リメイクでもリターンズでもない!「メタルマックス ゼノ リボーン」。 新生と原点回帰を目指す,開発のキーマン3人にインタビュー
その後,さまざまな事情により,開発会社やパブリッシャを変えながら続編を出してきた本シリーズだが,2018年には角川ゲームスより「メタルマックス ゼノ」(PS4 / PS Vita)が発売。グラフィックスをフル3Dとし,リアルな頭身のキャラクターが活躍する今風のRPGへと変貌を遂げた一方で,自由度の低い一本道の展開や,“犬”が登場しないことなどがファンの間で議論を呼んだ。
そんな「メタルマックス ゼノ」が,2020年3月26日に「メタルマックス ゼノ リボーン」(PS4 / Switch)としてリメイク・発売される。グラフィックスの向上はもちろんだが,ヒロインを含む主要な登場人物を助けるかどうかをプレイヤー自身が決められるなど,ストーリーの自由度も大きくアップ。戦闘方法もまったく異なるシステムへと変更されるほか,仲間の犬も復活し,従来の「メタルマックス」ファンには嬉しいものになっているという。
そこで4Gamerでは,シリーズの生みの親で原作者の“ミヤ王”こと宮岡 寛氏と,プロデューサーである角川ゲームスの河野順太郎氏,そして本作より新たに開発の中核を担うことになった開発会社24Frameの代表取締役であり本作のディレクター,友野祐介氏に話を聞いた。
左から河野順太郎氏,友野祐介氏,宮岡 寛氏 |
「メタルマックス ゼノ リボーン」公式サイト
「不遇」「絶滅危惧種」「反王道」「メタルスラッグ」と勘違い
4Gamer:
よろしくお願いします。本日は「メタルマックス ゼノ リボーン」についていろいろとお話を聞ければと思います。あらためて「メタルマックス」世界の成り立ちから教えてください。
まずは基本をおさらいする意味で,「メタルマックス」シリーズの概要をお願いします。
宮岡 寛氏(以下,宮岡氏):
世紀末世界で暴力の嵐が吹き荒れる「マッドマックス」という映画に触発されて,「北斗の拳」というマンガが生まれました。そこに西部劇のテイストを加えることで,「メタルマックス」という無法の荒野で戦車が暴れ回るゲームが誕生しました。
4Gamer:
初登場時のインパクトは非常に大きなものがありましたね。
宮岡氏:
当時のRPGといえばファンタジーものが主流で,高貴な血を引く若者がドラゴンを倒して英雄になるようなものがメインでしたが,「メタルマックス」では賞金稼ぎの“モンスターハンター”が,お尋ね者の“WANTEDモンスター”を,戦車や現用兵器で狩るわけです(笑)。
僕自身がRPGのヘビープレイヤーでしたから「なぜこういうものが無いんだ!」と,思いつく限りの斬新なアイデアをぶち込みました。「メタルマックス」の開発をする前は,RPGとして王道の「ドラゴンクエスト」シリーズの制作にも関わっていたので,これに勝つためには違ったことをやらなければならない……という思いもありましたから。そして「メタルマックス」は主流のゲームがやらないことをやる,反王道のゲームになったんです。
4Gamer:
キャッチコピーが「竜退治はもう飽きた!」でしたからね。当時としては,まさにパンクでアナーキーな反主流だったと思います。
世紀末の世界に高い自由度というと,今は「Fallout」などポストアポカリプスものが連想されますが,これに先んじていたのが「メタルマックス」でした。「メタルマックス2」からは犬が戦うというのも衝撃的でしたが,なぜ犬を出したんですか。
宮岡氏:
初代「メタルマックス」に「バイオニック・ポチ」というモンスターを出した時,「ああ,こいつを仲間にできるようにしておけば良かった!」と後悔したんです。そこで「メタルマックス2」からは戦う犬をパーティに入れられるようにしました。「メタルマックス」シリーズは仲間キャラクターが寡黙なので,人間と対等かつしゃべらないという意味でも雰囲気に合っていたところがありましたね。
4Gamer:
そんな「メタルマックス」を,当時はプレイヤーとして遊んでいた友野さんはどんな感想を抱いていましたか。
友野祐介氏(以下,友野氏):
僕が「メタルマックス」を定義するなら“家庭用ゲーム史上,最も不遇なゲーム”といったところでしょうか。「モンスターハンター」という単語は今や「モンスターハンター」シリーズのものですし,ポストアポカリプスものの代名詞は「Fallout」となっています。初代作はスーパーファミコンが話題を呼んでいる時にファミコンで出ましたし,どれだけ運が悪いシリーズなんだろうと思いつつ遊んでました。
4Gamer:
確かに,いろいろな要素を先取りしていたところはありますね。
友野氏:
当時はRPGブームで,小学生ながらにいろいろなタイトルをプレイしていましたが,エンディングまでしっかり遊べたゲームってそんなになかったんです。その数少ない例外のひとつが「メタルマックス」で,自由度が高くて自分なりの遊び方もできるところに惹かれました。
しかし,周りに布教しようとしても誰も「メタルマックス」のことを知らないんですよ(笑)。“最高なのに不遇,最高だから不遇”といったところでしょうか。
4Gamer:
シリーズはずっとプレイされ続けていたのでしょうか。
友野氏:
もちろんです。「2」の発売日には,「最高のゲームなんだから売り切れるに決まってる!」なんて思いつつ,学校の終礼と同時にスーパーへ走ったんですが,行列ができてるどころか,ロクに入荷もしていない有様でしたね(笑)。その後「メタルマックス3」から制作に携わるようになり,現在に至るわけです。
4Gamer:
では河野さん,角川ゲームスのプロデューサー視点からはどうでしょう。
河野順太郎氏(以下,河野氏):
ゲームの歴史を振り返ってみると,異色の存在感を発揮していたタイトルという認識でしたね。この絶滅危惧種のようなゲームに巡り会えたことは,ある種の宿命だと感じています。人々の記憶に残っている「メタルマックス」の強さにチャンスを感じ,ちょうど再び絶滅が危惧されていたタイミングで(笑),私が担当するプロジェクトとして継続させていただくこととなりました。
4Gamer:
確かに,RPGの話をするとみんなタイトルを知ってるんですよね。
友野氏:
ただ「メタルスラッグ」と勘違いされることが多くて(笑)。「ああ,戦車が出てくるゲームですよね!」って言われて喜んでいたら,「昔ながらの横スクロールのアクションゲーム!」と続いて……。惜しいような惜しくないような。
4Gamer:
プレイしていない人からすると,「戦車が出てくるメタル……なんとか」みたいな認識なんでしょうか。ゲームファンとしては,「メタルマックス」と「メタルスラッグ」を間違えるというのはちょっと驚きなんですが。
友野氏:
人より世界にフォーカスしているゲームなので,「メタルマックス」ならこの人……という,アイコン的なキャラクター,たとえば「ファイナルファンタジーVII」のクラウドや,「ドラゴンクエスト」シリーズのスライムにあたる存在が「メタルマックス」にはいないことも大きいと思います。
4Gamer:
そこで「犬」や「Dr.ミンチ」「テッドブロイラー」の名前は出てこないんですね。
友野氏:
脇役としては立ってるんですけどね(笑)。
携帯機でのシリーズ入門編となる……はずだった「メタルマックス ゼノ」
4Gamer:
「メタルマックス3」からは,角川ゲームスよりシリーズが発売されていますが,「メタルマックス4 月光のディーヴァ」から「5」とはならずに,「メタルマックス ゼノ」(以下,旧ゼノ)として発売されました。同作のコンセプトはどういったものだったのでしょうか。
河野氏:
元々は,「メタルマックス」シリーズの魅力を,初めて触れる新しいお客様にも楽しんでいただけるようにとの方針で作られていきました。“手軽に”ということで,うちとしては初の参入ハードであった携帯機のPS Vitaもプラットホームに含め,ハードルが高いと言われてきた複雑な要素を見直しながら“戦車と人間のRPG”である点をシンプルに凝縮することを目指したのです。
要は“はじめての方でも楽しめる「メタルマックス」”として“面白い部分はあるけれど,その点が広く分かってもらえていない”というシリーズが持つ課題を解決するべくスタートしたという形でした。
宮岡氏:
「メタルマックス4」のセールスが振るわなくて,「俺たちは何か変えなければならないんじゃないか」という問題意識が強かったんです。そこにお話をいただいて作ったのが「旧ゼノ」です。
新規のお客様に受け入れていただくため,イカれた部分を減らし,広くRPG好きにも入りやすいことを意識しました。
コアなファンの中には,「これでやっと友達に勧められるゲームになってくれた!」と喜んでくれる人もいましたが,お話が少し「らしく」なかったり,いろいろな部分が中途半端になったのは反省すべき点です。意識改革が足りなかったのかもしれませんね。
河野氏:
PS Vitaで出すために1年半~2年で発売しないといけなかったのに,結果的に3年かかり,その間にハードウェアの状況が一変してしまったことも大きかったです。
4Gamer:
PS Vitaのピークが過ぎたということでしょうか。
友野氏:
それもありますし,ハードの性能が飛躍的に向上してしまったことも理由のひとつです。携帯機であるNintendo Switchで「The Elder Scrolls V: Skyrim」が動くような時代になっていますからね。
宮岡氏:
「旧ゼノ」の目標の一つは,世界をフル3Dで描いた今風のビジュアルを作ることにありました。デフォルメもやめて,リアルな頭身で勝負しようと考えたんです。
友野氏:
デフォルメ頭身とは違い,リアルな頭身ではそれに見合ったリアルなお芝居をさせなければならなくなり,それぞれに新規のモーションが必要になりました。
ただ,その時点ではリアルな頭身のRPGを作り慣れているスタッフばかりではなかったため,台詞はシリアスなのにモーションはマンガチックになるような,ちぐはぐさが出てしまったんです。デフォルメ頭身だとマンガとして納得できるんですが,リアルの頭身にすると途端に違和感を覚える……。このあたりはRPG制作者なら,みんな苦労しているところではないでしょうか。
4Gamer:
「旧ゼノ」の開発は,シリーズにとって,頭身が高めのキャラクターを使ったRPGの作法が確立していくまでの過渡期であったが,さらにハードの進化によってそれに追いついていくことが難しくなってしまったんですね。
友野氏:
過去の「メタルマックス」シリーズは,ドットキャラクターや記号的なデフォルメを巧みに使っていましたから,3Dへ移行するときの影響はひときわ大きかったですね。
例えば,戦車への乗り降り一つ取っても,デフォルメとリアル頭身で大きく変わってきます。これまではフィールド上の戦車に「乗降」コマンドを使えば,乗り降りを絵として描写することなく,そのまま戦車のドット絵を操作できていました。デフォルメされた絵なので,行間を想像してもらえば済んだんですね。
しかし,「グランド・セフト・オート III」が,こうしたデフォルメや省略のない,リアルな車両の乗り降りを描いた後で,デフォルメ路線を続けていくのではつらいものがあるわけです。
4Gamer:
ゲーム開発にかかる労力がどんどん肥大していると言われていますが,単にグラフィックスの解像度が上がっているだけが理由ではないということなんですね。犬がいなかった理由も,こうした労力の増大によるものでしょうか。
友野氏:
確かにその点も理由の一つでした。3Dグラフィックスで人間とまったく異なる骨格のキャラクターを作ると手間が大幅に増えてしまうんです。
宮岡氏:
犬は普段から見慣れていますし,少しでも不自然なところがあると違和感が大きくなってしまいますから。それに加えて,「旧ゼノ」で用意した「絶滅危惧種“人類”」の世界設定に犬が存在することのシナリオ的な意義にとらわれ過ぎていたかもしれません。
4Gamer:
少なからず犬も3D化のあおりを食らっていたわけですか。では,「旧ゼノ」において,意図通りに実現できたところとそうでないところはどこになるのでしょうか。
宮岡氏:
グラフィックスのフル3D化については,課題はあるものの基本的には実現できたと思います。ただ,見た目は今風にできたけれど,バトル等のゲームシステムはまだ旧態依然としたものでした。フル3Dでやるなら,根本から仕組みを変えなければいけなかったな,と。
友野氏:
あと,「メタルマックス ゼノ」では“可愛らしさを根絶すること”に失敗したと考えています。
4Gamer:
可愛らしさ,ですか。
友野氏:
そうです。具体的には,ドット絵やひらがな表現の可愛らしさですね。
宮岡さんは,「メタルマックス」には可愛らしさも大切だと考えています。まあこれは制作の内側に入ってみて意外だったことのひとつなんですけど。「旧ゼノ」では戦車も丸っこくて小さめだったりするのは,その表れでしょうか。
一方,僕はクールであることが「メタルマックス」の魅力であると思っています。フル3Dかつ頭身の高い世界で戦車を扱うなら,リアルなフォルムでないといけないですし,乗り込むときもしっかりよじ登る様を描写しなければいけないでしょう。
4Gamer:
過去作で持っていた「可愛らしさ」は,ハードの制約から生まれたもので,リアルな頭身にするのであれば変えなければならないと思ったわけですか。
友野氏:
モンスターの名前にも,過去作からある「いっぱつや」や「ぐんかんサウルス」といった“ひらがな的なもの”のムードが残ってしまっていました。宮岡さんとしては可愛らしさのイメージだったんでしょうけれど,僕はファミコンの表現力としてひらがなをうまく使って大人の雰囲気を表したものとして受け取っていたんです。ですので,リアルな頭身として表現するからには「ぐんかんサウルス」といった可愛らしさを持つ表現はよろしくないのかなと。
新たな「メタルマックス」の始まりとしての「メタルマックス ゼノ リボーン」
4Gamer:
そうした課題があった中で「メタルマックスゼノ リボーン」を出すわけですが,新作でなく「リボーン」とした理由はなぜですか。
友野氏:
まずは「メタルマックス ゼノ2」を作ろうという話が盛り上がり,いろいろと変更点を検討しました。けれどそれでは「メタルマックス ゼノ」の続編とは言いがたいものになることが分かりました。それであれば「ゼノ2」ではなく,最初の「メタルマックス ゼノ」を作り直した上で,さらに「ゼノ2」を作ったほうがいいだろうということになったんです。
構想していた「メタルマックス ゼノ2」の新しいシステムで「メタルマックス ゼノ」を一から作り直したのが「メタルマックス ゼノ リボーン」なんですよ。
河野氏:
オリジナル版の発売から2年でのリメイクというのはあまり例のない話ですが,「メタルマックスゼノ リボーン」は,見た目ももちろんですが,さらに触ってもらえれば「ここまで変えるの!?」「全然違うゲームじゃん!ここまでやるなら,短い期間でのリメイクも今回はしかたないかも……。」と言ってもらえるくらい変化しているはずです。
4Gamer:
ゼノを生まれ変わらせたから「リボーン」ということなんですね。では,「旧ゼノ」を遊んでいない人がいきなりプレイしても大丈夫でしょうか。
河野氏:
リスタートする作品なので,シリーズ未プレイの人を含め,ここからスタートしていただけることはもちろん大歓迎です。また,以前「旧ゼノ」を遊ばれた方でも,改めて楽しんでいただける価値は十二分にあるはずです。
4Gamer:
それなら新規プレイヤーも安心ですね。では「旧ゼノ」をプレイしていた人に向けて,リボーンで変わった点を教えてください。
友野氏:
3Dグラフィックスとリアル頭身,そしてシームレスバトルにより,あらゆるところが異なったものとなっています。元々は「メタルマックス」らしく「リターンズ」というタイトルも候補に挙がったりましたが,ここまで変えたなら……ということで「リボーン」に決定しました。
4Gamer:
「メタルマックス ゼノ」以上にリアルなグラフィックスになっているわけですね。
友野氏:
はい。フィールドではキャラクターと戦車,そしてモンスターたちのスケール感がより強調されています。例えば,パーティ中に戦車が1台だけだった場合,「旧ゼノ」では移動時にパーティメンバー全員が同乗していて,外から見えることはなかったのですが,今回は乗車していない仲間が戦車の砲塔や車体に腰掛けることになります。
走って追いかけてくる事も考えたのですが,戦車の移動速度を考えると不自然ですので,この仕様によりリアル頭身の「メタルマックス」にふさわしい絵面になっていると思いますね。
宮岡氏:
“戦車の上に人が乗っている”という表現は,かつての「メタルマックス」でやろうと思いつつもハードウェアの制限でできなかったものなので,こうして実現しているのを見て感動しました。「メタルマックス2」で山本貴嗣先生が描いてくれたパッケージの絵が,30年近い時を経てやっとゲームの中で実現できたわけです。
4Gamer:
犬も砲塔に座ってくれるんですね。確かに,操縦者以外の人員を戦車で運ぶならこうなるだろうなという絵面だと思います。
友野氏:
あと,改造の自由度はさらに上がっています。戦車を改造するとグラフィックスも変化するんですが,主砲などのパーツが見た目に影響を及ぼすのはもちろんのこと,ダメージを受けると「装甲タイル」が剥がれ落ちたりするようになりました。
あっ! これはまだ公開していない情報なんですが,「旧ゼノ」での「ETシールド」に代わり「リボーン」では,戦車に「装甲タイル」を貼り付けることとなります。この点も原点に回帰したところでして,その様がリアルにグラフィックスで表現されるのはシリーズ初となりますね。
4Gamer:
戦車のHPとも言える装甲タイルはある意味シリーズの名物ですから,リアルに表現されると嬉しいファンも多いんじゃないでしょうか。
友野氏:
また,マップ上にはリアルなスケール感を持つモンスター達がうろついています。例えば,「うろつきポリタン」はドット絵で見ると小さくて可愛いマスコット的な存在でしたが,本作では人間とほぼ同じか,それ以上の体高として表現されています。
4Gamer:
確かに,トンネルの中で群れている姿などはちょっと怖いと思えますね。ドット絵だと可愛らしさが先行していましたが,リアル頭身になると,ユーモラスなところを残しつつもモンスターっぽくなっているという印象です。
友野氏:
モンスター達は,群れで行動する小型や中型のものでも人間よりはかなり大きく,さらに大型のものは,「本当に倒せるの?」と思うくらいのサイズになっています。巨大さの表現も,「メタルマックス ゼノ」からさらにリアルになっていて,大型モンスターはかなり遠くから姿を確認することができるくらいです。
宮岡氏:
前作とは見える距離自体が違っていて,かなり遠くにいるモンスターや地形まで視認できます。画面から受ける雰囲気もかなり変わっていますよ。
友野氏:
空中のモンスターは上空から爆撃をしてきたりもします。また,夜になるとモンスターの行動が変化しますから,よりリアルな感じが増していますね。
4Gamer:
夜のモンスターは眼が赤く光って恐ろしいものがありますね。戦闘シーンはどのように変化しているんでしょうか。
友野氏:
「旧ゼノ」では例外を除いて,1体だけ出現するモンスターのシンボルに接触すると画面が切り替わってターンベースの戦闘を行っていました。そのシンボルを戦車の大砲を撃って先制する「射撃モード」もありましたが,こちらは自動で照準され,このモンスターに先制攻撃をしかけるか否かを判断するというものだったんです。
しかし「メタルマックス ゼノ リボーン」では,戦闘モードに画面が切り替わることなく,「Dynamic Multi Range Battle」に突入します。戦いはリアルタイムで進行するコマンドバトルですが,移動も可能でマップ上の位置関係や距離が戦闘に影響を及ぼすようになりました。
4Gamer:
マップからシームレスにバトルが展開するというわけですね。
友野氏:
そうです。フィールド上にはさまざまなモンスターが徘徊していて,こちらから攻撃を仕掛ける場合は,対象となるモンスターに,まずはロングレンジからの射撃を行うことになります。
「旧ゼノ」と同じだと思うかもしれませんが,今回は撃てば必ず当たるというものではなく,多くの標的の中から手動で射撃したいモンスターに照準を合わせて攻撃,ダメージを加えることで戦闘がスタートするのです。モンスターとの接触による戦闘開始でもいいのですが,特に強敵と戦う際に先制したい場合などは,この方法で戦っていくことになるでしょう。
ちなみに,照準を補佐するエイムアシスト的な機能があるので,アクションゲームほどシビアな狙いは必要ありません。そこは安心してください。
4Gamer:
敵が群れの場合,1匹に攻撃を当てると,周りの敵が一斉に反応して殺到してくるんですね。これはなかなか怖いです。
友野氏:
戦闘モードに画面が切り替わるわけではないので,戦いの前から位置関係が非常に重要ですね。モンスター達にはそれぞれ視覚による感知範囲が設定されています。感知範囲にこちらが入ると気配メーターが溜まり,最大値になると攻撃を掛けてくるんです。逆に,うまく後ろに回り込めば,気づかれずに通り過ぎたり,奇襲を掛けたりもできます。戦車の速度が速ければ,見つかったとしてもそのまま逃げ切れます。
4Gamer:
前回とはまったく異る戦闘になっているというわけですね。
友野氏:
地形の活用も重要になります。モンスターが地形の向こうにいるなら,手榴弾をどんどん放り込んで一方的に倒すようなことも可能です。要は“地形ハメ”的なものですね。また,逃げる際に障害物でモンスターの視線を遮ることで,うまく逃げ切ることもできますよ。
4Gamer:
モンスターの感知範囲外から攻撃するようなこともできるんでしょうか。
友野氏:
もちろんです。後方から忍び寄れば,ショートレンジ先制攻撃となって銃撃や斬撃で不意打ちができます。この時は攻撃力が大幅にアップするため,リスクを冒すだけの価値はあると思います。
4Gamer:
それは燃えるものがありますね。
友野氏:
今回は武器にそれぞれ射程距離がありますから,使い分けも重要になっていきます。例えば,降車して戦う際に使用できる刀は遠くに届きませんが,威力は高いので相手に近づいて使うのにはもってこいだったりします。
4Gamer:
戦闘中の流れはどのようになっているのでしょうか。
友野氏:
リアルタイム進行とコマンド選択式のハイブリッドです。順番が訪れたキャラクターごとにコマンドを入力するので,適切な判断が重要になってきます。
自由度が高まり,一人旅も可能に。帰ってきた犬や量より質へと変化したリメインズも
4Gamer:
主人公達の拠点である「アイアンベース」に変化はありますか。
友野氏:
ビジュアルから一新しています。前作ではハイテク研究所という趣がありましたが,今回のアイアンベースはわずかな生き残りが住む“鋼の砦”といったイメージでしょうか。前作のように無償で受け入れてくれるわけではなく,まずは自分がアイアンベースに役立つ人間であることを証明しなくてはいけないことも大きな違いでしょうね。
4Gamer:
アイアンベースをはじめ登場するメンバーは「旧ゼノ」と同じなのでしょうか。
友野氏:
同じです。ただ,特定の条件を満たすと全員に特殊なイベントが発生し,彼らの過去に何があったのかを知ることができます。かなり深いところまで描かれるので,感情移入もより深まるんじゃないでしょうか。詳細は今後の続報をお待ちください。
宮岡氏:
仲間を増やすかどうかもプレイヤーの意志に委ねられているので,見殺しにしていくこともできますよ(笑)。
4Gamer:
本作の重要なキャラクターで,ヒロインでもあるトニを見殺しにするようなこともできるんでしょうか。
友野氏:
もちろん見殺しにできます。アイアンベースに連れて行けるキャラクターが登場する際には選択肢が出現しますので,仲間に入れたくなければそのまま放置してもいいんです(笑)。
宮岡氏:
僕はプレイヤーの良心を信じていますけれどね(笑)。
4Gamer:
「メタルマックス」らしい自由度の高さですね。
友野氏:
ストーリー自体が存在しないような状態になりましたから,どこへ行くのもプレイヤーの自由です。モンスターを無視して進んだり,いきなりラスボスの所へ突撃するようなことも可能ですよ。もちろん,誰を助け,誰を連れて行くかも自由です。腕に自信のある方は,ぜひ低レベルでのクリアや一人旅,戦車無しといった縛りプレイにも挑戦してみてください。
4Gamer:
なるほど。「旧ゼノ」の2周目に存在する「ハンターモード」のような状態がデフォルトになるわけですね。
宮岡氏:
「メタルマックス」としての原点に回帰したということです。「旧ゼノ」では現代風の一本道RPGへ近づけようとして,どうしても中途半端になってしまったところがありますが,「メタルマックス ゼノ リボーン」ではそこは徹底しています。
4Gamer:
大きな変更点と言えば,“ポチ復活!”ということで犬を仲間にできますよね。モデルになっている犬はいるのでしょうか。
友野氏:
柴犬(しばいぬ)がモチーフですが,特定のモデルはいません。「シリーズで一番カワイイ犬にしてくれ!」とオファーしたんですが,犬好きのスタッフが頑張ってくれたので,かなりいい感じになっていますよ(笑)。なでてあげることもできますし,なついてくると「お手」をはじめとしたいろいろな芸を見せてくれるようになります。戦いに出さずに,アイアンベースで座敷犬として飼うこともできます(笑)。
4Gamer:
それは楽しみですね。
友野氏:
2019年10月1日に行われたトークイベント「METAL MAX 2021 Road to 30th Anniversary ~賞金稼ぎの集い 2019 Autumn KICK OFF~」でも,犬が登場することへの反応が凄く大きかったんですよ。
「メタルマックス」シリーズにアイコン的なキャラクターがいないのは,先ほどもお話しした通りです。そこで「旧ゼノ」では主人公のタリス君のような,キャラクターが立っていて,デフォルト名のある主人公を作ったんですが,トークイベントでの反応を見るとそれは違っていた。「メタルマックスにとってのクラウドは“犬”だったんだ!」と認識しましたね(笑)。
4Gamer:
戦車が入れず,降車しての探索と戦いを進める「リメインズ」についてはどうなっていますか。
友野氏:
前作のリメインズは「数が多い割に見た目があまり変わらず,やることも同じじゃないか」というご意見を頂戴していました。そこで今回は数を絞った上で,それぞれに趣向を凝らしたものとしています。例えば,とあるリメインズには下水道があり,お馴染みの「ミュータントワニ」が棲み着いています。水のあるところで戦ってもミュータントワニの体力が回復していくため,なんとかして水を抜く手段を探さなければならないわけです。
4Gamer:
単に背景のグラフィックスが違うだけでなく,攻略するためのプレイそのものが変わってくるんですね。
友野氏:
リメインズの攻略は必須ではありませんが,いいアイテムが手に入ったり,突破すると人間でしか行けなかった場所に戦車で乗り込めるようになったりします。強敵が潜んでいるようなところで,戦闘が楽に行えるようになることもあるわけです。この辺りは,過去シリーズにあったお約束的なことが再びできるようになりました。
4Gamer:
シリーズならではの自由度がここにも!シリーズファンには嬉しいこと尽くしですが,新規プレイヤーに向けてはどうでしょうか。
友野氏:
我々が「メタルマックス」から得られた良い思い出を詰め込んでいますから,シリーズをまったく知らない若い人にもぜひ遊んでほしいですね。自分が初めて「メタルマックス」シリーズを遊んだ時に感じた面白さを体験してもらえると思います。
また,シリーズのファンにとっても,縛りプレイから自分だけの物語が見えてくるなど,原点回帰した内容になっていますから,「メタルマックス」の原点ってやっぱりイカしてる!……と改めて感じてもらえれば嬉しいです。
30周年に向けて,よりナラティブに進化する「メタルマックス」
4Gamer:
2020年1月17日にはトークイベント「METAL MAX 2021 Road to 30th Anniversary ~賞金稼ぎの集い 2020 Happy New Year!~」が開催されますが,どのような内容になるんでしょうか。
河野氏:
初となる「メタルマックス ゼノ リボーン」の実機プレゼンテーションを実施します。前回のイベントは「メタルマックス ゼノ リボーン」と「メタルマックス ゼノ リボーン2」(PS4 / Switch),そして「コードゼロ(仮称)」の発表がメインでしたが,今回は「メタルマックス ゼノ リボーン」を中心に,このインタビューでも説明させていただいたことのお披露目含め,とことんリボーンしたゲーム内容や,こちらもリボーンしたゲームサウンドをどこよりも早く,深く,お伝えしようと準備中です。
イベントの申し込みはまだ受付けていますので,気になる方はぜひ足を運んでみてください。
トークイベント「METAL MAX 2021 Road to 30th Anniversary ~賞金稼ぎの集い 2020 Happy New Year!~」が2020年1月17日に開催。最新作「メタルマックス ゼノ リボーン」の新情報も
角川ゲームスは本日,トークイベント「METAL MAX 2021 Road to 30th Anniversary ~賞金稼ぎの集い 2020 Happy New Year!~」を,2020年1月17日に開催すると発表した。会場は前回と同じ東京・LOFT9 Shibuyaで,「メタルマックス ゼノ リボーン」の開発実機によるプレゼンテーションなども行われる。
会場「LOFT9 Shibuya」イベントページ
4Gamer:
ファンには見逃せないイベントになりそうですね。そういえば「メタルマックス ゼノ リボーン2」と「コードゼロ(仮称)」の開発も発表済みでしたが,こちらは内容などが決まっていますか。
宮岡氏:
現段階ではまだ,どちらにも発表できる情報はありません。もう少しお待ちいただければ。ただ,“プレイヤーごとに違う物語が紡がれる”ことを今はナラティブといいますが,これはかつての「メタルマックス」がすでに実現していたことです。なので「メタルマックス ゼノ リボーン2」では,よりナラティブになっていくでしょうね。かつてデフォルメされた頭身とドット絵で記号的に描いていたような工夫も,今のゲーム機では必要なくなるわけですから,表現もより進化していくと思います。
4Gamer:
時代が「メタルマックス」に追いつき,そして「メタルマックス」はその先を目指すわけですね。では,最後にファンや読者に向けてメッセージをお願いできますか。
河野氏:
「メタルマックス ゼノ リボーン」は「旧ゼノ」の発売から2年という短い期間でお届けするリメイク作品と言えますが……,この作品を正しく表現するならば「リメイク」でも「リターンズ」でもなくしつこいようですが「リボーン」です。
触っていただければまったく新しい体験が待っていることがお分かりいただけると思います。シリーズファンに納得していただけて,新規プレイヤーも興味を持たれるリボーン“再誕”となっていますので,発売をお待ちください。
友野氏:
もはや“リメイク”ではなく“完全新作”と言っても差し支えないよう仕上げています。前回プレイされた方も,その違いに驚いていただけると思いますよ。デカくてイカれたモンスターどもを戦車でブッ飛ばす,好き勝手に進められる自由度の高いRPG,そんな面白さを目指して開発を進めていますのでご期待ください。
宮岡氏:
未来へ向かって挑戦し続ける新しい「メタルマックス」の姿を「メタルマックス ゼノ リボーン」で感じていただけると思いますので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
「行くぜ!30周年!!新世代メタルマックスプロジェクト【公式】」Twitter
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