プレイレポート
[プレイレポ]世界を滅ぼした超常の力を借り,クラフトを駆使しながら文明と常識が失われた広大なフィールドを生き抜く「Once Human」
プレイヤーは文明崩壊後の世界を舞台に,記憶を失ったまま目覚めた実験体である「超越者」として,クラフトやサバイバル,そして広大なフィールドの探索や冒険が楽しめる。
オープンワールドサバイバルアクションと言えば,有名なライバルも非常に多いジャンルだが,本作は無秩序な終末世界と,SCP財団などをモチーフにした超常的で不気味なクリーチャーたちが渾然一体となった独特の世界観を生み出している。配信前にはSteamのウィッシュリスト数が世界のトップ5に入っており,多くのゲーマーの注目を集めていた。
そこで,さっそく早期アクセス版をプレイしてみたのでレポートをお届けしよう。
「Once Human」公式サイト
文明が崩壊し,超常現象や凶悪な怪異が蔓延る世界
記憶を失った謎の実験体が目を覚ます
本作の舞台は我々が営んでいる文明が滅びた後の社会,いわゆるポストアポカリプスの世界だ。ただし,崩壊の原因は核戦争やウイルス(ゾンビ)によるものではなく,とある実験の失敗によって別の次元から現れたと思われる謎の物体「スターダスト」に浸食されたことに起因する。
スターダストは人間や動物,そして自然そのものも異形化させ,かつての常識や物理的な法則はことごとく失われてしまった。今や至るところに超常的で危険なクリーチャーが徘徊し,正気を保った人間は狭いコミュニティで細々と暮らすまでに落ちぶれている。
手つかずの地域は広大だが,普通の人間は怪異(スターダスト)の影響を受けるとすぐに正気を失い,いずれ怪異そのものと化してしまうからだ。
そのような世界で主人公(プレイヤー)は,とある研究所らしき場所で目を覚ます。しかも,その直前に異常事態が発生して施設は壊滅,研究員も全滅したあげく,夢とも現実とも区別が付かない空間に放り出されてしまう。
道中では「ヴィー」と自称する謎のしゃべる鳥,「蝶」と呼ばれるミステリアスな女性との出会い。そしていくつかの資料から,主人公は一般の人々より頑強な存在「超越者」であり,むしろ実験体や怪異に近い存在であることが分かってくる。
スターダストによる世界の崩壊を食い止めるべく,主人公はヴィーや蝶と協力してデビエーションの活動を抑制し,その謎を解くための冒険を開始する。
だが文明崩壊後の世界では,まず生き延びるためのサバイバル知識とスキルが必要であり,さらに世界の至るところには人知を超えた怪異が跋扈していた……というのが導入部の物語だ。
冒頭でも触れたが,本作はオープンワールドを採用した三人称視点のサバイバルアクションだ。プレイヤーはオンラインでつながった多数のプレイヤーと協力したり,競争したりしながら,広大なフィールドを探索。クリーチャーと戦い,素材を集め,それらをクラフトしながら冒険を繰り広げていく。
多数のメイン/サブクエストが用意されているが,ゲーム全体としてはクラフトの重要度が高く,基本的には「アイテムが作れないと何もできない」という状態であることが多い。プレイヤーキャラクターは経験値を溜めればレベルが上がっていくが,強さそのものは装備品自体で決まる側面が強く,さらに強力な装備を手に入れるための最も手っ取り早い手段がクラフトだからだ。
さらにサバイバル要素もあり,食料や水の摂取が定期的に必要という点でも,アイテムを作る重要性は高い。
クラフトの仕組みは,決められたレシピがベースになっているオーソドックスなものだ。ツルハシで樹木や岩石を砕いていくと,未加工の木材や鉱石が手に入る。あとは,それをレシピどおりに(作業台などの)生産器具に投入するだけだが,序盤の採取器具はツルハシのみに統合されているためシンプルだ(高速採掘用のドリルなどは後半用のアイテム)。
さらに,マップの各地に資源は高密度で存在しているうえ,入手後の復活がかなり早いのでストレスは少ない。筆者には資源を集めるのはかなり楽に感じられ,ほかのプレイヤーとの取り合いもほぼない状態という印象だ。
加えて,前述の空腹と喉の渇きも進行はかなり緩やか。単に「生存」という観点で見ると,難度は低めだろう。誰でも苦労することなく,ゲームプレイを進められそうだ。
ただし,これはサービス開始直後により,初心者向けに調整されているため。今後の新たな展開や,コアゲーマー向けのサーバが開放されるようなことがあれば,状況は変わるかもしれない。
クラフトのためには探索が必須
探索をスムーズにするにもクラフトが重要になる
繰り返しになるが本作の世界は崩壊状態であり,さらに普通の人間とも言いがたいプレイヤーには自宅なんて存在しない。したがって,生活の中心となるのはフィールドのほとんどの場所に自由に建築できる,自らの拠点だ。
気になる場所でビルド用のボタンを押せば建築モードに移行し,そのスペースが他人に利用されていたり,地形的に建設不可であったりしなければ,一定の範囲が自分の管理下になって拠点を作れる。序盤は本当に木の土台くらいしかないが,ここからいかに充実させるかはプレイヤー次第だ。
なお,先に触れておくと拠点の引っ越しも非常に簡単だ。開けた場所で建築モードに入れば,拠点をほぼそのままの状態で即座に“持ってくる”ことができる。もちろん,設備や建物が巨大化するほど,引っ越し先の地形の選定がシビアになってくるが,基本的には「冒険の進行度(探索エリアの移動)」に応じて自由に拠点が動かせる仕組みと言っていい。
クラフト主体のゲームではありがちな「気合いを入れて作った拠点が,やがて遠くて不便になってくる」という事態が起こりにくいのはうれしいところだ。
また,クラフトゲームで意外と難しいのが「まともな屋根付きの家を建てる」こと。プレイヤーが工夫しないと“ただの箱”になったり,端がズレて壁や屋根に見苦しい隙間ができたりこともあるが,本作にはいくつかのテンプレートが用意されている。
素材と(壁や屋根などの)レシピを用意できれば,3D投影の設計図に合わせて組み立てるだけで,プラモデル作りのように立派な自宅が建てられる。テンプレートはそのまま使うも良し,何かのベースにするも良しなので,初期の家としては十分だろう。
クラフトゲームをプレイするたびに(真四角の)コンテナハウスを量産してきた筆者には,とても使い勝手の良い機能だと感じられた。
さて,立派な自宅を手に入れたら,次は内装や追加の生産器具,あるいは居住者である自分自身の装備も充実させたくなるが,これらを作るにはレシピをアンロックする必要がある。
レシピの開放は主にサイファーと引き換えになるが,これを入手する最も簡単な方法はレベルを上げること。経験値は採取やクラフトでも入手できるが,まとまった量を獲得するにはクエストをクリアするのが手っ取り早い。
クラフト系のクエストも多く存在するが,やはりストーリーに絡んでくる探索や戦闘が必要なクエストがメインになる。ほとんどの街は廃墟と化しており,さらに危険なクリーチャーが常にうろついているため,基本的に目的(探索)を達成するためには戦闘が避けられない。
また,探索が必須となる理由がもう1つあり,それは採取だけでは入手できない素材が非常に多いこと。使用頻度が高い布類やプラスチック,あるいは電子部品といったアイテムは廃屋やチェストを漁るか,敵のドロップ品を分解するしか入手手段がなく,それゆえに「クラフトを進めるためにも冒険しなくてはならない」というわけだ。
ただ,これは裏を返せば,クラフトで充実させた装備を常に使う機会があるということでもあり,「クラフト → 探索(戦闘) → 帰還 → クラフト……」という流れがうまく構築されているとも言える。
いずれにしても環境を充実させるには,「今ないものを作る」しかないので,常に「あの素材がない」「このレシピがまだ使えない」といった感じで,次にやるべきことが積まれているはずだ。
さらに,高所から落下時には冒頭で仲間になる鳥のヴィーがグライダー代わりになり,すぐ呼び出せるバイクなどの移動手段もごく序盤で入手できるため,移動におけるストレスは少ない。一定の条件を満たせばファストトラベルも使えるようになる。
マップの各地には謎のイベントが複数用意されているので,いろいろなエリアを巡ってみると楽しいだろう。
敵は不条理に満ちた無数の怪異
超常的な力を利用して,凶悪なクリーチャーに挑む
冒頭でも触れたように,本作の敵(デビアント)は現代の都市伝説を下敷きにしたSCPなどにインスパイアされていることもあり,印象に残るものが多い。人間の頭がアタッシュケースになっていたり,電波塔自体がクリーチャーと化していたり,バスに手足が生えて高速で移動していたりと,ある種の不条理さとユーモアが同居したデザインは,超常現象を全面に打ち出す本作の雰囲気にマッチしている。
一部の敵は身体の部位をドロップし,それを拾えばクリーチャーの特徴的な攻撃を真似して繰り出せるというあたりも,アイデアとしてなかなかに面白い。ボス戦はともかく一般的なザコは近接武器で殴るとかなり簡単に倒せるので,弾丸なども消費することなくサクサク進めるところも好印象だ。
とはいえ,敵が占拠しているような場所は大概,スターダストの濃度が高い危険エリアなので注意が必要。なぜなら本作には「理性値」が設定されており,怪異が発生するような場所に立ち入ったり,直接攻撃を食らったりすると数値が減っていくからだ。
理性は体力の上限値を兼ねているため,要するに「正気を失うほど体力の最大値が減る」という仕組みになっている。これがなかなかにイヤらしく,理性を取り戻せるアイテムもあるのだが,序盤は入手しづらいので,弱ってきたら素直に拠点のベッドで寝るほうがいい。
なお,怪異によって生まれた存在は,単なる敵だけではない。一定の条件を満たせば取得できる「デビエーション」と呼ばれるものもいる。その後,拠点に作成できる収容ユニットに収めると,ほぼ完全な味方として使役することができる。
デビエーションには勝手に資源を集めてくれるようなタイプや,主人公が背負っている「クレイドル」と同期することで戦闘に利用できるタイプもあり,これらを地道に集めるのも本作の楽しみになっている。
元が怪異なので(SCPらしく)どうしても不穏に感じるが,モンスターボールに入れたポケモンや女神転生シリーズの仲魔などに近い位置づけだ。主人公も一種の怪異と言えなくもないので,普通に“仲間”の力を借りているだけなのかもしれない。
ちなみに本作は(選んだサーバにかかわらず)PvP要素のあるオンラインゲームだが,少なくともPvEサーバでは散策中にほかのプレイヤーに出会っても,争いになることは(ほぼ)なかった。PvPモード自体はボタンの長押しで切り替えられるが(設定上は理性を失って狂乱状態になったことになる),アイテム(報酬)はプレイヤーごとに独立して用意されているし,お互いPvP状態にしないと攻撃も当たらないので,そもそも戦いにならないからだ。
一方,PvPサーバではGvG要素がアンロックされ,一部の地域が資源の争奪エリアになっており,さらに一定のレベル以上になるといつでも攻撃される可能性が出てくる。積極的にプレイヤー同士で戦いたいであれば,こちらを選ばない手はない。プレイスタイルに合わせて参加するサーバを決めよう。
「オープンワールド+サバイバルアクション+SCPライクなホラー要素」といった盛りだくさんな本作だが,全体的にはまとまっていると感じた。サバイバルにしても戦闘にしても,現状は難度が控えめなのでプレイしやすく,クラフト要素もベーシックな作りなのですぐに仕組みを理解できる。何より,ほぼ自由に移動できる拠点は使い勝手がいい。
世界観こそ説明が曖昧だったり,SCP的なドキュメントに伏せ字が目立ったりして理解しにくいところもあるが,おそらくある程度は狙ってもいるのだろう。すべてが理解できなくても全体的な雰囲気は楽しめるし,グラフィックスの品質も良好だ。
各地に美しい自然が広がる一方,廃墟の周辺に足を踏み入れようものなら奇妙で不気味なデビアントが多数生息している二面性も見どころだ。
ただ,ゲーム内マニュアルはきっちり日本語に翻訳されているものの,そのほかのゲーム内からアクセスできるドキュメントが日本語ではなかったり,会話の一部にクオリティが落ちるものがあったりと,ローカライズ面には多少引っかかる部分はある。通常のゲームプレイでは問題になりにくいだろうが,将来的なアップデートに期待したいところだ。
本作は基本プレイ無料であり,さらにアーリーアクセスが始まったばかりであることを踏まえれば,プレイしてみる価値がある新作タイトルと言えるだろう,チュートリアルこそ若干長めだが,それ以降は行動制限もかなり少なくなるので,自分のペースで進められる。興味が湧いてきたのであれば,ぜひダウンロードしてみてほしい。
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