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[インタビュー]オンセツール「ココフォリア」はどこへ向かうのか。開発者・鳥頭めう氏に聞くTRPGオンラインセッションの現状と展望
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印刷2023/05/02 09:00

インタビュー

[インタビュー]オンセツール「ココフォリア」はどこへ向かうのか。開発者・鳥頭めう氏に聞くTRPGオンラインセッションの現状と展望

 テーブルトークRPGと聞いて思い浮かべる風景は,一昔前なら大きめの机を囲んでキャラクターシートを広げ,ダイスを転がして遊ぶというのが普通だった。しかし,今は自宅のPCと向き合い,ブラウザの向こうの世界に思いをはせるのが一般的かもしれない。テキストまたはボイスによるチャットと,ダイスbotなどを駆使して遊ぶオンラインセッションの普及が,その有り様を一変させてしまったからだ。

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 そうしたムーブメントに一役買っているのが,無料で手軽に扱うことができ,凝った演出も可能なオンラインセッションツール「ココフォリア」だ。ファンベースの開発からスタートし,今は法人も設立され,株式会社ココフォリアが窓口となって開発続けられている同ツールだが,その法人代表にはテーブルトークRPG業界を古くから知る,冒険企画局の近藤功司氏も名を連ねている。
 今回4Gamerでは,ココフォリアをゼロから作り上げた開発者である鳥頭めう氏に加え,その近藤氏にも同席していただき,ココフォリアの成り立ちについてインタビューを行った。その歴史と展望を手がかりに,テーブルトークRPGの今と未来を見ていこう。

「ココフォリア」のプレイ風景
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「ココフォリア」公式サイト



「ココフォリア」の誕生と,その設計思想


4Gamer:
 本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは自己紹介も兼ねて,お二人の「ココフォリア」への関わり方から聞かせてください。ココフォリアはめうさんが始められたプロジェクトと聞いていますが,制作のきっかけはなんだったのでしょうか。

鳥頭めう氏。「ココフォリア」の開発者であり,株式会社ココフォリア代表でもある。本人曰く「ネットの人なので」とのことで,今回はイラストでの紹介とさせていただいた
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鳥頭めう氏(以下,めう氏):
 今から5〜6年前,友達に誘われてテーブルトークRPGを始めたんですが,これがすごく面白かったんですよね。ちょうどリプレイ動画から入ったファン層が増えていた時期で,すごく盛り上がっていたと思います。
 一方,自分自身は長らくソフトウェアエンジニアとして働いて,そのスキルを活かして何か作ってみたいと考えていました。それらが組み合わさってできたのが,ココフォリアというプロダクトです。

4Gamer:
 めうさんご自身も,動画を観てテーブルトークRPGを始められたんですね。では近藤さんはいかがでしょう。ココフォリアに関わることになったのは,どんな経緯からだったのでしょうか。

近藤功司氏(以下,近藤氏):
 私は冒険企画局というレーベルで,テーブルトークRPGの開発や普及に長く携わり,このジャンルの趨勢をずっと見ていました。オンラインで遊ぶ仕組みが生まれてからも,こうしたサービスが商業出版とどう向かい合っていくのか,興味を持って観察していたんです。

4Gamer:
 興味というのは,どういったことに対してでしょう。新しい遊び方にワクワクするような?

近藤氏:
 それもありますが,ハラハラというのが正直なところですね。既存の権利との衝突による混乱や炎上が,熱意のある人を萎縮させてしまったら,この文化が終わってしまいかねないと。
 そんな中,優れたサービスであるココフォリアの規模が大きくなってきて,最初はアドバイザー的な立ち位置で関わるようになりました。

4Gamer:
 ココフォリアを応援することが,業界全体にプラスになると?

近藤功司氏。老舗のテーブルトークRPG制作プロダクション・冒険企画局代表。また株式会社ココフォリアでも代表を務める
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近藤氏:
 テーブルトークRPG界の基盤を支えるソフトウェアになってほしいなと。あと,トラブルなく前に進んでほしいとの思いからですね。新しいことをやるには,オンラインとオフライン,双方の感覚を理解できる人間が道を作る必要があるかな,と。いったん拓けさえすれば,あとは皆が通っていけるようになりますから。

4Gamer:
 めうさんとしては,近藤さんの申し出を聞いて,どう思われたのでしょうか。

めう氏:
 そうですね……対面で遊ぶのが普通だったこれまでのテーブルトークRPGファンと,動画から入ってきてオンラインで遊ぶのが中心の新しいファン層って,当時はけっこう距離感があると感じていました。だから古参のファンの皆さんから,僕らがどう見えているかというのは,気になっていたことの一つだったんです。
 そうしたタイミングで近藤さんからアプローチをいただけたので,ありがたく頼らせてもらったという感じです。

4Gamer:
 近藤さんとしては,どうしてココフォリアを選ばれたのでしょう。候補となるオンラインセッションツールは,ほかにもいくつかあったと思うのですが。

近藤氏:
 これ説明が難しいんですけど,めうさんはいわゆる“プロシューマー”的な感覚を持っている人だと,私からは見えたんですよね。恐らく,経歴にひもづいたものだと思うんですけど。私も趣味でプログラムを書きますが,めうさんから職業エンジニアとしてのプロ意識のようなものを感じたんです。

めう氏:
 恐縮です。ただファンベースやボランティアベースのプロダクトの危うさみたいなものは,僕自身ずっと感じていたことなんです。例えばすごく優秀なエンジニアが1人いて,プロダクトがその人の熱量によって支えられたいたとしたら,批判なども含めたものすごい負荷が,個人にかかることになります。そこに依存していたら,ある日すべてがガラガラと崩れかねない。

4Gamer:
 よく分かるお話です。

めう氏:
 なのでココフォリアがある程度軌道に乗ったとき,そうならないよう自分以外の開発メンバーを探すことにしたんです。僕がいなくなってもココフォリアのコードに触れる人が必要だと感じたので。ソフトウェアというのは家なんかと一緒で,手を入れる人がいないと,いずれダメになってしまいます。
 コストというのも単なるサーバーの維持費だけを指しているのではなく,そういう営みを含めたリソース全体の話なんです。それがシステムの一部として組み込まれていないと,プロダクトは長く続かない。そういう考えが最初からありました。

近藤氏:
 こういう感覚が大事で,かつ難しいことなんですよね。

4Gamer:
 なるほど……そうした経緯を経て,今は法人(株式会社ココフォリア)を設立して開発を進められているとのことですが,なぜ法人を立てられたのでしょうか。

めう氏:
 ボランティアベースだったココフォリアが大きくなって,扱う金額も大きくなり,社会的な責任も重くなってきました。サーバーが落ちたら困る人がいっぱいいるわけです。なので法人格があったほうが皆も安心できるという考えは,ずっと持っていました。ただ……。

4Gamer:
 ただ?

めう氏:
 ただ,ココフォリアというプロダクトは,僕の中では“街”のようなイメージなんですよ。最初期からボランティアで開発を手伝ってくれた開発コントリビューターが家としてあって,ちょっと離れたところには翻訳をやってくれる人達が住んでいる。もちろん熱心に応援してくれるユーザーの皆さんもいて,そういうものをひっくるめた街がココフォリアだと。だから株式会社というのはそのごく一部,街の役場みたいなものに過ぎないと思っています。

4Gamer:
 総体としてのココフォリアは,法人ができても変わりないと。その役場――法人の代表をめうさんと近藤さんのお二人が務めるわけですね。

近藤氏:
 私の代表権はめうさんを補佐するために持っているようなものなので,私が会社をどうこうすることはありませんけどね。もし意見が対立することがあったら,優先されるべきはめうさんの意見です。

4Gamer:
 会社としてのココフォリアには,今は何人くらいのメンバーが在籍されているのでしょうか。

めう氏:
 僕のほか,フルタイムの人がもう2人。アルバイトさんや業務委託で関わってもらっている人を含めても,全体で10人いかないくらいの規模です。

4Gamer:
 開発自体は,今も社外のボランティアによって行われているという理解でいいですか?

めう氏:
 元々はそうでしたが,現在はある程度,法人側の開発チームに引き継いでいます。元の開発チームのメンバーにはそれぞれ本業もあるので,無理のない範囲で関わってもらっている形です。皆テーブルトークRPG好きなので,「こういう機能を作ろうと思うんだけど,どう思う?」って相談すると,忌憚のない意見をくれます(笑)。

4Gamer:
 先ほどの,“街”のメンバーの皆さんですね。……少し下世話な話になりますが,現状は採算が取れている状況なんでしょうか。

めう氏:
 どのレベルになれば「採算が取れている」と言っていいのか分かりませんが,とりあえずココフォリアのためにフルタイムで働く人が何人かいるという状態ではあります。「オンラインセッションツールでは採算がとれない」という空気のところから始めて,今ここまで来ることができたので,階段の一段目は登れたんじゃないかと思っています。


現状と課題――より豊かなサービスを目指して


4Gamer:
 では少し切り口を変えて,どんな人がココフォリアを利用しているのか,ユーザー属性的な部分を聞いてみたいです。例えば性別や,プラットフォームの分布に特徴はありますか。

めう氏:
 あくまで分析ツール上の推定値ではありますが,男女比は4:6くらいで女性が若干多め。年齢層は10代から30代半ばまでで9割といった状況です。プラットフォーム別で見ると,今どきのWebサービスとしては珍しく,デスクトップPCからのアクセスが6割を占めています。オンラインセッションはゲームマスターが資料を用意したり,盛り上げるために画像や音楽を用意することが多いので,これはその影響かと思います。

4Gamer:
 ユーザー数ではいかがでしょうか。

めう氏:
 MAU(Monthly Active User)で35万ほど。同じ端末から複数回アクセスしても1人と数えるので,これはほぼユニークユーザーに近い値です。概ね1万人ほどが毎晩オンラインセッションに参加している計算になります。これがリアルのコンベンションだったら,ものすごい規模になりますね(笑)。

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4Gamer:
 それはすごい。近藤さんに伺ってみたいのですが,テーブルトークRPGのプレイ人口について,これまで参考になる数値ってあったのでしょうか。

近藤氏:
 計りようがないですよね。何をもってプレイ人口とするのかにもよりますし。例えば関連雑誌の発行部数や,イベントへの応募者/参加者数あたりで類推するしかないですが,これでは昔遊んだけど今は離れている人や,ルールブックや関連書籍を買って読むだけの人は含まれないことになってしまいます。

4Gamer:
 確かにテーブルトークRPGは,そういうファンが多そうなイメージがあります。

近藤氏:
 かつて「ソード・ワールドRPG」華やかなりし頃は,累計200万部とか売れていたわけですから,人口はかなり多かったはずです。私が知るうちで一番リアクションが大きかった事例で言うなら,女性向け漫画誌でコンベンションの応募をかけたとき,10万単位の反応があったと聞いています。ただこの辺になると,もはや考古学みたいな話ですから(笑)。

4Gamer:
 なるほど……。

近藤氏:
 そこへ行くと,今めうさんが出された数字は,実際に今遊んでいる人をカウントしているわけだから,すごいですよね。それにココフォリア以外のツールで遊んでいる人もいるわけですし,興味はあるけど手を出せずにいるといった潜在的な層まで考えると,ジャンル自体の伸びを感じます。

4Gamer:
 遊ばれているタイトルで言うと,やはり「クトゥルフ神話TRPG」が多いのでしょうか。

めう氏:
 そうですね。ココフォリアは基本的にシーン制で遊ぶことを想定しているので,そうではないタイトルの数値は,ココフォリア内では実際のよりも低く出ているかと思います。

4Gamer:
 マーダーミステリーはいかがですか。

めう氏:
 ゲームシステムはプレイにあたって選択されたダイスbotでカウントしているので,ダイスbotを使わないマーダーミステリーの数値は正確には分かりません。ですがボリュームとしてインパクトのある数値ではないと思います。

4Gamer:
 となると,やはり「クトゥルフ神話TRPG」の強さを感じますね。

めう氏:
 これは肌感でしかありませんが,最近は皆さん,サブとして遊ぶゲームシステムを持ってる人が増えているように感じています。「クトゥルフ神話TRPG」がメインの人が多いのは確かですが,それ以外を遊ぶこともある。一見して「クトゥルフ神話TRPG」に偏っているように見えるのは,サブに選ばれるシステムが割れているせいなんじゃないかと。

4Gamer:
 ちなみに,めうさんご自身はいかがですか。

めう氏:
 僕も「クトゥルフ神話TRPG」からテーブルトークRPGの世界に入りましたが,色々な人と関わりができたこともあって,ほかのシステムを遊ぶ機会も機会も多くなりました。新作のテストプレイに呼ばれることもありますし……最近だと「人鬼血盟RPGブラッドパス」「ロストレコード」「パラノイア」の新版なんかが面白かったです。最近やってみたいと思っているのは「サイバーパンクRED」ですね。アニメがすごく面白かったので。

近藤氏:
 私としては,あるタイミングで一つのシステムが支配的になるのは,そういうものなんじゃないかと思っています。好みのシステムはいろいろあれど,共通項が一つあればそれだけで,一緒に卓を囲めるわけですから。例えば「D&D」を長く遊んでいる人と,「シノビガミ」「インセイン」「エモクロアTRPG」が好きな人,マーダーミステリーからテーブルトークRPGを知った人が,「クトゥルフ神話TRPG」を介して交流できるんだから,いいことなんじゃないですか。



「CCFOLIA PRO」がなぜ必要なのか


4Gamer:
 ココフォリアの現状は分かってきました。では今後に向けた取り組みとして,現在発表されている「2.0」および「CCFOLIA PRO」について,詳細を聞かせてください。

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めう氏:
 「2.0」は,当初「1.x」をリニューアルするものとして進めていましたが,現在は「1.x」の計画に一部統合されています。プレビュー版の段階で,一度に大きく変更するよりは,地道に「1.x」をアップグレードしていくほうが,ユーザーさんも喜ぶだろうなという感触があって,時間をかけてやっていくことになりました。

4Gamer:
 えっ,そうなんですか。当初の予定より遅れるとは聞いていましたが,開発自体は続いているものかと思っていました。

めう氏:
 「2.0」の構想は,実はまだ表に出していないことのほうが多くて,開発自体は別軸で続けていくつもりです。ただ,今はそれよりもユーザーさんからの支援――つまりは寄付によって成り立っている現状からの脱却をしなければならないなと思っています。成り立っているとは言いましたが,今後を考えるとシンプルに収益が足りていないということもまた事実です。将来的にずっと続けていくためには,さらにステップアップする必要があります。

4Gamer:
 おっしゃるとおりだと思います。それが「CCFOLIA PRO」ということですか。

めう氏:
 はい。3月20日にスタートした「CCFOLIA PRO」は,1.xにおけるプラスアルファの機能を月額500円(税込)で提供するサブスクリプションプランです。現状ではもともと支援者向けの隠し機能だったルーム複製などの便利機能と,Audiostockさんとの提携によるサウンドライブラリ機能,告知枠のスキップ機能が利用できます。

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4Gamer:
 では,当面は1.x系列のまま続いて行くわけですね。「CCFOLIA PRO」を利用しない場合は,これまでどおりですか?

めう氏:
 そうなります。課金率を考えると,無料版にもう少し制限をつけたほうがいいんでしょうけど……テーブルトークRPGは始めるまでのハードルがそこそこ高い遊びだと思うので,遊ぶ場所にお金を払わないとスタートラインに立てないというのは,あまりいい気持にはなれないと思うんですよ。なるべく皆が不自由なく遊べる環境を維持しながら,お金も回る構造を作っていきたいと思っています。

4Gamer:
 例えばなんですが,ココフォリアの広告枠をパブリッシャに販売するようなモデルは考えていないのでしょうか。

めう氏:
 そういう事例もなくはないのですが……僕が業界のことがよく分かってないことが前提の話ですけど,それって健全なのかな? っていう疑問がずっとありまして。

4Gamer:
 健全とは?

めう氏:
 僕が聞いている限りですけど,テーブルトークRPGって正直そうそうお金になるものではないと思うんですよね。一冊の書籍で,ヘタしたら一生遊べてしまう遊びなわけですし。そこに僕らが積極的に「広告費ください」って言うのって,果たしてどうなんだろうと。業界全体のお金の流れを考えたとき,むしろ楽しませてもらっている僕らが,クリエイターに還元するべきなんじゃないか。今はそんな風に考えています。


シナリオ投稿サイト「TALTO」が生まれたワケ


4Gamer:
 ココフォリアのもう一つのサービスである,シナリオ投稿/販売サイト「TALTO」についても聞いてみたいです。そもそもですが,これはどういった経緯でスタートしたものなのでしょうか。

めう氏:
 「TALTO」は,僕らが会社組織を立ち上げるにあたってのチャレンジとしてスタートしたサービスなんです。ココフォリアというメインのプロダクトを走らせる前に,自分達に何ができるのかを確かめておきたかった。それに組織としても複数のサービスを持っていたほうが健全ですし,ノウハウも溜まりやすいですから。

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シナリオ投稿サイト「TALTO」


4Gamer:
 ということは,採算性はあまり考えていないんでしょうか。設定されている料率などを見ていると,正直あまり儲かるようには思えないのですが……。

めう氏:
 いえ,サービスを続けていくためには,採算はやはり取らなくてはなりません。ただ……これは例え話ですけど,パン屋が一軒もない街にパン屋を作るのは,これは意味のあることじゃないですか。でもこの場合の意味って,そのパン屋が儲かることではないと思うんですよ。

4Gamer:
 というと?

めう氏:
 大事なのはパンが供給されて皆が豊かになることであって,儲かるかどうかではない。でもパンを供給し続けるためには,収益がなくてはならない。僕としては,そういう考えなんです。だから「TALTO」についても,継続できる最低限の収益が確保できていれば,今のところはそれでよし,というのが今の状況ですね。

4Gamer:
 ああ,面白いですね。近藤さんの言うプロシューマー的な部分というのが,少し分かってきたような気がします。では,利用状況としてはうまく回っているんですね。

めう氏:
 そうですね。ココフォリアのシステム利用率と比べると,「クトゥルフ神話TRPG」がそこまで支配的ではないのも特徴だと思います。新作に人気が集まりやすくて,幅広いファンがついていると感じます。

4Gamer:
 いわゆるランキングの機能がありませんが,これは意図したものですか。

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めう氏:
 そうですね。好きでやっていることに順番をつけられたらイヤな気持ちになることもあるでしょうし。でも一方で,「順位が上がってうれしい」と感じる人もいますし,難しいところです。例えば期間限定のコンテスト形式にするとかで,住み分けができればいいんじゃないかって考えています。

4Gamer:
 今後の機能強化について,ほかに何か考えていることはあるでしょうか。

めう氏:
 現在は,基本的にシナリオのみ投稿を受け付けていますが,将来的にはもっといろいろなものを販売できるようにしたいですね。例えば自作のゲームシステムであったりとか。あと,いわゆる「このシナリオを買った人は,このシナリオも遊んでいます」みたいな,レコメンド機能もいいと思っています。

4Gamer:
 個人的にはココフォリア用ルームデータそのものが販売できるようになると,ゲームマスターが準備する手間が省けて助かるのですけど。アカウント連携で,ココフォリアに準備済みのルームが即生成されるみたいな。

めう氏:
 そういう連携機能は,もちろん強化していきたいですね。それにココフォリアのノウハウを活かした何かというのは,「TALTO」以外にもチャレンジしたいと考えています。

4Gamer:
 「TALTO」以外の何か?

めう氏:
 あくまで僕の視点でですが,テーブルトークRPGは今,それなりに流行していると思うんです。でも10年後20年後を考えると,どうなっているか分からない。それでもココフォリアの提供を続けて行くには,第二第三のサービスは用意しておくべきなんじゃないかって思うんです。

4Gamer:
 具体的には,何かプランがあるのでしょうか。

めう氏:
 今考えているのはココフォリア内のゲームストアですね。今のココフォリアは遊ぶものを外から持って来てもらう形ですが,理想を言えば,ココフォリアにアクセスしたらゲームがズラッと並んでいて,すぐに新しいゲームを始められるほうがいいじゃないですか。
 テーブルトークRPGだけじゃなく,ボードゲームや謎解きゲームなんかもすぐに買えて,すぐに遊べる。そのためのコミュニティも用意されている。そんなアナログゲーム版のSteamみたいなものができたら,きっと面白いんじゃないかと。

4Gamer:
 ああ,それはいいですね! あるいは日本版「ボードゲームアリーナ」みたいな。

めう氏:
 ただコミュニティの面は,今はDiscordやTwitterがハブの役割を担っていますし,とくに新しいものは必要ないのかもしれません。むしろそのほうが,外の世界とつながった開かれたコミュニティになりそうですし。

4Gamer:
 確かに,そのほうが今風かもしれないですね。もっとも,そのTwitterもいつまであるか,少々怪しくなってますけど。

めう氏:
 本当にTwitterがダメになったら,代わりを作るかもしれないですね(笑)。

ココフォリアを使った2人用対戦カードゲーム「OVERROID」のプレイ風景(リンクは外部サイト)
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オンラインセッションがもたらす未来


4Gamer:
 ここからは現状のプロダクトとしてのココフォリアからは少し離れて,お二人が理想とするオンラインセッションの形について伺ってみたいのですが,その前に。さまざまなオンラインセッションツールがあるなかで,ココフォリアの強みは何だとお考えですか。

めう氏:
 うーん……強いて言えばハードルの低さでしょうか。優れたツールがいくつもある中で,ココフォリアが飛び抜けて機能的に優れているワケではないと思うんですよ。それでもここまで大きくなれたのは,普段からココフォリアを使って遊び,応援してくれたユーザーの皆さんと一緒に歩んできたからじゃないかと。むしろ,そうしたコミュニティとの結びつきの強さが,強みなのかもしれません。

近藤氏:
 私としては,安定したサービスをここまで維持し続けているのが,すごいことだと思っていますけどね。365日24時間,オンラインサービスを維持し続けるのって,地味だけど大変なことなんですよ。個人的に尊敬の念さえ覚えます。

めう氏:
 ありがとうございます。こういうインフラ的なもので大事なのは,革新性や利便性よりも,明日も必ずそこにある安心感だと強く思います。都市開発と同じで,一度ひいた道路は,あまり利用されないからといって簡単には潰すわけにはいかないんです。なので10年後を見据えて設計する必要があります。

4Gamer:
 やっぱりサーバートラブルで夜中にたたき起こされたりとか,あったりしますか?

めう氏:
 ありますあります。あと利用者がいる時間には更新をかけられないから,皆が寝静まるまでずっと待ってたりですね。ただ一つ言っておかなくてはならいのは,ココフォリアのサービスがここまで安定しているのは,ユーザーの皆さんの協力あってのことだと思います。「共用のサーバーだから,負荷をかけないように」と,こまめにデータを削除したりしてくれて,とても助かっていますから。

近藤氏:
 テーブルトークRPGはプレイヤー同士が協力して進行していくゲームだからか,コミュニティも互助の精神が強い傾向にありますね。

4Gamer:
 なるほど。では別の質問になりますが,オンラインセッションツールには,ツールそのものによって遊び方が規定される側面があると思います。例えばココフォリアなら,立ち絵を使ったシーン制による進行になりがちであるとか。その点はどうお考えですか。

めう氏:
 「ココフォリアがあるから,こういう遊び方が流行している」と言われることは,確かにあります。それは批判的な意味でも,肯定的な意味でも。
……自分としては,例えばミニチュアゲーム的な遊び方をするシステムには,それに適した優れたツールがほかにあるので,住み分ければいいと思うんですよね。さっき例えで言うなら,すでにパン屋があるのに,隣に違うパン屋を建てなくてもいいかな,と。

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4Gamer:
 分かります。ただテーブルトークRPGの楽しさって……本来もっと多様なんじゃないかと思うんです。例えば,ただ,たくさんのダイスを振るのが楽しかったりとか,カードの手触りであったりとか。インタフェースの多様性って,アナログゲームの強みの一つだと思うので。国産のオンラインセッションツールは,とくにそうした側面を追求していないような気がするんです。

めう氏:
 ……そうかもしれません。ただ画面越しに遊ぶ場合には,そういった手触りを感じることは難しいと思うんです。じゃあ何が楽しいのかというと,“しゃべる”ことなんですよね。

4Gamer:
 しゃべること,ですか。

めう氏:
 これは皆がそうではないと思いますが,「なるべくたくさんしゃべりたいから,ゲーム時間は長ければ長いほうがいい」みたいな話もよく聞くんです。テーブルトークRPGというのは,普段とは違うシチュエーションや話題を提供してくれて,普段とは違うしゃべり方ができる,一種のコミュニケーションツールなのだと。

近藤氏:
 ゲームシステムの流行り廃りがあるように,遊び方も常に変わっていくものですからね。ココフォリアがユーザーの要望を反映したものであり続けるなら,新しい遊び方が現れたときには,また変わっていくんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 クリエイター側の冒険企画局としては,ココフォリアに望むことは何かあったりしますか。

近藤氏:
 私としては,ココフォリアにこういうことをやってほしいとは,これまであまり言わないようにしてきました。それはオンラインセッションが対面でのセッションを単に代替するものではなく,まった新しい遊びなんじゃないかと思っているからなんです。なので,自分が何か言ってもピントがズレてしまうかもしれませんし,今後も自由にやってほしいなと思っています。

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4Gamer:
 反対に,ツールの開発側としてテーブルトークRPGのパブリッシャやクリエイターに望むことはあるでしょうか。

めう氏:
 何か一緒にやりたいですね。テーブルトークRPG全体を,今よりもっと良くできるんじゃないかって,ぼんやりした思いがあります。やっぱり,ツールだけでは変えられないので。……抽象的な答えで恐縮ですけど。

4Gamer:
 では,そういうパブリッシャやクリエイターさんがいらしたら,ぜひ contact@ccfolia.com までご連絡を,ということで(笑)。

めう氏:
 それは,ぜひお願いします。連絡くださいって言うのも,なんか申し訳ないですけど。お前が来いよって感じですよね。「TALTO」ではパブリッシャさんと一緒に投稿イベントをやったりもしましたが,もっと色々なコラボができたらいいなと。

4Gamer:
 冒険企画局としては,オンラインセッションの普及による業界の変化というのは,肌感として何か感じていますか。例えば,ゲームの作り方が変わるような。

近藤氏:
 新しい大陸が見つかったのは確かですね。新大陸では新しい才能がどんどん出てくるでしょうし,彼らの描く未来像がビジネスの在り方も変えていくことも,間違いないと思います。とはいえ移住するかどうかは人それぞれですし,変わらないものもあると思います。

4Gamer:
 ビジネスというと,具体的には?

近藤氏:
 当面は紙媒体を中心に回っていたビジネスが,デジタル化によってどう変わるのか。電子書籍なのか,なんらかのサービスになるのかとか,その辺りの模索が続くと思います。あとはVRやAIといった技術と,どう融合していくかでしょうね。とくに海外のインディーズ作品なんかでは,その辺りも研究されてるみたいです。ただ……オンラインに特化して先鋭化していくと,結局デジタルゲームになっちゃうんですけどね。

4Gamer:
 確かに,境界が分からなくなりますね。それはそれで見てみたいですけど。
 では最後の質問になりますが,お二人は10年後,20年後のテーブルトークRPGは,どうなっていると思いますか。

めう氏:
 ……難しいですね。利用する技術は変わっても,本質的には変わらない……むしろ,変わらずにいてほしいかな。僕がテーブルトークRPGを好きな理由の一つが普遍性なので。情報をやりとりする方法が変わったとしても,本質はいい意味で同じように,そこにあり続けてほしい。そして歳をとった僕も,そこに混ぜてほしいです(笑)。

近藤氏:
 人が集まって語って聞いて,思いを積み上げるRPGの構造が生まれてから50年。私が関わるようになってからでも30年ですからね。その間に変化はあれど,コアの部分は変わっていません。だからあと30年経っても,やっぱり変わらないかもしれないですね。

4Gamer:
 ココフォリアが作る,テーブルトークRPGの新たな時代に期待しています。本日はありがとうございました。

「ココフォリア」公式サイト

シナリオ投稿サイト「TALTO」

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