プレイレポート
「Company of Heroes 3」のプレアルファ版を試遊してみた。前作から8年を経て,傑作RTSはどんな進化を遂げようとしているのか?
だが,このシリーズは2013年の「Company of Heroes 2」を最後に新作が出ていない。いかに初代(2006年発売)から2までに7年待ったファンと言えども,「さすがにそろそろ……?」という機運は高まっていたのではなかろうか。そして,それだけに2021年7月に行われた「Company of Heroes 3」(以下,CoH3)の制作発表は嬉しい知らせでもあった。
「Company of Heroes 3」の制作をSEGAが発表。久々に復活する人気ミリタリーRTSシリーズの最新作
Relic Entertainmentの「Company of Heroes」シリーズ最新作,「Company of Heroes 3」の制作が発表され,最新トレイラーが公開された。第二次世界大戦を背景にしたRTSとして人気を獲得したシリーズだが,久々の新作では,連合軍のイタリア進攻を中心にしたマップを日本語対応で楽しめるようだ。
そんななか,早くも実際にプレイ可能な「Company of Heroes 3 プレアルファ版」(以下,CoH3PA)が期間限定で試遊できるというチャンスが巡ってきたので,簡単ではあるがレポートしてみたい。
ただし,繰り返しになるがこれはプレアルファ版であり,α版ですらない,未完成な状態のものだ。そのためゲームバランスどころか,ゲームシステムそのものが将来的に変更される可能性もある。また,グラフィックスなども変更されると思ったほうが無難だ(一部UIのアイコンにはデータが存在しないものすらある)。
したがって,本稿はあくまで「いまのところ,こんな感じで制作が進んでいるらしい」という参考程度のものであることをご理解いただきたい。……いや,実際に遊んでみると「もう少し詰めたら,もう製品版として売れるのでは?」と思ったくらいには,しっかり作られているのだが。
「Company of Heroes 3」公式サイト
戦略マップと戦術マップの2層仕立て
CoH3PAにおいて,プレイヤーは1943年のイタリア戦線を指揮する連合国の司令官となる。プレイヤーの大目的はこの地におけるドイツ軍の抵抗を排除することであり,このために当面の目標として急峻な岩山であるモンテ・カッシーノの攻略が掲げられている。プレイヤーは連合軍を指揮してナポリから進撃し,ヴォルトゥルノ線やバルバラ線といった防御線を突破,モンテ・カッシーノの頂上にある修道院の前面,その斜面に構えられたドイツ軍の防御陣地を撃破しなくてはならない。
CoH3は,大きく分けて2つのゲームモードを有している。1つは戦略マップ,もう1つは戦術マップだ。「トータルウォー」系の作品を想像すると,「おおむねそんな感じ」ということになるだろう。
戦略マップでは1ターン=1日のターン制でゲームが進行する。プレイヤーはユニットを動かし,敵ユニットを攻撃して,戦線を押し上げていく必要がある。戦闘は戦略マップ上で即座に解決される(古参な読者は「大戦略」シリーズの初期の戦闘をご想像いただければ幸いだ)。
ただし,補給線の概念があるので戦力を集中して猪突猛進というわけにはいかず,機関銃巣のような「射程内に入ってきた敵を長距離から攻撃する」ユニットも存在する(当然,空襲や艦砲射撃もある)。このため,「どのユニットでどう攻めていくか」を考えることが重要だ。
一方,戦術マップは完全なRTSだ。従来のCoHプレイヤーであれば馴染み深い「いつものCoH」が展開される(もちろん,実際にプレイすると「これは今までのCoHとは違うな!?」となるのだが)。興味深いことに,このモードでは「ユニットの生産」が可能だが,イメージとしては「増援の派遣」と捉えるべきだろう。
戦術マップへの移行が行われるのは,戦略マップ上の要所を守っている敵ユニットとの戦闘時だ。ただし,街道などでの遭遇戦においても戦術マップに移行することはあるようで,このあたりの正確な条件については今回のプレイ可能な期間中には分からなかった。
とはいえ,CoHシリーズのファンであれば,後者のRTSモードがどうなっているのかが気になるところだろう。以下,ざっくりと紹介したい。
こんなに忙しいゲームだったっけ……?
前述のとおり,CoH3PAのRTSモードは従来のCoHシリーズと比べて,決定的に違うものではない。とくに「ユニットに戦闘経験を積ませるのが重要」「そのため,全滅する前に拠点に撤退させ(ワンボタンで可能),部隊の兵士を補充するのが基本」という鉄則は,今のところ変わりがないようだ。
また,よくある「ユニットの三すくみ構造」についても,大原則としては「歩兵<装甲<対装甲装備の歩兵<歩兵」という関係が維持されているように感じた。ただし,これについては大いに異論もあり得るだろう。筆者自身も「実際には,こんな単純じゃあないよな」と感じている(このあたりは前作譲りとも言える)。
むしろ個人的に強調したいのは,この7年のあいだに発生したプレイヤー側の意識の変化だ。
近年,大量のユニットを同時に操作するクラシックなRTSは,確実にその勢力が縮小したと言わざるを得ない。もちろん,ここで「そのようなスタイルのゲームは終わった」などと言い出すつもりは微塵もない(しかも事実に反する)が,黄金期に比べれば勢力を弱めていることは認めざるを得ないと思う。
このため,大量のユニットをマップのあちこちに派遣し,あちこちで発生する戦闘を同時に采配していく(かつ,本拠地では生産などの管理も行う)ゲームを久々にプレイすると,「こんなに『ずっと忙しい』ゲームだったっけ!?」となりがちだ。これは筆者がそうだったというだけの話ではなく,CoH3PAのレビューをざっくり調べた結果,少なからぬプレイヤーが「忙しい」と評していることからもうかがえる。
その一方,「本当にCoH3PAが延々と忙しいゲームなのか」と言われると,「そんなことはなさそうだ」というが正直な観測となる。そこまで厳密な調査とは言えないが,過去作をあらためてプレイしてみたり,プレイ動画を比較してみたりした限りで言えば,CoH3PAが格段慌ただしくなったようには見えない。
したがって,CoH3が正式リリースとなった折には,CoH経験者であれば「自分のカンが鈍っていないか」をまず確認してみてほしい。
また,今のうちに過去作をプレイし直して,テンポ感やショートカットを叩く感触を取り戻しておくといいかもしれない。ユニット群をショートカットで指定するにも,指の慣れが戻っていない状態では手こずるだろうからだ。そんな状態でCoH3に挑むのは,たとえ難度イージーであっても結構キツイことになる可能性が高い。
そのうえで,CoH3PAに感じたのは「視界を取る」ことの重要性。もちろん,もともと重要ではあるのだが,それが過去作より高くなっているということだ。
CoH3PAでは,安価に生産できる偵察ユニットが用意されている。この偵察ユニットで要所の視界を取っておかないと,「気づいたときにはもう敵の動きに対応できない」という状況があり得る(逆に言うと,そうした最悪の状況にも迅速に対応できる軽装甲,高速の戦闘車両ユニットは火消しとしてとても便利だったりする)。
この「視界をめぐる戦い」は,日頃からワード※を刺し合っているMOBAプレイヤーであれば,むしろ馴染み深いものかもしれない。ただし,CoH3PAのワードはアクティブスキルを駆使することによる自己防衛能力を持っているので,それらの能力をうまく使うにはかなり忙しい思いをすることになるが。
※自軍に有利な情報をもたらすために視界を確保するアイテムやユニット。
かなり重厚な仕上がり
現状においてすら,CoH3PAは十分に美しいグラフィックスと,かなり満腹感のある戦闘が楽しめる重厚な作品だ。「トータルウォー」型のシングルプレイも面白く,上級指揮官の視点でイタリア戦線を戦っていけるのは,ミリタリー好きにとってたまらない経験と言える。
ただし,その重厚さはもしかすると,本作における弱点になるかもしれない。CoH3PAはとてもボリュームのある作品のため,戦術マップを1つクリアすると,それだけでも過去作のシングルプレイ用シナリオを1本クリアする程度の満足感が得られる。このクラスの戦いを繰り返していき,ときには敵の攻撃から要地を守ったり,街道での遭遇戦を行ったりしながら先に進むとなると,プレイヤー側には相応の精神的な体力が要求されるだろう。現状,「ライトに楽しめる作品」とは到底言えないバランスになっているのだ。
繰り返しになるが,これはプレアルファ版である。ここからどのように調整して,完成版へと持っていくのか(ゲームのテーマ的に,必ずしもライトな作品を目指す必要はないだろうし),開発を手がけるRelic Entertaimentの手腕に期待したいところだ。
「Company of Heroes 3」公式サイト
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Company of Heroes 3
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