企画記事
グランツーリスモの名コース「東京・ルート246」を歩く。20年前リリースのGT4から変わった場所,変わらない場所,そしてこれから変わる場所
車体の挙動表現がさらにリアルになっただけでなく,自分ではドライビングせず,レースを戦略的に楽しむ「B-spec」モードや,愛車の写真撮影ができる「フォトモード」などの新機能が実装された本作は,全世界で1000万本以上売り上げる大ヒットタイトルとなった。
本作には50以上のコースが収録されているが,印象的なものの1つが「東京・ルート246」だろう。東京の青山や明治神宮外苑,赤坂を走る市街地コースで,コース脇にある数々の“名所”まで再現されている。
もちろんゲームに収録されているのは2000年代初頭の姿なのだが,それから約20年が経った今見ると,大きく変わったところ,まったく変わっていないところがあって,感慨深い。
そしてこのエリアは,明治神宮外苑の再開発などによって,これから大きく姿を変えることになる。そこで,現在の「東京・ルート246」を歩いてみたので,20年前の姿と比較しつつ,目に焼き付けてほしい。
Honda青山ビル(本田技研工業本社)
交差点に面した角が丸められていたり,各階にバルコニーが付いていたりといった作りが特徴的だが,これは一説によると創業者である本田宗一郎氏の“交差点を曲がるとき,運転者の視界を妨げないように”“地震などで割れた窓ガラスで歩行者が怪我をすることがないように”という意向を取り入れたものだという。
Honda青山ビルは1985年8月の竣工から約40年となる2025年春の解体が決定している。それ以降は,グランツーリスモシリーズが,在りし日の姿を偲ぶ貴重な手段の1つとなりそうだ。
明治神宮外苑 いちょう並木
今回の撮影は12月の上旬だったので,まさに黄葉の真っ盛り。筆者は子供の頃から「いちょうの黄葉=ぎんなんが落ちて臭い」というイメージを持っていたのだが,神宮外苑のいちょうは雄株のみらしく(いちょうには雄株と雌株があり,ぎんなんの実を落とすのは雌株のみ),まったく臭くなかった。
樹のシルエットも先が尖ってシュッとしており,ほかのいちょうとは大きく違うのだが,これも数年に一度の剪定によるものだそうだ。
明治神宮野球場
20年前と現在の姿に大きな違いはないが,本球場は明治神宮外苑再開発の一環として解体が決まっている。解体の時期は不明だが,2032年にはいちょう並木に隣接する位置に,ホテル併設の新たな球場が完成予定だ。
国立競技場
2つを比べてみると,コンクリートの塊といった趣の旧,木材がふんだんに使われている新と,実に対照的。照明塔がなくなったのも大きな違いと言えそうだ。
権田原交差点〜安鎮坂
もちろんGT4では御所まで描写されてはいないが,そんなところまで思いを馳せてみると,20年という時の流れが強く感じられるかもしれない。
これはレースに限った話ではないようで,道の脇には「スピード落とせ」の看板が立ち,ドライバーの注意を促すためなのか,路面も赤茶に塗られている。ビートたけしさんが1994年にバイクで自損事故を起こしたのもここだったとのことで,ゲームでも現実世界でも,運転には十分に気を付けてほしい。
迎賓館赤坂離宮正門
GT4でも現在と同じような迎賓館赤坂離宮を確認できるのだが,実は正門前の道路が大きく変わっている。スクリーンショットに横断歩道などが描かれていることからも分かるように,20年前は車道として使われていたのだが,2020年3月に歩行者用の道路となり,車両の通行が不可となった。
赤坂見附交差点
交差点自体は20年前とほぼ同じだが,周辺の建物は大きく変わっている。特徴的な雁行設計のビルで知られた赤坂プリンスホテルは2011年3月の営業終了後に解体され,現在その場所には東京ガーデンテラス紀尾井町が建っている。サントリー美術館などが入っていたサントリービルも取り壊され,今回の取材時には東急赤坂ビルの解体工事が進んでいた。
東京・ルート246での赤坂見附交差点は,コース中で最も速度が落ちるヘアピンカーブとなっている。現在はなくなっている(もうすぐなくなる)建物がゆっくりと目の前を流れていくのは,なかなかノスタルジックだ。
青山通り(国道246号線)
とらや
GT4に登場するのは当時のオフィスビル然とした建物で,1階の店舗には「とらや」の文字こそないが,のれんもしっかりと描かれているなど,再現には力が入っている印象だ。
そんなとらや赤坂店は,2018年にリニューアルし,現在はガラス張りで開放的な印象の低層建築物となっている。
青山安田ビル
それもあって,ゲーマー間での青山安田ビルの認知度は高いのだが,青山通り沿いにはほかにもSCEの拠点が2か所あり(TK南青山ビル,赤坂王子ビル),こちらもGT4内で再現されている。20年前の青山や赤坂は,“SCEの城下町”だったのだ。
初代PlayStationの発売から30年が経過し,SCEの社名は変わって,青山や赤坂から拠点はなくなってしまっている。昔からのゲーマーにとっては少々寂しいが,時代の変化とはそういうものなのだろう。
今回,GT4で20年前の世界を楽しんだうえで,実際に現在の東京・ルート246を歩く取材は個人的にとても面白い体験だった。できれば,2024年の東京・ルート246もゲーム内で再現してもらって,数十年後にまた同じような体験をしてみたいところ。「グランツーリスモ7」のアップデートに期待したい。
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