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40周年記念「Microsoft Flight Simulator 40th Anniversary Edition」,本日リリース。旅客機やヘリコプター登場,マルチスクリーン正式対応も
それに先立ち,11月10日にはオレゴン州近郊にあるエバーグリーン航空博物館(Evergreen Aviation Museum)にて,各国のプレスを招いたイベントを開催してお披露目を行った。
「Microsoft Flight Simulator」公式サイト
1982年11月11日,ブルース・アートウィック(Bruce Artwick)氏率いるSublogicは5年がかりの開発の末,MS-DOS向けに「Microsoft Flight Simulator」をリリースした。Cessna 182やSopwith Camelを操縦して空を駆ける,当時としては最高水準のグラフィックスを誇ったフライトシミュレーションゲームだ。まだパソコンが高級家電だった1980年代に,リリースから5年で80万本を販売した。Microsoftのフラッグシップソフト「Windows」(1985年)よりも長い歴史を誇るシリーズということになる。
1995年には,アートウィック氏の退社とともにMicrosoftがシリーズの知的財産権を所有する。しかし,フライトシムはニッチなジャンルとして売り上げが落ちており,2006年にリリースされた「Microsoft Flight Simulator X」以降,新作は10年以上も登場していなかった。
そんな伝統のシリーズを再興したのが,2020年8月18日にリリースされた最新作「Microsoft Flight Simulator」である。本物の写真なのか,スクリーンショットなのか,見分けもつかないほどリアルな映像でおなじみだろう。
MicrosoftのビッグデータであるBing Mapが管理する8ペタバイトに及ぶ衛星写真や航空写真,3Dスキャンによるフォトグラメトリー技術を活用し,周囲の風景をMicrosoft Azureのクラウドサーバーで演算。約3万7000という地球上に存在するほぼ全ての民間空港をはじめ,約1億1700万の湖や池,約2兆本の樹木を自動生成し,さらに気象データから大気の流れや水分,雲の発生状況まで表現している。Microsoft,そして実質的な開発を担ったAsobo Studioのテクノロジーショーケースとしても,不動の地位を占めるフライトシムだ。
ローンチから約27か月経過しているが,その間には特定地域を精密化させるWorld Update(11回)を含む,27回の大型アップデートが無料でリリースされている。
旅客機,ヘリコプター,グライダーが新登場
40th Anniversary Editionの大きな柱となるのが,ゲーマーコミュニティから強くリクエストされていたという旅客機「Airbus A310-300」をはじめ,ヘリコプターやグライダーが登場することだ。ヘリコプターは救急や報道分野でも広く活用されている「Bell 407」と,練習に最適なフランス産小型機「Guimbal Cabri G2」。グライダーはドイツのDG Aviationによる「LS8-18」と「DG-1001e」が実装される。
ヘリコプターの特徴は,ローターブレードの回転により生まれる気流の動きをビジュアル化して,どのように流れているかを目で確認することができる点だ。操縦はそれほど難しくなく,急激に進行方向を変えたり,スロットルを落としたりしない限りは楽しく飛行できる。専用のヘリポートは14か所とのこと。
飛行機ほど速度が出ず,ビルの屋上や大型客船の甲板などのちょっとした平地にも離着陸できる。飛行機よりも気軽にフライトできて,周囲の風景を堪能しやすいはずだ。Microsoft Flight Simulatorシリーズに新たな1ページが加わったのは間違いない。
一方,グライダーはドイツやフランスなどから多くのリクエストが寄せられていたという。タグと呼ばれる牽引用飛行機や,ウィンチを付けた車両に引っ張られる形で空を飛び,上空で気流をピックアップしたり,バラスト水を放出したりしながら高度を上げる。その際,ジミーという助っ人キャラクターが左翼側から走れる限り押してくれるという細かい描写も確認できた。エンジンのない機体であるため,旋回中は風の吹く音や機体の傾きなどを示すブザーが鳴っているだけ。どこか孤独な空の旅となる。
気温が高いほど上昇気流が発生しやすくなり,「Thermal Uplift」と呼ばれる上昇気流の動きが可視化できるのが特徴だ。ヘリコプターより操作するべきことが多いため,7項目のトレーニングセッションも用意されている。グライダー専用のエアポートは15種類とのこと。
そのほかにも豊富なコンテンツ
“Microsoft Flight Simulatorのフロントマン”として,4Gamerでは何度もインタビューに対応してもらっているヨーグ・ニューマン(Jorg Neumann)氏は,40th Anniversary Editionのプレゼンテーションにあたり,「デジタル・プリザベーション」(デジタル化による保護)というコンセプトを柱にしていることを明かした。
例えば,2003年の「Flight Simulator 2004 翼の創世記」までシリーズ作品のデフォルト空港としてフィーチャーされていたが,現在は解体されているシカゴ沖のメリルC.メイグスフィールド空港(KCGX)や,ビルの間を縫うように離着陸する風景が名物だったものの,1998年に移転を果たした香港国際空港(啓徳空港/VHHH)などは「航空史の過去の遺産」として復刻されている。
さらに,メインメニューのアクティビティに「40th Anniversary」という項目が追加される。これは歴史的なイベントを再現し,7種類の珍しい機種を体験できるものだ。1903年にライト兄弟が人類初飛行を体験した「Wright Flyer」,1905年に製造が始まった複葉機“ジェニー”こと「Curtiss JN-4D」,チャールズ・リンドバーグが大西洋横断に成功した“スピリットオブセントルイス号”の製造モデル「Ryan NYP」,1936年に運用を開始した初の旅客機「Douglas DC-3」,1937年に水陸両用双発機として登場した「Grumman G-21 Goose」,カナダで生まれた水上輸送機「de Havilland Canada DHC-2 Beaver」,そして実業家ハワード・ヒューズが試作した“スプルース・グース”こと「Hughes H-4 Hercules」というラインアップになっている。
そもそも今回,エバーグリーン航空博物館がイベントに貸し出されているのは,ここにスプルース・グースが展示されているからだ。全幅9.75mに達する大型機,スプルース・グースは1947年に1度だけ試験飛行を行ったきり,お蔵入りした“幻の名品”である。1997年のヒューズ・エアクラフトの倒産によって保管場所を失い,海上輸送の末に2001年から同館で展示されていたが,このたびデジタル化されることが決まり,生誕75周年となる今年,誰でも半永久的にゲーム内で操縦できるようになった。これだけ大きな飛行機でありながら,94%は木製という事実に驚くが,その重い機体を操ってみたいという人は多いはずだ。
40th Anniversary Editionに用意される24種のアクティビティのうち,その半数以上は「クラッシック・ミッション」である。これは「Flight Simulator 2004 翼の創世記」や「Flight Simulator X」に収録されていたミッションを復刻したものであり,ニューマン氏によると「デジタル・プリザベーション」の1つということになる。ニューマン氏は「それほど面白くないけど一興だよ」と謙遜していたが,グランドキャニオンのツアーやアリューシャン列島の横断輸送などは懐かしいだろう。
Microsoft Flight Simulator 40th Anniversaryは本日,PCやXboxプラットフォームで「Microsoft Flight Simulator」をプレイしている人,Xbox Game Passに加入している人に無料で提供される。今もなお進化が止まらないフライトシムをまだプレイしていない人も,しばらく飛んでなかったバーチャルパイロットも,この機会に大空を目指してほしい。
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