM2を活かし,8K解像度の写真や映像処理を快適に行えるとしているのだが,映像の劣化を許容しつつも8K 60Hz出力を行えるDisplayPort 1.4aには対応しない――GeForce RTX 20シリーズは対応している――ため,Radeon VIIから8K出力を行うには2本のDisplayPort出力を同期させて伝送する必要が生じる。

AMDは8K解像度での画像や映像処理でRTX 2080よりRadeon VIIのほうが高い性能を得られるとアピールしている
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 2月4日の記事でお伝えしたとおり,今回もGPUクーラーの取り外しは許可されていないため,詳細は隙間から覗き込んで確認するほかないのだが,見る限り,Vapor Chamber(ヴェイパーチャンバー)からなる広めの銅製ヒートスプレッダがGPUパッケージの上に被さり,そこから,基板全体を覆う放熱フィン部へとヒートパイプが熱を運ぶ設計になっているようなのが分かる。
 また,電源周りにもGPUクーラーのヒートシンクが接しているようだ。

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カードを側面から見たところ。GPU周りにかなり大きめの銅製のヒートスプレッダがあるのを確認できる。また,2本のヒートパイプがそこからカード後方や直上のフィン部へ伸びていた
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ファンの羽はオーソドックスなタイプのように見える。ちなみにWattManを見ると,ファンの回転数はGPU温度が50℃までが24%設定となり,そこから95℃まで,75%を上限として次第に回転数が上昇していく設定だった
こちらはAMDが公開したCG。全体ではないものの,基板の雰囲気を確認できる
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テストにはレビュワー向けドライバを利用。Adrenalin 2019 19.1.2ベースか


 テストのセットアップに入ろう。
 比較対象には第1世代Vega搭載の最上位モデルとなるRX Vega 64 LCEと,AMDが競合と位置づけるRTX 2080を用意。さらに,GeForce GTX 10シリーズとの比較も必要と考えられるため,前述のとおり,リリース時の北米市場におけるメーカー想定売価が699ドル(税別)でRadeon VIIと同じGTX 1080 Tiも用意した。
 RX Vega 64 LCEは2つのVBIOSと3つのPower Profileを持つが(関連記事),今回のテストでは,工場出荷時設定である消費電力の目安が264WとなるPrimary VBIOSを使い,Power Profileも工場出荷時設定のBalancedを選択している。

テストに用いたレビュワー向けドライバの情報がこちら
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 Radeon VIIとRX Vega 64 LCEのテストで用いたグラフィックスドライバは,AMDから全世界のRadeon VIIレビュワーに対して配布された「18.50.15.02-190122a-338443E」となる。
 「Radeon Software Adrenalin 2019 Edition 19.1.2」の「Display Driver Package」が「18.50.15.01-190122a-338455E-RadeonSoftwareAdrenalin2019」だったので,この19.1.2ドライバをベースにRadeon VIIへの対応を果たしたものという理解でよさそうだ。
 一方,RTX 2080とGTX 1080 Tiのテストには,テスト開始時点の公式最新版となる「GeForce 417.71 Driver」を用いている。

 テストにあたって,Windowsの「電源プラン」はとくに断りのない限り「高パフォーマンス」を選択。そのほかのテスト環境は表2のとおりとなる。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション22.1準拠。AMDは,ゲーム用途でのRadeon VIIについて,3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットでのゲームプレイを想定しているため,今回のテストでもこれら3つの解像度を選択した。


4K解像度で真価を発揮するRadeon VII。より低い描画負荷条件ではRTX 2080に離される場面も


 以下,スペースの都合からグラフ中に限りRX Vega 64 LCEを「Vega 64 LCE」と表記するとお断りしつつ,「3DMark」(Version 2.7.6296)の結果から順に見ていこう。
 グラフ1は「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものだ。Radeon VIIは,RX Vega 64 LCEに対して8〜16%高いスコアを示しており,とくに2560×1440ドットでのテストとなる「Fire Strike Extreme」以上で14〜16%程度高いスコアを示し,RTX 2080に対しても3840×2160ドット解像度のテストとなる「Fire Strike Ultra」で約2%高いスコアを示している点は注目に値しよう。HBM2の広いメモリバス帯域幅がしっかりとスコアに反映されているわけだ。

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 グラフ2はFire Strikeの総合スコアからGPUテストである「Graphics test」のスコアを抜き出したものになるが,ここでは高解像度帯におけるRadeon VIIの優位性がさらにはっきりと出ている。Fire Strike“無印”でこそトップの座をRTX 2080に譲るものの,Fire Strike Extremeで追いつき,Fire Strike Ultraでは逆に約6%のスコア差をつけるに至っている。
 RX Vega 64 LCEに対しては12〜17%程度,GTX 1080 Tiに対しても2〜5%程度高いスコアを示している点も押さえておきたい。

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 ソフトウェアベースの物理演算を行うため,事実上のCPUテストと言える「Physics test」のスコアがグラフ3だ。今回のテストではCPUを6コア12スレッド対応の「Core i7-8086K」で揃えているため,スコアはキレイな横並びとなっている。

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 一方,Radeon VIIでいまひとつな結果になったのが,グラフ4にスコアをまとめた「Combined score」である。「Combined test」ではGPUとCPUの両方に負荷がかかるのだが,ここでRadeon VIIはFire Strike“無印”でRTX 2080と肩を並べたものの,有利なはずのFire Strike ExtremeやFire Strie Ultraで大幅において行かれてしまう。
 Fire Strike Extremeで約80%に沈んでいるのは看過できないところだが,「2回計測し,高いほうのスコアを採用する」というレギュレーションの条件でこれなので,ここはドライバの最適化不足と見るべきかもしれない。

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 続いてDirectX 12のテストとなる「Time Spy」から,総合スコアをまとめたものがグラフ5である。
 ここでRadeon VIIは,RX Vega 64 LCEに対して12〜13%程度,GTX 1080 Tiに対しても約4%高いスコアを示した。ただし,NVIDIAはTuring世代のGPUでDirectX 12世代のアプリケーションにおける性能を改善してきていることもあり,それと比べるとGPUの世代的に古いVega 7nmを採用したRadeon VIIのスコアは83〜87%程度と,RTX 2080からは大きく離されてしまった。アーキテクチャの古さがRadeon VIIの泣きどころかもしれない。

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 それはGPUテストの結果となるグラフ6でも同様だ。Radeon VIIはRX Vega 64 LCEに対して約15%,GTX 1080 Tiに対して4〜5%程度高い結果を示し,この世代におけるトップと言っていいスコアを示す一方で,RTX 2080と比べると80〜84%程度に甘んじることとなる。

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 グラフ7はTime SpyのCPUテスト結果だが,Fire Strikeと同じく,CPUが揃っているため,こちらもスコアはきれいに並んでいる。

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 では,実際のゲームではどうか。AMDが「Radeon VIIの16GBというメモリ容量が活きる」としているタイトルの1つである「Far Cry 5」のテスト結果がグラフ8〜10だ。
 注目の3840×2160ドットだと,Radeon VIIはRTX 2080に対して平均フレームレートで約2%高いスコアを示した。2560×1440ドット以下で後塵を拝しているのは残念だが,少なくともAMDのアピールするとおりの結果が出ているのは間違いない。

 なお,RX Vega 64 LCEに対しては4〜23%程度,GTX 1080 Tiに対しては6〜26%程度高い平均フレームレートを出しており,とくに2560×1440ドット以上の条件では圧倒していると言っていい。従来世代のGPUを搭載するグラフィックスカードとしては破格のテスト結果とまとめていいのではなかろうか。

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 一方,描画負荷が低めとなっている「Overwatch」だと,Radeon VIIはその持ち味を発揮できていない。グラフ11〜13を見ると分かるように,Radeon VIIの平均フレームレートは対RX Vega 64 LCEでこそ12〜16%程度の向上を示しているものの,RTX 2080と比べると84〜92%程度に留まり,GTX 1080 Tiに対しても95〜96%程度というところに落ち着いてしまっている。
 HBM2のもたらす圧倒的なメモリバス帯域幅を活かせないタイトルだと,少々厳しい結果になるようだ。

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 それはグラフ14〜16にスコアをまとめた「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)でも同様だ。PUBGでは1920×1080ドット条件において相対的なCPUボトルネックからスコアが丸まりつつあるが,2560×1440ドット以上だとRadeon VIIはRTX 2080の77〜82%程度しか平均フレームレートを出せていない。GTX 1080 Tiに対しても「贔屓目に見れば互角」といったレベルだ。
 RX Vega 64 LCEとの比較では3840×2160ドット条件で約20%も高い平均フレームレートを叩き出しており,HBM2の有効性は確認できるので,GPUコア側の性能差が出てしまっていると見るべきだろう。

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 Overwatch,PUBGと続いてきた流れはグラフ17〜19にスコアをまとめた「Fortnite」でも同じだ。
 Radeon VIIの平均フレームレートはRTX 2080比で75〜81%程度と,まったく勝負になっていない。最もスコア差を詰めた3840×2160ドット条件でも約2割のスコア差というのは厳しい。

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 ここまでとは若干異なるスコア傾向を示したのが,グラフ20〜22の「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)である。Shadow of Warでは高解像度テクスチャパックを適用することでグラフィックスメモリにかかる負荷を上げてあるのだが,こうなってくるとRadeon VIIはやはり強く,平均フレームレートを見ると,RX Vega 64 LCEに対して16〜33%程度,GTX 1080 Tiに対しても14〜20%程度高いスコアを示した。RTX 2080にはそれでも勝てていないが,93〜96%程度なのだから,少なくとも上で紹介したeスポーツタイトルのような惨敗感はない。

 ただ,それだけに「1TB/sのメモリバス帯域幅を誇るRadeon VIIのスコアはもう少し伸びてもいいのではないか」とも思う。RX Vega 64 LCEの最小フレームレートが極端に低いあたり,Shadow of WarにおけるHBM2の扱いには何らかのボトルネックが生じており,それが理由でRadeon VII(とRX Vega 64 LCE)のスコアは伸びきっていないという印象を受けた。

画像集 No.040のサムネイル画像 / 「Radeon VII」レビュー。世界初の「7nm,16GB HBM2,1TB/s」なゲーマー向けGPUはRTX 2080に勝てるか
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 続いてグラフ23は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)のスコアをまとめたものだ。FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチはGeForceに最適化されているため,Radeon勢にはどうしても不利な戦いになるのだが,相対的なCPUボトルネックによってスコアが丸まる1920×1080ドット条件を除くと,Radeon VIIはRTX 2080比で約90%,GTX 1080 Ti比で98〜99%程度というスコアになった。
 RX Vega 64 LCEと比べれば圧倒的に「勝負になっている」のだが,最適化という壁を打ち破るまでには至っていない。

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 グラフ24〜26は,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートの結果となる。

 平均フレームレートは総合スコアを踏襲する格好だ。最小フレームレートを見ると,RTX 2080が3840×2160ドットで50fps弱のスコアを示す一方で,Radeon VIIは40fpsに届かなかった。

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 「Project CARS 2」のテスト結果がグラフ27〜29だ。ここでRadeon VIIは3840×2160ドット条件において意地を見せ,平均フレームレートでRTX 2080比約97%,GTX 1080 Ti比約103%というスコアを示している。
 HBM2の圧倒的な帯域幅を活かせる状況だとRadeon VIIはそのポテンシャルを発揮し,競合製品といい勝負ができるようになるというわけだ。

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7nmプロセスの恩恵か温度管理の恩恵か,消費電力は安定。GPU温度も低い!?


 7nmプロセス技術ベースで製造されるVega 7nmを採用する一方で,20nmプロセス技術を採用して製造されている(と思われる)メモリスタックの数が2倍になっているため,Radeon RX Vega 64と比べてどうなるのかを読みにくいRadeon VIIだが,実際の消費電力はどの程度なのか。まずは「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移を追ってみることにした。

 その結果がグラフ30だ。下に示したグラフ画像はクリックすると横に引き伸ばした拡大版を表示するようにしてあるので,ぜひそちらも合わせてチェックしてもらえればと思う。端的に述べて,RX Vega 64 LCEの主張が激しすぎる結果となっているが,それと比べると,Radeon VIIのスコアはずいぶん落ち着いている印象だ。
 400Wを超える回数をカウントしてみると,RX Vega 64 LCEが59回なのに対してRadeon VIIは5回,そしてRTX 2080は0回。350W超のカウントだと順に98回,24回,5回なので,「RTX 2080よりは消費電力が高いものの,消費電力が大きく跳ね上がる場面はRX Vega 64 LCEと比べて圧倒的に少ない」といったところである。

※グラフ画像をクリックすると横に引き伸ばした拡大版を表示します
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 グラフ31は,グラフ30における中央値をまとめたものだが,ここではRadeon VIIがRX Vega 64 LCEから約11W低いだけで,それほど大きな違いが出ていないことに注目してほしい。おそらくは搭載する温度センサーを活用したGPUの管理がうまくいっており,それゆえに消費電力の変動が少なく,RX Vega 64 LCEと比べて圧倒的に安定しているということなのだろう。
 なお,電力ユニットに対しては,変動の少ないRadeon VIIのほうがハードルは圧倒的に低い。

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 参考までに,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の最大消費電力も計測することにした。
 テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらにゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ32だ。

 先ほどRadeon VIIの消費電力は変動が少ないと述べたが,それはピーク消費電力が低いというのと同義であり,実際,ここでアプリケーション実行時におけるRadeon VIIとRX Vega 64 LCEとのスコア差は97〜120W程度にまで開いている。Radeon VIIの最大消費電力はそれでもRTX 2080と比べると20〜44W程度高いが,RX Vega 64 LCEと比べれば劇的な改善である。

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 最後にGPUの温度も確認しておこう。ここでは,温度を約24℃に保った室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置く。そのうえで,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,「GPU-Z」(Version 2.16.0)から温度を取得することにした。
 参考までにだが,事前にWattManとGPU-Zで得られる数値に差がないのは確認済だ。

 前述したように,Vega 7nmと第1世代Vegaでは搭載する温度センサーの数が異なる。また競合製品とはGPUのアーキテクチャも搭載するクーラーも異なるため,横並びの比較に意味はほとんどない。その点を踏まえたうえでグラフ33を見て行くと,Radeon VIIの温度は高負荷時でも60℃台とかなり低い。最初は何かの計測ミスかと思ったほどだが,何度計測し直しても同じようなスコアになったので,GPUクーラーの冷却性能,そしてGPU側の動作制御レベルはかなり高そうである。

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 ちなみに,Radeon VIIリファレンスカードの動作音だが,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,アイドル時の動作音はかなり低い。ファンが停止するタイプではないものの,相当に静かだと言っていい。
 一方,高負荷時になると相応に動作音がするものの,RTX 2080 Founders Editionといい勝負といったところだ。少なくとも,うるさくて耐えられないとか,そういう印象はまったくなかった。


Radeon VIIはAAAタイトルを超高解像度でプレイするためのGPU!?


 以上のテスト結果から,Radeon VIIは,それこそFar Cry 5などに代表される,テクスチャなどがリッチなタイトルを,3840×2160ドットといった高解像度かつ高いグラフィックス設定でプレイするためのGPUと言えそうである。
 もっとざっくり言うなら,Radeon VIIは高解像度でAAAタイトルをじっくり遊びたい人に向けた製品だ。

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 一方,解像度を1920×1080ドット程度に抑え,グラフィックス設定もそこそこに,とにかく高いフレームレートを稼ごうといったeスポーツ的な使い方だと,北米市場における搭載カードのメーカー想定売価が699ドル(税別)と同じRTX 2080には歯が立たない。
 いくら7nm世代へと微細化を果たしたとはいえ,Vega 7nmのGPUアーキテクチャはどこまでいっても2017年仕様に留まるわけで,ここはいかんともしがたいところか。

 いま価格の話が出たので続けると,リファレンスデザインを採用して2月8日19:00発売予定となっているサードパーティ製カードは,原稿執筆時点で確認できている限り,以下のとおりの販売代理店およびメーカー想定売価となっている。

  • Sapphire Technology「Radeon VII 16G HBM2」(SA-RADEONVII16G/21291-01-40G):8万9800円(税込9万6984円)前後
  • MSI「Radeon VII 16G」:8万9800円(税込9万6984円)前後
  • ASRock「Phantom Gaming X Radeon VII 16G」:8万6000円(税込9万2880円)前後
  • 玄人志向「RD-RadeonVII-16GB/HBM2」:8万5800円(税込9万2664円)前後
  • Tul「PowerColor Radeon VII 16GB HBM2」(AXVII 16GBHBM2-3DH):8万6980円(税込9万3938円)前後
  • GIGA-BYTE TECHNOLOGY「GV-RVEGA20-16GD-B」:8万8800円(税込9万5904円)前後
※プレスリリース到着順

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Radeon VII 16G HBM2
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Radeon VII 16G
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Phantom Gaming X Radeon VII 16G
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RD-RadeonVII-16GB/HBM2
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PowerColor Radeon VII 16GB HBM2
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GV-RVEGA20-16GD-B

画像集 No.056のサムネイル画像 / 「Radeon VII」レビュー。世界初の「7nm,16GB HBM2,1TB/s」なゲーマー向けGPUはRTX 2080に勝てるか
 国内に登場するグラフィックスカード新製品でここ数年お馴染みとなっていた謎の圧倒的高価格と比べると,Radeon VIIの国内デビュー価格は相当にリーズナブルな印象があるが,それでも競合のRTX 2080を搭載するカードはブランドやグレードを問わなければ税込9万円台前半から購入できるようになっている現実もあるので,「人気のeスポーツタイトルで競合に見劣りする」「しかも競合のサポートするリアルタイムレイトレーシングには対応しない」事実を踏まえるに,100%ゲームを前提としたとき,Radeon VIIの立ち位置は厳しいものになると言わざるを得ないだろう。相対的に高いFP64性能に期待して,GPGPUをメインで考えると,また違った見え方になるのかもしれないが。

 ただ,消費電力や発熱の面から見ると,テストを通じて,7nmプロセス技術には大きなポテンシャルを感じた。この7nmプロセス技術を採用して製造されるという次世代GPU「Navi」(ナヴィ)には,かなりの期待が持てそうである。

AMDのRadeon VII製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    Radeon VII

  • 関連タイトル:

    Radeon RX Vega

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