インタビュー
「ゴースト トリック」を復活できたことが最も印象的で感動的な出来事。巧 舟氏をはじめ,開発スタッフへのメールインタビューをお届け
本作は2010年6月,ニンテンドーDS向けに発売された同名タイトルの移植作品だ。物語が始まった時点ですでに死亡している男「シセル(ナゾマミレノワタシ)」が,さまざまな謎に翻弄されつつ,失われた記憶と自らの死の真相を追っていく。
今回のメールインタビューでは,オリジナル版を手掛けたディレクターの巧 舟氏と,移植するにあたってのプロデュースを担当した和泉真吾氏,ディレクターの丸山敦史氏に回答してもらった。リマスターに至った経緯や本作の見どころ,開発秘話などを聞けたので,ぜひ読み進めてほしい。
「ゴースト トリック」公式サイト
4Gamer:
今回,「ゴースト トリック」がリマスターされた経緯について聞かせてください。
和泉真吾氏(以下,和泉氏):
本作は,遊んでいただいたユーザーからの満足度が高かった作品で,さらに移植の要望もこれまで多数寄せられていました。特別意識をしたタイミングではないんですが,13年前にお届けできなかった方にぜひ遊んでほしい! そう思ったのが今回の移植が決まった理由です。
また本作は,いつの時代でも,どこの国でも,どのハードでも変わらない「普遍的な面白さを持つタイトル」であり,それも移植の決め手になりました。さらに今回は,幅広いユーザーに届けられるようマルチプラットフォームで展開すると共に,アジア言語が追加されています。
4Gamer:
今回のリマスター版では,新機能として,さまざまな条件の達成を目指すやりこみ要素「チャレンジ」が追加されました。どのような内容が用意されているのでしょうか。
丸山敦史氏(以下,丸山氏):
本作では,トリツク・アヤツルを駆使してキャラクターを助けることで運命が更新され,進行していきますが,正解のルート以外でもキャラクターがさまざまな反応を示します。わざと失敗することでしか見れらないやり取りもあり,そのような寄り道部分にやりこみ要素を設けています。
4Gamer:
グラフィックスの高解像度化についてですが,こちらはどのように作り直しを行いましたか。
丸山氏:
オリジナル版のグラフィックスをベースに,HD版に向けて高解像度化と加筆修正を行っています。とくにキャラクターの顔は全体的に加筆しているので,動きも含めてよりキャラクター性を感じ取れると思います。
4Gamer:
シナリオの内容や各種表現なども含めて,当時のそのままの内容をプレイできるのでしょうか。
和泉氏:
本作は完璧な形で完結しているので,シナリオの変更や追加はありません。
丸山氏:
オリジナル版から表現なども改変はしていません,当時の感動をそのまま楽しんでいただけます。
4Gamer:
アレンジ楽曲の制作において,コンセプトや心掛けたことがあれば聞かせてください。
巧 舟氏(以下,巧氏):
今回のリマスター版には,オリジナル版とアレンジ版の両方が収録されていて,ゲーム中にいつでも切り替えられます。
アレンジ版については,楽曲のイメージを変えることなく,その音質を磨き上げて,より楽曲の魅力をクリアに引き出すことに集中しました。とくに意識したのは,アレンジによって,楽曲が持つ意味合いや機能が変わらないようにすることです。オリジナル版の音楽は当時から最高でしたが,最新のサウンドにリファインされたことで,至高になったのではないかと思います。
4Gamer:
Steamでの配信も決まっていますが,海外からの反応はいかがでしょうか。
和泉氏:
海外の方からも大きな反響をいただいています。とく逆転裁判シリーズや巧ディレクターのファンの方や,オリジナル版をプレイしたことがある方から「もう一度プレイしたい」「プレイするべき作品」とメッセージが届いており,大変ありがたい限りです。
Steam版の予約も順調に伸びています。Steam版はいわゆるゲーミングPCのようなハイスペックPCでなくても動作します。ある程度のスペックを持つノートPCでも大丈夫ですので,プレイハードルが低いこともSteam版のセールスポイントだと考えています。
4Gamer:
「謎解きキット トリツキBOX」では,SCRAPと協業し,オリジナルの謎解きキットを制作しています。制作の経緯や,本作のシステムを謎解きに落とし込む上での苦労,SCRAPの反応や巧さんからどんな意見が出たのか聞かせてください。
和泉氏:
先にもお伝えしましたが,本作は完璧な形でシナリオが完結しているので,追加シナリオのようなコンテンツは用意しませんでした。そこで,特典付きのパッケージ商品に,「ゴースト トリック」らしい謎解きコンテンツを付けられないだろうか,と考えたのが出発点です。
そうなると,「謎解きの最大手であるSCRAPさんに作って欲しい!」となるのは自然な流れで,ご相談したところ快諾していただいたというのが経緯になります。
また,SCRAPさんの功績がとても大きいと思いますが,13年前と現在を比べると,「謎解き」というコンテンツが一般的になっていて,「謎解きファン」の方がとても増えたと感じています。その皆さんにも「ゴースト トリック」を遊んでいただくきっかけになれば,と考えたのも理由の1つです。
巧氏:
SCRAPさんとは,これまで「大逆転裁判」やアニメ版「逆転裁判」とコラボしたイベントを一緒に作っていまして,いつか「ゴースト トリック」も……とは考えていたので,今回のハナシを聞いたときはうれしかったですね。これまでのイベント作りを通じて信頼関係ができあがっていたので,今回も遠慮のないやりとりを何度も重ねて,関係者一同オススメの一作になりました。
「死者のチカラ」をアナログゲームに落とし込む具体的なアイデアは,SCRAPさんのノウハウで一発で決まり,謎解きに関する主導権はSCRAPさんが,設定や物語,シナリオに関してはカプコンサイドが仕上げました。まさに「もうひとつのゴーストの物語」になっていると思います。
4Gamer:
「謎解きキット トリツキBOX」は,SCRAPの店舗でも予約受注できるとのことですが,謎解きファンが新しく「ゴースト トリック」に興味を持ったという手応えはありましたか。
和泉氏:
はい。実際にSCRAPさんの店舗からのご予約をたくさんいただいておりますし,SCRAPさんのファンのSNS投稿を拝見しても,いい反応をいただいています。とてもありがたいです。
4Gamer:
オリジナル版「ゴースト トリック」の反響について,印象深かったことがあれば聞かせてください。
巧氏:
「ゴースト トリック」は,当時作り手として自信があったのですが,正直に言いまして,思ったよりもお客さんに届けることができなかったな……という思いがありました。
それから10年以上経ち,こうして復活できたことがもっとも印象的な出来事だと感じています。長い間,このゲームに深い愛情をもって遊んでいただき,応援してくれた方々がいたからこそ,こうしてもう一度手に取っていただく機会が生まれました。そう勝手に解釈して,勝手に感動しています。
4Gamer:
オリジナル版のシナリオ・パズル作りについて,大変だったところについて教えてください。また,制作するにあたってより難航したのはどちらの要素でしょうか。
巧氏:
シナリオのテーマは“群衆劇”。一見,無関係に見える登場人物たちが抱える“事情”が,どこかで意味を持ち,すべてつながっていくというイメージが最初からあって,これを実現するプロットを作るのはとても大変でした。
一方,パズルのテーマは“物語との融合”。ただパズルを解くだけでなく,それによって物語の謎も同時進行で語られていくようなイメージがあって,こちらも実現するのがとても大変でした。
そんなわけで,シナリオとパズルは切っても切れない関係になっていて,並行して両方一緒に考えていました。
4Gamer:
今回リマスター版が発売されるということで,続編にも期待しているファンもいるかと思います。もし,続編があるとすればどのような内容を考えていますか。
巧氏:
「ゴースト トリック」の物語は,本作だけで完成しているので,続きを作るのは超高難度……死の運命を更新するぐらいの覚悟が必要そうです。ただ,「死者のチカラ」には,まだ可能性がありそうですね。
4Gamer:
最後に発売を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
和泉氏:
ファンの方には,新たな発見があると思いますので,ぜひもう一度プレイしてみてください。まだ体験したことがない方は,まずは秀逸なストーリーを楽しんでもらいたいです。その入り口として体験版を用意したので,ぜひプレイしてみてください!
その後はストーリーのネタバレを見ないよう,SNSで「ゴースト トリック」を検索しないなど,気を付けて発売日を迎えていただければと思います!
丸山氏:
「ゴースト トリック」がニンテンドーDS版の魂そのままに,高解像度化&最新ハードに最適化されて蘇りました。どうぞよろしくお願いします!
巧氏:
これまで「ゴースト トリック」をプレイしたことがない方はシアワセだと思います。なにしろ,あの“一夜の追跡劇”を,何も知らない状態で遊べるのですから。
そして「ゴースト トリック」をプレイしたことがある方もシアワセだと思います。なにしろ,真相を知ったうえで遊ぶことで,この物語はまったく違う意味をもって見えるからです。
その体験を,ぜひリマスターされた映像とサウンドで楽しんでいただけるとウレシイです。そんなわけで,遊んだ人みんながきっとシアワセになる「ゴースト トリック」を,よろしくおねがいします。
「ゴースト トリック」公式サイト
キーワード
(C)CAPCOM CO., LTD. 2010, 2023 ALL RIGHTS RESERVED.
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