ニュース
大幅に性能向上したGPUからコンテンツ制作向けメタバースまで,多彩な製品や話題が登場したNVIDIAのイベントをレポート
本稿では,4Gamer読者の関心が高そうな話題を抜粋してレポートしたい。
デスクトップPC向けGPU新製品はエントリーとウルトラハイエンド向け
まず,デスクトップPC向けGPUのエントリークラスモデルとして,「GeForce RTX 3050」が発表となった(関連記事)。発売日は2022年1月27日が予定されている。
NVIDIAは,2021年に,開発コードネーム「GA106」ベースのデスクトップPC向け「GeForce RTX 3060」シリーズを発売した。またノートPC向けGPUとしては,開発コードネーム「GA107」ベースの「GeForce RTX 3050」シリーズを市場に投入した。
今回発表となったデスクトップPC向けのGeForce RTX 3050は,後者のGA107を採用したものだ。もちろんリアルタイムレイトレーシングに対応する。搭載するグラフィックスメモリはGDDR6メモリで,容量は8GB。理論性能値は約9.0 TFLOPSで,搭載カードの価格は,北米市場向けの想定価格で249ドル(約2万8900円前後)となっている。
NVIDIAは,前世代の「GeForce RTX 2080」と同等の性能,スペックを有すると主張しており,主張どおりの実力があるなら,かなり魅力的な製品となるだろう。
また,イベントの最後には,「GeForce RTX 3090 Ti」の予告も行われた(関連記事)。
理論性能値は40 TFLOPSに達しており,搭載グラフィックスメモリは容量24GBのGDDR6Xメモリで,メモリクロックは21GHz相当であるという。GDDR系でありながら,メモリバス帯域幅が1TB/sを超えるのはすごい。なお,これまでの最上位モデルだった「GeForce RTX 3090」(CUDA Core数10496基)は,約35.6 TFLOPSで,メモリバス帯域幅は936GB/sだった。
GeForce RTX 3090 Tiは,GA102のフルスペック版(CUDA Core数10752基)と思われるが,実のところGA102のフルスペック版は,すでにワークステーション向けGPU「NVIDIA RTX A6000」が存在しており,これは最大動作クロックが1.8GHzで約38.7 TFLOPSという性能であった。これをもとに計算すると,GeForce RTX 3090 Tiの理論性能値である40 TFLOPSは,動作クロックを1.9GHzまで上げなければ到達できない。製品の発熱や消費電力については,注目が集まりそうだ。
なお,GeForce RTX 3090 Tiについてのより詳細な情報は,1月下旬に公表するとのことだ。
ノートPC向けGPUに「Ti」モデルが登場
ノートPC向けGPUとしては,「GeForce RTX 3080 Ti」(以下,RTX 3080 Ti)と「GeForce RTX 3070 Ti」(以下,RTX 3070 Ti)という2種類の「Ti」モデルが発表となった。RTX 3080 Ti搭載ノートPCの価格帯は,北米市場向けで2499ドル以上で,2022年2月1日以降に発売となるそうだ。
RTX 3080 Tiは,NVIDIAが「実効性能でデスクトップ版の『NVIDIA TITAN RTX』を上回る」と主張するノートPC向けGPUの最上位モデルである。
比較対象として挙げられているTITAN RTXは,分かりやすくいえばGeForce RTX 20シリーズにおける最上位GPUダイ「TU102」のフルスペック版に相当するもので,同じTU102ベースのGPUである「GeForce RTX 2080 Ti」のさらに上を行くモデルだ。TITAN RTXの理論性能値は16.3TFLOPSに達していたので,これを上回るということは,ノートPC向けとしては相当な高性能ぶりである。
噂によれば,ノートPC向けのRTX 3080 Tiは,これまでとは異なる新ダイの「GA103」であるそうで,理論性能値は17 TFLOPS以上,第4世代の「Max-Q Technology」モデルでは20 TFLOPSに到達するといわれている。
新GPUを搭載するノートPCでは「解像度2560×1440ピクセルで,140fpsを超えたPCゲームを楽しめる」と,NVIDIAは訴求している。
一方のRTX 3070 Tiは,既存の「GA104」ベースのGPUで,搭載製品の価格帯は1499ドル以上となっている。出荷開始は,RTX 3080 Tiと同じ2月1日だ。
搭載製品にもよるが,理論性能値は約16〜17 TFLOPSに到達するとみられる。「解像度2560×1440ピクセルで,100fpsを超えたPCゲームを楽しめる」そうだ。
「DLSS」や「Reflex」に対応するゲームはさらに増える
今回のイベントでNVIDIAは,GeForce RTXシリーズを中核としたエコシステムが,ゲーム業界に幅広く浸透していることもアピールした。
まず,GeForce RTXシリーズ専用機能であるAIベースの超解像&アンチエイリアシング技術「DLSS」(Deep Learning Super Sampling)や,リアルタイムレイトレーシングに対応したゲームとして,「The Day Before」や「Escape from Tarkov」,「Rainbow Six Extraction」など10タイトルが加わった(関連リンク)。
NVIDIA独自の遅延低減化技術「NVIDIA Reflex」が,Rainbow Six Extractionや「iRacing.com」,PC版「God of War」をはじめとした7タイトルに採用されたそうだ。
2022年は,G-SYNC対応のゲーマー向けディスプレイ新製品として,
- ASUSTeK Computer:ROG Swift 360Hz PG27AQN
- AOC:AG274QGM AGON PRO Mini LED
- MSI:MEG 271Q Mini LED
- ViewSonic:XG272G-2K Mini LED
が登場すると予告された(関連リンク)。ROG Swift 360Hz PG27AQNは,最大リフレッシュレート360Hzに,それ以外の3製品は,300Hzに対応するeスポーツ用途に適した製品と言える。
クリエイター向けノートPCブランド「NVIDIA Studio」を強化
ここからは,直接ゲーマー向けではなく,コンテンツ制作分野に関わる話題を紹介していこう。
「グラフィックス制作や映像編集など,高度なコンテンツ制作用途を快適にこなせる高性能なノートPCが欲しい」と思ったときに,どれを選んでよいか分からないという事態に陥りがちである。
そうしたニーズを見越して,2019年からNVIDIAが始めたのが,「NVIDIA Studio」だ。NVIDIA Studioとは,一定スペック以上のNVIDIA製GPUを搭載したノートPCに対して,「このノートPCはクリエイター向けである」ことを訴求できるロゴプログラムである。
今回発表となったGeForce RTX 3080 Ti/3070 Tiを搭載するノートPC新製品は,多くがNVIDIA Studioロゴ付きの製品であるとNVIDIAはアピールしていた。こうしたロゴやブランディングのプログラムは,継続することで対象ユーザーへの認知が拡大するので,今回,改めて告知を行ったわけである。
それに加えて,NVIDIAは,同社が強力に推進している3Dコラボレーション向けメタバース「Omniverse」の,個人クリエイター向け(Individuals)版を正式に,無料でリリースした。
メタバースというと「SNSの仮想世界版」というイメージが浮かぶ人も多いだろう。しかし,NVIDIAが推進するOmniverseは,「オンライン空間内でコンテンツ制作を行うコラボレーションに向けた実験場」という,かなり独創的なメタバースプロジェクトだ。
Omniverseは,あらゆる3Dオブジェクト制作やシミュレーション,アート制作などを,物理的な距離や時差を超越してマルチユーザーで取り組むプラットフォームとなることを目指している。現在は主に,NVIDIAがリーダーシップを取って,多種多様な3D CGアプリケーションやミドルウェア,ユーティリティ,ゲームエンジンにおける入出力インタフェースの抽象化と標準化に取り組んでいる。
現状のOmniverseは,メタバースとはいってもVR HMDを被って仮想世界にログインする必要はなく,各ユーザーがPC上で実行する様々なアプリケーションをシームレスに相互連携させつつ,必要とあればネットワーク上の他ユーザーとコラボレーションしながら作業を行えるフレームワークだ。
一方,NVIDIAの考える「Omniverseの究極の形」は,いろんな実験や制作活動ができるデジタルツイン※化された現実世界そのものの提供という壮大なものである。
※現実空間の物体や環境を仮想空間内で忠実に再現すること,あるいはその技術。
今回のイベントにおけるNVIDIAのメッセージは,Omniverseの個人向け版が正式リリースとなり,個人ユーザーであれば無料で利用できるようになったこと,そしてNVIDIA Studioロゴの付いたノートPCは,Omniverseを利用するのに最適ですよ,という点にあるわけだ。
NVIDIAのCES 2022特別ビデオ(英語,日本語字幕あり)
NVIDIA日本語公式Webサイト
- 関連タイトル:
GeForce RTX 30
- この記事のURL: