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  • 発売日:2022/08/05
  • 価格:610円
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スマホ版「Papers, Please」プレイレポート。書類の視認性を高めた縦持ち仕様を採用した,スマホに最適化された入国管理官体験ゲーム
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印刷2022/08/06 10:06

プレイレポート

スマホ版「Papers, Please」プレイレポート。書類の視認性を高めた縦持ち仕様を採用した,スマホに最適化された入国管理官体験ゲーム

 インディーズゲーム開発者のLucas Pope氏が手掛ける「Papers, Please」iOS / Android)のスマートフォン/タブレット版が,2022年8月5日にリリースされた。ついに! 

 2013年にPC/Mac用ゲームとしてリリースされた「Papers, Please」は,色あせた印象的なグラフィックスと,淡々としたゲームシステムに織り込まれた魅力的なシナリオでジワジワと人気を集め,2014 Indie Game Festivalで多数の賞を受賞。2018年には短編の実写映画化を果たした作品だ。

価格はiOS版が610円,Android版が650円(ともに税込)
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 そんな人気タイトルでありながら,2014年にリリースされたiPad版を除いて他プラットフォームへの移植は行われていなかった作品だけに,スマートフォン/タブレット版のリリースを楽しみにしていた人も少なくないだろう。本稿では,そんな本作をiPhoneで実際に遊んでみてのプレイフィールをお伝えしていく。

「Papers, Please」公式サイト

「Papers, Please」ダウンロードページ

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 架空の共産主義国家の入国審査官となり,日々,長蛇の列を作る入国希望者の書類を審査するだけというシンプルな「Papers, Please」。しかし,プレイを続けることで「労働とは何か」「幸福とは何か」という深遠な疑問が浮かび上がってくる異色の作品だ。リリース以来,高い評価を受けてきた,そんな本作をレビューしてみよう。

[2014/04/10 00:00]

スマホ版は書類の視認性に特化した縦長画面に

「ポイッ」と投げ返す動作も忠実に再現


 まずは,本作の基礎内容を紹介しておこう。物語の舞台となるのは,架空の共産主義国家アルストツカだ。周辺国家と幾度となく戦争を繰り返していたアルストツカは疲弊の末に終戦し,それに伴って入国管理局の業務も再開される運びとなった。

 そうして,国境の町グレスティンの入国管理官に任命されたのがプレイヤーだ。寒風が吹きすさぶアルストツカの検問所に勤務し,さまざまな事情を持つ入国希望者たちと接しつつ,家族を養いながら書類を審査していくことになる。

アルストツカに職業選択の自由はなく,プレイヤーは“勤労抽選”によって配属された市民の1人という立場だ
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 本作における入国管理官の仕事は,つまるところ間違い探しだ。入国希望者が提出した書類を確認し,不備がなければ緑色の判子“APPROVED”を押して通過させ,問題があれば赤色の判子“DENIED”を押して追い返す。この判子を押すガッチャンという音が小気味よく,慣れてくると心地よくなってくる。ガッチャン。

 スマホ版の画面は縦長仕様で,上から順に「入国希望者」「書類」「参照可能な書類一覧」が表示される。縦長の画面を活かし,1枚1枚の書類を大きく表示してくれるので,小さな画面であっても問題なくテキストを読み取れる。

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 また,本作ならではの気持ち良い作業感も健在だ。書類を直接ドラッグして動かすことはできないが,捺印が完了したパスポートや書類を投げ捨てるように「ポイッ」と返却する部分はシッカリとPC版に近い動きを再現している。プレイアビリティに配慮しつつ,本作独自の雰囲気をしっかり残しているのは好印象だ。

スマホ版では書類や判子を指で直接操作するぶん,判子の「押してる感」はより強く感じられた
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 ただ,複数の書類を同時に画面に収められないため,情報を見比べるために何度もスワイプして,確認する書類を切り替える必要がある。PC版のように書類を並べて見比べることはできないので,その点では慣れが必要になるだろう。

 書類に問題点があった場合は“調査モード”を開いて問題点を指摘しなければいけないのだが,スマホ版では「問題のある情報をタップする」「矛盾する情報のある書類を探す」「矛盾する情報をタップする」という手順を踏む必要があるため,PC版と比べるとプレイ全体で時間がかかってしまう。

本作の性質上,テキストが「読みやすくなりすぎる」のが一概に良いとは言えない。絶妙に誤読を誘うドット風のフォントはPC版から相変わらずで,その辺りのバランスはしっかりと取られているようだ
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イージーモードでは毎日の収入が+20される。難度はオプションで変更可能なので,ゲームに慣れてからイージーモードのチェックを外すのもアリ
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 書類を机に広げられたPC版では,調査モードを起動して関連する記述を片っ端からクリックしていくことで,個別の情報を精査せずに矛盾を見つけていくほうが楽になる場面もあったが,スマホ版ではあまり有効な手段ではなくなっている。

 ただ,この仕組みは「しっかりと書類を見比べて,矛盾点を探し出す」というゲームのコンセプトとはマッチしており,リアリティが増したと言えなくもない。PC版をプレイ済みの人にとっては好みの分かれる部分だとは思うが,個人的には悪くない割り切り方だと感じられた。

 書類自体は画面の最下部でスムーズに切り替えられるほか,書類を動かしても矛盾点としてクリックした情報は表示され続けるなど,全体的なプレイフィールに違和感はない。難度はちょっと高めになっているのは間違いないので,初めてプレイする人はオプションから「イージーモード」にチェックを入れてゲームを始めてもいいかもしれない。

押す判子の色が他人の人生を変える

入国管理官のジレンマを手のひらに再現


 仕事の時間が終わったら,給料をもらって帰路につく。アルストツカは共産主義国家にもかかわらず給料は歩合制であり,正しく審査ができた回数に応じてお金が支給される仕組みだ。

ミスは1日のうち2回まで許される。3回目からは罰金が発生し,その分が給料から抜かれてしまう
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 プレイヤーには家族があり,仕事で得た給料で家族の食費,家賃,設備費(暖房費)を賄わなければならない。仕事でミスを重ねると生活がジワジワと苦しくなっていくので,可能な限り正確に,素早く仕事をこなす必要があるのだ。

 しかも,終戦直後のアルストツカと周辺国家の情勢はひどく不安定で,審査に必要な書類と作業がどんどん増えていく。最初のルールは「アルストツカ人だけ入国可能」というシンプルなもので,パスポートの種類と必要事項を軽くチェックすれば審査は済むのだが,ゲームが進むとパスポートに加えて“入国券”やら“IDカード”やらと,審査すべき書類が増えていく。

 もちろん,複数の書類に同じタイプの情報(生年月日など)が記載されている場合,それらを突き合わせて矛盾がないかを確認しなければならない。そうなると参照しなければいけない書類が増え,確認作業も煩雑になっていく。

 書類以外にも審査項目は多い。上司から渡された写真をもとに凶悪な指名手配犯を探したり,備え付けの体重計をもとに隠し持った武器を暴き出したり,果ては強行突破をはかる相手を銃で狙撃させられたりと,「明らかに入国管理官の職務の範疇じゃないだろ!」と叫びたくなるような仕事も回ってくる。

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 そんなプレイヤーの元には,手作りのパスポートで入国しようとするオッサンや,国の現状を憂うテロリストなど,個性が豊か過ぎる入国希望者達が訪れる。こうした人々はそれぞれに事情を抱えており,その運命はプレイヤーが押す判子の色によってのみ決まるのだ。

 母国で命を狙われている人がやってきたら,その事情を汲んで書類の不備を無視してあげたくなるが,プレイヤーも薄給の中でギリギリの生活を強いられているわけで,常に情をかけてはいられないだろう。また賄賂を持参されると,書類の不備をうっかり見逃してしまうかもしれない。

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 モラルや正義感を家族の生活と天秤にかけて押す判子を決める。この,なんともいえないジレンマこそ「Papers, Please」最大の魅力と言えるだろう。

 こうしたイベントまわりに関しては,PC版とスマホ版で大きな差を見つけられなかった。テキスト送りがやや遅めに設定されているのは多少気になったが,スマホ版では書類を表示する部分が画面の大半を覆っている関係で一度に表示できるテキストが少なく,しっかりと物語を見せるための調整だと思われる。

書類同士を重ねる必要がある場面では,書類を固定してくれるクリップが出現する。手動で重ねる位置を探す必要はない
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 スマホ版「Papers, Please」は,オリジナル版の独特な魅力をしっかりと再現しつつ,スマートフォンの縦長画面に最適化した作品に仕上がっている。情報量が多いゲームだけあって,PC版と比較すると気になる点はあるものの,スマホ版で初めて本作に触れる人であれば気にならないだろう。なお,本作をタブレットでプレイした場合は,それ専用のモードを選択できる(スマホ版と同じ表示モードも選択可能)。こちらのほうが書類を見比べるといった作業はやりやすい。

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タブレットでのオプション画面。表示方法を選択できる
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タブレット用画面のほうが書類を見比べやすい

 今や名作インディーズゲームとなった「Papers, Please」だが,PCでしか遊べなかったことで触れられずにいた人も少なくないだろう。新たな選択肢が登場したこの機会に,ぜひ入国管理官の仕事を体験してみてほしい。

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