プレイレポート
「龍が如く7 光と闇の行方」プレイレポート。練られたストーリーとテンポのいいバトルが光るだけでなく,サブ要素も手加減なし!
今回,そんな筆者が発売に先駆けて本作をじっくりプレイする機会を得られたので,そこで見えてきたものをレポートしていこう。
本作の主人公である春日一番は,神室町生まれ神室町育ちの元極道。見た目に違わず陽気で,曲がったことが大嫌いな男である。そんな生粋の「神室っ子」である彼が,なぜ横浜・伊勢佐木異人町に流れ着くことになったのか。
それは,一番の命の恩人であり,親父と慕っていた荒川組組長・荒川真澄(演:中井貴一)に撃たれたためだ。
詳しく説明をすると,話は2001年にまでさかのぼる。一番は荒川組のために,若頭の沢城 丈(演:堤 真一)の罪を被り,長きに渡って服役していたのだが,その間に神室町の勢力図は一変していた。かつて神室町を仕切っていた東城会系の組織は姿を消し,荒川組も近江連合の傘下となっていたのだ。そして,東城会が消えた理由が,尊敬する荒川の仕業であることを伝え聞く。
あまりのことに納得がいかない一番は,荒川の元に乗り込み,本人の口から事情を聞こうとする。しかし近江連合の大幹部となっていた荒川は,自らの手で一番を「始末」したのだ。
一番が意識を取り戻したとき,彼は見知らぬ街のゴミ捨て場にいた。そこは身を寄せるあてがない者たちが最後にたどり着くどん底の街,横浜・伊勢佐木異人町。一番は元看護師のホームレス,ナンバ(演:安田 顕)の手当を受け,一命をとりとめていたのだ。行き場をなくした一番は,ナンバやほかのホームレスたちに受け入れられ,路上で命をつなぐための術を教えられる。
荒川に切り捨てられ,生きる目的を失いかけていた一番だったが,ナンバたちと接するうちに持ち前の明るさを取り戻していく。そしてホームレスたちから受けた「一宿一飯の恩義」に報いるため,彼らからショバ代をかすめ取るチンピラたちを撃退するのだった。
ただ,ホームレスとして暮らしていくことに疑問を感じた一番は一念発起,職を探してハローワークに行くことを決める。そんな一番にナンバも同調し,仲間に加わった。しかし住所のない一番たちは,ハローワークで門前払いにも等しい扱いを受けてしまう……。
だが捨てる神あれば拾う神あり。そんな一番たちに仕事の話を持ちかけてくれたのは,川沿いに立ち並ぶ小料理屋の元締め・浜子や,ソープランド「乙姫ランド」のオーナー兼店長・野々宮だった。
ここ伊勢佐木異人町という街には,ほかで行き場を失った人々の最後の拠り所となるような「温かさ」が確かに存在していた。
浜子や野々宮の頼み事を快く引き受け,異人町を駆け回る一番たち。元刑事の足立,チーママの紗栄子など,仲間も少しずつ増えていく。だが,それと同時に一番たちは,横浜の裏社会を牛耳る3つの組織とも関わりを持つことになる。
古くから横浜の裏の世界を支配してきた「横浜星龍会」。そのライバルである中華系マフィア「横浜流氓(はんぴんりゅうまん)」。両者の間で情報を武器に立ち回る謎の組織「コミジュル」。
さらに,日本から「法の解釈の曖昧なグレーゾーン」を消し去ろうと活動するNPO「ブリーチジャパン」も絡んでいくことで,伊勢佐木異人町の様相は混沌としたものになっていく……。
と,ここまでが序盤のあらすじだ。物語は中盤以降で,予想だにしないような大きな展開を見せていく。コミカルなテイストで始まった物語が,次第にスケールの大きなものに発展していくあたりは,さすが「龍が如く」のナンバリングタイトルといった印象だ。
大人がしっかり楽しめるドラマとして仕上がっているため,シリーズファンだけでなく,ここから「龍が如く」を始めるという人も楽しめるだろう。
「龍が如く7」の完成披露会では,中井貴一さんや堤 真一さん,安田 顕さんといった出演俳優陣が本作のストーリーにお墨付きを与えていたが,序盤をプレイしただけでも,彼らの言葉はリップサービスではなかったことが実感できた。
ちなみに筆者は,舞台が横浜に移った第三章あたりから完全に物語に引き込まれ,以降はゲームを進めるほどに一番や,その周囲の人物たちをどんどん好きになっていき,エンディングまでプレイしてしまった。
また,本作の物語は後述するRPG要素と,とても相性がいいと感じたことも付け加えておこう。
アクションゲームのテンポ感,爽快感を備えたライブコマンドRPGバトル
本作はストーリーが面白いだけではなく,バトル部分の完成度も勝るとも劣らない。
「龍が如く7」でプレイヤーが選択できるコマンドは「攻撃」「極技」(必殺技や魔法に相当)「防御」「その他」(アイテムの使用,メンバーの交代,デリバリーヘルプの召喚など)と,きわめてオーソドックスなもの。
しかし,実際にプレイしてみると,いわゆる一般的なRPGのコマンドバトルとは明らかに感触が異なることに気がつく。本作のバトルシステム「ライブコマンドRPGバトル」は,味方や敵が戦闘中も常に移動しており,お互いの距離や位置がリアルタイムで変化する。また,同じ攻撃でも敵との距離や位置,味方の状況などによって繰り出す攻撃が変化するのだ。
例えば「龍が如く」シリーズではおなじみの,周囲にある看板や自転車などのオブジェクトを使った攻撃は本作でも健在だ。それらの近くにいる敵を攻撃すると,MPを消費することなく大ダメージを狙える。
また,体勢を崩しダウンした相手を指定して攻撃を実行すると,大ダメージを期待できる。ダウンした相手は極力逃さず,できれば一気に倒してしまうのがセオリーだ。
では,オブジェクト周辺の敵や,ダウン中の敵をつねに狙っていけばいいかと言うと,そういうわけではない。攻撃の途中,別の敵に遮られると行動を妨害されてしまうため,敵味方の位置関係をおおまかに把握し,攻撃する相手を判断することが大切だ。
ちなみにMPを消費する「極技」であれば,敵の妨害を受ける心配はない。危険な敵が敵集団の奥にいる場合は,強力な極技で速攻をしかけ,先に倒してしまうのも手だ。
極技の使用時や,攻撃を受ける際のボタンの追加入力も,バトルを引き締める絶妙なスパイスとなっている。
とくに被攻撃時のジャストガードの入力は,アクションゲームや格闘ゲームのそれに近い感覚がある。
最初は反応できなかった敵の連続攻撃に対し,しっかりジャストガードを合わせられるようになると,かなりの達成感を味わえるだろう。
とはいえ,ここまでお伝えしてきた「機を見計らって攻撃する」「タイミングよくボタンを押す」要素は“成功させるとお得”くらいのさじ加減で,成功させることが前提のゲームではないことを強調しておきたい。
コマンドを選択する際は,好きなだけ長考することも可能で,目まぐるしいバトルは苦手という人も安心だ。
前述した要素をフル活用することで,レベル上げをせずに勝機を探るという遊び方もできるが,たとえ強敵に負けてもレベルを上げ,装備を整えて再戦すれば勝てるというバランスになっている。オーソドックスなRPGの良さを大切にしているのだ。
コマンドバトルRPGの大きな魅力である「誰でも遊べてクリアできる」バランスを基本にしつつも,アクションゲームのテンポ感,そして狙いすましてボタンを押す気持ちよさが加わった,RPGとアクションの「いいとこ取り」。
単に「龍が如く」のガワを被せただけのものではない,「龍が如く」らしいテンポ感や爽快感をコマンドバトルで表現するべく,丹念に作りこまれたものであることが伝わってくる。
さらにゲームを進めていくと,ハローワークでジョブチェンジが可能になり,より多彩な戦い方を楽しめるようになる。
機動隊員が敵の攻撃を一身に集めつつ,用心棒や解体屋がダメージを稼ぎ,それをストリートミュージシャンが後方から歌や魔法で支援する。オーソドックスなRPGの役割分担を,現代日本に生きるキャラクターたちが行っている様子は,なんともシュールで楽しい。
各ジョブが習得する技は転職前にすべて確認することができるので,打撃,刃物,魔法といったバランスのとれた攻撃手段を持つパーティを組み,ゲーム的な有利さを追求することも可能だ。はたまたキャラクターのビジュアルや戦闘中のアクションなど,面白さを優先してパーティを組んでもちゃんと先に進んでいける。
それどころか,ナンバならホームレスのまま,足立なら刑事のまま,というように転職を行わずにプレイしても十分に戦えてしまう。しっくり来るジョブがなければ,転職をしない自由すら保証されているわけだ。
ただ,最初からすべてのジョブに就けるわけではなく,一番は「人間力」を上げることで,ほかのキャラクターは一番との「絆」を強くすることで,ジョブチェンジできる職業が増えていく。
では,どうやって人間力を鍛え,仲間との絆を育んでいけばいいのだろうか? その答えは「街歩き」の中にある。
舞台が広がり,さらに楽しくなった探索や寄り道
「龍が如く7」の舞台となる横浜の街は,神室町の約3倍ほどの広さだ。舞台が広くなったおかげで,本作の「街歩き」は探索する楽しさがよりアップしている。風俗街や川沿い,商店街,駅前,そして発展著しい海辺のエリアなど,さまざまなロケーションを楽しみながら,イベントやミニゲームを探しつつ,心ゆくまで歩き回れる。
道幅の広い場所であれば,徘徊する敵を避けることもできるので,バトルを避けつつ探索を進めることも可能だ。
こうした街歩きの途中,「サブストーリー」でさまざまな人々に関わったり,「資格学校」で数々の資格試験に合格したりすることにより,一番の「人間力」は高まっていく。人間力のレベルが上がれば転職できるジョブが増える,ステータス異常への耐性が高まる,イベント発生の条件になるなど,さまざまなメリットが得られる。
街の探索ばかりしていると,本筋の進行は後回しになってしまうわけだが,寄り道をすればするほど多彩な人間力が身につき,さまざまな場面で生きてくるのだ。
従来のシリーズ同様,本作でも大量のミニゲームをプレイできるが,今回の目玉は,やはり春日一番の「成り上がり」を最も実感できる「会社経営」だろう。
会社経営でプレイヤーが担う役割は,有望そうな会社を買い,先行投資し,適切な人材を配置することだ。また仕事ぶりが思わしくない従業員がいる場合は,研修を受けさせたり,疲れを取ったりするなど,しっかりケアをすることも大切である。適切に行えば,利益は後からついてくる。
そして4回分の営業を終えた後,待っているのが「株主総会」だ。株主の質問に対して正面から説得したり,それが難しい場合は謝罪して許してもらったりと,あらゆる手を尽くして総会を乗り切らねばならない。
ここでも会社経営の営業と同じく,総会に参加する株主を把握して適切な人材を見極め,参加させることがポイントとなる。総会を成功に導けば,会社の株価が上がり,一番が所持金として得られる役員報酬も増えていく。
会社経営の営業で最大のキモとなるのは人材の配置で,限られた優秀な人材を,どの会社に配置するかには常に頭を悩ませることになる。
じつはここも人間力が問われてくる部分で,一番の人間性が優れていれば,街で優秀な人材をスカウトできる。また,サブストーリーで関わった人物が従業員として応募してくることもあるので,会社経営以外の要素を遊びつくすことが,巡り巡って会社経営を有利にしてくれる。
なお,会社経営で購入できる会社や建物は,どれも街で目にするものばかりだ。街歩き中に自社の所有する物件を見かけると,「我が社もここまで成長したか……」と,感慨に浸れるだろう。また,会社経営に成功すれば,お金の悩みから解放されるのも嬉しいところだ。
本作は素晴らしいストーリーと,刺激的でテンポのいいバトルにより,プレイヤーをぐいぐいとゲームの世界に引き込んでいく。内容自体は間違いなく最新のゲームなのだが,その手触りはどこか懐かしいRPGを思い出させてくれる。
また,広い舞台に散りばめられた遊びの要素が,一番の「人間力」の成長,または人脈作りにリンクしており,それがバトルや会社経営の要素に深く関わるという,構造も良くできている。
平たく言えば,寄り道してサブ要素を遊べば遊ぶほど,一番の人間力やコネが強化され,バトルや会社経営などで大きなメリットを感じられるわけだ。
しかし,そこは龍が如くシリーズ。それを押し付けるわけではなく,プレイヤーが自分のペースで遊べるのも魅力だ。メインストーリーだけをどんどん進めてもいいし,合間でサブ要素にハマってしまうのもまったくの自由。プレイヤーの数と同じだけ,さまざまな生き様の一番が生まれるのだろう。
筆者は本作にこめられた工夫と熱量にあてられ,すっかり本作と一番のファンになってしまった。その生き様を見ていると,自然と笑顔になってしまう。春日一番という男は,そういうヤツなのである。
「龍が如く7 光と闇の行方」公式サイト
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