レビュー
第12世代CoreのミドルクラスCPUは,6コア級CPUの常識を超える
Intel Core i5-12600K
というわけで本稿では,11月初旬に発売された第12世代Coreプロセッサ(開発コードネーム Alder Lake S)のうち,ミドルハイに位置づけられる「Core i5-12600K」(以下,i5-12600K)を中心に,いま市場で入手できるミドルクラスCPU 3製品を横並びで比較してみたい。
6基のP-coreと4基のE-coreを集積したi5-12600Kと現行の6コア製品を比較
まずは,本稿の主役であるi5-12600Kについて,簡単におさらいしておこう。
Intelの第12世代Coreプロセッサは,高性能な「P-core」と,消費電力あたり性能比に優れた「E-core」を組み合わせたハイブリッドアーキテクチャを特徴としている。高負荷時にはP-coreを使って高い処理性能を確保しつつ,優先順位の低い処理にはE-coreを利用することで,消費電力あたり性能比を向上させようというCPUだ。
プロセッサナンバーから分かるとおり,i5-12600Kは,従来でいうところの6コアクラスのCPUだが,第12世代Coreプロセッサでは4基のE-coreがついてくるので,そのぶんだけ高い性能が期待できるし,お得感もあるといったところだろうか。
ただ,第12世代Coreプロセッサから新しいソケットである「LGA1700」に切り替えられているので,マザーボードも購入する必要があることは,覚えておいたほうがいいだろう。
i5-12600Kの動作クロックは,P-coreの定格が3.7GHzでTurbo Boost時最大4.9GHz(全コアTurbo時は最大4.5GHz),E-coreの定格は2.8GHzで,Turbo Boost時最大3.6GHzという仕様だ(表1)。
そんなi5-12600Kの性能を確かめるため,現行の6コアCPUから2製品と比較することにした。1つは,1世代前となる第11世代Coreプロセッサから「Core i5-11600K」(以下,i5-11600K)だ。4Gamerでもレビューを掲載済みだが,ゲーム性能は高いものの,消費電力はかなり大きいことが弱点なCPUである。
もう1つは,AMDのRyzen Desktop 5000Gシリーズから「Ryzen 5 5600G」(以下,R5 5600G)を選んだ。
R5 5600Gは2021年8月に発売されたRyzen 5000Gシリーズは,Zen 3アーキテクチャのCPUコアと,VegaアーキテクチャのRadeon GPUを組み合わせたAPU(Acce
i5-11600K |
R5 5600G |
そんなわけで,R5 5600Gは同じ6コアクラスとはいえ,i5-12600Kやi5-11600Kと直接競合する製品とは言い難い。ただ,直接的な競合となるRyzen 5 5600Xを4Gamerではすでに取り上げているので,4Gamerでまだ取り上げていなかったR5 5600Gを今回は選択した次第だ。
なお,R5 5600GはTDP 65WクラスのCPUなので,TDPが125Wのi5-12600Kやi5-11600Kと比べて性能自体が下回っても当たり前という面はある。そのため,R5 5600Gついては,その消費電力あたり性能比を中心にチェックしてみたいと思う
以上の3製品の性能を,4Gamerベンチマークレギュレーション24.0に準拠したテストで比較していきたい。最新のレギュレーションはバージョン25.0であるが,今回のテストには準備が間に合わなかったため,レギュレーション24.0で計測した次第だ。実ゲームのテスト解像度は,3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3パターンだ。
ただし,レギュレーション24.0のうち,「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」は,レギュレーション25.0に含まれる「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以降,FFXIV 暁月のフィナーレベンチ)と入れ替えている。
なお,今回は6コアクラスのCPUによるテストということもあり,OBS Studioを用いたリアルタイムのゲーム録画テストは省略している。
テストに使用した機材は表2のとおり。基本的にCore i9-12900Kのレビューに使用した機材および設定を,そのまま流用している。6コアクラスなので空冷式のCPUクーラーを使うほうが読者の参考になるかもしれないが,テスト開始時に使用できるLGA1700対応のクーラーがASUSTeK Computer製の簡易液冷クーラー「ROG RYUJIN II 360」(製品情報ページ)しかなかったので,今回もそれを使用した。6コアクラスのCPUとは釣り合わない印象もあるが,よく冷えるので発熱が大きいi5-12600Kやi5-11600Kの性能を最大に引き出せるはずだ。
なお,主役となるi5-12600Kでは,第12世代Coreプロセッサの定格メモリクロックとなる「DDR5-4800」設定に加えて,テストに使用したTeam Group製のDDR5メモリモジュール「T-FORCE DELTA RGB DDR5」(型番 FF3D516G6000HC40ABK,関連リンク)の最大クロックである「DDR5-6000」設定もテストした。
さらに,Intel製のオーバークロックツール「Extreme Tuning Utility 7.5」(以降,XTU 7.5)を使ってP-coreの全コアTurbo時における動作クロックを,標準の4.5GHzから4.7GHzに引き上げた簡易オーバークロック設定も試している。
本稿のテスト部分では,i5-12600Kの3設定を以下のように表記していく。
- i5-12600K(6000+OC):DDR5-6000とオーバークロック状態
- i5-12600K(6000):DDR5-6000
- i5-12600K(4800):DDR5-4800
おおむね良好なゲーム性能を見せるi5-12600K
まずは,定番のグラフィックスベンチマークである「3DMark」(version 2.20.7274)の結果から見ていこう。グラフ1は,DirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアだ。
描画負荷が高いFire Strike Ultraは,ほとんど横並びだが,Fire Strike Extremeになると,スコア20000台のi5-12600K勢に対して,i5-11600KとR5 5600Gは19000台でやや低いという結果になる。最も描画負荷が軽いFire Strikeだと,トップがi5-12600K(6000+OC),ついでi5-12600K(6000)で,R5 5600Gが続くという順番になった。
TDPが65Wしかない低消費電力版のR5 5600Gが,i5-12600K(4800)をわずかながら上回ったのが見どころだ。どうしてこうなったのかは,個別スコアで見ていくことにしよう。
グラフ2がFire StrikeのGPUテストである「Graphics test」のスコアである。Graphics testはGPUの性能テストということもあり,3つのテストがほぼ横並びとなった。
Fire Strike Extremeでは,i5-11600KとR5 5600Gが,Fire Strike Ultraでは,わずかだがi5-11600Kが高めのスコアを記録している程度だろう。とはいえ,その差は1%程度である。
グラフ3はFire StrikeのCPU性能テストとなる「Physics test」のスコアである。
かなりはっきりした結果になっていて,i5-12600Kの3パターンが,i5-11600KやR5 5600Gに比べて圧倒的と言えるほど高いスコアを記録した。また,i5-12600K(6000+OC),i5-12600K(6000),i5-12600K(4800)と,おおむねきれいに並んでいるのも特筆できる点だ。
グラフ4は,Fire StrikeでGPUとCPU両方に負荷をかけたときの性能を見る「Combined test」の結果だ
描画負荷が高いFire Strike Ultraは,ほぼ横並びの結果。Fire Strike Extremeではi5-12600K(4800),R5 5600G,i5-12600K(6000)の順で並んだ。Fire Strikeになると,R5 5600Gがトップで,i5-12600K(6000+OC)が続き,i5-12600K(6000)といった順序になっている。テストによりばらつきが激しいものの,R5 5600Gが好スコアをマークする傾向がはっきりしており,これが総合スコアに反映されたことで,R5 5600Gが上位に食い込む結果になったわけだ。
続いては,3DMarkのDirectX 12テストである「Time Spy」を見ていこう。グラフ5が,Time Spyの総合スコアである。
Time Spy ExtremeとTime Spyは,ほぼ同傾向で,とくに描画負荷が高いTime Spyでは,i5-12600K(6000+OC),i5-12600K(6000),i5-12600K(4800)と,理屈どおりの順で並んでいる。
グラフ6はTime SpyのGPUテストとなる「Graphics test」のスコアである。
GPU性能テストなので,ほとんど横並びと言っていい結果だろう。強いて言うなら,描画負荷が軽いTime Spyにおいては,i5-11600KとR5 5600Gがやや低いスコアを見せている程度だ。
一方のTime Spyにおける「CPU test」のスコア(グラフ7)は総合スコアを極端にした結果となった。
Graphics testが横並びなので総合スコアには,CPU testの結果が反映されているわけだ。Fire StrikeにおけるPhysics testの結果と合わせて考えると,i5-12600Kは,6コアクラスのCPUとしては極めて高いCPU性能を持つことがうかがえる結果になった。一方,R5 5600Gも,TDP 65WのCPUと考えれば健闘していると評価できると思う。
以上の結果を踏まえつつ,実ゲームの性能を見ていこう。グラフ8〜10はWatch Dogs Legionをグラフィックス品質「高」でテストした結果だ。
3840×2160ドットは,ほとんど横並びだ。また2560×1440ドットでは,R5 5600Gの平均フレームレートがわずかに低いのが目立つ程度だ。一方,1920×1080ドットはかなりばらついており,i5-12600K(6000+OC)とi5-12600K(6000)の平均フレームレートが114fps台と高く,ついでi5-12600K(4800)が続いた。i5-12600Kは比較対象よりも優秀だ。また,オーバークロックの効果は見られないものの,DDR5-6000設定の効果は見られるとまとめていいだろう。
続いて,バイオハザード RE:3の高負荷設定におけるフレームレートがグラフ11〜13だ。
バイオハザード RE:3は,どの解像度でもおおむね同じ傾向だが,最も分かりやすいのは,描画負荷が低い1920×1080ドットだろう。i5-12600Kの3パターンが高い平均フレームレートを記録し,ついでi5-11600K,R5 5600Gの順となった。
なお,バイオハザード RE:3では,オーバークロックやメモリの高クロック設定はあまり効果がないようだ。
Call of Duty: Warzone(以下,CoD Warzone)の高負荷設定におけるフレームレートがグラフ14〜16である。
傾向はWatch Dogs Legionに近く,i5-12600Kが,ほかよりもやや高い平均フレームレートを記録した。またオーバークロックの効果が表れていない一方で,DDR5-6000設定の効果が見られるのもWatch Dogs Legionと同じパターンを示している。
やや気になるのは,i5-12600K(4800)の最小フレームレートが低いこと。2560×1440ドットと1920×1080ドットの双方で有意に低い最小フレームレートを記録しているので,おそらく偶然ではないだろう。メモリ設定が最小フレームレートに影響を与えているのかもしれない。
続くグラフ17〜19は,Fortniteのグラフィックス品質「最高」におけるフレームレートである。
Core i9-12900Kのレビューで,FortniteではRyzen勢に比べて高いフレームレートを記録できないと報じた。今回も,3840×2160ドットと2560×1440ドットにおいて,i5-12600Kのスコアは比較対象よりわずかに低い。やはり,Fortniteと第12世代Coreプロセッサの組み合わせには何らかのボトルネックがあるようだ。
一方,描画負荷が軽い1920×1080ドットでは,傾向が少し変わっている。平均フレームレートでは,i5-12600K(4800)がトップとなり,i5-12600K(6000+OC),i5-12600K(6000)の順になったのだ。これは,Fortniteに何らかのアップデートが加えられた影響ではないかと推測している。
i5-12600Kの3パターンは平均180fps以上でバラけているが,おそらくこれはフレームレートのブレによるもので,メモリ設定やオーバークロックの効果は明確に出ていないと判断するのが妥当だろう。
R5 5600Gの平均フレームレートは,i5-12600K(4800)に対して約20fpsほど低い値を記録した。おそらくは,CPUがボトルネックになっていると見られる。R5 5600Gでは,今回のテストで使用したGeForce RTX 3080の性能を活かしきれないことがあると判断できる。Fortniteにおいて,R5 5600Gと単体GPUを組み合わせるなら,もう少し性能の低いミドルクラスGPUにしたほうが,価格対性能比のバランス良くなるかもしれない。
次のグラフ20〜22は,Borderlands 3の「ウルトラ」設定をまとめたものだ。
Borderlands 3も,全解像度でこれまで似た傾向が出ており,平均フレームレートはi5-12600K(6000)がトップで,ついでi5-12600K(6000+OC),i5-11600Kの順となった。DDR5-4800設定のi5-12600Kは,前世代にわずかだが届かず,最小フレームレートも低めになっている。Borderlands 3において,定格のメモリクロックだとi5-12600Kとi5-11600Kに性能差がほとんどない現象は,Core i9-12900Kのレビューでも見られたもので,今回はそれがi5-12600Kに不利となるように出たようだ。
FFXIV暁月のフィナーレ ベンチの総合スコアをまとめたものがグラフ23となる。
3840×2160ドットは,R5 5600Gがやや低いことを除くとほぼ横並びだ。2560×1440ドットでは,i5-12600K(6000+OC)がトップとなり,i5-12600K(6000)とi5-11600Kが横並びで続く。1920×1080ドットでも,i5-11600Kがi5-12600K(4800)を有意に上回る点は2560×1440ドットと同傾向だ。ここでもi5-12600Kは,定格のDDR5-4800設定だと前世代にわずかだが及ばないという形になった。
なお,スクウェア・エニックスの指標では,15000以上が最高評価となっており,i5-12600Kは4K解像度でわずかに及ばない程度である。GPUが高性能であれば,i5-12600Kはどの解像度でもFFXIVを快適にプレイできそうだ。
グラフ24〜26に,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均および最小フレームレートをまとめた。やはりi5-12600Kは,定格のDDR5-4800設定だと平均,最小ともにフレームレートがやや低くなることが分かるだろう。
実ゲームの最後として,Project CARS 3の平均および最小フレームレート(グラフ27〜29)を見ていこう。
3840×2160ドットのフレームレートは,3fps以内の差でほぼ横並びだ。2560×1440ドットと1920×1080ドットは,i5-12600K(6000+OC),i5-12600K(6000),i5-12600K(4800)の順という,ある意味できれいな並びに落ち着いた。Project CARS 3ではDDR5-4800設定の悪影響もあまり見られないのが特徴的な点といえるかもしれない。
以上,ゲーム性能を見てきたが,i5-12600Kは多くのタイトルで前世代のi5-11600Kを上回るゲーム性能を見せたとまとめていいだろう。ただ,定格のDDR5-4800設定だと前世代に及ばないタイトルもあるので,できるだけ高いメモリクロック設定が必要とも言える。
一方,R5 5600Gは,Intel勢に比べれば大幅に低消費電力なCPUなので,消費電力あたり性能では勝ると言っていいだろう。Fortniteで指摘したように,ハイエンドGPUの性能を生かしきれない傾向はあるが,TDP 65WのCPUならば無理もないというか,当たり前と解釈できる。
ゲーム以外では6コアクラスとは思えない高性能を示すi5-12600K
ゲーム性能に続いては,レギュレーション24.0に準拠した,ゲーム以外の用途におけるCPU性能を見ていこう。
グラフ30は,「PCMark 10」(version 2.1.2525)の「PCMark 10 Extended」のうち,Fire Strikeをウインドウモードで実行するGamingを除くスコアをまとめたものだ。なお,今回もGPUアクセラレーションを無効化するとベンチマークが完走しない現象が見られたので,GPUアクセラレーションが有効な状態のテスト結果を掲載している。
総合スコアはトップがi5-12600K(6000),ついでi5-12600K(6000+OC),i5-12600K(4800)の順となった。これまで,PCMark 10で11000を超える総合スコアを残すのは,ハイエンドクラスのCPUだけだったことを考えると,i5-12600KのDDR5-6000設定は極めて優秀と言っていい。DDR5-4800設定でも11000に近いスコアを残しているので,i5-12600Kの総合性能は,これまでのハイエンドCPUに匹敵すると見ていいだろう。
Windows操作の快適さを見るEssentialsや,ビジネスアプリの快適さを見るProductivityのスコアも同様で,i5-12600KはDDR5-4800設定を含めて,上位モデルのCPUに匹敵するスコアを叩き出している。i5-12600KはWindowsをとても快適に使えるCPUと言えよう。
3Dグラフィックスのレンダリングや動画,静止画の加工を含むDigital Content Creationにおいても,i5-12600Kが記録した13000台のスコアは,従来の6コアCPUでは見られなかったほど高いものだ。総じてi5-12600KはミドルクラスCPUの常識を超えるPCMark 10のスコアを記録したとまとめていいだろう。
続いては,「FFmpeg」(Nightly Build Version 2021-10-14-git-c336c7a9d7-full_build)による動画のトランスコード時間を見てみよう(グラフ31)。
i5-12600Kは,H.264のトランスコードで600秒台前後,H.265では1600秒台前後という,これまでの6コアCPUでは見たことのない短時間でトランスコードを終えた。従来の8コアCPUよりもトランスコードが高速といえるほとで,極めて優秀と言っていい。
トランスコードでは,オーバークロック設定の効果もしっかり見られている。今回は全コアTurbo Boost時のオーバークロックを行っているので,これは順当な結果といえると思う。
さらに驚かされたのが,DxO PhotoLabシリーズの最新版「DxO PhotoLab 5」(Version 5.0.0 Build4639)を用いたRAW現像時間の計測結果(グラフ32)だ。
グラフのとおり,i5-12600Kは,写真60枚のRAW現像を900秒以下で終わらせた。従来の8コアCPUを上回る高性能だ。ただ,DxO PhotoLab 5ではオーバークロック設定の効果があまりなく,DDR5-4800設定が最も短時間でRAW現像を終えるなど,CPUクロックやメモリクロックの影響をあまり受けない結果になっている。原因はなんとも言えないところだが,こういう例もあるということは押さえておいてもいいかもしれない。
続いて,3Dレンダリングベンチマーク「CINEBENCH R23」の結果がグラフ33,34だ。
i5-12600Kは,マルチスレッドで17000台後半というこれまでの6コアCPUにおける常識を打ち破るスコアを叩き出した。
また,マルチスレッドのスコアにはわずかながらオーバークロックやメモリ設定の違いが見えるのも特徴だろうか。逆にシングルスレッドでは,i5-12600Kのオーバークロック設定が少し低めのスコアになっている。これは,マルチスレッドに続けて,時間を置かずにシングルスレッドのテストを実行したためだろうと推測している。つまり,発熱が極めて大きいマルチスレッドのテストの影響がシングルスレッドのテストに残ってしまったのではないかというわけだ。
最後に「7-Zip」(Version 19.00)の結果をまとめておこう(グラフ35)。
i5-12600Kのスコアは極めて優秀で,従来の6コアCPUではまず記録できなかった80000前後に達した。また,7-Zipではオーバークロック設定やメモリクロック設定が結果に現れているのも特筆できる点だろうと思う。
以上,ゲーム以外の性能を見てきたが,i5-12600Kの性能は驚くほど高い。史上最強のミドルクラスCPUと断言していい。大雑把に言うと,前世代のi5-11600K比で1.4倍前後の性能というところで,世代間で大幅な性能向上を成し遂げたことになる。
一方,R5 5600Gは,TDP 65WクラスのCPUとして順当なスコアを残したと言っていい。消費電力あたり性能比ではR5 5600Gが圧勝と言ってもいいくらいなので,十分に満足できる結果だろう。
消費電力,発熱ともに扱いやすい範囲に収まるi5-12600K
最後に,i5-12600KのCPUコア温度や消費電力を評価しよう。
グラフ36は,FFmpeg実行中にハードウェアモニタリングソフト「HWiNFO64」を使って記録したCPUコア温度の最大値をまとめたものだ。
i5-12600Kのオーバークロック設定時は,さすがに88℃まで達したが,i5-12600K(6000)は78℃,i5-12600K(4800)は74℃なので,まずまず低い温度範囲に収まった。ハイエンドの液冷CPUクーラーを利用しているのも,この温度に収まったことに大きく寄与しているだろうが,いずれにしても温度面での扱いづらさはあまりないCPUと評価していいかと思う。
続いて,ベンチマークレギュレーション24.0に準拠した方法で,アプリケーション実行中におけるCPU単体の最大消費電力と,無操作時にディスプレイ出力が無効化されないよう設定したうえで,OS起動後に30分放置した時点(以下,アイドル時)の計測結果(グラフ37,38)を見ていこう。
i5-12600Kのオーバークロック時は,さすがにピーク消費電力が高く,ffmpeg実行時に212Wを記録した。i5-12600K(6000)は,ffmpeg実行時の144.6W,i5-12600K(4800)は3DMark実行時の153.2Wが最大である。瞬間最大消費電力と考えれば,オーバークロック時以外は常識的な範囲と言っていいと思う。最大消費電力が常識破りに高いi5-11600Kと比べれば,その差は明らかだろう。
R5 5600Gも消費電力面では非常に優秀で,最大消費電力でさえCINEBENCH R24実行時の92Wに収まっている。
なお,i5-12600Kのアイドル時の消費電力は,オーバークロック設定だと10W近くなるが,オーバークロックさえしなければ4Wを切る程度だ。アイドル時にはP-coreの電源供給を切るためだろう。
続くグラフ39はゲーム実行時の,グラフ40は,ゲーム以外のアプリケーション実行時における典型的な消費電力を示す最大消費電力の中央値である。
i5-12600Kのオーバークロック時は,RAW現像時に146.6Wというやや大きい中央値を記録した。ただ,i5-12600K(6000)はRAW現像時に123.4W,i5-12600K(4800)はさらに低く同121Wと,いずれもTDP枠内に収まる程度だ。TDP枠を超える中央値を平然と叩き出す前世代に比べれば,常識的な消費電力と言える。
一方,R5 5600Gは,RAW現像時にTDPを超える73.7Wの中央値を記録しているが,総合的に見れば,まずまず優秀な消費電力のミドルクラスCPUであるとまとめられるだろう。
消費電力テストの最後に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テスト実行時点におけるシステムの最大消費電力(グラフ41,42)をまとめておいた。
システムの最大消費電力で優秀さが目立つのは,やはりR5 5600Gだろう。TDP 65WのCPUならではと言える低めの消費電力に収まっている。消費電力あたり性能で言えばR5 5600Gは,かなり魅力的な製品であるのが分かる結果だろう。
i5-12600Kは間違いなく史上最強のミドルクラスCPU
また,消費電力や発熱で扱いづらさが目立ったハイエンドのCore i9-12900Kとは異なり,i5-12600Kの消費電力や発熱は常識的な範囲内で,空冷ファンでも対応可能な範囲に収まっている。ゲーマーが扱いづらさを感じるレベルではないだろう。
ただ,ゲームメインでi5-12600Kを使用するなら,やはり高クロックのメモリを組み合わせたほうが良さそうだ。定格のDDR5-4800設定だと前世代に劣るケースが散見されたので,メモリには予算をかけたほうがいいだろう。
一方,R5 5600Gは絶対性能でこそi5-12600Kに及ばないが,消費電力あたり性能は優秀なので,ゲームができる小型PCに向いている製品だろう。統合GPUでサブマシンとして使ったり,ミドルクラスの単体GPUと組み合わせてゲームを楽しむといった使い方ならば,R5 5600Gでも不満は感じないはずだ。
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