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「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる
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印刷2021/10/25 12:03

プレイレポート

「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる

 3gooは,ラリーゲーム「WRC10 FIA世界ラリー選手権」(PS5/PS4)を2021年10月28日に発売する。4Gamerでは,発売に先駆けて本作を体験する機会を得たので,本稿でインプレッションをお届けしよう。また,日本でラリーゲームの普及に燃える3goo代表のニコラ・ディ・コスタンゾ氏にも話を聞いているので,最後まで読み進めてほしい。

画像集#001のサムネイル/「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる

 タイトルの通り,本作のテーマとなっているのは,世界ラリー選手権(FIA World Rally Championship)だ。この1973年に始まった世界的なラリー競技会は幾度となくゲーム化され,「WRC」シリーズも日本でパブリッシャを変えつつ発売されてきた。その10作目となる「WRC10 FIA世界ラリー選手権」は,コ・ドライバー(助手席に乗って運転の補助をする選手)の指示まで含めて日本語で吹き替えられているのがポイントである。

画像集#002のサムネイル/「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる

 舗装されたサーキットを走るF-1レースとは違い,荒野や山道といった険しい道を舞台に,コ・ドライバーの指示を聞きつつ走るのが本作の特徴だ。
 走行するコースは,車1台分ほどの幅しかないうえにぐねぐね曲がっていたり,原野に拓かれていて凹凸が激しかったりと,通常のレースでは考えられないような場所だ。
 路面が路面だけに,ハンドルを切れば滑り,加速しすぎると飛びはねるなど,車は縦横無尽に暴れ回る。理想的なラインを目指すどころか,進行方向がブレまくるのを抑え込むのに必死で,運転というよりはまるでロデオのよう。コースを辿るだけでも大変なのに,速さまで競わなければならないのだから,プレイフィールは通常のレースゲームとはまったく違うものと言っていい。

 またPS5版では,DualSenseのスピーカーと震動機能にも対応しており,タイヤが巻き上げた小石が車の底に当たる「コンコン」という音と震動がリアルに表現されている。車という鉄の箱で大自然を無理矢理に走破しているという感覚があり,臨場感が増している。


 加えて,1973年からの伝説的なラリーカーやコースが収録されているのもポイントだ。特に面白いのが,同じコースを走っても,昔の車と今の車では操縦性が異なることだ。基本的に現行車種に近づけば近づくほど性能が上がっていくので,加速がしやすかったり,曲がるときに車体の重心がブレなくなったりして走りやすい。ラリーの歴史をインタラクティブな形で体感できるというわけだ。
 本作からの新モードとなる「50周年記念モード」では,1973年のアクロポリスラリーや1993年のサファリラリーといった有名レースに参加でき,当時のタイムを目指して走ることもできる。まさに夢の体験と言えるだろう。

画像集#003のサムネイル/「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる

 ラリーゲーム最大の特徴とも言えるのが,冒頭でも触れたコ・ドライバーの存在だ。コ・ドライバーは,ドライバーとともにラリーカーに搭乗し「ペースノート」を読み上げてくれる。
 ペースノートには「これから進む道が,どのような形状をしているのか」が,独特の用語で記されている。例えば,カーブのキツさは1〜6の数字で表現されていて,小さいほどキツくなっていく。「キープイン」「キープアウト」なら道の内側や外側を通るのが望ましく,「コーション」は岩や橋といった注意すべきポイントがある……といったように,事細かに状況を伝えてくれる。

画像集#004のサムネイル/「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる

 いくつか例を挙げると,「左3,ナロー」なら,“左に曲がる3(結構きつい)カーブがあり,その先がナロー(道幅が狭い状態)になっている”ということ。カーブが連続するようなところだとさらに指示は複雑になり,「右4スモールカット,右左6ドントカット,すぐ右5スモールカット」というように連続して状況が伝えられる。ちなみにこの指示を訳すと“右に曲がる4のカーブがあってインコースに切り込むことができる,右左にくねる6のカーブがあるが,障害物があるので切り込まずに進んで,次いで右に5のカーブがあるがこちらはインコースに切り込める”という意味になる。

画像集#005のサムネイル/「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる

 本作にはコースのマップが表示されないため,コース情報は視覚と,ペースノートが頼りになる。ペースノートは音声のほかにも,画面上部にアイコンで表示される。本作からはこの読み上げもすべて日本語吹き替えがなされており,慣れてくると耳だけでコースの状況が想像できるようになるだろう。
 ペースノートは,少ない単語で的確に状況を伝えるために工夫された話法であり,キビキビと指示が飛ぶ様子は,戦場のような緊張とプロ同士の絆が感じられてカッコイイ。まさにラリーという名のドラマを体験しているようであり,通常のレースゲームと最も差別化されているポイントだ。

画像集#006のサムネイル/「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる

 また,今回の試遊では体験できなかったものの,本作には「コ・ドライバーモード」が実装されており,オンラインでの協力プレイが楽しめる。コ・ドライバー役は決められた時間の中で実際にペースノートを読み上げ,ドライバー役はその指示に従って運転を行い,ゴールを目指していく。つまり,ボイスチャットを使って現実に近いラリーが体験できるモードというわけだ。興味のある人はフレンドと一緒に試してみよう。

「コ・ドライバーモード」では,コ・ドライバー(右)が実際にペースノートを読み上げ,ドライバー(左)が運転する
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ラリーゲームを愛し,継続的な取り組みでラリーファンを育てていく


 試遊の会場では,本作のパブリッシングを務める3gooの代表取締役・ニコラ・ディ・コスタンゾ氏に話を聞くことができた。本作は,コ・ドライバーの日本語音声を始めとしたローカライズに力が入っているが,その理由は,レースゲームを愛し,ラリーゲームの魅力を伝えようとするニコラ氏の熱意によるものだったのだ。

3gooの代表取締役である,ニコラ・ディ・コスタンゾ
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4Gamer:
 よろしくお願いします。3gooが日本国内で「WRC」シリーズのパブリッシングを手掛けるのは,今作からになりますが,その経緯や理由を教えてください。

ニコラ・ディ・コスタンゾ氏(以下,ニコラ氏):
 もともと,私はラリーやレースといった車系のゲームが好きなんです。昔は「セガラリーチャンピオンシップ」が好きでしたし,前職でアタリジャパンの代表をしていたときは,ラリーゲーム「V-RALLY3」のパブリッシングにも携わりました。

 近年はレースゲームの日本語ローカライズが減っていますが,「WRC」シリーズには,コ・ドライバーという普通のレースゲームとは違う楽しみ方があります。今回はレース中のナビゲーションやキャリアモードでの説明といった部分まで吹き替えを行いました。

キャリアモードでプレイヤーはラリーチームを指揮する。さまざまな特性を持つクルーたちを編成し,過酷なラリーに挑戦する
画像集#009のサムネイル/「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる 画像集#010のサムネイル/「WRC10 FIA世界ラリー選手権」を先行プレイ。日本語吹き替えの実装により,過酷なコースをコ・ドライバーとともに走り抜く臨場感が高まる

4Gamer:
 確かにレース系のゲームでここまで吹き替えがされているのも珍しいですね。

ニコラ氏:
 このゲームはペースノートのナビゲーションを聞きながら遊ぶものですから,日本語に吹き替えることで,分かりやすさとゲームの遊びやすさがアップすると思ったんです。ペースノート自体はラリー独特のものなので,これからユーザーさんにいろいろな形で説明をして,面白さを広げていきたいですね。

4Gamer:
 日本語吹き替えは大変だったのではないでしょうか。

ニコラ氏:
 レースゲームなのに7万文字も吹き替えましたよ(笑)。ペースノートだけでも6〜7000行もあったので,収録に2か月もかかりましたね。
 ペースノートの翻訳と吹き替えについては,ラリージャパン(世界ラリー選手権の日本ラウンド)や本物のコ・ドライバーに監修していただいているので,しっかりとした内容になっています。カーブの方向を表す用語も,他国では「レフト」「ライト」ですが,吹き替えではちゃんと日本人コ・ドライバーのように「左」「右」としています。

4Gamer:
 ラリージャパンの方にゲームを見てもらった際の反応はどうでしたか。

ニコラ氏:
 「日本コースの雰囲気もしっかり再現されているし,吹き替えで遊びやすくなっているね」と好評をいただきました。

今年ラリージャパンが開催予定だった,日本のコースも収録されている
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4Gamer:
 ラリーゲームの魅力はどういったところにあると考えていますか。

ニコラ氏:
 自分と戦うゲームというところですね。日本ではラリーゲームの売上も下がってきていますが,競争の側面が薄いところとボイスが英語であることが原因ではないかと考えています。そうした意味では,今回の吹き替えには期待していますね。

 私が3gooを立ち上げてパブリッシングした最初のゲームは「ギア・クラブ アンリミテッド」というレースゲームのSwitch版なんですが,この時はパーティーゲームである側面に着目しました。周囲から「レースゲームはもう売れないよ」なんて言われたんですが,丁寧にローカライズしたおかげで,売上的に成功を収め,レースゲームのファンを増やせた手応えがあります。
 これからも3gooとしては,いいレースゲームがあればパブリッシングを手がけていきたいですね。昔レースゲームのファンだった人に帰ってきてもらって,レースゲームの人気を回復させたいです。

4Gamer:
 コ・ドライバーモードは,かなり独特な仕様ですが,魅力を教えてください。

ニコラ氏:
 同じ人と繰り返しプレイしていると,お互いのクセが分かってきて運転がスムーズになっていくのが面白いところだと思います。ドライバーはコ・ドライバーの声を聞くこと,そしてコ・ドライバーは準備したうえでしっかり情報を伝えることが大事です。
 ペースノートの読み方と聞き方については,弊社から動画などいろいろな形で情報を発信していきます。発売後は,我々でコ・ドライバーモードを使用したチャンピオンシップを開きたいと思っています。日本のユーザーさん同士が,ボイスチャットを活用してラリーゲームをプレイするというのはまったく新しい遊び方だと思いますから,我々としてもチャレンジですよ。

4Gamer:
 ラリーゲームで得た知識が実際のラリー観戦にも役立つでしょうし,そうした意味ではラリーファンを育てていく取り組みになるのかもしれませんね。

ニコラ氏:
 この取り組みは,ゲームの発売数か月で終わるようなものではなく,何年かかかるものになるのかもしれません。発売後にも新たな車やモードが解禁されますし,我々としてはコミュニティのマネージメントも行っていきます。今年はリアルの世界ラリー選手権が中止になりましたが,我々がゲームの世界で開催するつもりで頑張りますので,楽しんでください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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