プレイレポート
Switch版「吾妻邸くわいだん」プレイレポート。懐かしの3Dアクションアドベンチャーを思わせる,緊張感溢れる戦いと謎解きを楽しめる
グラフィックスとゲームシステムの両面から,懐かしい雰囲気を表現
昭和が始まって間もない1930年。妖鬼を祓う「方相氏」の見習いである主人公「四方堂 遙(よもどう はるか)」と,その師匠「橘 志楼(たちばな しろう)」は,吉野の山奥にある屋敷「吾妻邸」に赴くこととなった。吾妻邸は無数の妖鬼が跋扈する場所と成り果てていたうえ,頼みの志楼は妖鬼の呪術で無力なカエルに変えられてしまう。遙は,師匠抜きで妖鬼に勝つことができるのだろうか。そして,吾妻一族の秘密とは……?
本作は,グラフィックスと緊張感溢れる厳しさという2つの点で,1990年代後半〜2000年代初頭のゲームを現代に再現している。
固定アングルの画面,あらゆるリソースが限られる高い難度,怪物と戦うホラーということで,「バイオハザード」「鬼武者」といった3Dアドベンチャーホラーのような雰囲気がある。
操作についても,「移動したい方角へスティックを倒せばそちらへ進む」方式に加え,キャラクターの向きを基準にして前後左右の移動方向が決まるいわゆる「ラジコン操作」が用意されているという徹底ぶり。3Dアドベンチャーゲームを昔から遊んでいる人には,懐かしく感じられるはずだ。
開発元が「レトロポリゴン調」と呼ぶグラフィックスは,“妖鬼が跋扈する昭和初期の屋敷”という本作の舞台設定とマッチしている。高解像度,フォトリアルでないグラフィックスにより日本的なダークさが際立ち,プレイヤーの想像力を刺激するのだ。
加えて,画面の左右には映画のフィルムを思わせる意匠があしらわれており,夏に公民館で上映された怪談映画のような,じっとりとした恐怖のムードが漂う。こうした雰囲気が好きな人にはたまらないものがある。
有限の回復手段を温存しつつ,群がる妖鬼と戦え
そんな吾妻邸を主人公の遙が探検していくわけだが,これが一筋縄ではいかない。屋敷のあちこちには妖鬼がたむろしており,配置も厳しい。曲がり角を曲がったところにいたり,前衛の妖鬼の後から飛び道具の妖鬼が攻撃してきたりと,楽に勝たせてはもらえないのだ。
さらに画面は固定アングルなので,運が悪いと画面の外から攻撃されることがあり,前述したじっとりとした恐怖とは別の意味で心臓に悪い。
妖鬼はエリアを切り替える等で復活するが,遙の体力回復手段は有限だ。マップに配された回復アイテム「百薬丸」は取るとなくなってしまうし,釜に入ったご飯や座敷のお茶といった回復手段も使える回数に限りがある。無限に出てくる敵に対して,有限の回復手段で立ち向かわなければいけないので,状況は不利だ。雑魚の妖鬼を倒しても何も得られないため,無意味な戦いはできるだけ避けた方がいいだろう。
それでも戦わなければならない際は,「薙刀」「勾玉」「神鏡」を使い分けて戦うことが重要になる。薙刀は腰の辺り,勾玉は足元,神鏡は上方と,それぞれ攻撃範囲が違う。地面から出てきた妖鬼には勾玉,空を飛ぶ者には神鏡というように,相手との位置関係を見極めよう。
また,薙刀は無制限に使えるが,勾玉と神鏡には「陣気」が必要となるのも注意すべき点だ。陣気はMPのようなリソースで,勾玉や神鏡を使うと消費され,攻撃のガードや時間経過,妖鬼の討伐で回復する。
「回復は有限なので,受けるダメージは極力抑えたい」というプレッシャーの中で,3つの武器を使い分けなければならないため,戦闘はなかなかにスリリングだ。慌てると,妖鬼は地面にいるのに,神鏡で何もない空を攻撃した挙げ句,ボコボコに殴られたばかりか,陣気が切れて逃げ出す――なんて羽目に陥ることもある。そして,本作で作成できるセーブデータは1つだけなので,「とりあえず別のデータにセーブして様子を見る」ということはできない。
失敗をやらかした時に限って,マップの奥まで進めたりすることもあり,そういう場合は「先へ進めたが体力の危うい現状をセーブする」か,「今の状況を諦めてやり直すか」の二択を迫られることになる。
ポイント&クリックで,屋敷の謎を解け
吾妻邸にはさまざまな仕掛けが施されており,ポイント&クリック型アドベンチャーのように調査することで先へ進んでいく。怪しいところがあったら,画面に常駐するカーソルを右スティックで動かし,[ZR]を押して調べてみよう。対象が小さかったり,暗がりでよく見えなかったりすることもあるので,怪しいところは片っ端から調べていくのが重要だ。
ゲームを進めていくと,とある操作が開放されるのだが,これを駆使すると遙自身の視点で屋敷をより細かくチェックできる。屋敷の各所にはヒントを書いたお札が貼られているため,じっくりと辺りを見回してこれを探さなければならないのだ。
遙の行く手を阻むのは妖鬼だけではない。途切れた吊り橋に板きれを渡して先に進もうとしたら,突然橋が崩れたり,細い道の向こうから巨大な岩が転がってきたりといった罠が仕掛けられているのだ。
加えて,本作はセーブできる回数にも制限がある。セーブするためには「記録木簡」というアイテムが必要なのだが,数は潤沢とは言い難い。「せっかく謎が解けて先へ進んでも,木簡がないのでセーブできない」「木簡を持った状態でゲームを進めたが,妖鬼の攻撃を食らってボロボロなので,セーブすべきかどうか迷う」といったケースもままあり,なかなかに悩ましい。
1回セーブするだけでも「このセーブは本当に必要なのか?」と悩んでしまう。前述した回復手段が限られていることとあわせて,プレイ中は強い緊張感が漂う。
そして,ゲームを進めていくと吾妻邸に住む吾妻一族の歴史が明らかになっていく。
本作をプレイして印象的だったのが,回復やセーブ周りのシステムが意図的に不便な状態にされていることだ。ゲームがどんどん親切になっていく中,グラフィックスだけでなく,システムの面でも昔の3Dアドベンチャーホラーを再現しており,実にインディーズゲームらしい試みだと感じた。
序盤は操作に慣れないうえに回復アイテムも少なく,セーブ回数も限られている……と難度は高いが,懐かしの3Dアドベンチャーホラーの雰囲気を味わいたいならプレイする価値のあるゲームといえるだろう。
「吾妻邸くわいだん」ストアページ(My Nintendo Store)
「吾妻邸くわいだん」公式サイト
- 関連タイトル:
吾妻邸くわいだん
- この記事のURL:
キーワード
(C)2016-2020 gudouan.
Licensed to and published by Rainy Frog LLC.
Nintendo Switch version by DICO Co. Ltd.