インタビュー
「ジャックジャンヌ」声優インタビュー第1弾。睦実 介役の笠間 淳さん,白田美ツ騎役の梶原岳人さんが語る,作品との出会いと自身が担当する役への思い
忘れてはいけないのが,絶妙な演技によって登場人物の心境の変化や葛藤を表現しているキャストたちの熱演。公式YouTubeチャンネル(リンク)では,メインとなる「クォーツ」クラスのキャラクター7名を演じたキャストたちに迫る声優インタビュー動画を順次公開中だ。4Gamerがインタビュアーを担当しており,本作と出会ったときの印象や自身が演じる役への思い,役者としてどのように作品やキャラクターと向き合ったかなどを“多少のネタバレあり”で語ってもらっている。
この,キャスト7名のキャストインタビューの“フルサイズ版”を,全3回に分けてお届けしよう。1回目に登場していただくのは,睦実 介役の笠間 淳さんと白田美ツ騎役の梶原岳人さんだ。
睦実 介役の笠間 淳さん(インタビューは[こちら]) | |
白田美ツ騎役の梶原岳人さん(インタビューは[こちら]) |
「ジャックジャンヌ」声優インタビュー第2弾。高科更文役の近藤孝行さんと根地黒門役の岸尾だいすけさんに聞く,役への思いや作品との向き合い方
公式YouTubeで動画が公開されている,「ジャックジャンヌ」声優インタビュー“フルサイズ版”の第2回をお届け。高科更文役の近藤孝行さん,根地黒門役の岸尾だいすけさんのお二人に,それぞれ自身の役との出会いや役者としてどのように作品と向き合ったかを“多少のネタバレあり”で聞いた。
「ジャックジャンヌ」声優インタビュー第3弾は,寺崎裕香さん,佐藤 元さん,内田雄馬さん。主人公とその同学年を演じた3人に,演技にかけた思いを聞いた
「ジャックジャンヌ」声優インタビューの“フルサイズ版”のラストを飾るのは,主人公・立花希佐役の寺崎裕香さん,世長創司郎役の佐藤 元さん,織巻寿々役の内田雄馬さん。クォーツクラスの1年生を演じた3人に,作品や自身の役への思いを聞いた。
「ジャックジャンヌ」公式サイト
■公開中の声優インタビューはこちら
・インタビュー(1)睦実 介役:笠間 淳さん
・インタビュー(2)白田美ツ騎役:梶原岳人さん
・インタビュー(3)高科更文役:近藤孝行さん
・インタビュー(4)根地黒門役:岸尾だいすけさん
・インタビュー(5)立花希佐役:寺崎裕香さん
・インタビュー(6)世長創司郎役:佐藤 元さん
・インタビュー(7)織巻寿々役:内田雄馬さん
インタビュー(1)睦実 介役:笠間 淳さん
■石田スイ先生は恐ろしいまでの観察眼をお持ちの方です
4Gamer:
「ジャックジャンヌ」の台本を読んだときの印象を教えてください。
睦実 介役:笠間 淳さん(以下,笠間さん):
「これ,全部読むのにどれだけ時間かかるんだろう?」って思ったんですけど,読んでいくとどんどん先が気になって……。普段からよく小説などを読むんですが,電車移動のときに夢中になって読んでいるうち「あ,もう下りる駅か!」って気づくとか,家で読んでいて気が付くと「もう夜中か!」って驚いたりすることってありますよね? その感覚とかなり似ていました。
読む人を作品の世界観に引き込む力がすごくて,めちゃくちゃ面白いんですよ。そうやって世界観に没入させる力があると同時に,心を動かす力もとても強い台本だなと思いました。
4Gamer:
笠間さんが演じられた睦実 介について,最初に抱いた印象はどんなものでしたか。
笠間さん:
これ,役者としては言いたくないことなんですけど……「僕だな」って思ったんです。介というキャラクターそのものは決して僕自身ではないですし,何もかもが一緒かと言えばそうではないんですけど,彼が持っているいろいろな葛藤や悩み,そして自己評価が,自分が役者として日常的に抱いているものとすごく似ているんです。
そういう悩みって,自身の課題として意識するのは必要なことですが,普段は遠ざけておきたいじゃないですか。でも彼を演じていると,自分の心の奥底にある弱い部分やデリケートな部分を,彼が鏡となって僕に見せているようなところがあって。「恐いな」ってずっと思ってました。
4Gamer:
図らずも,自分と共通している部分を突き付けられたと。
笠間さん:
実は,収録のときに石田スイ先生にも「介がしゃべっている声は,笠間さんの声なんです」っておっしゃっていただいたんです。声って,その人のパーソナリティとか無意識に持っている部分が出るものだと思うのですが,それをあの方は見抜いていたのかなと……。石田スイっていう存在のすごさを感じると同時に,「なんて役を俺に演らせたんだ」って思いました(笑)。
4Gamer:
石田スイ先生とお会いになったということですが,どんな方だと感じたのかが気になります。
笠間さん:
なんだろう……漫画家として,アーティストとしてのスイ先生はすごく素晴らしいし,日本を代表する作家さんですよね。その上,人の根源にあるものを感じ取り,その人にピッタリの役にあてがってくるわけですから,その恐ろしさはもう悪魔ですよ(笑)。
4Gamer:
笠間さんが感じたという,石田スイ先生の悪魔的なところをもう少し知りたいです(笑)。
笠間さん:
そうですね……。人の欲求や悩みを感じ取り,それを作品に登場する人物や状況に昇華させるやり方っていうのは,すごく悪魔的だなと思いましたね。
スイ先生は,僕の深層心理みたいなものを見透かしていて,さらに,それが乗っかっている“声”を持っていたからこそ,僕をこの役に抜擢してくださったんだと思います。素晴らしいアーティストであると同時に,恐ろしいまでの観察眼をお持ちだなあと。とんでもないです,あの方は。
4Gamer:
台本の文量が多かったという話ですが,収録期間も長かったのでしょうか。
笠間さん:
数か月……歌も入れると半年かそのくらいですね。長い間「ジャックジャンヌ」と向き合っていました。
4Gamer:
収録でのエピソードがあればぜひ聞かせてください。
笠間さん:
収録現場でのエピソードというと,「大丈夫かな? これ,俺(そのまま)なんだけどな?」ってずっと思い続けていたってことですかね(笑)。あと,収録では毎回,彼の成長を一番近くで見つつ「その成長に自分が追いつけているのか」と自問自答してました。
4Gamer:
本作はキャラクターソングの域を越えるほど公演歌曲に力が入っていますが,曲の収録での印象深い出来事などはありますか?
笠間さん:
「アニバコ〜AGFあおぞらマルシェ出張版〜」でも話したんですが(2020年11月8日の生配信。関連記事),「Fortune color is crystal!」っていうとても難解な曲がありまして。スウィングっていう音楽ジャンルなんですけど,仮歌と同じように歌っているはずなのに,レコーディングの演出担当から「違いますね」って言われるんですよ。
「ここはちょっと遅らせるんです」とか「ここはあえてノリが違うんです」とか指示を受けるのですが,その違いというのが難しくて。そんな指示に対して僕は「何を言ってるんだろうこの人は?」となったりもしました。あとで知りましたが,この曲を担当したキャスト全員が苦労していたらしいです。とても楽しい収録でしたけど……2回目があったら辛いなって(笑)。
「ジャックジャンヌ」「うた☆プリDebut for Nintendo Switch」最新情報紹介番組のレポートを掲載。笠間 淳さん,梶原岳人さんのインタビューも
「AGFあおぞらマルシェ」の期間中行われた,情報バラエティー番組の生配信。本稿では,2020年11月8日の番組「BROCCOLI presents 『ジャックジャンヌ』『うたの☆プリンスさまっ♪ Debut for Nintendo Switch』最新情報紹介」のレポートと,笠間 淳さんと梶原岳人さんへのインタビューをお届けする。
4Gamer:
自身の役になりきって歌うところにも難しさがあったかと思うのですが,いかがでしょうか。
笠間さん:
そうですね。介も「役」を演じながら歌っているわけなので,普段の会話では出さないトーンも出るだろうし,普段はやらない歌い方をするかもしれない……という部分で考えるところはありました。そのあたりは,担当した人物として歌う,いわゆるキャラソンみたいなものとは違っていたところでしたね。
4Gamer:
ゲームをプレイした側としては,キャストの皆さんが生歌を披露する機会があると嬉しいです。
笠間さん:
よくステージイベントなどで,自身が演じるキャラクターをイメージした服装で出演することはありますが,それを「ジャックジャンヌ」で想像すると,アルジャンヌ(※)のメンバーは大変だな……と思いますね。
梶原くん(白田美ツ騎役:梶原岳人さん)は線も細いしスカートも似合いそうですが,近藤さん(高科更文役:近藤孝行さん)はどうなるんだろう(笑)。
※女性役を担当する役者「ジャンヌ」の中で,主役やそれを演じる役者を指す名称
■俺は器だ――そんな彼とともに歩いてきた作品です
4Gamer:
「ジャックジャンヌ」には先輩後輩を問わず個性豊かなキャラクターがたくさん登場しますが,そのなかで介はどんな存在でしょうか。
笠間さん:
でも,それってただの優しさとは違うんです。実は彼は孤児で,教会に引き取られて育ったっていう経緯があります。それもあって「そもそも自分は価値がない人間」と思っていて,周りにいる価値ある人たちが幸せに生きられるため,自分がどう動くべきかということを考えているんですよ。
彼が言う「俺は器だ」っていうのは,まさにそういう気持ちの現れだと思います。僕が演じた感覚でいうと,彼が周りとの関係で見せる優しさは,彼自身の呪いとも言える自己犠牲の精神です。後輩との関係はとくに,「価値のない自分が,価値のある者たちを幸せにしていかなければいけない」っていう,彼の想いが見える部分もたくさんあります。
逆に,同級生のフミ(高科更文)や黒門(根地黒門)とは,“慈しむ”っていうのとはまた違う不思議な関係性があるので,そこに注目してほしいですね。
4Gamer:
ご自分との共通点が多いという介ですが,演じていて悩む部分はありましたか。
笠間さん:
僕個人としては,難しかったということはまったくなかったですね。役者として正解か不正解かは分からないですが,表現の部分で悩んだことはありませんでした。
ただ,物語のなかで彼はいろいろな人と一緒に悩みを解消しながら,前に進んだり成長していったりはするので,僕も彼と一緒に成長していかないといけないんですよね。そのあたりの,彼の成長速度と自分の成長速度を合わせていく……みたいな部分は難しかったかなと思います。
4Gamer:
では,介を演じながら“介が作中で演じる役を演じる”という点で,ご自身の役作りについて悩んだことはありますか。
笠間さん:
そのあたりは演出担当の方がジャッジしてくれるのですが,“お芝居をしている自身の担当キャラクターを演じる”っていう部分は本当に大変で。でも,大変だっただけではなく,ただキャラクターに声を当てているだけではない,役者として演じる楽しさを感じられるものでもありました。
4Gamer:
演じられたなかでお気に入りのシーンはありますか?
笠間さん:
ネタバレになるので詳しくはお話できないんですが,彼が心の底から自分の感情を吐露するシーンがあって。やはりそのシーンですね。
これも収録のときの裏話的なエピソードなんですが,最初にOKをいただいたあと,僕自身に納得できなかった部分があったんです。その芝居は睦実 介っていうキャラクターとしては成立するんですけど,僕から「こういう芝居にさせてもらえませんか」と。
「ジャックジャンヌ」という作品で彼と一緒に歩いてきて,そこで生まれた“情”みたいなところで動いた話なんですが,なんというか……ずっと胸の中にあるものを吐き出せないままではと,別テイクをお願いしたんです。
なので,そのシーンのテイクは2つあって,どちらが使われたかは僕もまだ知らないんです。彼自身の重要なシーンなのはもちろんですが,そういった点でもすごく楽しみなシーンですね。
4Gamer:
そのシーンのセリフは,ゲームをプレイしていたら「ここだ」と分かりますか?
笠間さん:
分かります! 楽しみにしていてください。
■“アーティスティックな欲求”を満たしてほしい
4Gamer:
介を演じて,第一印象から変わった部分はありましたか?
笠間さん:
厳密にはないですね。最初に介のことを「これは俺だな」って思っちゃったがゆえに,彼の言動の裏側にあるいろんな想いに,自分の中で説明がついてしまうことが多かったので。
演じる前,一番最初は彼をクールで朴訥な人間だと思っていた部分はありましたが,だけど全然そんなことはないんですよね。彼は生きてきた道によってああいう人間になっただけで,心の中に燃える想いはめちゃくちゃ熱くて。その熱さなしには,自分のことを「器だ」って言って,それに徹し続けられる根性は持てないと思うんです。
4Gamer:
収録を終えて,ご自身のなかで変化を感じたことは?
笠間さん:
でもこれで「彼と一緒に成長できました! 僕も役者として一皮むけました!」って言えたら格好いいんですけど,僕はまだですね。いまだに「彼に先を行かれてるな」って思ってばっかりです。
彼は素晴らしい人間だし,課題を克服していく能力も高い努力家なんですよ。僕自身は「介って格好いいなあ,介みたいになりたいなあ」って思いながら,演技や表現を頑張らなければなと思っています(笑)。
4Gamer:
もし笠間さんがユニヴェールに入るとしたら,どのクラスに入ってみたいですか? 同じクラスにいたら楽しいと思うキャラクターについても教えてください。
笠間さん:
それはやっぱりクォーツです! 楽しいキャラクターは……難しいですね。介の気持ちになると希佐(立花希佐)って言いたいところですけど,僕個人としてはフミ(高科更文)でしょうか。
4Gamer:
ゲーム中ではさまざまな歌劇が登場しますが,笠間さんのお気に入りの公演はありますか? クォーツ以外でも結構です。
笠間さん:
そうですね……もちろんクォーツも全部すごくいい演目ばかりだし,それに付随する曲も素敵なものばかりなんですが,個人的にアンバーの「我死也」(われしなり)ですね。クォーツではなくアンバーがやるからこそ映える演目だと思いますが,あれは実際に観てみたいし演ってもみたいなって思いました。
4Gamer:
では,もし笠間さんご自身が介と組んで舞台をやるとしたら,どんな演目がいいですか?
笠間さん:
これはねえ……見せられるものにならないと思うんですよね(笑)。
彼は“「ジャックエースで背も高くて顔もいいし華がある」って周りから見られてるけど,自分では取るに足らない人間だと思ってる”んです。僕も幸運なことに,周りの方から「声がいいですね」とか「素敵な役者だね」と言っていただけることもあるんですが,自分で自分の声をいいなんて思ったことは一度もなくて。
周りで一緒にやってる役者さんのほうがずっといい声だし,いい芝居してるし,自分なんてまだまだ努力しなきゃ……って思ってるんですね。そうやって自己否定から入るところは本当に彼と似ているので,そんな2人が組んだら,お互いを励まし合って終わるものになるんじゃないかなと思います(笑)。
4Gamer:
笠間さんのお話をうかがって,介のルートがますます楽しみになりました。あらためて介の魅力を語るとしたらどのあたりになるのでしょう。
笠間さん:
介は,「自分は価値のない人間だから,自分ができるのは周りを幸せにすることだ」と認めることができる人間です。それって残酷さを感じる部分でありますが,弱さであると同時に強さでもあり,彼の魅力にもなっているのではないかと考えています。
4Gamer:
では,これからゲームをプレイする人に,楽しんでほしいところや触れてほしい部分について聞かせてください。
笠間さん:
自分の価値観を定めていた彼に,希佐との出会いや仲間たちとの関係性によって自分自身の欲求や「こうありたい」っていう想いが芽生え,それに従って自身の道を進んで行く姿はぜひ追ってほしいですね。
戦隊モノで例えると,彼は黒だけど,内面は誰よりも赤に近いんですよ。赤に憧れてるけど赤になれない,って思ってる赤なんだと思います。最初の印象からは分からないと思いますが,プレイしていくうちにだんだん「笠間はこのことを言っていたのか」って気づいていただけるんじゃないかなと。
初めての人だけではなく,すでに介推しの皆さんにも,さらに彼のいろんな面を見ていただき,もっと心を動かしていただければと思います。「ジャックジャンヌ」も睦実 介も,最高ですから。
4Gamer:
最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
笠間さん:
いまのこの世界の情勢のなか,多くの人たちの心にある演劇に対する想いとか,芸術作品に対する欲求が高まっていると思うんですね。そうしたタイミングでこんなに素晴らしい作品をお届けできたことはとても幸せなことだと思っています。ぜひこの作品をプレイして,皆さんの“アーティスティックな欲求”を充足させてほしいですね。
この時期にユニヴェールに入学できたみなさんはとっても幸せです! この歌劇学校で繰り広げられる出来事を,学園の一員として楽しんでいただけたら嬉しいです。
「睦実 介」CHARACTERページ
(ジャックジャンヌ公式サイト)
インタビュー(2)白田美ツ騎役:梶原岳人さん
■美ツ騎は,自分自身のオタク心をくすぐる“好み”
4Gamer:
最初に「ジャックジャンヌ」の台本を読んだときの印象を聞かせてください。
白田美ツ騎役:梶原岳人さん(以下,梶原さん):
ただ,それは不安ということではなく,チャレンジできることの新鮮さやワクワクする気持ちのほうが大きかったですね。文字を追っていくだけでは伝わらない部分をどう表現していくか。どういう芝居で物語に色を付けていけるかなと。
4Gamer:
役者として挑みがいのある台本だと感じたわけですね。いちゲームプレイヤーとしては,こういったゲームを遊ぶことはあるんですか?
梶原さん:
シナリオを読み進めるタイプの作品はプレイしてきませんでしたね。本は読むんですが,(テキストベースの)ゲームはほとんどやったことがなくて。でも,「ジャックジャンヌ」はしっかりと物語が作られているので,読み応えはもちろん考察のしがいもかなりあって,ゲームとして楽しそうだと思いました。
4Gamer:
梶原さんが演じられた白田美ツ騎について,第一印象はどんなものだったのか気になります。
梶原さん:
人間性も僕の好みでしたね。僕は,自分の中にある想いを素直に伝えられる子より,それが言えないタイプの方が好きなんですよ。そんな僕にとって美ツ騎は,心のなかにズドンと刺さったというか,「俺の好みなのが真っ直ぐ(ストレートで)きたわコレ!」みたいな(笑)。この仕事をする前から漫画やアニメが大好きですが,そんな自分自身の中にあるオタク心がくすぐられました(笑)。
4Gamer:
美ツ騎とご自身で似ていると感じる部分はありましたか?
梶原さん:
歌が好きっていうのは共通しているかなと思います。僕は小さいころから歌が好きで,誰に聴かせるというわけではなく,ただ自分が楽しいから歌っていました。そういうところは似ているんじゃないかなと。
4Gamer:
では逆に,自身と異なる部分はいかがでしょう。
梶原さん:
そうですね……コミュニケーション能力でしょうか。
僕は人と話すのがすごく苦手なんですが,美ツ騎はそうじゃないですよね。クールで積極的に人とコミュニケーションは取らないけど,別にコミュニケーション能力がないわけではない。自分が言うべきことと言いたくないことの,取捨選択がしっかりしているという印象があります。
そういうしっかりした面があるから,美ツ騎は堂々としていて物怖じしないんです。僕は人と話すときにめちゃくちゃ緊張するし,オドオドしちゃうところがあるので,そこは見習いたいなと思いました。
4Gamer:
収録時のエピソードがあれば聞かせてください。
梶原さん:
けっこう僕,気持ちが入りやすいタイプなんですよ。役を演じるときも,俯瞰で見るよりは自分自身がなりきって演じたいなと思っているんです。
希佐との距離が縮まっていくことで美ツ騎の“心の氷”が溶けていって,少しずつ気持ちを出していくようになるんですが,そのたびに自分も「希佐,めちゃくちゃいい子やな」とか,「なんやこの子かわいいな」と,美ツ騎と一緒……いや,もしかしたら美ツ騎以上に希佐のことを思っていることもあって(笑)。ネタバレになるのでまだ詳しくは言えないんですが,希佐とのすごく大事なシーンでは,涙が出るくらい入り込みました。
■誰に対しても“自分は自分”でいられるところは尊敬します
4Gamer:
クォーツの主要人物では唯一の2年生である美ツ騎ですが,彼とその先輩や後輩とのエピソードで印象に残っているものはありますか?
梶原さん:
先輩の根地さん(根地黒門)との関係でしょうか。根地さんって,なんて言うんでしょう……ふざけるときはめちゃくちゃふざけるじゃないですか(笑)。それに対して美ツ騎は,物怖じせずクールな反応をするんですが,ときには乗っかったりするんですよ。そういう,かわいい一面が見られるところですね。
4Gamer:
先ほどコミュニケーション能力の話をされていましたが,こういう先輩との接し方というのも,やはりご自身とは異なるところでしょうか。
梶原さん:
そうですね。僕自身は先輩に対してどこか一歩引くというか,ツッコむにしても少し気を使わなきゃって思ってしまったりするんですけど,美ツ騎はそれを気持ちいいくらいにストレートにやってくれるので。
あっ,でも,それは後輩に対してもそうしているかな……。先輩や後輩関係なく,誰に対しても自分は自分でいられるということだと思うのですが,そこは本当に尊敬します。
4Gamer:
もし梶原さんがユニヴェールにいたら,どのクラスに入ってみたいですか?
梶原さん:
美ツ騎として,クォーツの新人公演から最終公演までの1年間を見て,これは僕が思い描く理想形だなと感じました。ついていきたいと思えるような頼れる先輩がいて,歌を教えてくださいと慕ってくる後輩がいて。そんな彼らと仲を深め合い,技術を伝え合いながら共に成長し,一緒に素晴らしい演劇を作り上げる……こんなに充実した学生生活,そうそうないだろうなと(笑)。僕はぜひ,クォーツに通ってみたいです。
4Gamer:
物語や彼自身に深く触れてみて,第一印象から変わった部分はありましたか?
梶原さん:
最初は,ものごとをズバズバ言うタイプだけど,自分が興味あることに対しても,どこか引いているというか,「スンッ」とした感じの子なのかなと思ってたんです。
でもその印象は,希佐とお茶をするシーンで変わりました。詳しくは実際にゲームをプレイして見てほしいんですけど,美ツ騎はお茶やお菓子が好きな一面があるんですね。それで,希佐を喫茶店に連れて行く展開があるのですが,いつものすました感じの美ツ騎じゃなくて,その時の希佐との会話がもうなんというか……かわいいな!! と(笑)。
完全に僕の好みの話ですけど,あれはいいギャップ萌えでしたね……。思わず抱きしめたくなるような微笑ましさとかわいらしさを感じました。
……まだあるんですけど,言っていいですか?(笑)
4Gamer:
ぜひ!
梶原さん:
ユニヴェールに美ツ騎のお母さんが来るというエピソードなのですが,そこで美ツ騎が今まで見せたことのないような感情を表すんです。
一緒に希佐がいることも関係してくるのですが,それが「美ツ騎ってこういう感情の伝え方もするんだな」ってくらい,思いのままに自分の気持ちを伝えるんですね。これもギャップ萌えじゃないですけど,いつものクールな印象とは異なる新鮮な彼の姿で,より魅力を感じました。
■美ツ騎の人生を乗せられるような表現を目指しました
4Gamer:
美ツ騎を演じる上で悩んだことはありますか?
梶原さん:
最初に石田スイ先生と話したときに,美ツ騎の役は,「ストーリーの演者と歌唱担当でキャストを分けたほうがいいんじゃないか」と考えていたという話を聞いたんです。それだけ歌が重要視されていたというわけですね。
それが,僕のオーディション音源を聴いて,演者と歌両方を任せることを決めたと聞いてめちゃくちゃ嬉しかったんですけど,同時に「その期待に応えられるものを表現しなければ」と思いました。
4Gamer:
“美ツ騎として歌う”ということについて,どのような思いでレコーディングに挑んだのでしょう。
梶原さん:
美ツ騎は歌が上手いだけではなく,そこに彼自身の人生経験とか,これまでに積み上げてきたものがあるからこそ彼の歌になるんだと思いました。
言葉ひとつひとつに乗せる感情の伝え方もそうですし,ただのメロディラインじゃなくて,美ツ騎が生きてきた人生の一部を乗せられるような表現をしたいなと。そういう気持ちはありつつも,自分の持っている技術とのせめぎあいがありました。
4Gamer:
実際にレコーディングされたときはどうでしたか。
梶原さん:
歌が上手いという設定なので,それだけに担当する楽曲の難度が高くてですね……。レコーディングは1曲ずつ時間を掛けて行ったのですが,1曲目を録ったとき,「あっ,いまのスキルじゃこれ,全部歌いきれないわ」って気づかされるくらいでした。
それぐらいの難度と楽曲のクオリティで,めちゃめちゃ悩みましたね。
4Gamer:
楽曲の数も多い印象がありますし,どのようにその難しい楽曲に挑んだのか気になります。
梶原さん:
そうですね。トレゾール(※)なので,希佐ほどではないですが担当する歌の数も多かったと思います。それらの楽曲には,通っていたボイストレーニングの先生に相談した上で練習し,録音に挑みました。
そうして楽曲の収録を進めているうち,録音ディレクターに「最初よりずっと上手になられましたね」って言われたのを覚えています。きっと美ツ騎も,最初の新人公演から最終公演までの1年間で歌のスキルも上がっているし,気持ちの変化もあったと思っていて。自分も美ツ騎と同じような線を描いて上達できればと考えていたので,この言葉は本当に嬉しかったですね。
※ジャンヌ(女性役)のなかでもとくに優れた歌唱力を持つ「歌姫」のこと
4Gamer:
印象深かった曲はありますか?
梶原さん:
最後に録った,冬公演での希佐とのデュエット「淡色」ですね。たしかそのとき,シナリオはほぼ録り終えていて,冬公演での舞台上の役柄としてだけではなく,美ツ騎の希佐に対する想いも歌に込めることができました。
シナリオのほうを演じ終えていたからこそ込められた気持ちがあったというか,最後に録れて良かったなと。美ツ騎の一番の見せ場でもあると僕は思ってます。
4Gamer:
どんな曲か教えていただけますか?
梶原さん:
楽曲としてはしっとりしたバラードで,僕自身,もともとバラードがめちゃくちゃ好きなんです。実はオーディションで歌ったのも絢香さんの「三日月」で,そういうバラードが声質に合っているというか,自分で言うのもなんですけど,持ち味が活かせたと思うんです。そういった意味でも「淡色」はとくに大事な曲となりましたね。
4Gamer:
情感を伝えるような楽曲が得意ということですよね。
梶原さん:
僕が基本ネガティブだからっていうのもあるかもしれません。落ち込んだりしているときに聴くとしみるなあ……っていうのもあって(笑)。勢いがあるものより,そういう曲のほうが得意な気がしますね。
4Gamer:
では,1年間で行われた公演のなかで,お気に入りのものと聞かれればやはり……。
梶原さん:
新人公演から秋公演まで美ツ騎が演じたのは,どちらかというと彼そのものっていう役が多かったんですよ。根地さんが書いた脚本も,美ツ騎が素のままで演じてもそんなに違和感ないよねっていうか。
でも彼にはトレゾールという“歌を武器にして戦える場所”があるから,彼としてはやっぱり歌を見せていきたかったと思うんです。そんな美ツ騎にとって,冬公演は今までよりさらに自分の引き出しを広げていかなきゃいけない舞台で。もうすぐ先輩たちが卒業してしまう。これからは自分自身が,後輩たちに大きな背中を見せてくれた彼らのようにならなければならない。そんなプレッシャーもあって,すごく悩むんです。
それが何というか……僕自身にも響くものがあって。
4Gamer:
ご自身に重ねたところがあったのでしょうか。
梶原さん:
はい。僕自身,生きていくなかで葛藤が絶えなくて,ずっと何かしら悩んでるんですよ。芝居でも,ひとつ壁を越えたなと思ったらまた次の壁が出現して,なかなか壊せずに「なんでずっとこんなところで立ち止まってるんだろう」って考えたりして。
「どうしてこんなにできないことが多いんだろう」って自分が嫌になると言うか,だからこそ頑張ろうと思って今までやってきたんですけど……そういうのとすごく重なってしまったんですよね。特に冬公演では,美ツ騎の心の痛みにすごく共感したので,彼のことを想いながら演じました。
詳しくは言えないんですけど……まだ話して大丈夫ですか?
4Gamer:
もちろんです!
梶原さん:
冬公演は,ラストの美ツ騎と希佐のやりとりがすごくいいんです。
あれは根地さんが狙って書いていたのかなあ……そうじゃないかもしれないけど,自分が女性だってことを隠して学園生活を送っている希佐の後ろめたさみたいなものが,希佐が演じているチッチという役自体に重なっているというか,心のリンクの仕方がものすごいんです。
あぁ,もう……なんて言ったらいいんだろう。僕は本当に言葉が下手なので,この感覚をどう伝えたらいいかわからないんですけど,ぜひ実際にプレイしてこのもどかしさを感じてほしいです(笑)。なんとも言えない感情,感覚,情景……とにかく素晴らしかったです。2人で歌う曲も良くて……話すとキリがなくなってきますね。
4Gamer:
もし梶原さんが美ツ騎と組んで舞台に立つとしたら,どんなことがやってみたいですか?
梶原さん:
やっぱり一緒に歌を歌ってみたいですね。希佐と歌うデュエット曲もすごく美しくて情感にあふれているので,そういった曲も一緒にやってみたいなと思いました。
4Gamer:
最後に,読者に向けてメッセージをお願いします。
梶原さん:
頑張って言葉で伝えようとしても,ニュアンスとかイメージとか「めちゃくちゃ良かった!」しか言えないのがもどかしいです(笑)。本当にプレイしていただくのが一番良さが分かるのではないかなと。
僕のこの感動をぜひ皆さんにも感じていただきたいですし,シナリオも歌もイラストも芝居も,「こんなゲームあったか!?」というクオリティだと自信をもって言えます。
ぜひとも最後まで,全ルート制覇する勢いで遊んでいただけるとすごく嬉しいです。「ジャックジャンヌ」をよろしくお願いします!
「白田美ツ騎」CHARACTERページ
(ジャックジャンヌ公式サイト)
「ジャックジャンヌ」公式サイト
- 関連タイトル:
ジャックジャンヌ
- この記事のURL:
キーワード
(C)Sui Ishida/BROCCOLI