インタビュー
貴銃士たちへの想いを聞く「千銃士:Rhodoknight」開発者インタビュー。華麗なる“復活”の裏に見えたのは,制作陣とファンの“愛”だった
銃の化身である“貴銃士”たちが活躍するマーベラスのスマホアプリ「千銃士:Rhodoknight」(iOS / Android。以下,千銃士R)は,前身となる「千銃士」(iOS / Android。2019年にサービス終了)から7年後の世界を舞台として,新たな物語を描く貴銃士育成RPGだ。物語,キャラクター,システムを一新して生まれ変わった本作は,「千銃士」がサービスを終了してからどのような経緯で作られることになったのか。華麗なる“復活”を遂げた本作について,本作のプロデューサーを務める大徳氏に話をうかがったので,千銃士の日(10月14日)である今日,その声をお届けしよう。
「新作発表に泣き崩れる方もいて,私たちも涙が出ました」(大徳氏)
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは大徳さんが,「千銃士:Rhodoknight」(以下,「千銃士R」)でどのような役割を担っているのかを教えてください。
大徳氏:
今作「千銃士R」では,プロデューサーとして作品に関わっています(関連記事)。全体的な方針や数字周り,スケジュールやプロモーションなどを見ている形ですね。世界観やキャラクター設定などは,前作同様に八破ツバシが原案を担当しているので,八破を中心とした原案チームをプロジェクト内に設けています。そこで検討したものを私も確認しているという感じです。
4Gamer:
ありがとうございます。前作からそういった役割だったのでしょうか。
大徳氏:
前作では,最初はディレクターとして携わっていたのですが,途中からプロモーション担当も兼任することになりました。私と八破の2人は,もう5年以上「千銃士」に関わっていますね。
4Gamer:
「千銃士」は大徳さんと八破さんありきの作品といえますね! 2018年に発表された前作を経て,「千銃士R」は“完全新作”として2021年11月にリリースを開始しました。本作を制作することになった経緯をお聞かせください。
大徳氏:
前作のサービス終了が決まった時点で,私たちもまだまだやりたいことがたくさんあり,何より応援してくださっているユーザーさんも多数いらっしゃったので,非常に悔しい想いがありました。決定したときは本当に,魂が抜けたような気持ちになって……。
ですが「千銃士」というIPには可能性を感じていましたし,このままでは終われないなと思ったので,次の展開を始められる準備は進めていこうと考えていました。
4Gamer:
作品とファンの皆さんへの想いがまず第一にあったわけですね。
大徳氏:
はい,それが一番大きかったです。皆さんの熱量が高かったので会社としても「『千銃士』というIPはぜひ続けていきたいよね」という意見が出ていました。その時点ではゲームを作れるとは決まってはいなかったのですが,まずは何かしらの形でプロジェクトを継続しようと……。
そんな流れで徐々に新作の話が現実味を帯びてきて,サービス終了と同時に動画を公開することができました。そしてその半年後に行われたライブ(2020年2月「絶対高貴LIVE2020 〜勲章授与パーティー〜」)で,完全新作ゲームとして発表するに至ったんです。
2019年6月11日に公開されたムービー「絶対✕✕」
千銃士プロジェクトから謎のムービーが届きました……!#千銃士#千銃士プロジェクト pic.twitter.com/QZKzWMWItT
— 千銃士【公式】 (@senjyushi_game) June 11, 2019
4Gamer:
あのライブは私も拝見していましたが,発表されたときのファンの熱狂は今でもよく覚えています。
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想いを歌に,言葉を勲章に刻んで――9人の貴銃士たちが贈る「千銃士 絶対高貴LIVE2020 〜勲章授与パーティー〜」ライブレポート
2020年2月24日,豊洲PITにて,「千銃士」のライブイベント「絶対高貴LIVE2020 〜勲章授与パーティー〜」が開催された。本稿では,夜の第2部公演を中心に,昼公演での見どころも含めたレポートをお届けしよう。
大徳氏:
大歓声でしたよね。会場の外に出たら泣き崩れているお客様もいて,こちらも思わず感極まって涙が出てくるくらいの熱量がありました。
4Gamer:
作り手冥利につきますね……。
大徳氏:
本当にうれしかったです。あの時点ではまだ走り始めたばかりでしたが,皆さんの姿を見て,すでに「やりきった!」という気持ちになったりもして(笑)。もちろん,すぐに気持ちを切り替えて開発を進めていきました。
こだわりが詰まった「千銃士R」。
7年後の世界になった理由とは?
4Gamer:
完全新作として「千銃士R」をリスタートするにあたり,いろいろなやり方はあったと思うんです。昨今だとゲームをリリースせず,音楽やアニメ,ボイスドラマを中心としたプロジェクトも多いですよね。今作もゲームとして動かしたのはなぜですか。
大徳氏:
音楽やボイスドラマから始めるという検討もありました。ただ,私としてはゲームで皆さんにお届けしたいという気持ちが強かったです。やはり千銃士はゲームからスタートしたプロジェクトですので,そこがないといけないかなと。
4Gamer:
なるほど。いわゆる“女性向け”だけではないと思いますが,さまざまな事情でサービスを終了してしまうアプリは多く,そこで終わってしまうタイトルがほとんどだと思います。こうして完全新作として制作するのはなかなかできないことですが,そのあたりについてはどう思われますか。
大徳氏:
「千銃士」をもう一度動かすにあたって,どのくらいの方に遊んでいただけるのか? というのはかなり検討しました。ゲームだけではなく,アニメや別のコンテンツでも続編であまり盛り上がらないパターンもあるので……。ですが「千銃士」は根底となる世界観はしっかりしているし,キャラクターの人気も高かったので,再び皆さんに受け入れていただけると判断しました。
4Gamer:
ファンの方にとっては願ってもない形の新作だったと思います。「千銃士R」は前作での経験を踏まえたうえで作られているわけですが,今作で大きく変えたところや改善したところ,工夫した点を教えてください。
大徳氏:
やはり,「長く続くコンテンツを作る」というのを一番のテーマに掲げました。前作から3年くらい後に出すタイトルなので,前作の良かったところは活かしつつ,新しいゲームとしてふさわしいアプリにすることを意識しました。
変えたところはいくつかあるのですが,例えば前作では「古銃 VS 現代銃」だったのを,今作では現代銃も味方にしてどちらもプレイアブルにしましたね。現代銃は前作で敵側でしたが,非常に魅力がありますし,チームでも愛着を持っていたので。
4Gamer:
確かにそうですね。では,ストーリーを前作から7年後の設定にされたのはなぜですか。
大徳氏:
前作ではいったんストーリーを終わらせていたんですよね。今作では「戦いが終わって世界は平和になりました,でも……」という展開にしたかったのが一番の理由です。
それと今作ではストーリー自体のボリュームをぐんと増やしました。前作ではユーザーさんの想像の余地を作るため,メインストーリーをあえて少なくしていたんです。でも今作では世界観への没入感をより深めていただきたいと思い,そういった方針に変更しました。
4Gamer:
ストーリーはかなり読み応えがありますよね。内容的にはいかがですか。
大徳氏:
個々のストーリーのなかに,歴史の要素を大きく盛り込んでいます。前作へのご意見で「もっと銃の歴史に触れてほしい」というのがあったので,今作の改善点としました。
4Gamer:
かなり進化したシステム面はどうでしょうか。
大徳氏:
先ほどもお話ししましたが,2021年にリリースするにふさわしいアプリにすることを強く意識しました。最新の市場に参入するにあたって,コンテンツをもっとリッチ化しようと。Live2Dやアニメーションを入れるなど,遊びの面でもユーザーさんを飽きさせないようにしたかったんです。
あとは前作を知らない人が置いていかれないように,リリース前からYouTube公式チャンネルで「教えて!ジグせんせい」といった初心者向けコンテンツを作り,ゲーム内にもチュートリアルとして入れたりなど,以前からのユーザーさんと新しいユーザーさんのどちらも楽しんでもらえることを考えました。
【千銃士】YouTube公式チャンネルの「教えて!ジグせんせい〜1分でわかる千銃士〜」
4Gamer:
そうしたコンテンツのほか,「千銃士R」ではPVなどもよく見かけるようになりました。
大徳氏:
今作はプロモーション部分にもかなり力を入れています。リリース前からアニメーションPVを作り,国ごとのロードストーリーPVなども……。前作ではあまり出来ていなかった,映像部分にも力を入れてこられたかなと思います。
4Gamer:
ファンの方もうれしいですよね。では逆に,変えなかったところやブレずにいようと思ったことは何でしょうか。
大徳氏:
やはり“銃の擬人化”が第一で,キャラクターの設定は銃の歴史をもとにした背景のあるキャラクターだという点です。もちろん世界観も変えてないですね。
4Gamer:
1つ気になったのですが,ゲームジャンルについてはどうですか。ストーリーに力を入れたということなので,いっそゲームはパズルなどもっと手軽なものに……といった案などはなかったのでしょうか。
大徳氏:
「千銃士」は“敵と戦う”こともテーマとしてあるので,バトルは外せなかったです。前作は止め画だったところをミニキャラを使ったモーションをつけたり,SEやモーションを銃ごとに変えたりするなど,銃というものにこだわりました。
4Gamer:
ここ最近の女性向けですと,これだけしっかりとゲームに向き合わせるのはなかなかない気もしています。
大徳氏:
難しくしたいわけではないのですが,やっぱり“楽しめる要素”をたくさん作ってあげたいなと。いろいろなクエストや寮室でのコミュニケーションなど,かなり増やしました。職業体験もしていて貴銃士たちは忙しそうですよね(笑)。
4Gamer:
たくさんの想いを込めてゲームを作られていることが伝わりました。大徳さんご自身は,「千銃士R」の面白さはどこにあると思いますか?
大徳氏:
システム面でも楽しんでほしいと思っていますが,やっぱりストーリーですかね。序盤から手に汗握る展開で,突然親友の死と自らの命の危機という衝撃的な導入を経て,貴銃士を呼び覚まして戦いに向かう……という流れにすごく引き込まれます。各国のストーリーも,それぞれに色が全然違うので,そこもすごく楽しいと思います。
あとは前作からずっと,貴銃士の“(元は銃ならではの)不完全さ”は魅力ですね。PVでも「貴銃士たちは人間1年生!」と言っていますが,本当に情緒不安定なキャラクターが多くて(笑)。常識が通じなかったり,見守ってお世話してあげたくなる面がありつつ,戦わなきゃいけない使命がある。日常のほっこりした部分と,命をかけて戦うという二面性が楽しいと思っています。
4Gamer:
確かにそうですね。「千銃士」が完全なるファンタジーと異なるのは,やはり史実が取り入れられている面かと思いますが,もともと歴史などがお好きだったのでしょうか。
大徳氏:
そうですね,原案の八破が歴史や美術品などを好きなのが大きいです。チームにも歴史好きが多いですし,みんなで話し合いながらストーリーを決めています。
「ユーザーさんからの意見は目をとおし,参考にしています」(大徳氏)
4Gamer:
リリースからもうすぐ1年というところですが,ユーザーの反応はいかがですか。
大徳氏:
とにかく喜んでいただけている声が大きいようでうれしいですね。今作からの方は,キャラクターがかわいい,かっこいいなどのキャラクターに対する評価が多いように思います。
4Gamer:
そうなんですね。ユーザーの意見などはどういったところからご覧になっているのでしょうか。
大徳氏:
お問い合わせにいただくメッセージやアンケートは目を通させてもらっていますね。そのほかでは,Twitter上で「目安箱」というコーナーを設けて回答もしています。あまり定期的にはやれていないのですが,できるだけお答えしたいなと思っています。
4Gamer:
運営の皆さんに,自分の意見や感想がちゃんと届いて耳を傾けてもらえているというのは,ユーザーとしてもうれしいですね。
大徳氏:
そういえば,ユーザーさん同士で助け合ってくださったりもしているようなんです。前作を知らない方に向けてオフライン版を紹介したり,ご自分でプレゼン資料を作成して他の方にゲームやキャラクターを紹介したりといったこともあるそうで。とても熱心なお客様が多くてありがたいです。
4Gamer:
すごくほのぼのしますね。「千銃士」は,ファンの方が世界観やキャラクターにとても愛着を持てるタイトルだという印象があります。
大徳氏:
うれしいです。それでいうと,キャラクターの声を務めるキャストさんも作品愛を持っていてくださっています。「千銃士R」としては初めてとなる2020年10月14日に行われた生配信は,立花さん(シャルルヴィル役の立花慎之介さん)がご提案くださった番組だったんです。それで八代さん(ジョージ&ブラウン・ベス役の八代 拓さん)にもお声がけして生配信を行い,事前登録開始……という流れを作ることができました。お二人にはTVアニメでも深く関わっていただいていましたが,完全新作を作るとお知らせしたときも,とても喜んでくださいました。
4Gamer:
そうだったんですね。「千銃士R」では,SNSなどを使った施策も多く実施していますね。
大徳氏:
はい。今年は「夏の自由研究コンテスト」を行ったのですが,そこでもたくさんのユーザーさんが作品を投稿してくださいました。実は私たちもすごく楽しみにしていて,途中でモーション班(ミニキャラに動きを付ける班)とエフェクト班(ミニキャラが発砲した時の閃光などの効果を付ける班)が「私たちも出したい!」ということで,作品を提出してくれたんです(笑)。
4Gamer:
すごい! それにしても,こうして制作陣やキャストの皆さんが作品に愛情を持っていると伝わっているからこそ,熱心なファンが集まるということなんでしょうね。前作でよく行われていたオフラインイベントでも,それを強く感じました。
大徳氏:
今作はコロナ禍と重なったこともあってなかなかイベントができていないんですが,生でお客さんの熱量を感じられるのは見ているほうも楽しいですし,私たちとしてもモチベーションが上がります。
4Gamer:
ぜひまた実施してほしいです。ところで,今後の展開を少し教えていただけないでしょうか?
大徳氏:
現在,「ベルギー編」のロードストーリーまで出たところで,次はどんな物語が出てくるのか皆さん楽しみにしていらっしゃると思います。こちらは来月の周年で発表がありますので,期待していただけたら。
4Gamer:
それでは最後に,読者にメッセージをお願いします。
大徳氏:
いつも応援いただきありがとうございます。前作からプレイしてくださっている方も,「千銃士R」からの方も,皆さんの想いはちゃんと届いています。そうした気持ちや期待に応えられるよう,我々も頑張っていきたいです。何よりスタッフがみんな「千銃士」が大好きなので,これからも愛情を持って作品を作っていければと思います。これからもよろしくお願いいたします。
4Gamer:
本日はありがとうございました!
――2022年9月27日
「千銃士:Rhodoknight」公式サイト
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